Mission: Impossible - Ghost Protocol


ミッション: インポッシブル/ゴースト・プロトコル  (2012年1月)

モスクワの刑務所に囚人として潜入していたイーサン・ハント (トム・クルーズ) は脱出に成功し、IMFのベンジー (サイモン・ペッグ)、ジェイン (ポーラ・パットン) と共にクレムリンに潜入し、核を操る危険なテロリスト、ヘンドリクスの素性を探ろうとする。しかし先を読んだヘンドリクスによってクレムリンは半壊する大きな打撃を受け、イーサンは怪我をしただけでなく、ロシアから国家の敵として追われる羽目になる。アメリカはゴースト・プロトコルを発令してIMFを解散せざるを得なくなり、イーサンはIMFの情報解析担当のウィリアム・ブラントも仲間に引き入れ、ヘンドリクスを追ってドゥバイのブルジュ・カリファに潜入する‥‥


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問題はデイヴィッド・フィンチャーの「ドラゴン・タトゥーの女 (The Girl With The Dragon Tattoo)」だ。最近私は事ある毎に、アメリカのTV界は諸外国、特に英国の番組のリメイクばっかり作っていることに苦言を呈しているのだが、「ドラゴン・タトゥーの女」も、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のリメイクだ。


ただし今回はスウェーデン産映画のリメイクであり、英国産作品のリメイクとは少々事情が違う。登場人物が別の国の言葉を話し、背景がまったく異なる世界をリメイクするのは、それなりに意義のないことではない。


しかし、しかしだ。このオリジナル作品、アメリカ公開してからまだ1年半しか経っていない。リメイクの製作が発表になった時はまだオリジナルを公開中で、おっ、フィンチャーの演出でリメイクか、それはそれで面白そうだと思ったものだが、実際にその時が来てしまうと、まだオリジナルの印象が鮮明に記憶に残っており、たとえ誰が撮っていようとも、同じ作品をまた見る気になれない。


しかも予告編を見る限りでは、本当にオリジナルの話そのままのように見える。あれでは誰が撮って誰が出ていようとも、ほとんど説得力に欠ける。せめて、逆に暑い真夏のニュー・オーリンズのバイユー地帯を舞台にしてくれてたりしたら、まだこちらも食指の動かしようもあるのに。


さすがにフィンチャー演出なだけあって評価は悪くなく、実際に見た人の話を聞いても悪くなかったというのだが、いかんせん作品の規模、ネイム・ヴァリュー、宣伝攻勢の割りには興行収入が伸び悩んでいるのは、私と同じように感じる者が多いからだと思う。映画ファンなら、既にオリジナルを見ているのだ。宣伝と評判だけを聞くと、既に興行収入2億ドル突破という感じなのだが、実際には成績はまだ1億ドルに達しておらず、同時期公開の「ミッション・インポッシブル  ゴースト・プロトコル」の半分でしかない。関係者にとっては、期待値の割りには残念な結果でしかないだろう。たぶん採算が合わないだろうから、2作目の「火と戯れる女」が作られる可能性はあまりなさそうだ。


ついでに言うと、オリジナルでヒロインのリスベットを演じたノオミ・ラパスは、こちらも今公開中の「シャーロック・ホームズ: シャドウゲーム (Shirlock Holmes: A Game of Shadows)」に出ている。こっちも興行成績は「ゴースト・プロトコル」ととんとんくらいは稼いでおり、そのためいっそう、「ドラゴン・タトゥーの女」の苦戦が目立つ結果になっている。


そのリスベット役、今回は「ザ・ソーシャル・ネットワーク (The Social Network)」で、マーク・ザッカーバーグを振ったガール・フレンドに扮したルーニー・マラが演じている。そのマラ、こないだNBCの「トゥナイト (Tonight)」にゲストで呼ばれていて、そこで祖父がNFL創設に関係しており、ニューヨーク・ジャイアンツのオーナーの一人だと紹介されていた。


それで子供の頃にジャイアンツのゲームに連れられていったリしているのだが、まったくつまらなかったと、世にあまたいるNFLファンが耳を疑う、神をも怖れない発言をしていた。スーパーボウルを今週末に控えた今、世の中がどれほどアメリカン・フットボールの話題で満ちているか、どんなに人気があるか、正直言って「ドラゴン・タトゥーの女」はまったく霞んでいるのだが。どんなに人が羨む立場にいようとも、本人がそれに価値を見出せなければ、そこに意味はなくなるのだった。私が今回のリメイクに意義を見出せないように。


まあそんなわけで、今回は上述の「ミッション・インポッシブル  ゴースト・プロトコル」を見に行く。もうこのシリーズは作られないのかなと思っていただけに、ちょっと意外で嬉しい。近年、主演作がかつてのような華々しい成功を収めることが難しくなってきたという印象の強いトム・クルーズ、ここらへんで起死回生の一発をぜひとも期したかったのだろう。それにはやはり、「ミッション・インポッシブル」だ。


実はもう、J. J. エイブラムスが演出した前作「MI3」の細かいストーリーは覚えていない。香港、中国を舞台にしたアクションの部分部分や、イーサン・ハントの妻ジュリアを演じたミシェル・モナハンの初々しい印象はわりとよく覚えているのだが、せいぜいそれくらいだ。


しかし、1年半前の「ドラゴン・タトゥーの女」は結構よく覚えているのに、「MI3」はなんか、もう、ほとんど忘却の彼方だ。見たのってそんなに前だったけとチェックして、既に「MI3」から6年も経っていると知った時には驚いた。もう6年にもなるのか。そりゃ忘れるわ。


それでも、新作を見ているうちに前作も記憶の紐を手繰り寄せて思い出すもので、特に前半、ロシアの高官に扮してクレムリンに潜入するシーンで、そういえば、こうやって聖職者に変装してバチカンに潜入するというシーンが「MI3」にもあった、そうだそうだ、共演は今、CWの「ニキータ (Nikita)」で主演張っているマギーQと、その後ショウタイムの「ザ・チューダーズ (The Tudors)」で国王ヘンリー8世を演じたジョナサン・リス-マイヤーズに、ヴィング・レイムズ、敵役はフィリップ・シーモア・ホフマンだったと、次々に思い出した。一応私の頭もまだ錆びついてはいないようで、多少ほっとする。


しかしそんなことよりも、クルーズって変装はあまりうまくない! というか、あるいは本気で変装しようとは考えていないだろうという感を強くした。「ソルト (Salt)」で、アンジェリーナ・ジョリーがなにがなんでも男装しようとした切羽詰まったイチかバチかの決心は、クルーズからは感じられない。やっぱりクルーズは、どうしたってクルーズにしか見えないのだ。付け髭なんかしようとも、あんた、元の顔を知っている人間がいたら、完全にすぐばれるって。あるいは、だからこそのスターなのか。


なんて茶々を入れても、そういう些細な突っ込みどころなんか、ブルジュ・カリファの超高層でのアクションを筆頭とする、生身のアクションを見ると霞んでしまう。やはり一見の価値があるのだ。「ゴースト・プロトコル」が公開されるまでは、巷ではクルーズの時代はもう終わったか、なんて囁かされていたのに、いざ公開されると、そういう外野の口さがないおしゃべりはぴたりと止んだ。実際これを見たら、アクション・スターとしてのクルーズはまだまだAクラスと認めざるを得ない。正直言って、私も本当にクルーズのプロ根性に感心した。ブルジュ・カリファのアクションは、正真正銘現地で本人が身体を張って演じているそうだ。スクリーンの上で見ただけで、高所恐怖症気味の私としては腰が引けた。命綱があったとしても、私なら絶対イヤだ。


やはりこういうハリウッド・アクションは、定期的に見たいと思う。クルーズの「ミッション・インポッシブル」と、007、マット・デイモンのジェイソン・ボーンの3つのシリーズを交互に毎年1本ずつ見れれば申し分ない。3年に1本の新作なら、撮って撮れないことはないだろう。デイモンのボーン・シリーズはあれで一応打ち止めのようだったが、そんな事言わず、また新作を撮ってもらいたい。ハリウッドのことだ、一旦終了を決めても、それがビジネスになるという確信があるなら、だれかが名乗り出てくるに違いない。


そう思っていたら、実はボーン・シリーズは、デイモン扮したジェイソン・ボーンではなく、その周りの人間を描くシリーズとして既に製作中で、今夏公開、主演は「ゴースト・プロトコル」にも出ているジェレミー・レナー、脚本/演出はトニー・ギルロイだそうだ。うーむ、デイモンには悪いがこれもやはり面白そうだ。しかしアンクレジットでデイモンも一瞬顔を出しそうな気がする。









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