The Tonight Show with Conan O’Brien  ザ・トゥナイト・ショウ・ウィズ・コナン・オブライエン

放送局: NBC

プレミア放送日: 6/1/2009 (Mon) 23:35-0:35

製作: コナコ、ユニヴァーサル・メディア・ステュディオス

ホスト: コナン・オブライエン

サイド・アナウンサー: アンディ・リクター

バンド・リーダー: マックス・ワインバーグ


内容: 第5代ホスト、コナン・オブライエンによる「ザ・トゥナイト・ショウ」


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NBCの深夜トーク・ショウ「レイト・ナイト (Late Night)」のホストだったコナン・オブライエンが「ザ・トゥナイト・ショウ」ホストに抜擢された経緯はこれまでにも何度も書いてきた。ジェイ・レノがホストの「トゥナイト」の最終回の項でも書いたので、ここでは繰り返さず、ついに始まったオブライエンがホストの「トゥナイト」に専心しようと思う。


オブライエンの「レイト・ナイト」は今年2月末にはニューヨークでの収録を終え、その後をジミー・ファロンが継いだ後、オブライエンは「トゥナイト」の準備期間に入った。一方レノの「トゥナイト」は5月最終週まで続き、その後、6月第1週からオブライエンがホストの新「トゥナイト」が始まった。


その番組第1回は、冒頭、準備おさおさ怠りないオブライエンがついに「トゥナイト」収録日を迎え、歯を磨いて身だしなみを整え、ぬかりはないかチェック・リストに目を通すシーンから始まる。トゥ・ドゥ・リストの「新セットの構築」、「ジョークの準備」、「身だしなみを整える」、「歯を磨く」にそれぞれチェックをつけていった後、最後に残ったリストは「LAに引っ越し」で、あっ、ぬかった、という顔のオブライエンが窓の外を見ると、そこにはエンパイア・ステイト・ビルとクライスラー・ビルが。NYからLAに引っ越すのを忘れていたのだ。


慌てて外に飛び出し、イエロー・キャブをつかまえようとしてもこんな時に限って空車が来ない。と、何を思ったかオブライエンは走り出す‥‥LAに向かって。チープ・トリックの「サレンダー」(「アット・ブドーカン」は私も持ってるぞ) をBGMにオブライエンはグッゲンハイム美術館の前を過ぎ、ジョージ・ワシントン・ブリッジを渡り、ペンシルヴァニアのアーミッシュの村を走り去り、シカゴではセキュリティに追いかけられながらリグリー・フィールドを走り抜け、五大湖を泳ぎきり、ワイオミングかコロラド辺りの高原を駆け抜け、ニューメキシコ/アリゾナの砂漠を突っ走り、ラスヴェガスを突っ切ってやっとLAに到着、スタジオに入ろうとしたら鍵がない。NYのオフィスに忘れたのだ。


しかしこんなことでくじけるオブライエンではない。ブルドーザーにまたがると鍵なんてものともせず、ドアをぶち壊してやっとスタジオ入りだ。そこで高らかに番組テーマ音楽が鳴り響き (因みにこのテーマは「レイト・ナイト」時代と同じだ)、オープニング・クレジットが流れ、アンディ・リクターが「フロム・ザ・ユニヴァーサル・ステュディオ・イン・ハリウッド、イッツ・ザ・トゥナイト・ショウ・ウィズ・コナン・オブライエン」と高らかに宣言、番組が始まるという寸法だ。なかなかいい、というか非常にいい出だしだ。


オブライエンは、数多いるトーク・ショウの中で文句なしに最も背が高い。CBSの「レイト・ショウ」のデイヴィッド・レターマンも6’1” (182.5cm) と決して低くはないが、しかしオブライエンは6’4”、つまり190cmある。NBCはLAに移動してきたオブライエンが、いかにも西海岸という感じの波打ち際をスーツ姿で走る新「トゥナイト」の番宣ティーザーを、放送開始日近辺にはしつこく流していた。今回の冒頭の全米を走り抜けるオブライエンというシチュエイションは、狙ってかどうかは知らないがそれと呼応している。要するに、背が高く足が長くて細身のスーツ姿が様になるオブライエンを走らせると、絵になるのだ。視覚的インパクトは大きい。


ただし、このホストを走らせるというのはオブライエンの専売というわけではなく、今の「レイト・ナイト」で新ホストのファロンが、番組のオープニング・クレジットでスーツ姿でちゃんと走っている。今回の演出のアイディアはこの辺から得たのかもしれない。いずれにしても、オブライエンといいファロンといい、ついでにレノもレターマンも、みんな一見しただけで仕立てと生地のいい非常に高そうなスーツを着ている。肌触りも着心地もよさそうだ。


ところで「レイト・ナイト」では最初の数年間、オブライエンと一緒に名ばかりの共同ホストを担当したリクターが、さすがに共同ホストという立場ではなく、ここではアナウンサーという立場でまた一緒に仕事している。リクターは「レイト・ナイト」を辞めた後、「アンディ・リクター・コントロールス・ザ・ユニヴァース (Andy Richter Controls the Universe)」、「アンディ・バーカー、P.I. (Andy Barker, P.I.)」というFOXとNBCで2本のコメディに主演したが、両方とも持たなかった。オブライエンよりもさらにオフ・ビートのリクターは、少なくともネットワークが放送するコメディの主演向きではないと私は思う。声は悪くないため、実際このアナウンサーという職は向いているのではないか。


晴れて「ザ・トゥナイト・ショウ・バンド」と命名されたバンドには、これまた「レイト・ナイト」からマックス・ワインバーグが同道してきた。ブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドの正ドラマーでもあるワインバーグは、当初東海岸を拠点に活動しているスプリングスティーンから離れることを渋っていたようだが、最終的にはオブライエンと共に西海岸にやってきた。それでもスプリングスティーンがツアーやコンサートを行う時にはそちらを優先して、その時は「トゥナイト」は代理の者がドラマーを務めるそうだ。


話を元に戻して、さて、プレミア・エピソードのオープニングはたった数分のために全米でロケした豪華なつかみで、ついに始まったかと思うと嫌でも期待感が高まる。そしてリクターの「ヒヤズ・ユア・ホスト、コナン・オブライエン」という合図でカメラが初めて新しいスタジオを映すと‥‥その豪勢さに驚く。なんだこれは、「レイト・ナイト」の時の3倍の大きさと金がかかっているのではというでかくて派手なセットで、レノの「トゥナイト」のセットより明らかにでかい。しかもこの一見「クレオパトラ」のセットかと見紛うようなきんきらきんという感じのきらびやかな雰囲気、うひゃあ豪儀だわ、これは。


しかもカメラがオブライエンの後ろから観客席を見渡す構図になると、本当にこれはでかい。通常この種の深夜トークは、だいたい2、300人くらいの観客をスタジオ/会場内に入れて収録する。規模の小さなトーク・ショウだと、せいぜい100人くらいしかいなかったりする。しかしこのスタジオは、これは6、700人くらいは入っている。でかいのはいいが、しかし、そのスタジオを毎回満席にし続けるってか。それはちょっと、いくらなんでも荷が重すぎやしないか。


実際トーク・ショウのスタジオで、その観客席の下から舞台に出てくることのできるトンネル・エントランスがあるほどでかいスタジオを初めて見た。オブライエンも確か番組第2回ではそのことに言及して、こういう派手な演出向きのトンネル・エントランスのあるのはだいたいスポーツ・アリーナに相場が決まっているといって、じゃやってみようかとそのトンネル・エントランスから登場してきたのは、かつてのNBAスターで殿堂入りプレイヤーのカリーム・アブドゥル・ジャバーだ。むろんバスケットをさせるわけではなく、出てきたジャバーと握手して終わりだ。


ついでにとなかなかジャバーと顔の似ている番組の美術担当の男もついでにトンネル・エントランスから出場させると、そいつは今度はかなり身長が低く、ジャバーの胸辺りくらいまでしか背が届かない。逆に言うと、2メートルは余るジャバーと並んでも特に低いとは感じさせなかった (本人は自分より背の高い人間とはめったに会ったことはないと思う) オブライエンの背の高さを感じさせることにもなった。


さて、番組第1回のゲストは、「レイト・ナイト」の最終回ゲストでもあったウィル・フェレル。またかよという気もしないではないが、コメディ俳優としてはアメリカでは1、2を誇る人気があるのは間違いないし、実際に友人でもあるんだろう。しかし「レイト・ナイト」の時はHBOの特番の宣伝も兼ねて自分自身としてではなくジョージ・W・ブッシュの物真似で登場、今回は自分自身ではあるが、公開直前の「マーシャル博士の恐竜ランド (Land of the Lost)」の宣伝も兼ねてと、やはりちゃっかり自分の宣伝も忘れない。彼が登場する時はエジプトのファラオよろしく従僕どもに担がれた神輿に乗って登場、一応話題はちゃんと提供する。ただし「マーシャル博士の恐竜ランド」は大ごけし、既に今年最大の失敗作という評価が定着している。


第2回のゲストはトム・ハンクスで、こちらも公開中の「天使と悪魔 (Angels and Demons)」の宣伝主体とはいえ、監督のロン・ハワードの真似までをし、靴をすっ飛ばしながらの派手なアクションまでサーヴィス精神旺盛なところを見せる。どうせオレは第1回のゲストじゃなかったしなと拗ねてもいた。番組第3回ゲストはジュリア・ルイス-ドレイファスと、これまた現在公開中の「ザ・ハングオーヴァー (The Hangover)」の宣伝も兼ねたブラッドリー・クーパー、第4回はグウィネス・パルトロウと秋からNBCの新番組に主演するジョー・マクヘイル、第5回は「アメリカン・アイドル (American Idol)」ホストのライアン・シークレストとコメディアンのパットン・オズワルト。


音楽ゲストは第1回がパール・ジャム、火曜がグリーン・デイ、水曜シェリル・クロウ、木曜ジョン・メイヤー、金曜チキンフットだった。この辺はさすがに先週のレノの「トゥナイト」より人選が若いというか、どっちかっつうと私好みだ。新顔のチキンフット以外は私がアルバムを持っている者ばかり。クロウは他のミュージシャンと違って、新曲ではなく、オブライエンが「レイト・ナイト」ホストについて間もない1993年にゲストとして出て歌ったという「ラン・ベイビー・ラン (Run Baby Run)」を歌う。また「チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ (Tuesday Night Music Club)」を聴きたくなった。メイヤーは「カリフォルニア・ドリーミング (California Dreaming)」を得意のギターで聴かせる。


話は変わるがレターマンの「レイト・ショウ」でも当然毎回最後には音楽ゲストが演奏するのだが、こないだ、フランスのギター・ポップ・グループとして頭角を現してきているフィーニックスが登場してプレイした。その時、ヴォーカルの子が歌い終わった時にマイクを投げたのだが、レターマンはそれが気に入らなかったのがありありで、全身から不機嫌のオーラが漂っているのを意志の力で押さえつけていた。音楽ゲストというのは、ホストの趣味で決めるわけではないというのがよくわかった。たぶんレコード・レーベルとの絡みなんかもあるんだろう。


さて、オブライエンの「トゥナイト」は非常に注目度は高かったので、放送第1週は記録的な成績で裏番組のレターマンの「レイト・ショウ」に圧倒的な差をつけた。視聴者数で楽に倍以上差がついた。しかし第2週にはそれも落ち着き、なんと、第3週になると今度は「トゥナイト」と「レイト・ナイト」が獲得視聴者数でほぼ並ぶという事態になった。


これは結構大事だ。なんぜレノ時代の「トゥナイト」はレターマンの「レイト・ショウ」に常勝で、常に何百万人も視聴者数で差をつけていた。それがいまや並ぶどころか総視聴者数では「レイト・ショウ」が「トゥナイト」を上回ることの方が多くなった。そして6月も終わりになると、さらに思わぬ事態が出来した。マイケル・ジャクソンの訃報がそれだ。


特に注目されないが、NBCの「トゥナイト」、CBSの「レイト・ショウ」の裏番組には、ABCのニューズ・マガジン「ナイトライン (Nightline)」がある。通常、「ナイトライン」は「トゥナイト」と「レイト・ショウ」に視聴者数では常に及ばないので、コアの視聴者がいるとはいえ、特に話題には上らない。それがマイケル死亡のニューズ特集によって一気に視聴者の注目を集め、「トゥナイト」と「レイト・ショウ」をも上回る視聴者を獲得した。オブライエンの「トゥナイト」は、一気に3大ネットワークで最下位に落ちた。


むろんこれは非常事態であり、その後「ナイトライン」はまた徐々に成績を落とし始めたし、「レイト・ショウ」とどっこいどっこいになったとはいえ、「トゥナイト」の方が若い視聴者層には強く、18-49歳層の視聴率、特に18-34歳層というもっと若い視聴者層になると、今度は「トゥナイト」が「レイト・ショウ」の倍の視聴者を獲得するなど圧倒的に強い。一時、ギャグがエッジイ過ぎるからといってジジババよりも若い層に受けていたレターマンの「レイト・ショウ」が、今ではそのジジババ層の方に受けがいい。視聴者が歳をとったのかレターマンが歳をとったのか。


もっとも、そもそもの最初からオブライエンはスロウ・スターターというか、いきなり人気爆発という感じのパーソナリティではまったくなかった。「レイト・ナイト」は番組として確立するまで、途中NBCからキャンセルを仄めかせられながら、定着するまでに数シーズンを必要としている。今回、プレミア当初だけ話題を集めた後は、一時的に成績は落ちるだろうというのは最初から言われていた (もっともここまで落ちるとは思われていなかった。)


私個人の印象を言うと、オブライエン、頑張っていると思う。「レイト・ナイト」時代のオブライエンのギャグは、癖があって笑えないものが多かった。それが今ではちゃんと冒頭のモノローグから見る者を笑わせる。昔より多少万人向きになったという感じがする。特に番組第2回で、LAに移ってきたから有名なロデオ・ドライヴでショッピングしようとして、予算があるからプロデューサーの意向でロデオ・ドライヴではなく数段格の落ちるロデオ・ロードでショッピングして、どんどん別人化するスキットは非常に面白かった。


ただし、難を言わせてもらうと、私がまったく評価できない「イン・ジ・イヤー2000」コーナーが「イン・ジ・イヤー3000」として、コーナーをやめるどころかヴァージョン・アップして再登場してきたのはいただけない。あれは本当に面白くない。しかも今回は単に衣装を身につけるのではなく、頭上から冠のようなヘッド・セットがするすると降下してくるなど大がかりになってしまって、面白くないのは本人たちだってわかってるだろうに、オブライエンはこれは金がかかっているからと、意地で続けているようでもあった。


「レイト・ショウ」でも、「ベストテン」のような、面白いというよりも単に惰性で続けているようなコーナーがある。私は常々辞めればいいのにそんなのと思っているのだが、続いていることによる番組の顔という印象があるのは否めなく、「イン・ジ・イヤー3000」もそうなるのかと思うが、しかし、面白くないものは面白くない。


さらにオブライエンは、レノが「トゥナイト」の最終回でやって見せた、この17年間で生まれて成長してきた子供たちの紹介というのに感銘を受けたと見えて、こっちも「レイト・ナイト」時代からこれだけの新しい子供たちが生まれましたと、同じことを新「トゥナイト」でもやって見せた。これは的を外している。レノの「トゥナイト」では、あれは最終回だからこそ効果的だったのであって、新番組でやるようなものではないし、何よりも二番煎じに意味はない。オブライエンは時にこういう過剰なセンチメンタリズムに走る嫌いがある。


いずれにしても、番組の評価が確立するまではまだあと数か月、もしかしたらまた数年かかるかもしれない。今秋にはレノの新トーク・ショウもプライム・タイムに登場してくるのだ。つまり、種々の事情を考慮すると、番組の最終的な評価が決定するのは早くても今年末から来年にかけて、事態が落ち着くのは数年かかるのではないかと私は思う。まだ何が起きるのかわからないのだ。ケーブル・チャンネルだって新深夜トークを投入する準備を始めているところもいくつもある。しかし少なくとも今のところ、今秋、「ジェイ・レノ・ショウ」が始まるまでは、一視聴者として気楽に「トゥナイト」と「レイト・ショウ」を交互にでも見ていよう。








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ザ・トゥナイト・ショウ・ウィズ・コナン・オブライエン   ★★★

 
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