放送局: MTV

プレミア放送日: 6/16/2004 (Wed) 22:30-23:00

製作: MTV

製作総指揮: R. グレッグ・ジョンストン、ロイス・クラーク・カレン、ロッド・アイサ、ジョー・シンプソン

監督: マット・アンダーソン

出演: アシュリー・シンプソン、ティナ・シンプソン、ジョー・シンプソン、ジェシカ・シンプソン


内容: ジェシカ・シンプソンの妹アシュリーに密着するリアリティ・ショウ。


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昨年、天然ボケの歌手ジェシカ・シンプソンと、その新婚の旦那であるニック・ラシェイに密着したMTVのリアリティ・ショウ「ニューリー・ウェズ」は、ジェシカのナチュラルなボケ具合が視聴者にアピールし、瞬く間に人気番組になった。シー・チキンを本当にチキンだと思っていたジェシカの大ボケぶりは、後にジェシカ用語まででき、わざわざ彼女を起用した大ボケCMが製作されたくらいだ。


「ジ・アシュリー・シンプソン・ショウ」は、何を隠そうそのジェシカの妹であるアシュリーを主人公にし、彼女の私生活に密着するリアリティ・ショウである。姉で成功したから今度はその妹で柳の下の二番目のドジョウを狙うこの浅はかな根性は、ちといただけないような気もするが、しかし、許す。なぜならば、アシュリーは可愛いからだ。


アシュリーは、これまではジェシカの妹という点ばかりが強調されてきたが、実は彼女は芸能界と無縁ではない。既に数年前からWBの人気ドラマ「セヴンス・ヘヴン (7th Heaven)」にレギュラー出演しており、その時から「セヴンス・ヘヴン」に可愛い子が出ていると、一部では既によく知られた存在だった。さらに今回、アシュリーはジェシカに続いてゲフィン・レコードと契約、歌手デビューも決まっている。番組は、その、デビュー間近のアシュリーの日常に密着する。


アシュリーを見たことのない者は、その、「可愛い」という形容詞に引っかかるかもしれない。なぜならば、姉のジェシカは、歌手としては文句なしに一流だが、可愛いとか美人とかいう形容詞とはほとんど無縁だからだ。親から受け継がれるはずの「可愛い」遺伝子は、たぶん、ほとんどアシュリーの方に行っちまったんだろうと思われる。それくらいこの姉妹は、少なくとも外観では大きな違いがある。


で、アシュリーがどのくらい可愛いかというと、ほとんどの者がアシュリーを最初見た時は、ブリトニー・スピアーズと間違えるということからもわかるだろう。特に目元や、口元から頬っぺた辺りのふっくらとしたところなんかそっくりだ。事実、番組のプレミア・エピソードで、車を運転しているアシュリーに向かって、誰かが大声で「ブリトニー・スピアーズ!」と叫んでいたりしている。アシュリーはそのことに慣れっこになっているというか、非常にうんざりしているようだ。ま、それも当然だろう。話は変わるが、そのアシュリー、運転しているのはなんとレクサスのオープン・カーだ。あんた、免許とってそれほど間はないだろうに、いったい、それ、いくらすると思ってるんだ。まったく羨ましい。


アシュリーは、この辺はやはり姉妹なんだが、ジェシカ同様、思ったことがすぐ顔に出るタイプで、ほとんど裏表のない、いかにもアメリカ的な、すくすくと素直に育った子という感じだ。一方、これまたジェシカ同様、身の回りの整理整頓は苦手なようで、掃除洗濯は母のティナがいないと、どうもうまくこなせそうにない。


アメリカの子供は、だいたいにおいて、悪いところを直す、ではなく、よいところを伸ばす式の育てられ方をしている。そのため、多少の礼儀作法がかなってなくても、本人どころか周りも気にしない。プレミア・エピソードでは、アシュリーは自分のボスとなるゲフィン・レコードの幹部との打ち合わせに向かうのだが、その席で、カウチの上で平気であぐらをかいたりしている。これって、日本人から見たら態度悪いと思われるのは必至だろう。しかしここでは、両サイドともまるで平気なようだ。それになによりも、アシュリーのキャラクターが、そういう無作法な態度を逆に可愛く見せている。やっぱり可愛いと得だ。いくらアメリカでも、ブスがビジネスの席でこんな態度とったら、その場で帰らされるのがオチだ。


そんなこんなでデビュー前のアシュリーは、段々忙しくなってきて、ボーイ・フレンドのジョシュと過ごす時間がほとんどなくなってしまう。二人はものすごく仲がよく、アシュリーはカメラの前でも平気でジョシュの上に覆い被さっていって熱烈なキスとかを交わしているのだが、プレミア・エピソードの終わりでは、忙しくて二人が一緒にいる時間もなくなってきたとして、あっさりと別れてしまう。それですぐ別のボーイ・フレンドを作り、また熱々の関係になるのだが、この辺のドライさ、キャリア志向は実にアメリカ的というか、現代っ子という感じだ。


上にも書いたが、アシュリーはブリトニーにそっくりで、これがただ普通の民間人なら、ブリトニーそっくりなんて言われたら、誉められているようで悪い気はしないと思う。しかし、同じ歌手としてデビューしようとしている者の場合だと、誰か先人に似ていると言われるのは、はっきり言ってほとんどマイナスにしかなるまい。何をしても真似していると見られるからだ。


たぶん、アシュリーが自慢のブロンドの髪をブルネットに染める決心をしたのは、そのような理由からだと思われる。一夜にしてブルネットの髪となったアシュリーを見た母親のティナは思わず絶句するが、しかし、確かに大きく印象が変わった。ただ髪の色が変わっただけで、それまでのカワイコちゃん然としたアシュリーが、ヴァンプのような雰囲気を濃厚に持つようになった。19歳にしては大した色気だと言えるだろう。


もちろん、アシュリーのブルネットは、ジェシカの妹としてまず見られてしまう境遇から脱皮したいということも大きかったに違いない。元々この姉妹は、少なくとも顔は全然似ていないが、それだからこそアシュリーがデビューした後は、歌の優劣が比較されることになると思われる。しかし、正直言って私の意見では、見かけでは断然アシュリーの方に軍配が上がるが、歌唱力ではジェシカの方が一枚上だ。アシュリーは、もしFOXの「アメリカン・アイドル」に出ても、勝ち抜いていくのはまず無理だと思う。アシュリー自身、そのことを自分で知っているからこそ、いつまでもジェシカの妹と見られることに反発しているんだろう。この姉妹はかなり仲がよさそうに見えるのだが、そのこととこのことは別だ。アシュリーも実はかなりキャリア志向だと見た。さもなければ、あんなに仲のよかったボーイ・フレンドとあんなにあっさり別れたりはしないだろう。


こういうアシュリーの態度、ものの考え方は、現代の若い女の子の気持ちを代弁しているように思われる。だからこそ、彼女たちの支持を得て、アシュリーはデビュー前からかなり騒がれていたのだ。その上可愛くて男の子からも人気があるとなれば、同年代やまだロウ・ティーンの女の子が、アシュリーに自分自身を投影して騒ぎ立てるのも無理はない。アシュリーはデビューに相前後してサイン会や小ステージに立ったりするのだが、会場にいるほとんどのファンは、同年代以下の女の子なのだ。


そんなこんなで、アシュリーのデビュー・アルバム「オートバイオグラフィ (Autobiography)」は、発売と同時にいきなりヒット・チャートの1位に登りつめ、プラチナ・アルバムとなってしまった。彼女がどんなに同世代から下の少女から支持されているかがわかる。もちろん男性ファンだって多いだろうし、これらのファン層が挙ってCDを買ったからこそのこの売れ行きなんだろうが、ゲフィンの連中だって、これだけ売れるとは思ってもみなかっただろう。というわけで、私もひとっ走り「オートバイオグラフィ」を買ってこようかなっと。






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ジ・アシュリー・シンプソン・ショウ   ★★1/2

 
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