Iron Man 3


アイアンマン3  (2013年5月)

正直に言うと、「アイアンマン3」が3年前の「アイアンマン2」の続編ではなく、昨年の「アベンジャーズ (The Avengers)」の続編ということをまったく知らなかった。映画を見ている途中ですらそうと気づかなかった。「アイアンマン2」からの続きだとばかり、見終わって家に帰ってからもそう思っていた。


そしたらこの項を書こうとして資料をチェックし始めて、初めて「アイアンマン3」が「アベンジャーズ」の続編という設定であることを知った。「アベンジャー ズ」って、マジに他の作品とも連携していたのか。マーヴェルの場繋ぎ的遊びだとばかり思っていた。ま、確かに「マイティ・ソー (Thor)」と「アベンジャーズ」は繋がっていたから、「アベンジャーズ」と「アイアンマン」が繋がっていてもおかしくはないが、「アイアンマン」ですら独り立ちできないのか。


「アイアンマン3」の舞台設定は、「アベンジャーズ」でロキとの戦いに疲れたトニーが、疲弊してパニック障害になってしまうというものだ。トニーが疲弊してい るのは見ればわかるが、それは「2」から引きずってきたもので、「アベンジャーズ」からの持ち越しだとは思わなかった。「アベンジャーズ」でだって親分肌的な性分見せて仕切りたがりなところを見せていたから、その上自分の作品もあるとなると、さすがにどんなにタフでも身体は音を上げるだろう。


しかし、「アベンジャーズ」が公式に「アイアンマン」に関係しているとすると、まずい点もある。その筆頭がナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウを演じるスカーレット・ヨハンソンの存在だ。なんとなればヨハンソンはブラック・ウィドウになる前に、トニーの秘書ナタリーとして「アイアンマン2」に登場している。そのナタリーが実はブラック・ウィドウでもあるというのは困るだろう。


だから当然「3」ではナタリーの存在はなくなった。「2」を見た時、「3」への含みとしてナタリーとペッパーを絡めた三角関係を暗示していたはずだが、おかげでばっさり切り捨てられた。その時はヨハンソンが「アベンジャーズ」でブラック・ウィドウを演じるという予定はまだまるで立っていなかったろうから、 しょうがないと言える。それとも今後どこかで、実はナタリー=ブラック・ウィドウだったという設定で新たな展開を見せるための伏線ということは考えられる か? 他方「2」に登場したニック・フューリーは、ちゃんと「アベンジャーズ」でもニック・フューリーだ。どんな作品に出ようとも自分のスタンスは変わらず、そ れでいてちゃんと印象を残すニック・フューリーはさすがだと言うべきか。


今回の「3」におけるプロットの最大のポイントは、とりもなおさずアイアンマン=トニーが疲労困憊しているという点にある。そのためにパニック障害も起こし、トニーらしからぬ心配性的な面も見せる。唯我独尊的なキャラクターで登場し、だからこそ人気を集めたトニーが、よりにもよってパニック障害だ。


人を人とも思わぬ傍若無人な態度でありながら憎めないというキャラクターの造型こそが「アイアンマン」の魅力の最たるところだったのに、今回はそのセールス・ポイントを使うことを最初から禁じられている。むろんだからこそ最後にいつものトニーに戻った時のカタルシスも大きいものがあるだろうが、しかし思い切ったことをする。


今回、そのトニーの敵役となるのは、ベン・キングズリー扮するマンダリンと、ガイ・ピアース扮するキリアンだ。印象的な悪役の造型はスーパーヒーローものの 肝の一つだが、その点二人は及第以上。キングズリーは本当にうまいと思わせるし、最近のピアースは悪役路線が確定し始めてきたようで、昨年の「ハングリー・ラビット (Seeking Justice)」「プロメテウス (Prometheus)」「欲望のバージニア (Lawless)」、そして今回と、悪人をやる頻度、それもだんだん非人間的な印象が濃くなってきた。


そのキリアンのアシスタント的存在のマヤを演じるレベッカ・ホールは、実は見ている間中ずっとジェシカ・ビールだとばかり思っていた。以前「ザ・タウン (The Town)」で 見た時は、似てるなんてこれっぽっちも思わなかったのに、今回はなぜだか顎の辺りを見て、ビールだと思い込んでしまった。ちょっとその辺に肉がついたというのはあるかもしれない。


しかしそれでも、最近、この手の思い込みというかカン違いが多くて困る。ついこないだもA&Eの「ベイツ・モーテル (Bates Motel」で出演者の一人をヴィンセント・ドノフリオだと思い込んでいて、後でクレジットをチェックするまで間違いに気づかなかった。「オブリビオン (Oblivion)」ではオルガ・キュリレンコをオリヴィア・ワイルドとばかり思い込んでいたし、この手のカン違い、思い込みを記し始めるときりがない。この分だと間違っていることすら気づかないカン違いが、あといったいどれくらいあることやら。


今回そうだったのかと思ったのが、カスタム・メイドで着用する者に合わせて製作していると思われたアイアンマン・スーツが実はそうではなく、第三者にも使用可能ということが判明したこと。アイアンマン・スーツを利用できるのはトニーとローディ (ドン・チードル) だけではなかったのだ。大統領だってスーツを着ることはできるし、ペッパーにだって着用可能だ。しかしペッパーがスーツを着用した場合、さすがに最初 からサイズを合わせてなかったらダボダボになって着れたもんじゃないと思うが、その辺はどうなっているのだろう。伸縮自在素材を利用しているようにも見えないが。


いずれにしても、これで「アイアンマン4」の展開は読めた。粗製濫造大量生産され、悪事に利用されるアイアンマン・スーツが社会問題となって、またトニーの エゴをちくちくと刺して苛立たせるに違いない。むろん「2」で予想したナタリー/ペッパー路線がご破算になったように、この予想というか希望が実現する可能性は低いだろうと思うが、それでも、無責任な一映画ファンの妄想は膨らむのだった。










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自分の企業だけでなく、新アイアンマン・スーツの開発等スーパーヒーローとしての活動もこなさなければならないアイアンマンことトニー・スターク (ロバート・ダウニーJr.) は、このところ不眠やストレス等、疲労が蓄積していた。一方、かつてトニーが歯牙にもかけなかった科学者のキリアン (ガイ・ピアース) がスターク・インダストリーズを訪れ、ビジネスを提案する。キリアンに不審な要素を感じとったハッピー (ジョン・ファヴロー) はキリアンをつけ、そして人間が爆発するという事件の現場に巻き込まれる。さらに世界的なテロリズムを指揮するマンダリン (ベン・キングズリー) が、次の標的としてアイアンマンに狙いを定め、トニーのマリブの邸宅を攻撃してくる。咄嗟にペッパー (グウィネス・パルトロウ) を逃がして自分もなんとか脱出するトニーだったが、未完成のアイアンマン・スーツが空を飛んでトニーを運んだ先は、テネシーのド田舎だった‥‥


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