Lost   ロスト

放送局: ABC

プレミア放送日: 9/22/2004 (Wed) 20:00-21:00

最終回放送日: 5/23/2010 (Sun) 21:00-23:30

製作: バッド・ロボット、タッチストーンTV

製作総指揮: J. J. エイブラムス、デイモン・リンデロフ、ブライアン・パーク

クリエイター: J. J. エイブラムス

第1話:

監督: J. J. エイブラムス

撮影: ラリー・フォン

編集: メアリ・ジョー・マーキー

音楽: マイケル・ジアキーノ

美術: マーク・ワーシントン

出演: マシュウ・フォックス (ジャック・シェパード)、エヴァンジェリン・リリィ (ケイト)、ホーゲイ・ガルシア (ハーリー)、ドミニク・モナハン (チャーリー)、ナヴィーン・アンドリュウス (サイード)、ダニエル・デイ・キム (ジン)、ユンジン・キム (スン)、ジョシュ・ホロウェイ (ソウヤー)、ハロルド・ペリノー (マイケル)、マルコム・デイヴィッド (ウォルト)、テリー・オクイン (ロック)、マギー・グレイス (シャノン)、イアン・ソマーホールダー (ブーン)、エミリー・デレイヴン (クレア)


物語 (最終回):

ロックもジャックも光を発する島の中心部の洞窟を目指しており、二人があいまみえるのも時間の問題だった。ただしその目的は正反対であり、ジャックはジェイコブの後継者として島を守るため、ロックは島を破壊するために同じ場所を目指していた。一方パラレル・ワールドでは、デズモンドが皆を同じコンサートに出席させるために働きかけていた。三々五々、まだこの世界では見知らぬ者同士の仲間たちが、一時の時間を共有するために集まり始める‥‥


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2004年秋に放送の始まった「ロスト」は、瞬く間にヒット番組の仲間入りをした。もうそれが6年も前の出来事とは到底信じられない気がするのだが、今でも番組第1回の記憶は鮮明だ。乗っていた旅客機が墜落して生き残った乗客たちが、結束してサヴァイヴァルに乗り出す。しかし、その島は通常の島とは異なる何ものかがおり、島を支配しているようだった‥‥


オープニングの、事故で意識を失ったジャックが目を覚ますシーンから興味を持続させるのに充分で、その後の事故現場、特にまだ動いているジェット・エンジンに人が吸い込まれていくシーンなど強烈に印象に残った。その時私は、TV横に置いてあるマックに向かって書きものをしながらちらちらとTVを見ていたのだが、結局後半は仕事にならずにTVの前に座り直して最後まで見た。


その時私が「ロスト」を見ていたのはクイーンズのアパートで、それが今では引っ越してニュージャージー住まいだ。その時見ていたJVCの32インチの死ぬほど重かったブラウン管TVも、今ではパナソニックの42インチのプラズマに様変わりしている。書きものに使っていた13インチのブルーベリーiMacも、現行の20インチiMacに買い換えて久しいなど、私一人の身の回りを見渡しただけでも、既に視聴環境は劇的に変化している。それなのに彼らはこんなに長い間島に閉じ込められていたのか。


また、番組の第1回をこれだけ鮮明に覚えているのも、印象が強烈だったことの証だ。最初から面白そうだとは思っていたとはいえ、実際に見てみたらそれ以上の面白さがあったからこそ強く記憶に焼きついている。だからその時どういう状態でプレミア・エピソードを見たのかという状況も、しっかり記憶に残っているのだ。


とはいえ、長い番組にありがち、というか必ず起こることだが、何シーズンも同様の興味で視聴者を引っ張っていくことは難しい。至難の業だ。というか、不可能だ。私がよく見ていた長寿番組というと、NBCの「ER」やABCの「NYPDブルー (NYPD Blue)」等があるが、それらだって全部見ているわけではない。途中で中だるみするシーズンというのが必ずあるし、見ているこちらの興味だって変動したりする。


「ロスト」の場合は、それらの一話完結型のドラマと違い、登場人物が、なぜ、島に不時着しなければならなかったのか、そこには何ものかの意図が働いていたのか、この島という存在はなんなのかという究極の問いがあり、すべての展開はこの命題の解明に向かうというシリアル・ドラマだった。


この場合の番組の長期化が難しいのは言わずもがなだ。番組製作者がどのような結末を用意して番組を作り始めたのか、あるいは最初から答えがあったのかすら疑問だが、いずれにしてもこの場合、番組が長期化すると、背景に常に同じ究極の謎をちらつかせながら、どんどん新しい謎を付け足していくしかない。そうすると、視聴者はいつ謎が解明するのかを期待しながら番組を見続けているのに、それどころか、謎はどんどん混沌を極めていくばかりで、いっかな解明する気配がないどころか、謎が拡散していくばかりという状態に陥る。


正直言ってこれはうまくない。第1シーズンはすべて放送時にTVの前に座って放送を待ち構えながら見ていたものが、第2シーズンは録画して見るようになり、第3シーズンからは見落とすエピソードもあるようになり、そして段々見なくなった。たまに見てもいまだに新しい謎や時代や登場人物が出てきたりすると、はっきり言ってちょっとついていけないと思ってしまう。このままだと人気がある限り謎は増え続けるばかりだ。賭けてもいいが製作者もすべての提供した謎を覚えているわけではあるまい。このままではいくつかの謎は解明されないまま捨て置かれるのは、これはもう必至だ。視聴者には鬱屈が残るだけだ。


そんなわけで、第3シーズンのシーズン・フィナーレのエピソードでチャーリーが死ぬと、それが転機になってあまり熱心に番組を見なくなった。その後も、時間が合えばちょくちょくと見たりはしていたが、以前ほど熱心ではなくなった。だいたいこの頃から他の視聴者も私同様いっかな謎が解明されない展開にいらいらし始めたようで、番組離れが起き始めた。ABCは対応を迫られ、番組は2009-10年シーズンが最終シーズンで、番組は最終回を迎えると発表した。


この判断は賢明だったと思う。既に人気は下降し始めていたし、シリアル・ドラマに途中からはまる視聴者というのはそれほど多くはないだろうから、人気再燃というのも考えにくい。ならば期限を決めてきっちりと最終回を迎えるべきだろう。それによって製作者もそれに合わせて謎を解明して、番組を収束させることができるし、視聴者を納得させることもできる。最悪、いきなり視聴率が急降下して、話の途中なのに尻切れトンボでキャンセルという事態は、これで免れることができるわけだ。


というわけで、私も、既に知らない登場人物がいたり、100%筋を追えていたわけではないとはいえ、またぞろ番組を見出した。いずれにしても、番組がどうやって終わるかだけは見届けないと気が済まない。実際、昨シーズンは既に次シーズンで終わりが確定しているため、終わりに向けて加速し始めたという印象があり、ジュリエットが身を呈して爆弾を起爆させるシーンで終わるところなんか、最終シーズンに大いに期待を持たせた。そして2009-10年の最終シーズンは、今シーズンの「ロスト」は裏番組に何があっても全部見るからと女房にも宣言して、番組を見始めた。



(注) 以下、番組最終シーズンの展開に触れています。


第6シーズンは、一応腐っても鯛というか、一時かなりの人気を博した番組の最終シーズンということで注目度は高く、ABCも強力に番宣した。シーズン前からかなり話題になっていたのが、番宣用のイメージの図柄だ。明らかにレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を模した図柄で、しかも2種類ある。こうなると、このイメージに今後の展開の秘密が隠されているに違いないと、目を皿のようにしてイコノグラフィの読解に走る者が後を絶たない。









































まず、登場人物が全員中央に座っているロックを見据えているイメージは、これはもう最終シーズン、ベンに首を絞められて殺されたが黒い煙によって復活したロックが、話の展開の中心になることを物語っているのは間違いない。難しいのはもう一方の図柄で、基本的に全員正面を向いているが、パイロットの彼だけはよそ見している。これに意味はあるのか。彼の視線の先にはいったい何があるのか、なんて議論がいたるところで持ち上がった。たぶん最終シーズンでこのうちの何人かは死ぬことになり、視線でそれを現しているはずという意見はかなり説得力はあるのだが、しかし、基本的に皆前を向いているだけなんですが。


日本人としての最終シーズンの興味は、真田広之の出演にもあった。最終シーズンにもなってまだ新しい人物が登場するところが、この、まだやるか、と思わせる理由にもなるのだが。真田演じるドーゲン (道元?) は、思わせぶりなまた新しい一派の首領という役どころで、死んだはずのサイードを生き返らせたりもするが、しかし特に話の中核に絡むことなく、あえなく殺される。なんだ、結局ドーゲンも捨てキャラか。もう話をこれ以上膨らませないでくれ。最終シーズンなんだからさ。


一方で番組はわりと主要な登場人物ながら、これまであまり前面には出てこなかったキャラクターの生い立ちや存在理由を明らかにし始める。もちろんその中心がジェイコブであることは言うまでもない。実はジェイコブは島を守るという仕事を育ての母親 (アリソン・ジェニー) から受け継いだのだが、彼には双子の弟がいた。跡継ぎは一人しか必要のなかった母は、弟を外の世界に出す。


十数年後、成長した弟は海を越えて外の世界を目指す。しかし母にとっては秩序を乱すそれは許されない行為だった。いくつかの経緯を経て母は弟に殺され、激昂したジェイコブは弟を島の生命の源である光の洞窟に叩き落とす。弟は黒い煙となって森の中に消え、そして新しくジェイコブが島を守る存在となるのだった。


というのがそもそもの話の発端のようなものなのだが、しかし、よく考えるとこれは、この島という存在の理由について、何も答えていない。だからこの島はいったい何なの? というのが偽らざる視聴者の心境だ。はぐらかされたという印象はいかんともしがたいが、しかし、これは神話だからどうしようもないのだろう。神話の世界では、不死の泉や願いをかなえる指輪があったとしても、その存在理由を誰も問わない。というか、問えない。それは最初からそこにあったからだ。


結局「ロスト」でもそういうことで、その島の生命の源の光の洞窟は、そもそもの最初からそこにあり、それを誰かが守り継いでいくことは、古代から決められた不可侵の定めだった。ジェイコブはそれに従ったに過ぎず、そして彼の後を引き継ぐ者を物色し始めていた。彼の手引きによって、ジャックとその他もろもろの仲間たちは、後継者の候補として島に集められたのだ。


ジェイコブに次いで謎の人物だったリチャードは歳をとらない不死の人間だが、その経歴も明らかにされる。これまた、実はだからなんで歳をとらないのという疑問が起きるが、それも不問にしておこう。しかも最終回ではその歳をとらないはずのリチャードに白髪が生え、彼が普通の人間として歳をとり始める。


そして最終シーズンも終わりの方になると、主要メンバーが続々と死ぬ。結局生き返ったサイードも死ぬしジンもスンも死ぬ。ウィドモアだっていともあっさりとロックに殺される。一方、彼らはパラレル・ワールドではまだ生きている。パラレル・ワールドがあり、二つの世界が繋がっていると知っているのは、予知能力を持っており、ウィドモアの実験によってそのことをはっきりと知覚したデズモンドだけだ。


デズモンドはパラレル・ワールドで、かつての仲間たちを集結させようと奔走する。その意図は何か。一方でデズモンドは、ロックを亡き者にしようとも画策する。いずれにしてもデズモンドの存在が、島を滅ぼすにしても皆を助けるにしてもポイントになることだけは確かであり、その場所であるコンサート会場に皆、三々五々集まり始める。そしてその過程で彼らも気づく。我々はここにいる我々だけではないと。島の仲間たちもいたと。


二つの世界でラストに向かって話が加速していく最後の数話、特に最終回は、島で最後に何が起こるのか、ロックとジャックとの戦いの結末は、そしてパラレル・ワールドでのコンサート会場で待つものは? と非常に興奮させる。6年間の総決算だ。さらにこれまでに番組内で死んだ主要登場人物も顔を出す。ジュリエットもチャーリーもブーンも登場する。


ジュリエットを演じるエリザベス・ミッチェルは、現在ABCの「V」に主演中であり、同じくチャーリーを演じるドミニク・モナハンも、ABCの「フラッシュフォワード (FlashForward)」に準主演級で出演していた。ブーンを演じたイアン・ソマーホールダーは、今ではCWの「ザ・ヴァンパイア・ダイアリーズ (The Vampire Diaries)」で、こちらでは不死のヴァンパイアで若い女の子のアイドルだ。最終回だけの単発の特別出演とはいえ、そちらの新しいレギュラーの方の撮影もまだ終わっていなかったんじゃないかと思うが、最後ということで特別に顔を出した。最終回だなあ。他にもアナ・ルチアとかミスター・エコーとかベンの娘とかがいてもよかったのにと思ったが、スケジュールが合わなかったか出演を断られたか、あるいは単純に忘れられていたのかもしれない。


それでも、なんやかやで一応最後に話の辻褄を合わせた (合ったのか?) 力技はお見事。よくわからないなりに納得してしまった。デズモンドが光の大元を消し去ったことで島から謎の力が消え、ロックも不死身ではなく怪我をする人間化する。そのロックを倒したジャックもしかし、大怪我をする。最後の力を振り絞って再び光を点し、息も絶え絶えになるジャック。結局ジェイコブの後継者はジャックではなく、ハーリーで、ジャックはロックを滅ぼすためにそこにいたのだ。


ケイト、ソウヤー、マイルズ、リチャードらは無事飛行機に乗って島を脱出する。最後、彼らの乗る飛行機が頭上を通過していくのを見ながら、横たわったジャックは永遠の眠りにつく。パラレル・ワールドでは、ジャックが自分は死んだこと、あるいは死ぬ運命にあることに気づく。コンサート会場に来た者たちは、自分を見送るために集まってきてくれたのだ。思えば番組第一回、横たわったジャックが目を開けるシーンで始まった「ロスト」が、ジャックが同様に地面に横たわり、目を閉じるシーンで話が終わる。すべての環が繋がり、そして物語は閉じる。最後、思わず目頭が熱くなって横を見ると、そばで女房がぼろぼろ泣いていた。









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ロスト   ★★★1/2 (最終回)

 
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