The Old Guard


オールド・ガード   (2020年7月)

徐々に都市機能再開への歩みを進めているアメリカ、ニューヨークでもバーやレストラン、美容室が営業再開するフェイズ3となり、映画館のリオープンも目前に迫ってきた矢先、若者の野砲図な言動著しいフロリダやテキサス、カリフォルニアといった南西部では、逆にCOVID19感染が拡大、第2波どころかまだ第1波すら終わってないのに、途中で我慢できなくなって好き放題し始めた者たちのために、すべては元の木阿弥という感じだ。フロリダだけで一日の新規感染者数が5万人なんて話を聞くと、200人超えでびびる東京が可愛く思えてくる。 

 

一方、こういう状況では、たとえ映画館が再開しようと、率先して足を運ぼうという気にはあまりなれない。マスクをして快適とは言いかねる状況で、不安を抱え、集中して映画を楽しむことができないなら、当分の間は、やはり映画館通いは控えざるを得まい。映画館自体に金を落としたいという気持ちは山々だが、前提となる映画を楽しめないのなら、一消費者としては、やはり重い腰は上がらない。思うに、新作を最初からストリーミング配給もするNetflixは、時代にも合致している。業績好調の上にさらに時代が後押しをする。乗っている企業というのはこういうものなのだろう。 

 

その「オールド・ガード」、主人公が不死、あるいは超長命という設定で即座に思い出すのは、「ワンダーウーマン (Wonder Woman)」だ。もちろん不死のスーパーヒーローというと、近年ではまず第一にX-メンの一員であるウルヴァリンこと「ローガン (Logan)」が、過去10年では最も有名かと思う。しかし、やはり「オールド・ガード」のアンディがローガンよりもワンダーウーマンの方に近いと思えるのは、主人公が女性であること、さらに、作品を演出している監督もジーナ・プリンス-バイスウッドという女性だという、両作品が不死の女性を主人公にした、実はフェミニスト作品であることによる。これまで男性に虐げられていたと思われていた女性が、実は不死になって展開し始めた。いきなりオセロで全部の石をひっくり返されたような大逆転だ。 

 

一方、この時代に不死であることは、無限の力か恩寵かというよりも、呪いのようにしか聞こえない。死なない者ができることは死者を弔うことだけで、誰も自分の死を看取ってくれる者はいない。最終的には絶対的な生というパワーを誇示する相手はこの世に誰もいなくなってしまう。それは幸せなことか? 誇示できないパワーに価値はあるのか? 

 

しかしそのアンディの身体にも、どうやら異変が起こりつつあるらしい。怪我をしても治りが遅くなり、簡単には回復しない。結局、不死の者を主人公としていても、その不死の者がどうやって死ぬかが、結局最大のドラマになる。看板に大偽りありだが、結局ローガンだって死んでいったわけだし、不死というのはどうやら言葉の綾であって、本当の不死というものは存在しないらしい。半分安心もし、半分がっかりでもある。 

 

セロンのアクションは相変わらず悪くないが、しかしそれでも、私見では「アトミック・ブロンド (Atomic Blonde)」のアクションの方がキレがよかったような印象がある。これは実際にそうだったかというよりも、映画館のスクリーンで見ているか、家の42インチのTVで見ているかという違いにあるような気がする。映画館での眼前に展開するアクションの絵としての大きさと迫力ある音響に対し、TVだとどうしてもアラが目につきやすい。映画館だと浸って見ているが、家だとリラックスして、斜に構えて細部が目につく批評家的な視線になる。その違いがそうした印象の差をもたらすというのは、大いにありそうなことに思える。さらに「アトミック・ブロンド」では、一度見たら目にこびりついて離れない必殺の1シーン1ショット・アクションがあった。あれを超えるのは簡単ではないだろう。 

 

不死仲間では、途中裏切った者に対するペナルティは、向こう100年間一人で生活すること、100年後にまたこの場所で会おう、というものだ。これがペナルティとして有効に機能するためには、たとえ不死といえども、時間の体感は通常の人間と同じでなければならない。さもなければ、100年か、長いな、その間オレはずっと一人ぼっちなのかという懲らしめとして機能しない。いずれにしても、「オールド・ガード」続編が製作されても、100年間会えないのなら裏切り者は次作では登場する機会はない。あるいは完全に寝返った敵として再度登場するか。幕切れを見る限り、明らかに続編はありそうだ。 











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アンディ (シャーリーズ・セロン) を中心とする仲間たちは不死の力を持っていて、歴史のあちこちに顔を出して、危機に陥った人類を助けていた。彼らの存在を知ったコープリー (キウェテル・イジョフォー) は、スーダンで人身売買される者たちを救出する任務を託す。しかしそれは仕組まれたもので、実はコープリーはアンディたちをとらえて研究材料として製薬企業の経営者であるメリック (ハリー・メリング) に売り渡すつもりだった。瞬時に傷口が治癒するアンディたちは、敵を倒してその場を脱するが、メリックは追跡の手を緩めなかった。一方、アフガニスタンで米軍将校のナイル (キキ・レイン) は、首を切られて大怪我をして死んだものと思われたが、すぐに回復する。仲間が出現したことを遠隔的に察知したアンディは、アフガンに飛ぶ。 


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