Homeland   ホームランド

放送局: ショウタイム

プレミア放送日: 10/2/2011 (Sun) 22:00-23:00

製作: FOX21

製作総指揮: マイケル・クエスタ、ギデオン・ラフ

監督: マイケル・クエスタ

脚本: アレックス・ガンサ、ハワード・ゴードン、ギデオン・ラフ

オリジナル: 「Prisoners of War (Hatufim)」

出演: クレア・デインズ (キャリー・マティスン)、デミアン・ルイス (ニコラス・ブロディ)、マンディ・パティンキン (ソウル・ベレンソン)、モリーナ・バッカリン (ジェシカ・ブロディ)、デイヴィッド・ヘアウッド (デイヴィッド・エステス)、ディエゴ・クラッテンホフ (マイク・ファーバー)、モーガン・セイラー (デイナ・ブロディ)、ジャクソン・ペイス (クリス・ブロディ)


物語: CIAエージェントのキャリー・マティスンは、中東で捕虜となった米軍人が洗脳され、寝返ったという情報を得る。数か月後、米軍は消息を絶っていた海軍兵ブロディを救出する。国を挙げて帰還を歓迎されるブロディだったが、キャリーはブロディがアルカイダの手先となった疑惑を拭いきれない。しかし彼女の懸念は聞き入れられず、思いあまったキャリーは独断でブロディ家に盗聴カメラを設置する‥‥


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Homeland


ホームランド   ★★★

「デクスター (Dexter)」と「ザ・ボルジアス (The Borgias)」という看板番組はあるものの、現在では「ナース・ジャッキー (Nurse Jackie)」、「ザ・ビッグ・C (The Big C)」、「ウィーズ (Weeds)」、「元気か~い? ハリウッド! (Episodes)」等のコメディの方が強いショウタイムが編成する最新番組が、「ホームランド」だ。転向したかもしれない軍人と、その軍人に疑惑を抱くCIAエージェントをサスペンスフルに描く。


CIAの女性エージェント、キャリー・マティスンは、かつて9/11を未然に防ぐことができなかったという悔いから、国防に関しては人一倍敏感だった。彼女は確かな筋から、囚われていた米軍人が洗脳されて寝返ったと知らされる。数か月後、8年前にミッションの途中で行方不明となり、今では死んだものと思われていた海軍兵のニコラス・ブロディが奇跡的に救出される。


ブロディが洗脳されてアルカイダの手先としてテロの先鋒となる疑惑を捨てきれないキャリーだったが、救出されて本国に帰ってきたブロディは戦争ヒーローで、彼に疑惑を持つことなぞもってのほかで、上司のエステスはキャリーの言うことにいっかな耳を貸さない。キャリーはかつての恩師であるソウルに相談を持ちかけるがやはりけんもほろろで、思いあまったキャリーは独断でブロディの家に盗聴カメラの設置を決行する。そのことがソウルの耳に入り、任を解かれて職を失うどころか裁判にかけられそうになるが、TVに映ったブロディが、なんらかの暗号らしきものを発信していることに気づく。


一方ブロディの妻ジェシカは、8年もの間夫がいなかったため、なにかと手助けしてくれた夫の元同僚のマイクとベッドを共にする仲になっていた。さらに娘のデイナもボーイフレンドと一緒にドラッグに手を出す年齢になっており、息子のクリスに至っては父の顔なぞまったく覚えていなかった。


このような状況設定で、果たしてブロディが本当にスリーパーか、国を売ったのかという疑惑を増しながら話は展開する。ブロディは仲間の黒人兵と共に敵に拿捕されたのだが、その黒人兵は助からず、拷問を受けて殴られ続けて死んだということがブロディのフラッシュ・バックでわかる。第1話のラストでは、その兵を、脅されて殴り続けて殺したのが誰あろうブロディ自身であったことが判明する。ブロディは拷問の恐怖から一時的に壊れていただけなのか、それとも今では完全に敵の術中に陥っているのか、あるいは寝返ったと見せて敵に復讐を考えているのか。


一方のブロディを監視するキャリーも実は精神的に安定しているとは言い難く (たぶん躁鬱病)、薬を常用している。彼女のブロディに対する疑惑は彼女自身の妄想が生み出したもので、外部はそれに振り回されているという懸念も捨てきれない。正しいのは、まともなのはいったいどっちか。


ブロディを演じるのがNBCの「ライフ (Life)」のデミアン・ルイスなだけに、本当に何を考えているのかわからなくてどきどきする。「ライフ」でも無実の罪で何年も刑務所に入れられた元刑事役で、冤罪が証明されて出所した後、復讐を考えているのか何を企んでいるのかわからない男の役がはまっていた。ここではその印象を引きずっているどころか、それをさらに何倍も増幅させている。何を言ってもどう行動しても、お前、それ、何か裏があるだろうという印象を常に与える。本当にこの危なさはただ事ではない。ちょっとでも目を離したら、なにかとんでもなさそうなことをする気配をぷんぷん発散させている。


キャリーを演じるクレア・デインズは、昨年、HBOのTV映画「テンプル・グランディン (Temple Grandin)」で、自閉症の主人公グランディンを演じてエミー賞主演女優賞を獲得した。今回も躁鬱の気がある、メンタル・ヘルスに問題のある主人公役で、思いあまって何するかわからないというような切羽詰まった時の表情はさすが。こちらも次の瞬間に何するかわからないという危なさではルイスに引けをとらない。


その他、キャリーの元上司ソウルに扮するマンディ・パティンキンは、CBSの「クリミナル・マインズ (Criminal Minds)」に出ていた時のプロファイラーを彷彿とさせ、こちらもはまり役。ブロディの妻ジェシカに扮するのは、ABCの「V」で美人エイリアンを演じてたモリーナ・バッカリンで、今度は人間だが、やはりこちらも裏がある。しかしやはり美人。クレジットを見てあっと思ったのが、製作総指揮およびプレミア・エピソードを含むいくつかを演出している「L. I. E.」のマイケル・クエスタで、最近名前を聞かないなあと思っていたら、こういうところで仕事していたのか。


「ホームランド」はイスラエル製ドラマのリメイクだ。最近、私は特に英国製ドラマの安易なリメイクが多過ぎることにうんざりしており、事あるごとに苦言を呈しているのだが、作らないと他の国では知らないままで終わってしまうこういう番組のリメイクは大いに擁護する。しかもNBCの「フリー・エージェンツ (Free Agents)」は本当に同じ脚本を利用した焼き直しで、わざわざ時間と金をかけてリメイクを製作する意義がまったく感じられずますますうんざりしたものだが、「ホームランド」の場合、大筋以外はほとんど全面的に手を入れているそうだ。むろんだからこそやる意味がある。


一つ気になるのは、たぶんシーズン・フィナーレで明らかになると思われるブロディの意図で、彼の意識の所属が明らかになれば、それで番組の意義も終わる。しかしわりと好評で既に第2シーズンの製作が発表されている「ホームランド」の場合、その後どうやって展開させるつもりなのだろうか。作り方はいくつもあるだろうが、しかしABCの「ロスト (Lost)」のようにどんどん拡散してポイントがぼやけてしまったり、あるいはAMCの「ザ・キリング (The Killing)」という悪例もある。


「キリング」は、最初はあんなに面白かったのに、評判になって第2シーズン製作が決まったためにシーズン・フィナーレで次シーズンに向けて視聴者の興味を持続させるよう引っ張らざるを得ず、まったく言語道断の辻褄のつかない終わり方をしていた。しかも「キリング」も「ホームランド」同様、海外で製作され好評だったサスペンス・ドラマのリメイクだ。


サスペンス番組の場合、どうしてもこういう展開になりやすい。一つの大きな疑問やサスペンスが番組の軸となっている場合、それを解決してしまうと番組自体がそこで終わってしまうから、どうしても解決を先送りにし、結果としてスリルが薄まって番組が面白くなくなってしまうのだ。「ホームランド」が同じ轍を踏まないことを切に願う。









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