The Tonight Show with Jay Leno

ジェイ・レノがホストの「トゥナイト」プレミア・エピソード放送日: 5/25/1992 (Mon)

ジェイ・レノがホストの「トゥナイト」最終回放送日: 5/29/2009 (Fri) 23:35-0:35

ジェイ・レノがホストの新「トゥナイト」プレミア・エピソード放送日: 3/1/2010 (Mon) 23:35-0:35

製作: ビッグ・ドッグ・プロダクションズ、ユニヴァーサル・メディア・ステュディオス

ホスト: ジェイ・レノ

バンド・マスター: ケヴィン・ユーバンクス

アナウンサー: ジョン・メレンデス


内容: 再度「トゥナイト」ホストに就いたジェイ・レノによる新「トゥナイト」。


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まさか前回、ジェイ・レノがホストの「ザ・トゥナイト・ショウ」の最終回について書いてから、一年と経たないうちにまたレノによる「トゥナイト」について書く羽目になるとは夢にも思っていなかった。「ジェイ・レノ・ショウ (Jay Leno Show)」ではない。「トゥナイト」なのだ。


昨夏レノが「トゥナイト」を去り、代わってコナン・オブライエンが「トゥナイト」新ホストの座に就き、「ジェイ・レノ」が始まり、そして昨年末から年明けにかけて起こった近年の深夜トーク・ショウを巡るいざこざでも特大級の大波乱については、私も念入りに、微に入り細を穿って書いたから今さら繰り返すまでもない。


そしてレノもオブライエンも番組を去り、2月はNBCはヴァンクーヴァー冬季五輪を半月以上にわたって中継したから、その間、プライムタイムの平時番組はすべて放送はお休みとなった。既に「ジェイ・レノ」はなく、「トゥナイト」もすべて再放送となった。そして3月になり、レノが再度ホストの座に就いた新生「トゥナイト」が始まった。


レノによる新「トゥナイト」がある種のアンチ・クライマックスであるということは論を俟たない。本当は起こるはずのなかった事態なのだ。物事が悪い方へ悪い方へと回った挙げ句、なんとか事態を収拾しようとしたNBCによる、いわば次善の策であり、ABCの「ロスト (Lost)」ではないが、時間を遡ってせめて以前と同じ状態になれば御の字という、切羽詰まった行為の結果がレノによる「トゥナイト」の再ホスト就任なのだった。


そのため、今回の「トゥナイト」再開は、オブライエンが昨年「トゥナイト」ホストに就任した時とは雲泥という感じの、目立たないように、目立たないようにとわざわざ腰を低くして、スポットライトを避けて立ち回った感のある、非常にロウ・キーなものとなった。もちろんNBCは五輪中に新「トゥナイト」を宣伝はした。昨年、「ジェイ・レノ」が始まった時は、西海岸の海沿いの道を走るレノが運転するオープン・カーの車体につけられたナンバーが、秋から始まる番組の開始時間である「10」となっていたが、新コマーシャルではまったく同じ状況設定で、そのナンバーがはらりとめくれ、下から11:35という新時間が現れるという寸法になっていた。番宣はというとそれくらいしかなかったが、むろん、そんなことしなくとも今回は既に充分な注目を浴びていたし、その必要はほとんどなかったとも言える。


さて、その新「トゥナイト」のプレミア・エピソード、オープニングはモノクロの画面で部屋の中のベッドの上にレノが寝てうなされており、目を覚ますとそばにバンド・リーダーのケヴィン・ユーバンクスとインターンのロスがいる。夢を見ていたんだという「オズの魔法使い」のパロディで、そこへアナウンサーのジョン・メレンデスがやってきて、オレもその夢の中にいた? と訊くと、いや、あんたはいなかったとレノが言う。


そういえば、メレンデスは「ジェイ・レノ」ではアナウンスしていなかったんだっけ。「トゥナイト」ではいつもあまりにも当たり前にそこにいてコーヒー・カップを掲げるのを毎回目にしていたが、だからこそか、逆に「ジェイ・レノ」ではそこにいないことに気づかなかった。いったん職を失ったが、レノの「トゥナイト」再開によってまた職を得たスタッフの一人だ。少なくともレノの復帰を喜んでいるに違いない者が一人はここにいる。


そこに窓の外から現れたのがベティ・ホワイトで、先頃行われた「スーパー・ボウル (Super Bowl)」で、男どもと一緒にフットボールをするというスニッカーズのコマーシャルで話題を提供したことを受けての登場だろう。レノが寝ている小屋を見渡していわく、ちょっと坊やの様子を見にきたんだけど、これじゃ本当にNBCはショウの予算をケチったんだわねえと嘆息。これを受けてレノが、えっ、ショウだって? とはっとする。そしてまた懐かしのメレンデスのアナウンスと共に番組が始まるという趣向になっていた。


画面が変わってカメラがスタジオの中をとらえると、レノが登場、いくら派手になりすぎないよう留意しているとはいえ、そこは番組再開第1回、観客はスタンディング・オヴェイションでレノを迎える。それにしてもこのセット、「ジェイ・レノ」を撮っていたスタジオでセットをほぼそのまま流用している。ケチがついた「ジェイ・レノ」のスタジオではなく、昔の「トゥナイト」のスタジオに戻るかと思ったんだが、既にもうセットが取り壊されるかして残っていないのかもしれない。新しく建てたセットをムダにしたくもなかったんだろう。


オープニングのモノローグでは、サンキュー、ホストのジェイ・レノです、少なくともしばらくの間は、とひとくさり。ちょっとナーヴァスです、オプラとデイヴが見ているに違いないから、と最近の展開をネタに小さなジャブを飛ばした後、いつもの如くのモノローグで、実際の話、過去の「トゥナイト」、「ジェイ・レノ」から正直言って何も変わっていない。


とはいえ今回の「トゥナイト」には、視聴者が安心して見れる、過去にレノがやっていたのと同じ「トゥナイト」であることに意味があるから、この辺はほとんど確信犯的に旧態依然の「トゥナイト」を繰り返しているに違いない。ここで新しいことをやってレノの「トゥナイト」まで視聴率を落としてしまったら、ここまでごたごたを起こしてNBCがやってきたことがすべて水の泡だ。そのモノローグの中では、どのトーク・ショウでも最近必須のトヨタ・ネタで、キアヌ・リーヴスが今度は「スピード3」で止まらないトヨタに乗って爆走するという、日本人にはちょっと耳の痛いギャグが最も受けた。


コマーシャルの後の最初のコーナーでは、「ジェイ・レノ」で最も不評だったことの一つである、デスクのないゲストとのインタヴュウを廃し、またデスクを置くことになったために、レノが近辺の家を回っていいデスクがないかを探し求める。実際にレノがデスクの後ろに座ってゲストを呼ぶというシーンを再現すると、そこに現れたのは、「アメリカン・アイドル (American Idol)」ジャッジのランディ・ジャクソンだ。喜んだ家の者が、後ろでばしゃばしゃとジャクソンを背景に記念写真を撮っているのがおかしい。


ジャクソンはMTVで勝ち抜きダンス・リアリティの「アメリカズ・ベスト・ダンス・クルー (America’s Best Dance Crew)」をプロデュースしており、その第3シーズンの優勝グループ、クエスト・クルー (Quest Crew) までやってきて一瞬芸的ダンスを披露する。クエスト・クルーはほぼ全員FOXの「アメリカン・ダンス・アイドル (So You Think You Can Dance)」出場経験者で占められているチームで、ダンスというよりはアクロバットに近いが、しかしあれだけやれる奴らもめったにいない。


番組第1回の栄えあるゲストはジェイミ・フォックスで、フォックスはめでたい日ということで、控え室で聞こし召していたんだろう、レノのアナウンスでスタジオに現れた時から既にでき上がっており、ほとんど酔っ払い状態。ステージ上でも新しいシャンパンのコルクを抜き、観客に向けてシャンパン・シャワーした後ボトル一気、さらに新しいデスクの上に置かれたコーヒー・カップをひっくり返すなど無法化し、これにはレノも苦笑いだった。たぶんフォックスは、昨秋の「ジェイ・レノ」の最初のゲスト/パフォーマーとして呼ばれたカニエ・ウエストかジェイZ.にライヴァル意識を持っているんじゃないか。それで今回、最初のゲストとして招かれたことで舞い上がってしまったんじゃないかという気がする。


その次のゲストが、ヴァンクーヴァー五輪アルペン女子のダウンヒル金、スーパーG銅の2冠に輝いたリンジー・ヴォン。オリンピックが終わったばかりで、その中継をしたのがNBCということもあり、この週はアメリカ代表でメダルをとったアスリートが多く招かれた。音楽ゲストはブラッド・ペイズリーで、やはりカントリーは私の耳には何も響かない。


番組第2回のゲストは共和党元副大統領候補のサラ・ペイリンと、五輪ハーフ・パイプ金メダリストのショーン・ホワイト、音楽ゲストはアダム・ランバート、第3回ゲストはコメディアンのチェルシー・ハンドラー、五輪ショート・トラックのトリプル・メダリストのアポロ・アントン・オーノ、MTVの「ジャージー・ショア (Jersey Shore)」のキャスト、音楽ゲストがアヴリル・ラヴィーン、第4回ゲストがマシュウ・マコノヒーとNFLのブレット・ファーヴ、音楽ゲストがライフハウス、第5回がモーガン・フリーマンと「マイレージ、マイライフ (Up in the Air)」監督のジェイソン・ライトマン、音楽ゲストがロビン・シック。ファーヴはこれまでに何度も引退するといってはまた復帰して、今では本人が引退すると言っても誰も本気にしないが、レノにとってはファーヴをゲストとして迎えることには大きな意味があろう。


いずれにしてもこれだけのメンツをすぐに集められるのはさすがと言わざるを得ないが、しかし、レノ本人も言っていたが、アカデミー賞受賞俳優やグラミー賞受賞シンガー、オリンピック・メダリストという堂々たるメンツの中で、「ジャージー・ショア」のキャストという、格落ちというか、ゲテモノが入っている。このリアリティ・ショウは、ニュージャージーのジャージー・ショアという海岸沿いの町に集まる若者の生態をとらえたもので、登場する女の子がバーで男に素手の拳固で本気で殴られるというシーンが話題になったおかげで、一夜にして人気番組になってしまった。


要するにトラッシュ系のクズ番組の一つであり、レノとしても特に「ジャージー・ショア」キャストなんか呼びたくなかったろうと思うが、しかしおかげで彼等が今非常に注目されていることは事実で、話題性があるからというプロデューサーの意向には逆らえなかったというところだろう。人気商売のツラいところだ。


一方、気になるのは裏番組のデイヴィッド・レターマンの「レイト・ショウ (Late Show)」だ。今回のごたごたで最も漁夫の利を得たのは他ならぬレターマンであり、過去20年近くほとんど視聴率の上では負け続けていた「トゥナイト」相手に、ここへきて初めて連勝し始めたのだ。できれば今後もずっとこれを続けていたいだろう。そのレターマン、レノが復帰してきた3月1日の回のゲストはビル・マーレイ、音楽ゲストはルダクリス。第2回ゲストは著述業のミット・ロムニーにティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド (Alice in Wonderland)」主演のミア・ワシコウスカ、トップ・テン・コーナーを読み上げるスペシャル・ゲストは五輪フィギュア金メダリストのエヴァン・ライサチェク。音楽ゲストがなかったのはロムニーに話を訊きすぎたからか。


また、レターマンも当然トヨタ・ネタのジョークを連発、トヨタの社長が毎晩番組に来て謝罪するというランニング・ジョークをかました。むろん赤の他人がトヨタ社長になりすまし、日本語で、最初はしおらしく謝っているのが段々激昂してきて、後の方はレターマンに向かって、お前がいけないんだ、バカやろう、ハラキリ、ハラキリ、バンザイ、バンザイ、と叫んで帰っていくというシチュエイションを毎晩やっていた。日本人にとっては国辱もんのギャグだが、しかしあれは笑った。


一方で今回は特にレノに対する当てこすり的ジョークは控えめで、オープニングのモノローグで、うちの母はおかげで (レターマンの「レイト・ショウ」ではなく)、ジェイを見るかジミー・キメルを見るか迷っている、あるいは、ニューヨーク州知事のデイヴィッド・パターソンが選挙出馬を断念したというニューズを受けて、このこととジェイはまるで関係ないとしたジョークを挟んだだけだった。


実際、今では今回のごたごたはほぼ沈静化しており、その事態の収拾に最も大きく与って力のあったのが、誰あろうレターマンが手引きして製作したスーパー・ボウルのコマーシャルだ。アメリカ人にとって、ユーモアのあるなしは人柄を見る時の最も重要なポイントだったりするのだが、ああいう四面楚歌の状態で単身敵地のニューヨークに乗り込んで仇敵レターマンの番宣コマーシャルに出たレノは、これで大きく失地を挽回した。あれを見たアメリカ人の多くが、ふうん、レノもなかなかやるなと思ったのは間違いないところだろう。


それからしばらくして、今回の騒動を大きくするのに一役買ったキメルが、「レイト・ショウ」にゲストとして招かれた。キメルはそこでスーパー・ボウルのコマーシャルに触れ、オレたちがなんとかしてレノを溺れさせようとしているのに、あんたが助け舟を出したんだ、とレターマンを責めていた。確かにあれがなければ、いまだに視聴者のレノに対する心証は回復しないままだったに違いない。なんというか、溺れているレノに向かって最初石を投げておきながら、後で縄を投げて引き上げてやった、みたいな感じの今回のレターマンの行動であった。正直言うと、いかにもレターマンらしいという気がする。


さて、レノの「トゥナイト」は、従来ほどではないけれども、現時点ではやはりレターマンより上の視聴率を稼いでいる。とはいえ常にレターマンの2倍の視聴者を獲得していた以前ほど差があるわけではない。今回のごたごたでお互い足を引っ張り合う業界に嫌気が差したのか、バンド・リーダーのケヴィン・ユーバンクスも今すぐにではないが、番組を辞めることを明らかにしているなど、まだまだ将来は楽観できない。レノの本当の力が試されるのは、これからだと言える。








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ザ・トゥナイト・ショウ・ウィズ・ジェイ・レノ   ★★1/2

 
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