Ava


エヴァ  (2021年2月)

こないだアクションだとばかり思っていた「ザ・リトル・シングス (The Little Things)」が、面白くはあってもサスペンス・スリラーで、身体を張ったアクションとはちと違っていたので、今度こそと思って、今度はちゃんと調べて「エヴァ」がアクションがキモというのを確認してから見始める。 

 

「エヴァ」は、ジェシカ・チャステインが女性暗殺者に扮するアクションだ。この手の作品は定期的に現れており、昨年もブレイク・ライヴリー主演の「ザ・リズム・セクション (The Rhythm Section)」や、シャーリーズ・セロンの「ジ・オールド・ガード (The Old Guard)」等があった。特に自分自身でアクションもこなせるという点で、この分野では現在、セロンが頭一つ抜けているという印象がある。 

 

一方、演技派という点ではチャステインもセロンに負けてはいないが、如何せんチャステインはアクションが弱い。それではこちらが攻撃するより先に殴られちゃうよというスピードだったり、こちらが仕掛けるのを相手が待っていたり、さらに本気のアクションでは、明らかにスタント・ダブルがチャステインに成り代わってアクションしている。 

 

むろんこれはチャステインに限ったことではなく、近年ではマーヴェル作品等でアクション女優という印象も定着してきたスカーレット・ヨハンソンも、アクションではかなりの部分スタント・ダブルを使っている。男性俳優だって、トム・クルーズみたいに意地でも自分で演じると決めている俳優以外は、結構スタント・ダブルが危険なアクションを演じている場合が多い。 

 

それでも、やはりセロンが「アトミック・ブロンド (Atomic Blonde)」で見せたような、本人自身のアクションによる長回しショットというのは、チャステインでは撮れないだろう。「エヴァ」は撮ろうと思えば続編も製作できる終わり方になっていたが、やはり、せめてライヴリーくらいは自分でアクションもこなしてくれると、見る方としても気合い入るんだがと思う。 

 

チャステインの母に扮するのがジーナ・デイヴィスで、そう言えば彼女自身も「ロング・キス・グッドナイト (The Long Kiss Good Night)」で女性スパイに扮していた。チャステインの元恋人に扮するコモンは、「ラン・オール・ナイト (Run All Night)」「ジョン・ウィック: チャプター2 (John Wick Chapter 2)」での不気味な殺し屋から、今回はギャンブル中毒のほとんど一般民間人で、アクションのできないチャステインに守られるという、なかなか身悶え的な役どころ。 

 

チャステイン演じるエヴァを育てたのがジョン・マルコヴィッチで、マルコヴィッチと言えば最も印象に残っている一つに、やはり「ザ・シークレット・サービス (In the Line of Fire」の暗殺者役がある。そしてコリン・ファレルも、「デッドマン・ダウン (Dead Man Down)」や「ヒットマンズ・レクイエム (In Bruges)」で暗殺者はお手のものだ。ビリングの大きさでは負けていないヨアン・グリフィスは、暗殺者の経験がないため、仲間に入れず途中退場を余儀なくされたものと思われる。 


「エヴァ」というタイトルで思い出すのは、近年では「アンナ (Anna)」「ルーシー (Lucy)」等の、女性主人公・暗殺者のファースト・ネイムをタイトルに持つ一連の作品だ。ちょい前の「ハンナ (Hanna)」も加えてもいいと思うが、女性名がタイトルに来る場合、往々にしてその内容は、素人の女性がプロのアサシンとして成長するまでを描く。これは「ニキータ (Nikita)」以来の伝統だ (というかこのネイミングに固執するリュック・ベッソンの妄想とも言える。)


ところが「エヴァ」の場合、エヴァは登場した時から既にプロのアサシンだ。しかし女性アサシン作品の伝統から言うと、彼女は素人でなければならない。このことは、エヴァがプロとして時に余計なお喋りを差し挟んでしまうという、完全なプロに成り切れていないことを意味している。つまり「エヴァ」は、手練れのヒットマンに囲まれたまだまだ新米ヒットマンのチャステイン=エヴァが、一人前になるための最後の一仕事を描く成長ものとも言える。これだけのメンツに囲まれて薫陶を受けたのだ、もし続編が製作されたら、その名に恥じない仕事をしてもらいたい。 

 


 











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プロの暗殺者のエヴァ (ジェシカ・チャステイン) は、請け負った仕事は確実に遂行する有能な暗殺者ではあったが、自分のターゲットと本来なら交わすべきではない言葉を交わすなど、時に仕事の枠を逸脱する傾向があった。軍時代に彼女の才能を目に留め、プロの暗殺者として育て上げたデューク (ジョン・マルコヴィッチ) はそういう彼女の癖に危惧を抱いていたが、案の定、デュークの教え子のサイモン (コリン・ファレル) は、エヴァを亡き者にしようと手を回し始める。一方、入院した母 (ジーナ・デイヴィス) と妹ジュディ (ジェス・ワイクスラー) を久方ぶりに訪れたエヴァは、そこでジュディが、かつてのエヴァの恋人だった (コモン) の子を身ごもっていることを知る‥‥ 


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