(前項から続く)


この日の「トゥナイト」は最終回ということがすでに確定していたために、スタジオ内の観客もスタンディング・オヴェイションでオブライエンを迎える。拍手が鳴り止まないためにオブライエンも番組を進められず、自分の腕時計を示して時間がないぞと聴衆に注意を促す。冒頭のモノローグでは、かつてHBOがレノとレターマンとの確執をネタにTV映画を製作したことを念頭に、将来この顛末を元にまたTV映画を製作するようなことがあったら、自分の役はティルダ・スウィントンにやってもらいたいと言って笑いを誘う。二人の写真を並べると、確かにわりと似ている。本気でスウィントンがやってやれないことはないかもしれない。


オブライエンがデスクに落ち着いてから最初に出てきたゲストは、スティーヴ・キャレル。キャレルはNBC社員で、最後にNBCを去るオブライエンにインタヴュウしてクビを宣告するという役どころで、もちろん同じくNBCのコメディ「ジ・オフィス (The Office)」での自分の役柄と、現在上映中の映画「マイレージ、マイライフ (Up in the Air)」で、ジョージ・クルーニー演じる、人にクビを宣告することを職業としている主人公の真似をかけている。


キャレルは、「NBCを辞める理由は?」とか、「NBCでの経験はポジティヴなことだったか、(1) ポジティヴ、(2) かなりポジティヴ、(3) 非常にポジティヴ、から選べ」、とか、「将来またNBCで働く気はあるか」、等の答えにくい質問をした後、オブライエンにNBCの社員証の返却を要求、それをその場でシュレッダーにかけた。きついねえ。


次のメインのゲストがハンクスで、ハンクスはオブライエンが「トゥナイト」を引き継いだ時の、最初の、ではなく2日目のゲストで、その時、オレは一番最初のゲストじゃなかったからなとごねていた。そして今回、最後の日のゲストとして再度招かれたわけだが、本当に最後の最後のゲストは、番組第1回の最初の日のゲストでもあったウィル・フェレルが最後にまた出てきて歌ったので、やはりトリを飾ったゲストとは言えないか。


音楽ゲストは御大ニール・ヤングで、ギター一本で「ロング・メイ・ユー・ラン (Long May You Run)」を歌う。ヤングはこの日プライムタイムに全ネットワーク生中継された、ハイチ地震支援のベネフィット・パフォーマンス「ホープ・フォー・ハイチ・ナウ (Hope for Haiti Now: A Global Benefit for Earthquake Relief)」にも出てデイヴ・マシュウズと一緒に歌っていた。たぶん最近ではめったに人前に出てこないヤングが、「ホープ・フォー・ハイチ・ナウ」のためにめずらしくもLAに来ているということで、それではと「トゥナイト」にも急遽出演を要請して、了解を得たんじゃないか。順番で言うとこの日まず「トゥナイト」に出て、それから「ホープ・フォー・ハイチ・ナウ」のパフォーマンスをするスタジオに移動したんだろう。


ついでに言うと、ヤングはこのほどヴァンクーヴァーで開催された冬季五輪のクロージング・セレモニーにも出てきて、また「ロング・メイ・ユー・ラン」を歌っていた。彼はカナダ人だったのか。知らなかった。さらに、NBCが中継した五輪のアンカーは後述のボブ・コスタスで、彼は「ジェイ・レノ」の最終回の最後のヴィデオ・ゲストだった。みんな繋がっている。


閑話休題。オブライエンはそれから最後の挨拶を述べ、NBCに含むところはない、「トゥナイト」は最高の仕事だったと述懐し、そして最後の、フェレルをメイン・ヴォーカルに据えたレイナード・スキナードの「フリー・バード (Free Bird)」演奏へとなだれ込む。しかもこの即席バンド、よく見ると手前でスライド・ギターを弾いているのはベン・ハーパーだし、向かって右端に立ってギターを弾いているのはベックだ。ということは、もしかしてこの髭もじゃの男は本物のZZトップの一員か。彼らは一見しただけでは見分けがつかんからわからんわ。


ドラムスは当然マックス・ワインバーグが叩いており、さらにオブライエン自身もバンドに加わってギターを弾く。さりげなく超豪華なバンドだ。そしてフェレルの衣装は昨年のウッドストック40周年の印象を引きずっている60年代風、しかも先ほどの音楽ゲストがヤング、最後に歌うのが「フリー・バード」と来ては、60年代へのタイム・スリップみたいな印象が濃厚の幕切れとなった。因みにフェレルのそばで大きなお腹を抱えているのは本当のフェレルの妻のヴィヴェカで、翌日、無事男の子を出産したそうだ。臨月で出てたんですか。アクセルと名づけられたそうだが、コナンと命名すべきではなかったか。


ところでオブライエンは、最後の挨拶ではNBCに対してはむしろ感謝すらしているみたいなことを言いながら、ついに最後までレノのレの字も言わずに終わった。今回のレノの言動がよほど腹に据えかねたんだろう。レノの「トゥナイト」では最後のゲストとして登場し、自分の「レイト・ナイト」の最終回では、レノに大きな感謝を捧げていたのとは大きな違いだ。たった半年の間で情勢は大きく変わった。新しくできた縁もあれば壊れる友情もある。


「トゥナイト」の後は「レイト・ナイト」が始まるわけだが、この日の「レイト・ナイト」は、ホストのジミー・ファロンがロックフェラー・センターのNBCスタジオの前に立ち、これがコナンがニューヨークで「レイト・ナイト」を撮っていたスタジオですと紹介、その後自分のスタジオに戻ると、そこで待っていたバンドのルーツと共に、ボーイズ2メンの「イッツ・ソー・ハード・トゥ・セイ・グッバイ・トゥ・イエスタデイ (It’s So Hard to Say Goodbye to Yesterday)」をアカペラで歌い出したのは笑った。ファロンは時々なかなかお洒落なことをやる。


オブライエンの「トゥナイト」が終わった後は、さすがに深夜トーク・ショウ界での罵り合いは沈静化した。元々レノは防戦的に不承不承この騒ぎに巻き込まれていただけだし、レターマンは特にオブライエンに文句があるわけではない。それに、この後誰がどんなにオブライエンをおちょくっても、彼には既に言い返す手段はない。それなのにオブライエンをネタにギャグを飛ばしても、言った方が卑怯と思われるだけなのがオチだろう。それくらいは誰だってわかっている。


オブライエンはこの後、9月まではどのチャンネルにおいても新しく自分の番組を持つことを契約で禁じられた。それだけでなく、元の雇い主であるNBCの悪口を言うことも禁じられた。さらに、彼の番組でのお馴染みのコーナーである「イン・ジ・イヤー3000」だとか、キャラクターのマスタベイティング・ベア等は、NBCに知的所有権があるとして、オブライエンが今後それらを使うことも禁じられた。正直言ってこれは嬉しい。「イン・ジ・イヤー3000」は、私がオブライエンの「トゥナイト」で最も面白くないコーナーの一つだと思っていたので、これがこの世から消滅してくれることは嬉しい限りだ。


一方、レノの「ジェイ・レノ」の最終回は2月9日に放送が予定されていた。NBCは2月12日からヴァンクーヴァー冬季五輪の中継に入り、ほぼ2週間強、プライムタイムの編成はすべて五輪中継が占める。そのためその前に区切りをつけ、五輪が終わった3月1日からまたレノがホストの新々生「トゥナイト」を始めるという腹だ。五輪中継中に新「トゥナイト」の宣伝も行える。


レノはそれに先立って、1月28日に昼のトークの女王、オプラ・ウィンフリーがホストの「ジ・オプラ・ウィンフリー・ショウ (The Oprah Winfrey Show)」に出て、釈明を試みた。レノが出たいと言ったのではなく、ウィンフリー側からオファーがあったので渡りに船という感じだったのだと思う。この日の「オプラ」は1時間丸々レノへのインタヴュウで費やした。シカゴのウィンフリーがLAまで出向き、「ジェイ・レノ」を収録するスタジオでレノにインタヴュウした。ウィンフリーは、それで、ああいう事態になってもNBCを去る気にはならなかったのかと訊いたが、レノはそれには否と答えていた。いずれにしても特に新しい事実が明るみに出されたというようなことはなく、ただレノの現在の心境を聞かされただけというような印象に終始した。


その一方で意外な反応もあった。前掲でも述べたが、キメルは「ジェイ・レノ」の「テン・アット・テン」コーナーに中継で出演し、レノの質問に答え、そこでかなりレノにきつい意見を口にした。これはレノには結構堪えたはずで、レノはこれを「反則技 (Sucker punch)」だったとして、その気になれば放送からカットすることもできたけど、敢えて放送したとウィンフリーに述べた。レノ流のフェア・プレイのつもりだったんだろう。


これに対し、キメルがまた異常に過剰反応した。反則技だって、あんなの反則技とは言わない、と、「テン・アット・テン」の裏側を暴露していた。「テン・アット・テン」はまず、インタヴュウイーに前もって20問程度の質問を事前に渡してあり、本番ではレノがそのうちから10問質問するということになっているそうだ。こういう時でもあり、キメルとしては当然今回のごたごたに関連した質問に意見を述べるという気持ちでいたそうだが、意外にも予定されていたのは見事なまでにその話とは無関係な質問ばかりで、キメルはそこで即興で強引に話をレノ-オブライエン問題に持っていった。キメル曰く、そこで何もしないで逃げに回り、オプラとのインタヴュウで自分を悪者にしたことこそ反則。


さらにキメルは、レノに対し、彼も昔はコメディアンだった時もあったのにと、完全にレノをコケにした。彼らの関係もこれで終わりだろう。正直言って、なんで他人ん家のお家騒動にまったく赤の他人のキメルがそこまで口出ししたがるかは不明だが、しかしこの話は面白かった。しかし、あんた、ほどほどにしておかないと業界内でけむたがれる存在になるかもよ。


そして今回のお家騒動の最大のツイストは、2月7日に起こった。この日、アメリカではTVで年間で最大の視聴率を獲得するNFLの優勝決定戦「スーパー・ボウル (Super Bowl)」があった。「スーパー・ボウル」は毎年ネットワークが持ち回りで中継しており、今年はCBSの番に当たっていた。当然中継するネットワークは自社番組の宣伝も大量に行う。


私は特にNFLファンではないので、毎年「スーパー・ボウル」は大物シンガーがパフォーマンスを行うハーフ・タイム・ショウ以降からしか見ない。というか、基本的に興味があるのはハーフ・タイム・ショウだけなので、普通はそれしか見ない。それで今回も、今年はザ・フーがやることになっているハーフ・タイム・ショウを見るために、8時半頃TVをつけてチャンネルをCBSに合わせたら、その瞬間にちょうどショウが終わってコマーシャルになった。しまった、ショウは8時半ではなく、8時頃から始まったようだ。計算を間違えた、と思っても後の祭りである。


いずれにしても、「スーパー・ボウル」の裏番組は再放送ばかりで、特に見るものはない。それでしょうがないからチャンネルを替えることもなくそのまま点けっぱなしにしていた。そしたらCBSで放送されている、レターマンの「レイト・ショウ」の番宣が始まった。レターマンがTVでスーパー・ボウルを見ているというシチュエイションで、これは今までで最低のスーパー・ボウル・パーティだと愚痴り、それを横でこれこれとなだめているのがウィンフリーだ。さらにカメラがウィンフリーの向かって左側を映すとレノがいて、彼が愚痴っているのはオレがここにいるからだよ、とこちらも愚痴る。レターマンがさらにその物真似をしてウィンフリーがもう、これこれと諦め顔になるという、15秒のコマーシャルだった。


現在渦中の二人、およびウィンフリーという超有名人が顔を揃えたこのコマーシャル、これを見て私がどう思ったか。何も思わなかった。この3人が顔を揃えることなどあり得ない。よくできたCG合成だ。こちらは既に「アバター (Avatar)」を見ているんだ、これくらいでは驚かんね。あるいはよく似た人間を連れてきたか。しかしレターマン、本人たちの許可はとったのかね、いくらなんでも無断でこれやるとまた問題になるんじゃないの、くらいにしか思わなかった。ほとんど悪趣味に近い。ま、レターマンらしいといえばレターマンらしいか。


このコマーシャルの本当の意義がわかったのは翌日、出社していつものように業界ニューズを集め始めてからだ。そしたら、TVの視聴率記録を打ち立てた今回の「スーパー・ボウル」よりも印象としては大きな扱いで、このレターマン-ウィンフリー-レノのコマーシャルの話が大きく採り上げられており、いったいどうやってこのコマーシャルが実現したかという話が、どの業界ニューズでも大きく記事になっている。なんてこった! あれ、本物のレターマンとウィンフリーとレノだったのか! よりにもよってレターマンとレノが同じ屋根の下で、しかも「レイト・ショウ」の番宣コマーシャルを撮っただなんて! 本当にそんなことがあり得るのか!? いったい今回のごたごたでレターマンがどのくらいレノをコケにしたか、彼らは本当にわかっているのか。


実はこのコマーシャル、CBS内部でもほとんど極秘で話が進められ、事前に知っていた人間は本当に一部の関係者以外、ほとんどいなかったそうだ。最初にアイディアを出したのはレターマンで、ウィンフリーとレノに打診、両者とも面白いじゃないかと快諾したそうである。ウィンフリーもレノもお忍びで人目を避けてNY入りし、撮影はレターマンの「レイト・ショウ」が終わった直後のブロードウェイのエド・サリヴァン・シアターの片隅に、急遽セットを組んで行われた。レノの場合はLAから社機でNY入りし、変装して劇場入りしたそうだ。その日の「ジェイ・レノ」の収録はキャンセルされた。


撮影はさくさくと1時間程度で無事終わり、レターマンとレノは「プロフェッショナルらしく」仕事を進め、二言三言挨拶を交わし、握手をして別れたそうだ。レノはそのことを月曜の「ジェイ・レノ」で、旧友とまた以前のように親交を深めるのはいいものだとさりげなく話していた。とはいえレターマンとレノがレノの言うように、昔のことを水に流してまた一緒に仕事をする関係に戻ったとは到底思えない。彼らの間の溝はこんなに簡単に埋まるものではないだろう。しかし、それでも、それが面白いことなら自分たちの個人的な感情を抜きにして、お互いに仕事のことを第一に考え行動するという点は、まったく大人だと思う。あるいはレノには、悪者のイメージを緩和するという目的もあったかもしれない。


いずれにしてもレノだって、それが面白いとは思っても、親分のNBCがそれはダメだと言えば出演は諦めざるを得ない。しかしレターマンどころかレノからも散々バカにされているNBC幹部も、別に反対しなかったそうだ。みんな大人だ。惜しむらくは、ここにオブライエンがいたらと思う。当然レターマンはそれも考えた。しかし出演のオファーに対して電話は返ってこなかったそうだ。ウィンフリーの「オプラ」も、レノだけではなく、オブライエンに対してもインタヴュウの申し込みを行ったそうだが、断られたという。こういう当事者の反応を聞いていると、オブライエンはまだケツが青いと思わざるを得ない。ここでレターマンとウィンフリーとレノの間に挟まれてギャグの一発でもかますことができれば本物なのに。


そして火曜の「ジェイ・レノ」は、当然これが最終回であることを観客も知っており、オープニングではオブライエンの「トゥナイト」同様、こちらも拍手が鳴り止まない。今回の騒ぎではレノは悪役という印象が強いが、それでもサポートする者も大勢いる。冒頭のモノローグでは、この5か月間で最も変わったことは? ハイジ・モンタグの顔、というギャグが最も受けた。


モンタグはMTVの「ザ・ヒルズ (The Hills)」で出てきたパーソナリティで、整形が趣味、中毒しているといって憚らない人物だ。旦那のスペンサー・プラットとペアで、現在アメリカ芸能界の低脳セレブリティの称号を、同じくMTVの「ジャージー・ショア (Jersey Shore)」の出演者と二分している。冬季五輪直前ということもあり、それに因んだギャグでは、ボブスレイではトヨタ製スレイが (止まらなくて) やばい、みたいなトヨタ絡みのギャグをいくつか。トヨタは本当に頭が痛い。立ち直れるのか。


番組ゲストはアシュトン・クッチャーとガボレイ・シディベ。クッチャーは新しく公開される「バレンタインデー (Valentine’s Day)」のプロモーション、シディベも主演の「プレシャス (Precious)」のプロモーションだろう。クッチャーはかつてフットボールをしていたこともあるということで、番組にはNFLを引退したばかりの、名QBとして鳴らしたカート・ワーナーが登場、クッチャーに風を吹きかけたり雨を降らせたり紙吹雪を吹きかけたりする中を、ワーナーが出すバスをキャッチさせていた。


シディベの「プレシャス」の方は既に公開されて久しいが、先週のオスカー・ノミニー発表で主演女優賞にノミネートされたことを受けての登場に違いない。映画では継母役のモニークから徹底して虐待を受けるのに、ここではにこにことボーイ・フレンドの話をしていた。


そして最後は「テン・アット・テン」のコーナーに、NBCが中継する冬季五輪のアンカーを任されている、スポーツ・アナウンサーのボブ・コスタスが登場した。その中の、これまでにゲストを怒らせて、以来口を利かなくなったということはあるかという質問に対し、コスタスはかつてNFLのマーシャル・フォークを怒らせたことがあるが、彼の引退セレモニーではMCを頼まれたという逸話を話し、レノとレターマンもいつかは仲直りできるだろうとコメントしていた。あり得るだろうか。


そして最後の質問は、言いたいことがあればどうぞというものだった。それに対するコスタスの答えは、”That’s what it is”。 まあそういうもんだよ、とでも訳せるか。よく日常的に使われるフレーズであり、一部異なるがこのフレーズが現在あるようによく使われるのは、かつてのCBS名アンカー、ウォルター・クロンカイトが、ニューズ解説の締めくくりとして使用した、”That’s the way it is” に由来すると考えて間違いないだろう。なんてったって、コスタスがクロンカイトの影響を受けてないわけがない。That’s what it is… そして「ジェイ・レノ」もその短かった放送を締め括った。


最終回には音楽ゲストはなかった。もしかしたら本当はいたのかもしれないが、番組が押したために放送がカットされたのかもしれない。番組最終回ということに因んだ挨拶もなく、総じてロウ・キーという印象に終始した。むろん今回は自分たちが悪役ということをわかっているから、最初からあまり大仰にならないように意図していたこともあるに違いない。


今回の騒動はこれでひとまず区切りがつき、3月から放送の始まるレノの「トゥナイト」によって、またアメリカ深夜トーク界の歴史に新たな一ページが刻まれることになる。それにしても、第三者としてはこの騒動、非常に楽しませてもらったのだが、本人たちのストレスや苦痛はいかばかりであったろうか。


公平に言うと、今回のごたごたで明確な悪者はいない。一応それなりに各人がベストを尽くしたと言える。確かにオブライエンの「トゥナイト」もレノの「ジェイ・レノ」も成績は残せなかったが、もう少し時間を与えることができたら、どうなったかはわからない。両者ともうまく適応できたかもしれない。レターマンも悪ふざけ、というかレノに対するいびりが度を過ぎた嫌いはなくもなかったが、それとて理解できないこともない。NBCだってビジネスという観点から見たら、当然の対策をとったまでとも言える。結局、オブライエンは悪くない、レノも悪くない、レターマンも悪くない、NBCも悪くない。しかし、いったん悪い方に転がり出した歯車を止めることは誰にもできなかった。


一方、別の視点から見ると、追い込まれたオブライエンが徹底してレノを悪玉視したのは負け犬の遠吠えにしか見えなかったし、逃げの姿勢のレノも正直言って見苦しかった。レターマンの悪乗りは度が過ぎたし、こういう展開になることを5年前から予見できなかったNBCの無能な幹部陣は、全員更迭してしかるべきだ。ついでに言うと、キメル、お前はいったい何を考えてんだ。


いずれにしても、すべてが終わった後なら誰がなんとでも言える。視点を前向きに変えるべきだろう。実際の話、今後たぶんケーブル・チャンネルで自分の番組を持つことになると思えるオブライエンは、彼の癖のあるユーモアは、NBCというネットワークよりむしろケーブルの方がよほど向いている。あと10年経てば、こうなってよかったと皆が口を揃えて言うことになるかもしれないのだ。まだまだ余震の続く深夜トーク界、本当に、あと1か月後ですらどうなっているか予想もつかない。これだから深夜トークの追っかけはやめられない。








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