ラグナ・ビーチ: ザ・リアル・オレンジ・カウンティ

放送局: MTV

プレミア放送日: 9/28/2004 (Tue) 22:30-23:00

第3シーズン・プレミア放送日: 8/16/06 (Wed) 22:00-22:30

製作総指揮: トニー・ディサント


マイ・スーパー・スウィート・シックスティーン

放送局: MTV

プレミア放送日: 1/18/2005 (Tue) 22:30-23:00

第3シーズン・プレミア放送日: 4/12/06

製作: アイラ・フィールズ、タラ・ヒギンズ


エイス・アンド・オーシャン

放送局: MTV

プレミア放送日: 3/7/2006 (Tue) 22:30-23:00

製作総指揮: トニー・ディサント


ザ・ヒルズ

放送局: MTV

プレミア放送日: 5/31/2006 (Wed) 22:00-22:30

製作総指揮: トニー・ディサント


内容: MTVの若者向け番組各種。


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今に始まったことではないが、近年のMTVの若者向け番組は、成人男女にはつらいものがある。番組に登場している人物と同年代、つまりティーンエイジャーから20代の若者にとっては、MTVが大量に製作放送しているリアリティ・ショウがそれなりにアピールするだろうというのはわからないではない。実際、私だって時々チャンネルを合わせると、なんとはなしに見たりはする。しかし、いつもいつもそればかりでは、やはり飽きる。


もちろん、この種のMTV番組がアメリカTV界に貢献してきた業績も認めなければならないのは、片手落ちというものだろう。既に10年選手となったMTVの「ザ・リアル・ワールド」は、若者の生態をあまねくとらえたリアリティ・ショウとして、CBSの「ビッグ・ブラザー」「サバイバー」よりも早くから放送を始めていた先駆的番組であり、いまだに人気が高い。


スピンオフ番組の、旅先を移動しながらのチーム分けしての競争に焦点を置いた「ロード・ルールズ」は、こちらは「ジ・アメイジング・レース」の先駆けと言える。マーク・バーネットが製作して社会的現象となるほどヒットした番組の原型は、既に何年も前にMTVが放送済みだったというのは、いくら強調してもし過ぎるということはないだろう。現在では「ロード・ルールス」の体力勝負の箇所だけを独立させて、さらにスピンオフ番組の「フレッシュ・ミート (正式番組名はReal World/Road Rules Challenge: Fresh Meat)」が放送されており、こちらも人気は高い。


以上3本は、現在のほとんどのリアリティ・ショウの原型とすら言える、MTVを代表するヴェテラン番組だ。実際、「フレッシュ・ミート」なんかは、私もチャンネル・サーフをしていて目に留めると、つい最後まで見ちゃったりする。さらに近年は、泣く子も黙る「ジ・オズボーンズ」を筆頭に、「ニューリーウェズ: ニック&ジェシカ」(既に別れてしまったが‥‥)、「ジ・アシュリー・シンプソン・ショウ」等、新世代のセレブリティ・リアリティを開発したことも特筆に価する。つまり、数撃ちゃ当たる式の玉石混交とはいえ、やはりMTV番組を無視してアメリカのリアリティ・ショウは語れない。


そのMTVで現在ヒットしている、あるいはこれを見てないと話題についていけないというのが、表題の4番組だろう。そのそもそもの発端と言える「ラグナ・ビーチ: ザ・リアル・オレンジ・カウンティ」は2年前から放送は始まっており、タイトルの副題からも予想される通り、当時のFOXの人気ティーン・ドラマだった「ジ・O. C.」の半分パクりだ。


O.C. = オレンジ・カウンティのことで、西海岸のオレンジ・カウンティという富裕層の集う地域を舞台にするプライム・タイム・ソープが「O.C.」であるわけだが、「ラグナ・ビーチ」は、そのオレンジ・カウンティに住む若い男女に密着するリアリティ・ドラマというふれこみだった。


この、リアリティ・ドラマというのがまた曲者で、一応番組の本分は、そういう金を持っている階級の子女を追うリアリティ・ショウであるわけだが、その登場人物の中で恋の鞘当てごっこも行われている。ティーンエイジャーといえば、興味があることの筆頭はそれだから当然だ。番組は特にその部分に注目、事実としての三角関係やパワー・ゲームを強調し、さもドラマのように味付けして見せたのが、「ラグナ・ビーチ」だ。一応複数の男女が登場する、「リアル・ワールド」式の群像リアリティなのだが、皆からLCと呼ばれているローレンが主人公格だ。その後、高校と番組を卒業したLCを主人公に、スピンオフの「ザ・ヒルズ」が製作されたことが、彼女の注目度が最も高かったことを雄弁に物語っている。


私は通常この種の番組には辟易しており、まったくと言っていいほど食指が動かないのだが、ま、人気があるようだし、話の種くらいにはなるだろうから見てみるかと思って見た「ラグナ・ビーチ」に、結構感心してしまった。要するに、ツボをうまくついてるのである。そしてリアリティ・ドラマという建て前の通り、話が盛り上がるシーンでは演出が入る。いきなり要のシーンでカメラがアップになったり、逆位置からと切り替わったりするのだ。


つまり、登場人物にまったく同じことを何度もやらせているからそういう風に撮れるのであり、しかもそういうショットに限って、ちゃんとライティングまでされていたりする。最初からそこでそういうシーンを撮ろうということがあらかじめ打ち合わせされているわけだ。番組の何%が演出で何%が事実かはよくわからないし、実際の話、演じている本人たちもどこまでが本気でどこからが演技かなんて自分自身でわからなくなっていると思うが、このあざといと言うかあつかましいと言うかどぎついと言うか嫌らしいと言うか、恥も外聞もない演出のせいで、「ラグナ・ビーチ」が面白くなっていることは確かである。


前述のように、このヒットによって主人公格のLCは注目され、今夏、高校を卒業してLAで働き始めたLCを中心に、スピンオフ番組の「ヒルズ」が始まった。とはいえ、私の見る限り、今のところ「ヒルズ」は「ラグナ・ビーチ」ほどの面白さを獲得するには至っていないようだ。やはり主人公だけでなく、周りの人間を含めた人間関係全部が機能しないと、この種の番組は面白くならない。


一方、オリジナルの「ラグナ・ビーチ」は今夏から第3シーズンに突入している。ほとんどの登場人物が高校を卒業して新しい世界に飛び立って行ってしまったため、メンツも一新した。前2シーズン同様の人気を獲得することができるか、まずはお手並み拝見というところだ。


さらに、「ヒルズ」が始まる以前に、MTVは同じプロデューサーによる新番組「エイス&オーシャン」の放送を今春から始めている。これはどちらかというと「ラグナ・ビーチ」よりは「リアル・ワールド」寄りの番組で、モデル志望の格好いい男女を共同生活させ、その模様を収録したものだ。


とはいえ、私はどんなに格好よくても素人の人間の私生活なんぞにはまったく興味ないし、それなら様々なキャラクターを揃えた「リアル・ワールド」の方がまだ面白い。また、モデル志望の女の子にキャット・ファイトさせるなら、それこそ既にCWの「アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル」という番組があり、しかもそちらの方が圧倒的に面白い。格好さえよければいいってもんじゃない。もっと頭を使ってくれ。


とまあ、今MTVで人気のあるリアリティ・ショウっていうとこんなもんだが、避けて通れないが、いくらなんでもこれは、という唖然とする番組がある。それが「マイ・スーパー・スウィート・シックスティーン」だ。スウィート16というのは、要するに金持ちの子女が16歳になった時に行う盛大なパーティのことである。昔の社交界のお披露目パーティのようなものと思ってもらえばいい。今ではアメリカには本当に上流のごく一部を除いて基本的にそういう社交界システムは残ってないが、なまじ小金を持っている家ほどそういうことをやりたがる。番組は、そのスウィート16のパーティに燃えるティーンエイジャーやその家族をとらえる。


実は私は数年前まで、スウィート16のことをまったく知らなかった。そういうこととはまったく関係のない世界に生きていたから当然だ。そしたらある年に呼ばれたクリスマス・パーティで、そのスウィート16のことが話題になった。その家にはロウ・ティーンの女の子がいて、そういうことを気にする年頃だから、当然親も知ることになる。なんでもそのパーティには、莫大な費用がかかるらしい。最初は笑って聞いていたのだが、数千万円単位、時には数億という金をかけると聞いて、開いた口が塞がらなかった。で、そんなパーティ、やるの? と訊いたら、いや、うちは貧乏だからやらないと断言していたが、あの子煩悩ぶりなら、娘から泣きつかれたら借金してもこいつらはやると思った。私たち夫婦に子供がいなくて本当によかった。


そういう盛大なパーティである。豪勢な会場を借りてはいるが、基本的に参加者は未成年、酒は飲めないパーティということもあり、他の飾り付けやプレゼント、ショウ・アップに金をかける。結構有名どころのシンガーを、わざわざその日のためだけに金を出して歌わせる。その日の主人公は、もう、ほとんど天使か宇宙人か王様か人魚姫みたいな、ほとんどギャグにしか見えないほど飾り立てていたりするし、招待客の数は場合によっては4桁に達するんではとすら思える。


知人の知人の知人なら、主人公と実際に面識はなくとも呼ばれていたりする。実際15歳くらいだと、学校の同学年の子を全員呼んでもまだ足りないだろう。そしてだいたい、クライマックスの親からのプレゼントはメルセデスかBMWの新車だ。1,000万円だ。ダイヤモンドを埋め込んだ腕時計をもらっていた奴もいた。お前ら何者?


もう、正直に告白してしまうが、腹立たしいことこの上ない。おまえらどこの何もんだかは知らないが、クソガキどもを甘やかすな! こんなことだから傲慢なアメリカ人ができ上がってしまうんだ。と、半分は僻み根性丸出しで憤ってしまう。16歳のガキにメルセデスの新車だと? あいつらにはマクドナルドでバイトさせて1,000ドルの中古車を自分で買わさせろ。あー、もう、腹立たしい。


特にこういう怒りが燃え立つのが、そのスーパー16を開く主人公が、救いようのないブス女ブス男である場合だ。当然すべての金持ちの子が美男美女で性格がいいわけではない。こういう機会がなければ異性から見向きもされないという金持ちの子女もいる。それで精一杯張り切って自分を飾り立てるわけだが、あるエピソードの、お世辞にも可愛いとは言えない体重過多の女の子がけばけばしく着飾っているのを見た時には、本気で吐き気がした。こんなやつは重しをつけて太平洋に沈めてしまえ。


こういうやつらに限って、頭の中は脳みその代わりにカニみそが詰まっているとしか思えない低脳振りをいかんなく発揮する。鳥肌立つほどおぞましい。いくらなんでも自分の若い頃はあそこまで愚劣じゃなかったと思いたい。ああ、あんなの見たくなかった。一生に一度のチャンスだということはわかるが、しかし、こんなパッパラパーばかりを公共の電波に乗せないでくれ。思い出すだけでムカムカする。


むろん番組としての「スーパー16」が人気があるのは、その年頃のティーンエイジャーにとっては、僕私がああいうお金持ちの家庭に生まれていたら、という想像力を強く刺激するからに他ならない。私のような年齢になると何よりもまず自分の価値観でものを見るので、圧倒的なくだらなさばかりが印象に残るのだが、同年代の子にとっては、毎回の主人公に強力に感情移入できるだろう。それで自分がああいう立場だったら、と考えてうっとりするわけだ。やっぱり自分に子供がいたら見せたくない番組の筆頭である。


余談になるが、「ラグナ・ビーチ」以外にも、「O.C.」ヒットに影響を受けた真似っ子リアリティ・ショウは他にもあり、ブラヴォーが、こちらはオレンジ・カウンティの暇と金を持て余す奥様方に焦点を当てた「ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・オレンジ・カウンティ (The Real Housewives of Orange County)」を製作している。こちらは、もういい加減、知恵を身につけてもいいはずのいい歳の奥様方が、見栄やアルコールに振り回される。ついでにまったく同じことをアリゾナでやったCBSの「チューズデイ・ナイト・ブック・クラブ (Tuesday Night Book Club)」というのもあった。さらに付け加えると、ABCだってヤング・エグゼクティヴ世代に注目した「ワン・オーシャン・ヴュウ (One Ocean View)」という、これまた登場人物をちょっとひねっただけの同様の趣向のリアリティ・ショウを製作している。全部一顧だにする価値のない屑番組であったことは言うまでもない。   







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