デニス・リチャーズ: イッツ・コンプリケイティド

放送局: E!

プレミア放送日: 5/26/2008 (Mon) 22:00-22:30

製作: ライアン・シークレスト・プロダクションズ

製作総指揮: デニス・リチャーズ、ライアン・シークレスト

出演: デニス・リチャーズ、アーヴ・リチャーズ、ミシェル・リチャーズ、サミ、ローラ


内容: チャーリー・シーンと別れ、またシングル・ライフを謳歌するデニス・リチャーズに密着する。


リヴィング・ローハン: マミー・ウィル・フィックス・イット

放送局: E!

プレミア放送日: 5/26/2008 (Mon) 22:30-23:00

製作総指揮: フィル・マルーフ、ジョナサン・マーレイ

製作: ブニム-マーレイ・プロダクションズ、マルーフTV

出演: ダイナ・ローハン、アリ・ローハン、マイケル・ローハン、コーディ・ローハン、ダコタ・ローハン、ナナ、ジェレミー


内容: リンジー・ローハンの妹アリと、彼女を歌手デビューさせようと奔走する母ダイナに密着する。


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セレブリティに密着してその一部始終をとらえるというスタイルのリアリティ・ショウは、ほとんどTVという媒体の発祥と時を同じくするくらい昔からある。いつの時代でもスターやセレブリティの私生活に人々が興味を惹かれるのは同じなのであった。


しかし近年のその種のセレブリティ密着型リアリティ・ショウは、その対象となるセレブリティが雲の上の存在ではなく、ほとんど卑近な、市井の我々と同じくらいのところで生活しているB級から時によってはC級の、セレブリティと呼ぶには憚られるような存在に目をつけ、彼らに密着し、時にはそのまるっきり見当違いな言動や非常識を笑い飛ばそうという風に変化して来た。近年のこの種のリアリティ・ショウの嚆矢が、かれこれ6年前になる (もうそんなになるのか) MTVの「ジ・オズボーンズ・ショウ (The Osbournes Show)」だろう。


その後この種のセレブリティ密着リアリティ・ショウは、パリス・ヒルトン/アナ・ニコールに密着したFOXの「ザ・シンプル・ライフ」、アナ・ニコールに密着したE!の「ジ・アナ・ニコール・ショウ」、B級セレブリティを何人も寄せ集めて共同生活させたWBの「ザ・サーリアル・ライフ」、そのスピンオフのVH1のフレイヴァー・フラヴに焦点を絞った「ストレンジ・ラヴ」、ジェシカ・シンプソン/ニック・ラシェイに密着したMTVの「ニューリーウェズ」、そのスピンオフ「ジ・アシュリー・シンプソン・ショウ」等の人気番組が途切れなく続き、そしてMTVの「ザ・ヒルズ」にいたっては、ついにまったく無名の人間に密着してその対象をセレブリティにしてしまうという、本末転倒の偉業まで達成した。セレブリティもいいが、結局最終的に視聴者が見たいのは、興味を惹かれる出演者のキャラクターなのであった。


現在、この種のリアリティ・ショウは、伝統的にMTVとVH1の姉妹チャンネルに圧倒的に強い。VH1なんかは自ら率先してセレブリアリティ・チャンネルと自称しているくらいだ。芸能情報番組専門のE! (エンタテインメント) チャンネルも、上記の「アナ・ニコール・ショウ」や、元五輪十種競技チャンプのブルース・ジェンナー一家にお邪魔する「キーピング・アップ・ウィズ・ザ・カーダシアンズ (Keeping Up with the Kardashians)」というそれなり人気の番組もある。因みにカーダシアンというのは、ジェンナーの妻クリスの初婚相手ロバートの姓。子供たちがまだカーダシアン姓を名乗っていることと、弁護士のロバートがかつてO. J. シンプソン事件を担当した有名弁護士であり、カーダシアンという名はアメリカにおいてよく知られているため、番組ではこの名字を使用している。


そういう番組があることはあるが、しかしE!がこれまでは特に積極的にこの分野に力を入れているという印象は受けなかった。今回投入した2本の番組「デニス・リチャーズ: イッツ・コンプリケイティド」と、「リヴィング・ローハン: マミー・ウィル・フィックス・オール・アップ」は、これまではどちらかというと受け身の芸能情報専門番組という印象が強かったE!が、自分から攻勢に打って出たという印象を受ける。


さて、まずは抱き合わせで先に放送された「イッツ・コンプリケイティド」の方は、チャーリー・シーンとの仲が破局を迎え、シングルに返り咲いたデニス・リチャーズに密着する。番組はまずシーンとの離婚が正式なものとなり、いったんは公式上はデニス・シーンとなったリチャーズが、DMV (運輸局) に出向いて自分の免許証をリチャーズ名義に戻そうとするシーンから始まる。ところがお役所仕事であり、これがリチャーズが考えたようにすんなり行かない。ちゃんと書類は調っているはずなのに、なぜか窓口の人間は申請書類を受理しないのだ。ここではいかにリチャーズが有名人であろうと関係ない。どこの国でもお役所というのは融通の利かないものであり、結局リチャーズは鬱憤溜めまくりながらも出直さざるを得なくなる。


うちに帰ると出迎えるのは、シーンとの間にできた二人の愛娘サミとローラ、それに父のアーヴだ。その他アシスタントや友人もいるが、リチャーズの中で彼らとほとんど同じくらいの重要度を占めていると思われるのがイヌとブタのペットだ。実はどう見てもいい親、あるいはペットの飼い主には見えないリチャーズは、案の定ペットも甘やかしており、いつだったかナショナル・ジオグラフィック・チャンネルのイヌ矯正番組「さすらいのドッグ・トレーナー (Dog Whisperer)」を見ていたら、ホストのシーザー・ミランがリチャーズの家にお邪魔して、どうしても言うことを聞かない彼女の飼いイヌを、得意のシッ、シッという矯正語と共に躾け直していた。


今回は発情しているブタが妊娠しているかもしれないと獣医の元に連れて行くのだが、判定はシロ、なんとなくがっかりしたリチャーズはブタにボーイ・フレンドを探してやるという展開だ。その他、名実共に晴れてシングルズ・サーキット入りしたリチャーズにボーイ・フレンドを探してやろうとアシスタントが色々骨折ってブラインド・デートをセッティングしたり、インターネットで出回っているリチャーズの噂話に一喜一憂したり文句をつけたりしている。それにしても出戻っても娘たちを父に預け自分の興味を優先するリチャーズ、父のアーヴはいったい‥‥と見ると、そういう娘のために結構喜んで料理を作ってやっているように見える。たぶん娘も孫も可愛くてしょうがないんだろう。しかし甘やかしすぎはいかんぞ。


一方の「リヴィング・ローハン」は、現在、パリス・ヒルトン、ブリトニー・スピアーズと共に、自他共に認める (に違いない) アメリカ芸能界お騒がせ三人娘の一人、リンジー・ローハンの家にお邪魔する。特にどんなにスキャンダルだらけとはいえ、リンジーは人気、実力のどちらをとっても同時代の女優からは頭一歩抜け出しており、ひいき目なしに見て演技という点ではパリスはリンジーの足元にも及ばない。歌の面でも玄人とは言えなくとも「今宵フィッツジェラルド劇場で (A Prairie Home Companion)」を見る限り、味のある歌を歌う。実際に歌手デビュー済みでもあるわけだし。その上、妹もシンガー・デビューを目指している。つまりこの番組、リンジー本人が出るなら、かなり話題性は高い。


一方で3年前にお騒がせの挙げ句尻すぼみに終わった、ブリトニー追っかけリアリティ「ケイオティック (Chaotic)」みたいな例もある。A級セレブリティが出ればそれでいいというわけでもない。やはり番組としての中味が面白くなければダメだ。その点パーティ・ガールのリンジーは、こないだもMTVの「ロック・ザ・クレイドル」に出ていたボビー・ブラウンの息子、ランドン・ブラウンとどこぞのクラブのトイレでHしたとかしなかったとかが話題になっていたから、彼女に密着できれば、番組はそれなりに面白くはなりそうだ。


とはいえここがミソなのだが、実は「リヴィング・ローハン」は、そのリンジーの実家のニューヨークはロング・アイランドのローハン家にお邪魔するとはいっても、そこにリンジーはいない。彼女は既にLAで気ままな一人暮らしをしているからだ。だからこそあれだけ浮いた話がはびこるとも言える。つまり番組はリンジーではなく、その母のダイナと、彼女の次女、つまりリンジーの7歳違いの妹アリの二人に密着するというのが主旨だ。


現在14歳のアリは、シンガー・デビューを目指している。マネジメントを担当するのはダイナだ。このダイナ、かなり強力なキャラクターなのは確かで、まだ幼かったリンジーが人気を獲得し出した時に、自分の旦那とリンジーのマネジメントに関して揉め、夫を追い出した。つまり離婚した。その辺の話はどこぞのゴシップ記事の見出しの拾い読みでしかないから詳細は知らないが、それでも彼女の性格の一端を知るよすがにはなる。


番組内では一人暮らしを満喫してゴシップの絶えないリンジーの話も当然出る。ダイナも母としてその辺には心を痛めており、根も葉もない噂話がまたネットを賑わした暁には、リンジーに電話して事の真偽を確かめる。その時ですらリンジーは声すら出ないところを見ると、いまんとこ彼女が番組に姿を現す可能性は低そうだ。リンジーとしても、今さらプライヴェイト・ライフにマスコミを入れることなんか真っ平だろう。一方鬱憤冷めやらないダイナはネットでゴシップをばら撒いているサイトに電話し、記事をすぐ取り下げなければ訴えると脅して電話を切る。やっぱり怒らせると怖そうだ。


しかし悩みの種はそれだけでは尽きず、今度はアリのプロデュースを担当している音楽プロデューサーのジェレミーが、よりにもよってリンジーと付き合っているという記事がネットに載る。噂話としてではなく、ジェレミーのインタヴュウ記事として載っているのだ。しかしリンジー家の知る限り、ロング・アイランドでアリに付きっ切りのジェレミーは、リンジーに会ったことすらないはずだ。いったいジェレミーは本当にそう言ったのか。だとしたら彼の主旨は何か。彼を問い質そうと手ぐすね引いて待ち構えているリンジー家に、飛んで火にいる夏の虫とばかりにジェレミーが姿を現す‥‥というのがプレミア・エピソードの展開だ。


しかし思うのだが、最近の芸能界のイマ風の女の子って、みんな顔が似ている。ブルネットのアリを見て私が最初に思ったのは、これはまたアシュリー・シンプソンそっくりというものだった。ついでに言うと、妊娠して多少顔がケバ目になったブリトニーの妹のジェイミー・リンも、現在かなりアシュリーに似てきたという印象がある。その上、明らかにアシュリー似のアリまで加わったものだから混乱する。もっとも、全員イマ風の髪型や化粧法なんてのがあるはずだから、多少は似てくるのは当然と言えるかもしれない。それでも私の目から見ると、特にアシュリーとアリはそっくりなんだが。


これらのセレブ密着リアリティ・ショウは、最終的な面白さを本人たちのキャラクターに負っている。最初は単にものめずらしさでチャンネルを合わせる視聴者も多いと思うが、次も見たいと視聴者に思わせるのは、やはり今後の出演者の言動次第だろう。その点、天然風のリチャーズの言動は意外性があって悪くないし、「ローハン」では、可愛いアリよりも、実は強いダイナの方がキャラクターとしては面白い。しかしこんなんでアリは無事デビューできるのだろうか。







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