放送局: NBC

プレミア放送日: 9/26/2007 (Wed) 22:00-23:00

製作: ユニヴァーサル・メディア・ステュディオス

製作総指揮: ランド・レイク、ファー・シャリア、ダン・サッカイム、デイヴィッド・シメル

監督: デイヴィッド・シメル

クリエイター/脚本: ランド・レイク

撮影: チェッコ・ヴァース

美術: フィリップ・トゥーリン

編集: ウォレン・ボウマン、ジョシュア・バトラー

音楽: ジョン・アーリック、ジェイソン・ダーラトカ

出演: ダミアン・ルイス (チャーリー・クルース)、サラ・シャヒ (ダニ・リース)、アダム・アーキン (テッド・アーリー)、ブルック・ラングトン (コンスタンス・グリフィス)、ロビン・ワイガート (カレン・デイヴィス)


物語: 元刑事で12年もの間無実の罪で収監されていたクルースが、疑いが晴れて出所する。彼は元の職場に復帰し、女性刑事のリースとペアを組まされる。自身もドラッグ中毒の経験があり、ヒエラルキーの最下部にいたリースに厄介事が回されてきたのだ。二人は少年が撃たれて殺された事件の担当に回される。クルースは少年の飼い犬がうずくまっていた場所から、犯人のものと思われる犬が食いちぎった指を発見する‥‥


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2007-08年シーズンのネットワークの新番組も出揃い、その評価もほとんど定着した。下馬評通り、ドラマで最も強かったのはABCの「グレイズ・アナトミー」スピンオフの「プライヴェイト・プラクティス (Private Practice)」で、あとは特にほとんど目ぼしいものはないという感じだ。個人的には昨シーズンの「ヒーローズ」の二匹目の柳の下のどじょうを狙ったNBCのSFアクション3部作の、「チャック」、「ジャーニーマン」、「バイオニック・ウーマン」が気にかかっていたのだが、ここまでの成績を見る限り、上出来とは言い難い。


一方、NBCが編成した4本の新ドラマのうち、たった1本だけSF色が絡まない刑事ドラマの「ライフ」が、意外にも私にとってはNBCドラマの中で最も面白かった。私の意見では、「ライフ」と、ABCの「プッシング・デイジーズ (Pushing Daisies)」が、今シーズンに編成されたネットワークの全ドラマ番組の中で最も面白い。


その「ライフ」は、無実の罪で終身刑を宣告され、12年間も刑務所に収監された後、晴れて無実が証明されて出所してきた刑事が主人公のドラマだ。番組タイトルの「ライフ」とは、もちろん人生を意味するが、主人公クルースが受けた終身刑 (ライフ・センテンス) のことも指す。実際アメリカに住んでいると、10年だか20年だか刑務所に入れられた後、DNA鑑定によって無実が証明されて出所したというニューズをわりとよく耳にする。本当に、結構な頻度であるのだ。そのほとんどが黒人だったりするのがまたいかにもという感じなのだが、いずれにしてもこういう設定は、ありえない話ではまったくない。


「ライフ」主人公のチャーリー・クルースもそういう目に遭った一人だ。プレミア・エピソードではそのクルースが出所し、よりにもよってまた刑事として元の職場に復帰し、女性刑事とパートナーを組まされ、少年が撃たれて殺されたという事件を任されるところから始まる。クルースがいったいどういう罪を負わされて服役していたかという説明はほとんどないが、たぶん贈賄に関係する職場を巻き込んでの汚職であるような感触を受ける。その辺の経緯もおいおい明らかにされるものと思われる。


クルースは無実の罪で収監されていたわけだから、そのことが明らかになって釈放された暁には、当然行政から慰謝料が支払われる。それがいくらかも明らかにされないが、職場に復帰したクルースがいきなりベントリーを乗り回して人々の羨望を浴びているところを見ても、かなりの額をせしめたのは間違いない。あの車は1,000万円は下回らないはずだ。とはいえ12年も刑務所の中にいたクルースは最新テクノロジー事情には疎く、運転しながら手を使わずに電話できたりすることとか、ナヴィゲーション・システムとかにはまったく慣れていない。携帯すら職場からあてがわれた携帯が自分のポケットの中で鳴っていても、最初はそれが自分の電話だとはまったく気がつかないなど、ちぐはぐな面を発揮する。因みに番組第1回ではそのベントリーが、最後の方でブルドーザーに潰されておしゃかにされる。


一方、12年間の辛酸である種の諦観や悟りを得たのか (クルースが独房の中で読んでいたのは禅関係の本だったりする)、時にヘンな独り言のようなものをぶつぶつ言っているとはいえ、思わぬ視点から事件の解決の糸口を見つけたりもする。冒頭の少年が撃たれて殺された事件では、少年の犬がなぜ遠くに離れて座っているのかをいぶかしんだクルースが、犬が少年を撃った犯人の指を食いちぎって、自分も怪我しながらもその上に鎮座ましまして証拠品を守っていることに気づく。


そしてプレミア・エピソードのみならず、毎回話の最後にはクルースが自分の家で、自分が刑務所に入れられた事件の関係者の写真や証拠類等を壁に留めて関係図を作り、それを飽くことなく眺めているシーンで終わる。悟ったとか諦めたとかはまったくの嘘っぱちで、たぶんクルースは独房の中にいる間中、一時たりとも自分を無実の罪に陥れた事件のことを考えない時はなかった。彼が考えているのが復讐なのか、それとも単に真実の解明だけなのかはともかく、これからの展開が大いに気になる。


クルースに扮しているのが「ドリームキャッチャー」、「バンド・オブ・ブラザース」のダミアン・ルイスで、こいつ、何考えているのかよくわからない、という雰囲気をよく出している。そのパートナー、リースに扮しているサラ・シャヒは、実はどちらかというと今風の顔立ちとは思えないのだが、それが新鮮。「ER」や「エイリアス」にゲスト出演していたらしいが、まったく記憶になかった。わりと小さめの顔や身体つきなのだが、その顔にまったく合ってないような大きなサングラスを何度も目にするうちに、なんとなく格好いいような気がしてくるから不思議。今シーズンのイチ押し女優である。


「ライフ」は今シーズンのNBC新ドラマ番組の4本のうち、「チャック」と並んで継続が決まっている2本のうちの1本だ。とはいえ、特に成績がいいわけでもないのだが、たぶん私のように面白いと思って熱心に見ているコアのファンがそれなりにいるんだろう。私の場合、今シーズン、新番組でこれまでに見た回数が最も多いのは、まずFOXの「キッチン・ナイトメアズ」で、これはほぼ毎回見ている。次がこの「ライフ」だ。一方で、これもまたなかなかいけると思ったTVミュージカルのCBSの「ヴィヴァ・ラフリン」が、こちらは2回放送されただけでキャンセルされると、およよと思うのと同時に、いかにもマイナー好みの自分のテイストを反映して安心したりもするのだが。いずれにしても、「ライフ」にはもうしばらくは頑張ってもらいたい。  





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Life


ライフ   ★★★

 
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