Free Agents   フリー・エージェンツ

放送局: NBC

プレミア放送日: 9/14/2011 (Wed) 22:30-23:00

製作: ダーク・トーイ・アンド・ビッグ・トーク・プロダクションズ、ユニヴァーサルTV

製作総指揮: トッド・ホランド、キャリー・バーク

出演: ハンク・アゼリア (アレックス)、キャスリン・ハーン (ヘレン)、アンソニー・ヘッド (スティーヴン)、ナターシャ・レゲロ (エマ)、ジョー・ロー・トルグリオ (ウォルター)、アル・マドリガル (グレッグ)、モー・マンデル (ダン)


物語: アレックスとヘレンは同じ会社で働く同僚同士。アレックスは最近離婚したバツ一で、ヘレンは婚約者を事故で亡くしたばかり。共に寂しい思いを抱えていた二人はひょんなことからベッドを共にする。まずいとは思いつつも互いのぬくもりを必要としている二人は、またベッドを共にするのだった‥‥



Prime Suspect    プライム・サスペクト (第一容疑者)

放送局: NBC

プレミア放送日: 9/22/2011 (Thu) 22:00-23:00

製作:

製作総指揮:

原作: リンダ・ラプランテ

出演: マリア・ベロ (ジェイン・ティモニー)、エイダン・クイン (ケヴィン・スウィーニー)、カーク・アセヴェド (ルイシト・カルデロン)、ピーター・ゲアティ (デズモンド・ティモニー)、ティム・グリフィン (オーギー・ブランド)、デイモン・ガプトン (エヴラード・ヴェレリオ)、ブライアン・F・オバーン (レグ・ダフィ)、ケニー・ジョンソン (マット・ウェブ)


物語: NYPD殺人課に配属されてきたティモニーは、男性刑事ばかりが周りを取り囲む中でただ一人の女性刑事であり、しかもティモニーには過去によくない噂があるなど、職場で孤立し、ほとんど四面楚歌で職務を遂行しなければならなかった‥‥


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私はTV番組のリメイクには懐疑的だ。もちろん古典を何度も製作することには反対しないし、まったく新しい視点を持ち込んだり、新しい才能を発見できるならリメイクにも意義がある。過去の知られざる傑作をリメイクするなら大いに推奨するし、リメイクしないとこういう番組があることを知らせようがない海外番組という場合もある。


最近ではAMCが放送したデンマーク製番組のリメイク「ザ・キリング (The Killing)」や、FXがイライジャ・ウッド主演でリメイクしたオーストラリア番組「ウィルフレッド (Wilfred)」なんかは、リメイクがないとオリジナルを知りようがないので、これは擁護する。タレント発掘型のリアリティ・ショウの場合もまったく別番組になるので、リメイクの意味はある。


しかし単純に、他の場所でヒットしたからアメリカでもヒットするだろうという安易な考えで製作するリメイクには反対だ。特に最近の英国製番組のリメイクにこの弊害が多く、まずオリジナルに匹敵するリメイクができたためしがない。そのオリジナルを今現在アメリカで放送中なのに、リメイクが製作されたりするのだ。なんでこんなことをするのか意味がわからない。


そうやって製作されたリメイクが、ビジネスとして成功したためしもほとんどない。近年では唯一の例外がNBCの「ジ・オフィス (The Office)」だが、それだって失敗していないという程度の成績でしかなく、本来ならいつキャンセルされてもおかしくない。


そんなにアメリカではオリジナルを作る才能が枯渇しているのか。まったくそうは思わない。それなのに後から後からリメイクは製作される。最近ではリメイク製作は視聴者のためとか、いい番組を製作しようと思っているからではなく、業界人のために製作するのだなと思うようになった。


要するに、一応他の国で成功の実績があるために製作にGoサインの出しやすいリメイクは、業界人に仕事を回しやすい。そうじゃなかったら、成功率が1%もあると思えないリメイクがここまで頻繁に製作される理屈がわからない。こんな失敗する番組ばかり製作するプロデューサーやTV局幹部は、とっとと左遷されるだろう。


一方、「プライム・サスペクト」のリメイクは、微妙だ。まず、一応オリジナルが2006年に最終回を迎えてから、それなりの時が経っている。5年は物事を忘れるのに充分な時間だ。他方ヘレン・ミレンによる主人公ジェイン・テニソンの印象は強烈で忘れ難く、なかなか他の人間によるジェイン像を想像できない。ミレンで固まっているジェイン像の印象を、他の女優で壊してもらいたくないと思う。


しかし今回のリメイクでジェインを演じるのは (ジェイン・テニソンではなくジェイン・ティモニーという名になっているが)、マリア・ベロだ。これは正直言ってそそられるものがないわけではない。なんとなく見たい気にさせる。NBCの予告編を見ても、印象はミレンとは違うが、逆に独自のジェイン像を造型しているようで、気になる。


実際に見てみると、かなりオリジナルの「プライム・サスペクト」とは肌触りの異なる番組になっている。ミレン版はほとんどスーパーシリアスな、重厚とも言える番組だったが、ベロ版は、結構タッチが軽い。単に設定の枠組みを借りてきただけで、ほとんど別番組と言えるほど印象が違う。どちらかというとオリジナルの「プライム・サスペクト」よりは、TNTの「ザ・クローザー (The Closer)」の方に近いとすら言える。何も知らずに見たら、これが「プライム・サスペクト」とは気づかないだろう。


だったら、女性刑事の孤軍奮闘を描くオリジナルの番組を作った方がよかったのではないかと思ってしまうのだ。番組自体のできが悪いわけではないだけに、「プライム・サスペクト」という冠は、むしろ邪魔に感じる。つまり、今回のリメイクは、リメイクとしては成功しているとは言い難い。


「フリー・エージェンツ」の場合は、なんとNBCが番組をプレミア放送した直後に、BBCアメリカがオリジナル版をアメリカでも放送を始めた。こんなことって許されるのかとも思ったが、同一タイトル異番組が同時期に放送開始するという、アメリカにおいてもめったに見られない事態が発生した。これはちょっと、両方見てみるか。


まず驚かされたのが、リメイク版は少なくともプレミア・エピソードに関してはオリジナル脚本に手を入れずにそのまま番組を製作していることで、まったく同じ話だった。そりゃ新しく脚本を書かせる分の金は節約できるだろうが、しかし、本当にまったく同じ話を別の俳優が演じているだけだ。いくらリメイクとはいえ、これは手抜きと言わないか。


そしてここが問題なのだが、今回のリメイクにおいては、主人公のカップルをハンク・アゼリアとキャスリン・ハーンが演じているが、オリジナルを見た後だと、特にアゼリアはミスキャストだったと断ぜざるを得ない。オリジナルでは男性主人公のアレックスを演じているのは ショウタイムの「エピソーズ (Episodes)」のスティーヴン・マンガンで、剽軽なノリが持ち味だが、同じ役をアゼリアがやると、シリアス過ぎるのだ。ショウタイムの「ハフ (Huff)」のテイストをそのまま持ち込んでいるが、あのノリでオフィス・ラヴ・コメディはできない。ドラマになってしまって、これでは笑えない。


NBCは英国製番組、特にコメディをこれまでに何度もリメイクしているが、少なくともこの10年間で成功したのは、上に挙げた「オフィス」以外ない。「フリー・エージェンツ」は2、3話放送されただけで既に数字が稼げずキャンセルされてしまったし、「プライム・サスペクト」もNBCが何度も推して再放送を編成しているが成績はあまり芳しくなく、このままだと早晩打ち切りだろう。英国のプロダクション会社や放送局と太いパイプや契約もあるんだろうが、しかし機能しない悪習をこれ以上続けても意味がないと思う。








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フリー・エージェンツ   ★★

Prime Suspect

プライム・サスペクト (第一容疑者)   ★★1/2

 
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