The Tonight Show with Jay Leno  ザ・トゥナイト・ショウ・ウィズ・ジェイ・レノ

放送局: NBC

「トゥナイト」プレミア放送日: 9/27/1954 (Mon)

ジェイ・レノがホストの「トゥナイト」プレミア・エピソード放送日: 5/25/1992 (Mon)

ジェイ・レノがホストの「トゥナイト」最終回放送日: 5/29/2009 (Fri) 23:35-0:35

製作: ビッグ・ドッグ・プロダクションズ、ユニヴァーサル・メディア・ステュディオス

ホスト: ジェイ・レノ

バンド・リーダー: ケヴィン・ユーバンクス


内容: ジェイ・レノがホストの「トゥナイト」の最終回。


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アメリカTV界最古参の長寿深夜トーク・ショウ「ザ・トゥナイト・ショウ (The Tonight Show)」は、1954年にスティーヴ・アレンのホストによって番組が始まって以来、1957年のジャック・パー、1962年のジョニー・カーソン、そして1992年のジェイ・レノの4人が常任ホストを務めてきた。なかでも62年から30年間にわたってホストを務めたカーソンが、レノが17年間ホストを務めてきた今でも、いまだに人々の記憶に残っていたりする「トゥナイト」の顔だ。


レノはカーソンの引退後、アメリカで最も歴史と伝統のある番組のホストという大任をこれまでそつなくこなしてきた。しかし、そのレノが最もあぶらが乗って、番組はあともう20年は安泰だと思われていた矢先、深夜トーク界に参入しようとしたABCがCBSの「レイト・ショウ (Late Show)」デイヴィッド・レターマンを引き抜こうとして起こしたごたごたによって、深夜トークを中心にアメリカTV界に激震が走った。


その時、最もわりを食ったのが誰あろうレノだ。ABCはレターマン獲得には失敗したものの、他ネットワークは、ABCは他にもまだ狙っているんじゃないかと疑心暗鬼になった。特にABCが食指を伸ばしそうな中堅番組やホスト、端的に言ってNBCの「レイト・ナイト (Late Night)」のホスト、コナン・オブライエンが目をつけられる可能性は非常に高いと、NBCは考えた。実際、それは大いにありそうなことに見えた。


そこでNBCが将来にわたってオブライエンを自社内にキープしておくべくとった方策が、2009年のレノの「トゥナイト」の引退、そしてオブライエンの新ホスト就任を約束するという途方もないものだった。というのも、オブライエンの「レイト・ナイト」は、1993年に番組が始まった当初はかなり不評だった。あまりにも不人気なので、さすがにNBCも一時は番組を諦めて、番組を年間契約ではなく一週毎に契約更新にして、これ以上不人気になったらすぐにでも切れるようにしたという話が残っているほど、面白くなかった。


それを、ネットワークとしてはめったにない我慢でここまで育ててきたのだ。やっと番組も一人前になったかなと思った時に、ABCに横からとんびにアブラゲとられるような事態になるのだけは、なんとしてでも食い止めたいと考えただろうというのは非常によくわかる。しかし、それがレノの引退を強制してまでも価値があることかというのは、少なくとも私には疑問に思えた。今でもまだそう思っている。


いずれにしても今年はその深夜トーク界改変期にあたり、既にオブライエンの「レイト・ナイト」は番組最終回を迎え、レノ後の「トゥナイト」を準備中であり、一方ジミー・ファロンを新ホストに迎えての「レイト・ナイト」が既に始まっている。ファロンの「レイト・ナイト」起用は、かなりポイント高いというのが私の意見だ。そしてレノがホストの「トゥナイト」の最終回は、5月29日に放送された。


オブライエンの「レイト・ナイト」の時もそうだったが、「トゥナイト」も最終週およびその前の週から、ほとんど番組は総集編というか回顧特集みたいな感じになった。「レイト・ナイト」と異なり、「トゥナイト」には人気のあるコーナーがそれこそ山のようにあるし、その選別には困らないというか、ありすぎて困るくらいだろう。「トゥナイト」といえば、たぶん誰でも最初に連想するのは、レノが街に出て道行く人たちにクイズを出題し、カン違いにーちゃんねーちゃんたちのとんちんかんな答えを楽しむ「ジェイ・ウォーク (J Walk)」だろう。


全米の新聞雑誌、広告のミス・プリントやピントの外れ具合を楽しむ「ヘッドラインズ (Headlines)」も人気があるし、各種動物の紹介コーナーは今では「レイト・ショウ」もよくやっている。時事ネタだから今ではやっていないが、かつてO. J. シンプソン事件裁判の時に判事を務めたイトー裁判官を真似たアジア人が揃ってあの黒いマントのようなものを羽織って踊った「ダンシング・イトーズ (Dancing Itos)」なんかも印象に残っている。


私は特にオブライエンの「レイト・ナイト」を見ていたわけではないので、オブライエンの回顧特集の時のクリップはほとんどが初見で楽しめたのだが、こうやって「トゥナイト」が回顧特集をすると、かなりのクリップは既に見ており、覚えていて自分でも驚いた。というのも、「トゥナイト」は裏番組にCBSのレターマンがホストの「レイト・ショウ」が編成されている。私は両者とも結構面白いと思っているが、それとは別に、その直前に編成されている11時からの夜のニューズは、実はCBSのニューズを見ることの方が多い。


これはかつて、この時間帯のアンカーではCBSのアーニー・アナストスが最もいいと思っていたからだが、その彼も今ではFOXの10時のニューズに移ってしまった。ローカル・ニューズ・アンカーでは最も信頼できると思っていたアナストスだが、ネットワークとしては2流のFOXに移ったとたん、ちょっと浮かれ気味になってしまったように見えるのはなぜなんだろう。


いずれにしても、それでも現在でもCBSのニューズを見ることの方が多いのは、これも今ではほとんど見れなくなったがデイナ・タイラー、代わって今はクリスティン・ジョンソンといった美形アナがいるせいもある。老人用ネットワークとして陰口を叩かれることが多いCBSだが、ローカル・ニューズに限ると、最も若いアンカーを揃えているのだ。NBCのチャック・スカーボローとスー・シモンズの黄金コンビの味も捨て難いが、やはりなんとなくCBSのニューズの方を見る時の方が多い。そうすると、自然その後の深夜トークは、特にゲストに気になる人物が呼ばれているのでもない限り、チャンネルは換えずにそのまま見ていたりする。つまり、自然レターマンの「レイト・ショウ」を見ることの方が多いのだ。


一方、毎夜放送の深夜トークとはいえ、本当に毎日はやっていられない。ホストも時には休むしヴァケイションをとったりもする。そういう時は当然番組は再放送になる。結構彼らは休みをとることが多く、感じとしてはだいたい全放送の3分の1は再放送という印象がある。いずれにしても一度見たエピソードをまた見る気にはなれず、そういう時は当然チャンネルを換える。「レイト・ショウ」が再放送なら「トゥナイト」を見るし、「トゥナイト」が再放送なら「レイト・ショウ」に切り換える。だから、基本的に「レイト・ショウ」を見ていることの方が多いとはいえ、そういう理由でかなりの部分「トゥナイト」も押さえている。均せばだいたい「レイト・ショウ」が8割、「トゥナイト」の6割くらいは見ている計算になるんじゃないかと思う。だから「トゥナイト」の回顧クリップもほとんどが見覚えがあったわけだ。


いずれにしても、「レイト・ナイト」の時よりも「トゥナイト」が終わる時の方が注目されたのは当然で、最後の週にはかなりの媒体で、レノの「トゥナイト」で印象に残ったゲストのベスト・テンのカウント・ダウンみたいなものをやっていた。だいたいどの媒体も、LAで買春容疑で逮捕された後、初めて人前に姿を現してレノの質問に答えたヒュー・グラント、カリフォルニア州知事への立候補を番組内で明らかにしたアーノルド・シュワルツネッガー、番組出演中にNFLのジェイソン・シホーンからプロポーズされたアンジー・ハーモン、そして最近では現役の大統領としてゲスト出演したバラク・オバマのエピソード等を選んでいたが、確かに言われると、それらのエピソードをまだヴィヴィッドに思い出すことができる。こういうのは「レイト・ナイト」では無理だったろう。


そして番組の最後の週のゲストは、月曜がメル・ギブソン、火曜がシュワルツネッガー、水曜ワンダ・サイクス、木曜ビリー・クリスタル、そして最後の金曜のゲストはオブライエンだった。この中で日本人にはたぶんサイクスだけはそれほど知られていないだろうと思えるから説明すると、声の甲高い黒人女性コメディアンで、かつて自分のシットコムを持っていたこともあるし、今秋からはFOXが投入する新深夜トークでホストを務めることが決まっている。


ここで最終回のメイン・ゲストにオブライエンを持ってくるところが、いかにもレノらしいと思う。かれこれ17年前、レノが新「トゥナイト」ホストに就任した時、レノとレターマンとの間で誰がカーソンの衣鉢を継ぐかでつば迫り合いがあったのは有名な話で、切望していた「トゥナイト」ホストの道を断たれたレターマンはNBCからCBSに移り、そこで「レイト・ショウ」をスタートさせた。


それまでは仲がいいとまでは言えなくとも少なくとも疎遠ではなかった二人の間柄が、以降犬猿になったのも事実で、自分が筆頭候補と信じて疑っていなかったレターマンもショックだったろうが、レノも心の傷を負ったことは間違いない。7年前に今度は自分がないがしろにされて「トゥナイト」の後任を勝手に決められた時、レノがごねずにすんなりそれを了承したのも、ここでまた揉めて嫌な思い出を再現したくなかったからだろう。


今回最終回のゲストにオブライエンを持ってきたのも、NBCの依頼などではまったくなく、別にオレはあんたに何の含みも持っていないよ、頑張ってくれというレノ流の気配りに違いない。因みにオブライエンは、「レイト・ショウ」の最終回は自分の総集編と挨拶を述べることだけに忙しくて、後任のファロンをスタジオに呼んで話を聞いたりプロモートしたりするなんてことまではまったく頭が回らなかった。この辺もレノのヴェテランの味という感じがする。


ただし公平を期すると、オブライエンがファロンのことをまったく気にかけていなかったわけではなく、オブライエンの「レイト・ナイト」が最終回を迎える数週間前にはちゃんとファロンをゲストに呼んでいたし、ファロンの「レイト・ナイト」が始まる時も、ちゃんとオープニングに登場してギャグをかましていた。しかし最後の最後まで気配りする余裕はなかったということだろう。


一方、レノにしたってやはり自分はないがしろにされて番組を降ろされたという気持ちがまったくないわけではなく、最終回が近くなってくると、際どいジョークで受けなかったりする場合があると、いーんだよ、どうせもう番組は終わりだから、番組に苦情を言っても来週にはオレはもういないもんねと言って逆受けするシーンとかもあった。やはり100%気にするなという方が無理だろう。


因みに音楽ゲストの方は、月曜から順にライル・ロヴェット、ドワイト・ヨーカム、サラ・マクラクラン、プリンス、そして最後はジェイムズ・テイラーが出てきて歌った。プリンスだけがなんか浮いているような気がしないでもないが、この辺がレノのテイストなんだろう。カントリーをほとんど受け付けない私には、残念ながら実はこの辺の人選は、マクラクランとプリンス以外は特に印象に残らなかった。


番組ではオープニングでレノが登場する時は毎回観客の拍手で迎えるのだが、特に最終回はこれで終わりということもあって、スタジオの最後尾の列まで総立ちになっての満場のスタンディング・オヴェイションでレノを迎えた。「レイト・ナイト」も最後は盛り上がったが、それはいかにも最後のイヴェントだから盛り上がろうぜ、みたいな若者特有の血気にはやるような雰囲気だった。


「トゥナイト」の場合は、これまでのレノの貢献を称えねぎらうみたいな、騒ぎ立てるだけではない親密な拍手が鳴り止まず、レノが、これじゃ番組が始められないと止めさせる一幕もあった。私が思い出したのは3年前のアンドレ・アガシのUSオープンでの引退試合で、あの時も満員のスタジアムの観客のスタンディング・オヴェイションが鳴り止まず、感動的だったが、それと似たようなものを感じさせた。アガシといいレノといい、本人たちの人徳なんだろうと思う。


そして番組の本当の最後の最後は、番組が始まってこの17年間で、こんなに変わったものがありますと言って、その間に生まれたスタッフの面々の子供たちを何十人もスタジオに呼んで整列させ、その前でレノが横になるというシーンで終わった。番組が始まった時にはこの世にいなかった関係者が、今ではこんなにいますという演出は、なるほど百聞は一見に如かずで、これだけの子供たちが生まれてここまで成長したのかと思わせるのに充分で、時間の歩みを意識させてくれた。


「レイト・ナイト」の最終回では、オブライエンは最後、不必要と思える挨拶を長々とやっていたが、ほとんど挨拶なしで関係者を並べてさっさと終わったレノの方がいかにもヴェテランという感じがした。そうそう、カーソンの時もその他のヴェテランのニューズ・アンカーたちも、そうやってあっ気ないくらいで番組の最終回を終えたんだよ、だからこそよけいプロだと意識させられたんだよと思わせられたのを思い出した。


うちの女房は特に夜更かしをしないので私のように深夜トークをよく見ているわけではないが、さすがにこの時期、およびオブライエンの「レイト・ナイト」が終わった時とファロンの「レイト・ナイト」が始まった時は、私に付き合ってよくこれらの番組を見ていた。その彼女がレノの「トゥナイト」の最終回を見て、やっぱりレノの方が一枚上手ねと言っていた。まったく同感だ。


さて、「トゥナイト」後のレノの進退だが、当初、様々な憶測が流れた。レノがオブライエンに対して含みはないと暗にアピールしていたとはいえ、やはりNBCには多少の遺恨はある。それでレノは「トゥナイト」後はケーブル・チャンネルで新しく自分の番組を持つだろうと噂されていた。既にコメディ・セントラルやブラヴォーとネゴしているという話も伝わってきた。さらにレノ自身が、今後どこで働こうともそれはNBCではないことだけは確かと明言していたこともあり、ケーブル・チャンネルのいずれかでトーク・ショウのホストに就くことはほぼ間違いだろうと見られていた。


それが昨年末、NBCが深夜枠どころかプライムタイムの10時台に毎夜放送のトーク・ショウを設け、それにレノをホストに据えるといういきなりの電撃発表があった。まったく青天の霹靂で、レノはもうNBCでは働かないんじゃなかったのかと驚いたのは私だけではあるまい。要するにレノのそういう気持ちを覆すほどのかなりおいしい話だったわけで、実際の話、天下のネットワークでプライムタイムに毎夜編成されるトーク・ショウのホストというのは、ホスト業を生業にしている人間にとってこれ以上おいしい話はあるまい。最初ないがしろにされたように見えたレノだったが、最終的に最もおいしい実をとったのはレノだった。


現在、秋から始まるそのレノの新番組「ザ・ジェイ・レノ・ショウ (The Jay Leno Show)」の番宣コマーシャルは、今NBCの番組を見ていると、これでもかというくらいしつこいくらいばんばん流されている。たぶん今秋から始まる新番組の中でも、最も番宣頻度が高い番組だろう。NBCも推しているのだ。果たしてレノが今秋10時台から番組を始めることによって、それが11時半からの深夜トークにどういう影響を及ぼすのか、あるいは及ぼさないのか。アメリカの深夜トーク界改編はまだまだ予断を許さない。








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ザ・トゥナイト・ショウ・ウィズ・ジェイ・レノ   ★★★

 
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