ロスト
放送局: NBC
プレミア放送日: 9/5/2001 (Wed) 20:00-21:00
製作: コナコ、ジャンバラヤ・プロダクションズ、ウィンドフォール・フィルムス
製作総指揮: ナンシー・スターン、デイヴィッド・デュガン
ナレーション: アル・トラウトウィグ
参加者:
ランドー (男。24歳。学生)
カーラ (女。29歳。メイキャップ・アーティスト)
ジョー (男。36歳。グラフィック・アーティスト)
コートランド (男。29歳。塗装業)
セレステ (女。29歳。デザイナー)
タミ (女。36歳。主婦)
内容: 地球上のどこかに置き去りにされた3組のペアが、サバイバル生活を強いられながら他のペアよりも速くニューヨークの自由の女神像までたどりつくのを競うリアリティ・ショウ。参加者はいったい最初にどこに連れて行かれるのかわからないため、番組収録前に、テントの張り方や天気の読み方、火の起こし方や飲み水の調達の仕方等の基本的サバイバル技術を習わされる。その後、目隠しをされて飛行機によって目的地 (この場合はモンゴル) に運ばれ、そこから各自が各々の判断によって一路ニューヨークを目指す。参加者には小額の現金およびシュラフ等の生活必需品が詰め込まれたバックパックが手渡されるが、クレジット・カード、携帯電話、地図、磁石の所持は認められない。優勝ペアは賞金20万ドルを獲得する。
アメイジング・レース
放送局: CBS
プレミア放送日: 9/5/2001 (Wed) 21:00-22:00
製作: ジェリー・ブラッカイマー・フィルムス、アース・ヴュー・プロダクションズ
製作: ジェリー・ブラッカイマー、バート・ヴァン・ムンスター
ホスト: フィル・ケーガン
参加者:
ボブ & ブレナン (同僚兼友人)
マット & アナ (夫婦)
フランク & マルガリータ (別居中の夫婦)
キム & レスリー (未婚の同僚兼友人)
ナンシー & エミリー (母子)
ポール & エイミー (婚約中のカップル)
デイヴィッド & マーガレッタ (結婚歴40年のシニア)
レニー & キャリン (カップル)
ジョー & ビル (ゲイのカップル)
パット & ブレンダ (既婚の友人)
ケヴィン & ドリュー (同じ学校の同窓生)
内容: ニューヨークのセントラル・パークから出発して、世界中を旅しながら、11組のペアから成るチームに様々なミッションを課すという体裁のリアリティ・ショウ。基本的にはある一地点から次の地点に最も早く着いた者がその回の勝利者となり、次の回では前回最も成績のよかった者からスタートさせるため、成績のいい者ほど次の回で有利になる。 毎回最もゴールの遅かった1チームずつを脱落させる。最後まで残ったペアが優勝となって賞金100万ドルを獲得する。
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今秋の新シーズン開幕にあたり、これほど何かと話題となった挙げ句、あっという間に忘れ去られた番組もないだろう。時々そういう番組というものはないこともないが、今回はそれが似たような二つの番組、それも今、流行りのリアリティ・ショウということも、なんか、これからのアメリカのTV界の行く末を占えるような気がする。
その二つの番組、CBSの「アメイジング・レース」とNBCの「ロスト」であるが、元々「アメイジング・レース」の方は昨年から企画が上がっており、今シーズンの新番組として予定されていた。ところが、後発の「ロスト」が新シーズンが始まる9月下旬に先立って、フライング気味にいきなり9月5日に編成された。かちんと来たのはCBSである。「アメイジング・レース」のプレミア放送は9月19日水曜9時と、4か月も前から発表になっている。それと同じ水曜、しかも1時間早い8時から放送を始めて、リアリティ・ショウのファンを自チャンネルに引き止めておこうとする腹だというのは、誰が見てもありあり。
CBSは即座にそれに反応、「アメイジング・レース」を同じ9月5日夜に持ってきた。みすみす手をこまねいて見ている気はないということだ。そしたら、NBCは今夏放送してヒットしたリアリティ・ショウ「フィアー・ファクター」を「アメイジング・レース」の裏番組として編成した。CBSはこれに対抗して、今夏放送している「ビッグ・ブラザー」の第2弾、「ビッグ・ブラザー2」の特別篇を製作、「ロスト」にぶつけてきたのだ。あっという間に、9月5日の夜8時から10時にかけて、NBCとCBSの編成はすべてリアリティ・ショウとなり、両雄相見えることになった。
実は、この展開のそもそもの種子は、今春まで遡る。「フレンズ」から始まって「ER」に至るNBCが誇る木曜夜の無敵の時間帯、「マスト・シー・TV」に、CBSが超人気リアリティ・ショウ「サバイバー2」を持ってきて「フレンズ」を撃破、「マスト・シー・TV」に風穴を開けたというのは、今春のアメリカTV界の最も重要な出来事だった。NBCはこのことをまだ根に持っており、隙あらばCBSに意趣返しをしたいと思っていたのは、火を見るより明らか。今回がそのチャンスと見たわけだ。
この子供の喧嘩的つば迫り合いが、マスコミの注目の的となったことは言うまでもない。熟考の末というよりも意地の張り合いで編成が組まれたわけで、はっきり言って共食いだと指摘する関係者も多かったが、とにかくサイコロは振られてしまった。あとは結果を待つのみ。ううん、私も楽しみ。
結果、9月5日の成績は痛み分けということになってしまった。4番組とも似たような視聴率で、どれかが突出して人気を得たわけでも、極端に低い成績だということもなく、「ロスト」も「アメイジング・レース」も、やはり「サバイバー」の後釜を継ぐほどの玉ではないということを証明するに留まった。しかし、このリアリティ・ショウ・レース、本当の意外な展開はその後にやって来た。
言うまでもなく、9月11日火曜のテロリスト・アタックである。本当ならその翌日、今度こそ雌雄を決するはずの第2回の放送が予定されていたわけだが、世紀の大事件のため、各ネットワークは24時間報道体制を敷いており、当然ながらその他のすべての定時番組はキャンセルされた。もちろん「ロスト」も「アメイジング・レース」も例外ではない。「アメイジング・レース」は1週間休んで9月19日に第2回が放送されることになり、一方の「ロスト」は2週間休み、9月26日に再開ということになった。
これが両番組にとって大きな痛手となった。特に、間に3週間もの時間が開いてしまった「ロスト」の場合、ほとんど致命的と言える打撃を被った。この種の勝ち抜きサバイバル系リアリティ・ショウでは、間が開きすぎると視聴者の興味を持続させることが難しい。「ロスト」の場合は、誰が先にゴール・ラインに達するかを競う番組であるため、途中で追放される参加者が出るというものではなく、正確には今流行りの勝ち抜きサバイバルというのとはちょっと違う。しかし、いずれにしても「ロスト」も「アメイジング・レース」も、テロリスト・アタックによって視聴者の興味を劇的に失ってしまった。
考えてもみて欲しい。国が戦争という非常事態に入るか入らないかという瀬戸際に、誰がたかだかゲームにしか過ぎないサバイバル番組なんかにうつつを抜かすというのだ。現実ではこれから本当に命を賭けたサバイバルが始まるかも知れないのだ。それに較べれば、数人の参加者内でのパワー・ゲームなんて子供のお遊びである。今さら視聴者がこの種の番組に興味を持てなくなったのは、実によくわかる。
特に「アメイジング・レース」よりも、「ロスト」の方が大きく影響を受けた。実際、私はプレミアを見た後、「アメイジング・レース」の方ができは上だなと思っていたが、他の多くの視聴者も私と同じ意見だったようで、その上に今回の事件が重なり、「ロスト」の第2回の視聴率は激減するという事態に落ち込んだ。おかげで「ロスト」は、違う参加者による2種類の話を3エピソードずつに分けて、計全6回の放送予定だったが、最初のゲームの結果が出る第3回目を放送した後、いきなりこの時間帯は「エド」の第2シーズンに譲って、「ロスト」は棚上げになってしまった。おいおい、あと3回のエピソードはどうするんだよ、既に収録は済んでるんだろう。このままなし崩し的に終わらせてしまうつもりか。実はこの番組、世界各地を旅しながらの収録という要素が受けて、すぐにケーブルのトラヴェル・チャンネルで再放送が予定されている。だから、もしかしたらあとはそちらでの放送になるかもしれない。
「ロスト」と「アメイジング・レース」の番組としての違いは、勝ち抜きサバイバルかそうでないかという構成上の違いに加え、総勢3組6人と11組22人という参加人数の違いがある。だから6人しか参加者がいない「ロスト」はすぐ全員を覚えられるという利点があるが、一方、「レース」は性格の違う様々な参加者の反応を楽しめる。一長一短だ。そして、これまで見ず知らずの赤の他人を、製作者の判断によってその場でペアを決めてしまう「ロスト」と、仲がいい友達や配偶者、親子が参加している「レース」 のペアの決め方が、番組の特色を決める最大の特徴となっている。
特に「ロスト」では、まったくの初対面の人間との人間関係にも気を配りながら、世界各地を旅しなければならない。このあたり「ロスト」と「電波少年」は実によく似ているが、カーラ/ランドーのように異性を組み合わせたり、コートランド/ジョー、セレステ/タミ組のように同性を組み合わせたりと、ヴァラエティがある。しかもコートランド/ジョー組のように、男性の同性同士で片方がゲイであったりする。
しかし、どんなに人選に気を配っても、「ロスト」の構成はよくできているとは言い難い。例えば、第3回ではたった60分の間に、全チームはシベリアやハワイから、あっという間にアメリカに帰ってきてしまう。この種のゲームは、目的地に着くまでの苦労や葛藤こそが番組の見どころなのに、そんなの映していたら時間がないので、とにかく間を端折ってゴールさせちまったのだ。これでは何が何やら全然わからないだけでなく、まったく面白くない。
まあ、ついでに結果を書いておくと、優勝したのはカーラ/ランドーのペアで、セレステ/タミ組が2位、コートランド/ジョー組は、なんと途中で喧嘩別れしてリタイアということになってしまった。カーラ/ランドー組、およびセレステ/タミ組は途中シベリア経由で日本にも立ち寄っており、特にセレステ/タミ組は日本海を船で渡り、やっとのことで上陸し、さあ、これから日本篇、と思ったら次の瞬間にはなぜだかもう成田にいて、その3分後には既にニューヨークに帰ってきたという感じで、完全に日本の部分は端折られてしまっていた。こりゃつまらんわ。
因みにこの番組、製作のコナコは、現在NBCで深夜トーク・ショウ「レイト・ナイト・ショウ」でホストを担当しているコナン・オブライエンの番組製作会社である。その「レイト・ナイト・ショウ」、数年前に放送を始めた時はとにかく面白くなくて、本人がその面白くない、と皆に言われているのを逆手にとってギャグにしていたのを思い出す。番組がキャンセルされなくて続いたのは、ひとえに深夜の時間帯で、他に編成する番組がなかったからに他ならない。私はこんなに笑えない番組を真面目に続けるオブライエンが痛々しくて、辛くなって見るのを止してしまったが、さすがに何年も続くと、オブライエンも多少は観客を喜ばすコツを覚え、見られるようになった。よく続いたよなとしか言い様がない。そういう前例があるので、「ロスト」ももしかしてNBCが我慢して放送を続ければ、第2回、3回と続けるうちに面白くなるのかも知れないが、残念ながらプライムタイムでは、NBCが辛抱する可能性はまずないだろう。
一方、「アメイジング・レース」は、ハリウッドのヒット・メイカー、ジェリー・ブラッカイマー製作総指揮ということもあり、さすが消費者を喜ばすツボを心得た構成で、わりと面白い。「ロスト」同様にペアを組んだ11組が競い合うリアリティ・ショウなのだが、こちらは流行りの勝ち抜きサバイバルの体裁を踏襲しており、毎回一組ずつ脱落していく。世界中を移動しながらの勝ち抜きゲームであり、各地の名所旧跡が各回の最終目的地になってたりして、単純に旅行番組としても楽しめる。プレミアの回は、冬の朝まだきにセントラル・パークに集合した11組のペアが、一路アフリカを目指す。
「アメイジング・レース」を見ていると、リアリティ・ショウの成否の多くは、その参加者の人選にかかっているのがよくわかる。「サバイバー」も、その人選の巧さが番組が面白い最大の理由になっているというのはよく言われているところだが、「アメイジング・レース」もその例に漏れない。一見、ただのでぶのペアに見えるケヴィンとドリューが、実は結構頭の回転が速く、その上、情に脆いいい奴っぽかったり、真面目そうに見えるが、単に計算高い嫌な奴っぽいジョーとビルのゲイのペア、老齢夫婦のデイヴィッド & マーガレッタ、母子ペアのナンシー & エミリー等、色んなペアがおり、それぞれに特色があって、見ていて飽きない。
その中でも出色は、婚約中というポールとエイミーのカップルと、同じく恋人同士のレニーとキャリンのカップルだろう。ポール/エイミーのペアは女性のエイミーの方が強く、ポールはエイミーの言うままに番組に参加したが、別に優勝したくなくても構わない、という感じで、 はっきり言って結構根性なしで、プレミアの回でいきなりアフリカでバンジー・ジャンピングに挑戦させられた時は、もう止める、降りると、へっぴり腰になっているのを、エイミーがたきつけていた。あんたは優勝したくないの、とエイミーが激昂するのを、わかった、やればいいんだろう、やれば、という感じで渋々挑戦するポール。男のくせに不甲斐ないと憤り、車に乗っては道を間違えて最下位になる屈辱を想像して泣き出すエイミー。これを毎回繰り返すのだ。ポールは、最近、毎日喧嘩ばかりしており、彼女は毎日泣いているとこぼす。番組に出続ける意義があるのかと自問自答するポール。それでも、無事次回に進めると、彼女も喜んでくれるし、半分自棄、半分惰性でまた次のチャレンジに挑むのだ。彼らはいつまで残り続けていられるだろうか。
もう一方のレニーとキャリンの黒人ペアも恋人同士であり、こちらもポール/エイミーのペアと同様、女性のキャリンの方が強い。しかもキャリンはレニーが何かミスしたりすると、カメラの前でも情け容赦なくレニーを罵るのだ。失望したわ、あんたってこんななの、なんでこんなことができないの、と、臆面もなくレニーを罵倒するキャリン。いくらレニーが温厚だからって、これじゃ頭に来ないわけがない。じゃ、自分がやってみろよと反論するのだが、結局いつも最後は言い負かされて、黙って新しいチャレンジに挑むことになる。人生にはこんなゲームなんかよりももっと大切なことがあると切々とカメラに向かって語りかけるレニー。しかし結局レニーも、最後に何とかぎりぎりセーフで次回まで生き残り、キャリンが素直に喜ぶ顔を見ると、何も言えなくなってしまうのだ。この二組のペアを見ていると、ああ、男って生き物は可哀想、とつくづく思う。
今さら言うまでもないが、リアリティ・ショウの醍醐味は参加者内でのパワー・ゲーム、および葛藤、生の感情の発露にある。「ロスト」でも「アメイジング・レース」でも一応ゴールはこしらえられているが、本当の醍醐味は誰が優勝したかではなくて、それに至るまでの過程にある。今回、その一番面白い部分を破棄してしまった「ロスト」がつまらなくなってしまったのは、当然の帰結であると言えよう。あとは「アメイジング・レース」がどこまで踏ん張れるかだな。
それにしても、「ロスト」は最終ゴールがニューヨークの自由の女神、「アメイジング・レース」はニューヨークに始まってニューヨークに終わると、共にニューヨークが番組の主要な地点として選ばれている。当然のごとく、「アメイジング・レース」のプレミアでは、ワールド・トレード・センター (WTC) が空撮のバック・グラウンドとして何度も視界に入る。これが番組が始まるのがテロリスト・アタックが起こった後だったら、再編集は免れ得なかったところだろう。
一方の「ロスト」では、ニューヨークが舞台となるのは最終回 (第3回) のみで、放送はテロリスト・アタックが起こった後だ。しかもゴールはWTCのすぐ目と鼻の先、自由の女神である。WTCが背景に写ってないということはないに違いない。どうするんだろう。起こったことは起こったこととして、そのまま放送しちゃうんだろうか。と思っていたら、実に見事にWTCが見えるシーンをカットしてあった。カメラがもうちょっと右や左にパンしたら、この角度なら絶対WTCが見えるに違いない、という寸前に、実にうまく次のシーンにカットする。そのやり方で最後まで編集してあり、ついにWTCは最後まで画面に姿を現さなかった。急いで編集し直したにしては、絵作りに違和感もなく、非常によくできていた。それにしても番組の内容そのものとはちがうところにも注意を払わなくてはいけなくて、番組製作者も大変だ。
今、私だけでなく、マスコミをも含めたアメリカ市民全員の目は、10月11日から始まる「サバイバー」第3弾、「サバイバー: アフリカ」に向いている。「ロスト」も「アメイジング・レース」も、歴史的事件という予想外の展開により苦汁を飲まされた。しかし、リアリティ・ショウが本当に人気を失ったか、一時のブームが去ったかという最終的な判断は、すべて「サバイバー」の成績如何にかかっていると言えるだろう。もし「サバイバー」も視聴率を稼ぐことができないとしたら、今後ネットワークはリアリティ・ショウという分野から撤退するだろうというのは容易に予測できる。さて、「サバイバー」はどうなるのか。このスリルとサスペンスは、「サバイバー」という番組自体をも凌ぐ。興味津々の展開になってきた。
あ、やっぱり最後に「アメイジング・レース」の私の優勝予測を一つ。結構一回毎に順位が入れ替わるから予測は難しいが、それほど目立たないくせに、プレミアの回以外ではいつも上位に食い込んでいる、スキン・ヘッドのケヴィン/ドリューのペアなんてどうだろうと思うのだが。ジョー/ビルのペアには勝たせたくないなあ。でも、「サバイバー」でも私が最も嫌いだったリチャードが優勝しちゃったし、このペアが最後まで残っている確率は非常に高そうだ。うむ、ケヴィン/ドリューのペアよ、頑張ってくれ。
追記 (2001年10月):
面白いとは思ったが、それでも毎回見ようとは思っていなかった「アメイジング・レース」、ついつい見てみたら、やはりポールとエイミーのペアが番組を面白くしている。第5回目の今回は、四駆でサハラを横断してのミッション遂行となるのだが、ポール/エイミー組は案の定というか何というか、道を間違えてしまい、途中まではいい位置にいたのに、段々時間をロスしていく。焦るペアは近道をしようと砂漠に車を乗り入れ、さらに深みにはまっていく。右も左もわからなくなり、道なき道を疾走するために、エイミーは揺れる車の中で車酔いで気持ち悪くなってしまうのだが、それでも勝負を諦めない。一方のポールはほとんど勝負を諦め、車を停めようかと提案するのだが、エイミーは後部座席でビニール袋にげーげー吐きながら、運転するポールに前進を命令する。私たちは、おえー、最後じゃないわ、げえーっ、と、誰が見てもチャンスはないのに、絶対に勝負を捨てないのだ。この女、根性あるわ。
一方、ゴールでは、既にゴール・インした者たちが、いつまでたっても姿を現さないポールとエイミーの車を不安げに待っている。既にポールとエイミーの最下位は確定しているが、それだけでなく、昼と夜の気温差が甚だしい砂漠で、段々日が傾いてくる。本当に日が暮れて真っ暗になってしまったら、街灯もない砂漠でポールとエイミーがゴールに到達できる可能性はほとんどない。食料も用意してなく、最悪の場合、砂漠の真ん中で凍死である。ここは雑誌で読んだのだが、ゴールでは番組プロデューサーも待っており、いつまでたっても姿を現さないペアに、気が気ではなかったそうだ。既にゴールした者がプロデューサーに向かって、半分冗談半分本気で、参加者を殺しちゃったと呟くので、ほとんど顔が引き攣っていたらしい。結局、ポールとエイミーはぎりぎりで日没前にゴールに到着するのだが、彼らの車を見た時はプロデューサーは本当にほっとしたことだろう。
それにしてもアメリカのリアリティ・ショウは段々エスカレートして、留まるところを知らない。このままじゃ本当に、いつか死人が出そうだ。番組で死者が出た時が、リアリティ・ショウ・ブームに終止符を打つ時だという気がするのは私だけだろうか。しかし、それまではブームは続くかも知れない。いや、既にブームに翳りは出ているんだった。うーん、今後リアリティ・ショウはどういうふうに展開していくんだろうか。
追記 (2001年10月):
ポール/エイミー組に続き、彼らに次いで番組を面白くしていたレニー/キャリンのペアもついに番組を去る日が来た。しかし、彼らがこれまでに番組を去った他のペアと最も異なっていたのは、他のペアはカップルだろうと友人同士だろうと、負けたことで逆に結束を強くしていたのに較べ、レニー/キャリン組の場合、レニーがいつも全力を出してないということに苛立っていたキャリンが、番組を去る時の発言で、レニーとはこれ以上やっていけないと宣言したことだ。番組のために初めて別れることになるペアが出現したわけで、特に、番組内であれだけぼろくそ言われた挙げ句振られてしまったレニーが、可哀想といえばあまりに可哀想。しかし第三者の目から見ても、やっぱり君たちカップルには無理があったよ。レニー、早く次のガール・フレンドを見つけてくれ。
追記 (2001年11月):
あーあ、唯一残っていた女性ペアであるナンシーとエミリーの母子ペアもついに番組を去ることになった。彼女らは途中のミッションで、バンコク市街に停められているはずの車を探せず、なんとこのミッションをスキップして次に行ってしまったのである。まったくあの街は迷路のようで、疲れているのに探し物をしていて、道行く不親切な人たちに何とか尋ね事をしながら歩き回った挙げ句、結局元の地点に戻ってきた時は、確かに疲労は倍増しただろう。
しかし、その時、トップを走っていたジョー/ビルのペアは余裕をかましすぎてホテルで昼寝とかをしてしまい、他の皆が急いで100マイルもの長距離でも構わずタクシーを使っているところを夜行のバスなんかに乗ってしまったため、ナンシー/エミリー組はそこで我慢して地道にミッションを遂行しさえしたならば、余裕をもってジョー/ビル組に先行できたはずなのだ。しかし、やるべきミッションをこなさなかったナンシーとエミリーは、目的地にジョー/ビル組より先に着きながらも、ペナルティをとられて失格となってしまった。ちくしょう、ジョー/ビルの二人を蹴落とすまたとないチャンスだったのに。これで残った4組のうち、残っている女性はフランク/マルガリータ組のマルガリータだけとなった。全員野郎どもだけになると、まったく色気がなくてつまらないので、ここはしばらくフランク/マルガリータ組を応援することにしよう。
追記 (2001年12月):
私が応援していたケヴィン/ドリュー組も脱落、ついに最後まで残った3チーム、ボブ/ブレナン、フランク/マルガリータ、ジョー/ビルの3組が、優勝賞金100万ドルを賭けて最後の競争に挑む。しかし、最終回、このレースでの悪役を割り振られていたジョー/ビル組は他の2組に大きく遅れており、これは挽回の可能性はないと見た。アラスカで犬ぞりレースに挑む時点でほとんど丸1日遅れており、これではいかに悪運が強かろうと、ここから挽回は無理だろう。しかし、CBSの思わせぶりなこの編集は、最後に何かが起きるかも知れないと思わせる。これからこいつらがまた勝負をひっくり返すなんてことはないだろうな。
しかし先行するボブ/ブレナン、フランク/マルガリータ組はついに地球を一周してニューヨークにたどり着き、一足早く最後の接戦を繰り広げる。まず、二組共ニュージャージーのニューワーク空港からクイーンズまで移動しなければならないが、土地鑑がある地元出身のフランク/マルガリータ組が圧倒的有利。ボブ/ブレナン組は不慣れな土地ということもあり、不安が隠せない。地球を一周してきたこの勝負も終わりは間近、ここではたった一つのミスが命取りになりかねない。この辺になると私もよく地理を知っており、思わずTVを見るのにも力が入る。
しかし、そこで地元の有利さを活かそうとしたフランク/マルガリータ組が、致命的なミスを犯してしまう。彼らはニューヨークの交通事情をよく知っているために、マンハッタンの混雑を避け、いったん北上してジョージ・ワシントン・ブリッジを渡り、トライボロー・ブリッジを経由してクイーンズ入りするという、マンハッタンを迂回するルートをとる。距離は大分嵩むが、確かに渋滞を回避するには有効なルートだろう。思わず私も、考えたな、と思わずにやりとしてしまった。しかし、しかしである。彼らがニューワークに降り立ったのは朝6時。いくらなんでもこの時間ではまだ渋滞は始まっていない。何も知らないまま、ただタクシーの運転手が運転するままにホランド・トンネルを通ってロウアー・マンハッタンに入り、そこからクイーンズ入りするという、最も直線に近い道筋をとったボブ/ブレナン組の方が、結果的には目的地に早く着いてしまったのだ。まったく、フランク/マルガリータ組は策に溺れ過ぎたぜ。
彼らはここからサブウェイの7ラインに乗ってニューヨーク・メッツの本拠地シェイ・スタジアムやテニスのUSオープンが開かれるアーサー・アッシュ・スタジアムがあるフラッシング・メドウ・パークに行かなければならない。そこが最終のゴールだ! クイーンズでは7ラインは地上 (高架) を走っており、実は私はニューヨークに住むようになってしばらくの間は、この7ラインを使用しており、車内からの景色も、うわあ懐かしい。しかも最終ゴールはフラッシング・メドウ・パーク。私ら夫婦は毎年ここにUSオープンを見に来ており、しかもゴール・ラインが設けられたのはユニスフィアと呼ばれる地球をかたどった大きなオブジェのすぐ前で、そのすぐ後ろ側に今年のUSオープンの時は車を停めさせられたなあと思いながら見ていた。
結局、勝負の方は、タッチの差でボブ/ブレナン組の乗ったサブウェイをつかまえそこねたフランク/マルガリータ組がついにその差を挽回できず、第1回の「アメイジング・レース」はボブ/ブレナン組が優勝したのであった。ニューヨークのサブウェイには交通ダイヤなんてなく、24時間運行とはいえ、早朝や深夜は1本逃すと次のがいつ来るかまったくわからないのはニューヨーカーなら誰でも知っていることで、そのタッチの差が結局勝負の分かれ目になった。TVを見てる時にはそれといって目立った特徴もなく、応援する気にもなれなかったボブ/ブレナン組であるが、やはり若い男性のペアというのは、体力的に他のペアと較べても有利だったということはあろう。ゴール・ラインではこれまでに脱落していった皆が待ち受けており、ボブとブレナンを祝福する。ボブとブレナンも感極まったという感じで、そりゃそうだろうと思う。これまで炎天下の砂漠から極寒のアラスカまで、様々な場所で様々な競争に打ち勝ってきたのだ。ここは誉めてもいいだろう。
しかし笑わせてくれたのが、思わせぶりだったジョー/ビル組で、彼らは結局優勝は無理だったとわかった時点で、途端に画面に映らなくなった。彼らはまだアラスカで犬ぞりレースに挑戦していたのだが、その後どうなったのか。せめて彼らがどうなったのか教えてくれるかと思ったのに、犬ぞりに乗っているジョー/ビル組を映したきり、その後どうなったのかの説明もなくいきなり番組は終わってクレジットが流れてきた時には、思わず笑ってしまった。結局彼らは捨てキャラで終わってしまったんだな。ま、どうでもいいけど。
前述したようにほとんどのリアリティ・ショウが同時多発テロの影響を受けて視聴率が激減したのだが、この番組も例外ではなく、わりと面白いのにもかかわらず、視聴率は大してよくなかった。しかし私の意見では、この番組は少なくとも「サバイバー」と同じくらいか、それ以上に面白い。テロ以前、いや、「サバイバー」以前にこの番組が編成されたのなら、こっちの方がブームになったんではないかと思う。実に残念だ。しかしCBSもこの番組が面白いことには自信を持っているようで、それほど話題にはならなかったのにもかかわらず、来夏、「アメイジング・レース」第2弾の放送を決めている。今度はもう少しは話題になるといいが。
