放送局: UPN

プレミア放送日: 5/20/2003 (Tue) 21:00-22:00

製作: テン・バイ・テン・エンタテインメント、タイ・タイ・ベイビー・プロダクションズ

製作総指揮: タイラ・バンクス、ケン・モック

ホスト: タイラ・バンクス

ジャッジ: タイラ・バンクス、ジャニス・ディッキンソン、ボー・クイラン、キモラ・リー・シモンズ


内容: 勝ち抜きモデル・コンテスト。


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通常、アメリカに住んでいてUPNと聞いてすぐ思い出す番組といえば、まず何はなくともこのネットワークで最も高い視聴率を稼ぐプロレス中継の「WWF スマックダウン!」、次に「エンタープライズ」と、このほど最終回を迎えてしまった「バフィー 恋する十字架」を筆頭とするSF番組群、そして月曜のブラック・シットコム群 (黒人を主人公とするシットコム群のこと) ということになろう。


因みにそれらの番組は、黒人しか見ていないブラック・シットコムはさておき、一部に圧倒的なカルト的人気を博してはいるが、とはいえそれ以上のものではない。これらの番組を見ている者はせいぜい30代中盤くらいまでで、たとえその歳でもUPN番組を欠かさず見ているという輩は、オタクの血が入りすぎである。


アメリカのネットワークのシーズンは、毎年9月に始まり、翌年5月に終わる。近年、以前なら手つかずで、再放送の羅列だったこの時期に、冒険的なリアリティ・ショウを編成するというのが、ネットワークの恒例になりつつある。リアリティ・ショウは通常のドラマやシットコムに較べて、製作費が安く上がる。だから失敗してもあまり痛くない。それでシーズン内なら失敗を怖れて編成できないような、エッジィな番組を投入する。元を正せば「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」も、「サバイバー」も、「アメリカン・アイドル」も、すべてこの時期に投入され、空前の人気を博したものだ。


「アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル」は、そういった何匹目かのドジョウを狙った、UPNの野心満々のリアリティ・ショウなのだ。とはいえ、もちろんそれらのリアリティ・ショウがすべて成功するわけではなく、普通に見て成功していると言えるのはせいぜい4、5本に1本、「サバイバー」レヴェルの成功作は、それこそ50本か100本に1本あるかないかの世界である。UPNだってこれまでに何本もリアリティ・ショウを夏場に投入しているのだが、現在まで、成功したと言える番組はない。「チェインス・オブ・ラヴ」のような人真似的番組でお茶を濁すのが関の山で、これまでこのチャンネルで面白いと感じたリアリティ・ショウは見たことがなかった。


しかし、「アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル」は、UPNが、ついに当たりのリアリティ・ショウを獲得することに成功した番組だという気がする。この番組、フォーマット自体は、「サバイバー」や「アメリカン・アイドル」に代表される、現在流行りの勝ち抜き型のリアリティ・ショウの一亜種でしかない。スーパーモデルを夢見る10人のモデル予備軍を集め、毎週一人ずつを脱落させていくというもので、最後に残った一人が、レヴロンの専属モデルとして契約、大々的に売り出されることが決まっている。


この種の番組は、フォーマットそのものよりも、人選がすべてというのが私の意見である。「サバイバー」が面白いのだったら、その後、雨後の竹の子のように編成された同様のリアリティ・ショウもすべて成功したはずで、それがそうならなかったのは、ひとえに物真似番組では、彼/彼女を毎週見てみたいと思う魅力的な参加者がそこにいなかったからに他ならない。これは何も参加者がすべて美男美女であるべきということを意味しない。初代「サバイバー」で優勝したのは、皆から疎んじられていたゲイのハッチであるが、ちゃんとアイドル的可愛い子のコリーンもおり、男勝りのスーザン等、癖のある参加者が番組を面白くしていたことは論をまたない。


こういう要素が入り込む隙がなさそうな「アメリカン・アイドル」ですら、いつの間にやら悪役的キャラクター、ヒーロー的キャラクターが回を進むうちに造型され、そこに視聴者が思い入れを重ねることで、あれだけの人気番組になった。つまり、この種の番組では、参加者のキャラクターがどこまで視聴者にアピールするかが最大のポイントなのだ。だいたい、結局、最終的には誰かが脱落して、残った者が優勝という基本的なフォーマットは変えようがない。特に一時MTVで大量に編成された似たようなリアリティ・ショウがどれもこれも面白くなかったのは、オーディションしているようには到底思えない、感情移入なんて到底できない参加者ばかりで、見ていてまったくつまらなかったからだ。いまや老舗番組となったMTVの人気のあるもう一つのリアリティ・ショウ「リアル・ワールド」が逆に人気があり、既に第10シーズンを数えても人気が衰えないのは、この番組に関しては、やはりオーディションにて毎回出演者を厳選し、彼/彼女の次の言動を視聴者に気にさせることに成功しているためである。


「アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル」の頭のいいところは、スーパーモデルを選出するためという、いかにももっともらしい理屈をつけて美人を集めている上に、しかもそれだけではないプラス・アルファを加えているところにある。この種のリアリティ・ショウにおいては、ただ美男美女を集めればいいというものではない。見かけがどんなによくても、TV番組という枠を被せた場合、どんなに美男美女でも、それだけではまず間違いなく飽きるからだ。しかし美人を集めた上に、彼女らが素顔をさらして醜い争いを演じるシーンまであまさずとらえることができるなら、話は違ってくる。そしてこの番組が成功している理由は、まさしくその部分にある。


いくら美人だとはいえ、彼女らにだって虫の居所の悪い時はあるし、元々の性格だって必ずしもいいとは限らない。とりすました外見の下に、醜い素顔が潜んでいるかもしれない。個人的な意見を言わせてもらうと、スーパーモデルというのは、美人というのとは違うと思う。昨年、ランジェリー・メイカーとして有名なヴィクトリアズ・シークレットのファッション・ショウの舞台裏を記録したCBSの「ヴィクトリアズ・シークレット・ファッション・ショウ」を見て納得したのだが、特にランジェリー・メイカーに起用されるモデルの場合、顔なんか二の次で、最も重要なのはスタイル、特に身長の高さなのだそうだ (もちろん2mなんてのは高すぎるだろうが)。顔を見るのはその次である。そのため、一流モデルというのは、誰が見てもプロポーションは抜群だが、顔だけを見ると、別に綺麗だとは思えないモデルが結構いる。逆に、むしろ少しくらい癖のある顔をわざわざ選んでいるのではないかと思えるくらいだ (実際そうじゃないかと思う)。


「ネクスト・トップ・モデル」でも、選ばれた10人は既に予選を勝ち抜いてきた、それだけで並みのレヴェルではない容姿の持ち主なのだが、見ているうちに段々各々の性格が前面に出てきて、やはり、なによりもその点が面白いのだ。例えば、26歳という、はっきり言ってモデルになるには既に歳をとりすぎの嫌いのあるロビンは、案の定お母さん風を吹かして場をしきりたがるし、若いエリースは、とにかく物怖じせずカメラに向かって自分の意見を述べる。番組では、神様なんて信じないというそのエリースにロビンが意見するシーンなんかあって、既に結構ライヴァル意識丸出し。そうそう、そうでなくっちゃ。しかし、それでも自分が選ばれると嬉しく、皆涙を流して抱き合って喜んだりしている。こういう参加者の感情の起伏や葛藤を見ることこそがリアリティ・ショウの醍醐味であるから、もっともっとやってもらいたい。


プレミアの回では、最初、ヴィデオで選ばれた応募者の中から20人がロスに呼ばれ、さらにそこで選ばれた10人がニューヨークで毎週一人ずつが追放される、勝ち抜きの最終選考に挑むことになる。LAではしかし、タイラ・バンクスを筆頭とするジャッジは8人までしか絞れず、結局ニューヨークで、残る二人ジゼルとテッサが後から追加で送り込まれるのだが、最初の回で追放されたのは、誰あろうそのテッサである。私は別にテッサは悪くないと思ったのだが、しかし、確かに、では誰を落とすかとなると首をひねる。


テッサはともかく、最初の仕事であるニューヨークのエンパイア・ステイト・ビルをバックにした、多分5番街辺りのビルの屋上での写真撮影において、うまくポーズをとれなかったのが痛かった。番組の収録は今年の初春で、この冬のニューヨークは、とにかく寒かった。冬の期間がすごく長かったという印象があるだけでなく、実際に例年より気温も低く、観測史上3番目というくらい雪の日も多かった。その、まだ雪が残り、氷点下で寒風が吹きすさぶビルの屋上で、水着姿での撮影である。全員吐く息が白く、あまりの寒さにぶるぶる震えている。身体中がかじかんでいるために、うまくポーズがとれない。しかし、それでも根性あるやつは決める時は決める。その中で、どうしてもカメラマンの注文にうまく答えることができなかったテッサは、確かにそこで大きくポイントを落としただろう。


しかし、一方で、10人の中で最も痩せているエリースも寒さには弱く、彼女もうまくポーズをとれなかった上に、苦痛で泣き出してしまう。それでも結局テッサが落ちてエリースが残ったのは、経過がどうでも、でき上がった写真がまだエリースの方が絵になっていたからという気がした。エリースは結構問題児で、ずばずば歯に衣着せず意見を言うために、結構仲間うちで揉める。プレミアの回はまだよかったが、第2回では、あいつもビッチ、こいつもビッチ、もう帰りたいなどと駄々をこねる。私の周りでこの番組を見ている者は、実は彼女こそビッチと言うが、本当のことを言うと私も同感である。しかし、彼女、顔は文句なしに可愛いのだ。エリースにはもうしばらくは残っていてもらいたい。


いずれにしても、エリースよりビッチなのがエボニーなのは間違いあるまい。エボニーは人と対立することに何の痛痒も感じないようで、エリースとは違う意味で平気でばしばし文句を言う。本人を目の前にして言うのだ。これでは周りもたまらない。そしたら揉めている最中に、何を思ったかいきなりロビンが賛美歌なんて歌い始めたりして、逆に収拾がつかなっていく。レズビアンのエボニーはニューヨーク出身ということもあり、女性の恋人が訪れてきたりしてどんどん参加者の間でテンションが高まっていく。うーむ他人事だとこういう揉め事ってなんでこう面白いんだろう。


ところでプレミアの回では、ビキニ撮影の前に、参加者はビキニ・ワックスを経験する。ビキニ・ワックスとはビキニを穿いた時に股からお毛々がはみださないように、ジェルを塗って、よけいな毛をべりっとはがしてしまうという、少々荒っぽい方法なのだが、皆ぎゃーぎゃー言いながらそれをやっていたところを見ると、それほど一般的なお手入れ方法というわけでもなさそうだ。しかし、素っ裸になってやるわけではないとはいえ、そういうシーンまで見せるとは驚きだった。


さて、これまでの段階で私のイチ押しは、なんといってもエイドリアンである。ちょっと倦怠の雰囲気を醸し、鼻にかかったハスキーな声が「ザ・グッド・シーフ」のヌッツァ・クキアニゼを思い出させ、なんともセクシーだ。彼女だけが時代に反抗して参加者の中でただ一人誰にも媚びずに煙草をすぱすぱ吸っているところなんか、断然応援してしまう。いつでもマイ・ペースで、人に迎合せず、自分の意見を言う時は言うけれども、それでも人に不快感を与えない。持って生まれたものかそれとも育ちのよさか、やはり彼女に勝ってもらいたい。


次がエリースで、本当のところは一番最初に落とされたテッサも悪くないと思っていたんだが、ま、今さら落とされた者を云々しても始まらない。シャノンはブロンド美人で、あまりにも見慣れたタイプの美人であるだけに、イマイチ意外性がなくて面白くないのだが、やはり彼女もいい線行くだろう。大穴は、TVに映る本人よりも写真映りがダンチによく、本人もやる気満々で自信を持っているケシーというところと見た。


ところでこの番組、現役スーパーモデルのタイラ・バンクスがジャッジ、ホスト、製作総指揮を務めているんだが、彼女のあのぴらぴらの衣装はなんとかならんものか。バンクスを見ていると、有名モデルだからといって本人に服を選ぶセンスがあるのではないことがよおくわかる。少しは番組の衣装担当がなんとかしているのだとは思うが、それでもバンクスが多分自分で選んだ衣装は、幼児趣味丸出しで、あれじゃ誰が見てもセンスないのがばればれだ。ま、裏を返せばよほどそのセンスをカヴァーしてあまりある顔とスタイル、それに根性があったということなのだろうが、花道を歩いていなければ、スーパーモデルといえども大したことないなと、つい思ってしまうのであった。



追記 (2003年7月):


普通、私はこの手の勝ち抜きリアリティ・ショウを見てて予想が当たることはあまりないのだが、今回は最後の3人がエイドリアン、エリース、シャノンと3人ともぴたりと当たった。私の美的感覚もそれほど大方と異なっているというわけでもなさそうだ。その最終回は最初の30分で3人が二人に絞られ、さらに最後の30分で、晴れてアメリカズ・ネクスト・トップ・モデルが決まる。


その最初の30分で落ちたのは、なんとエリース。これは意外だった。3人の中ではエイドリアンとエリースの写真映りがダンチでよく、シャノンが落ちて、まず間違いなくエイドリアンとエリースで決戦だと思ったのに。ジャッジが話しているのを聞いていると、エリースはもう現時点でほぼハイ・ファッション・モデルとして完成しているが、番組が求めているのは次世代のトップ・モデルで、その辺で何かサムシング・ニューが欲しいという感じだった。それはわかるが、しかし、それはシャノンにも言えるような気がするんだが。


エイドリアンとシャノンは、二人揃ってファッション・ショウの花道で初仕事に挑むが、意外だったのは、そこで、これまでは別にごく普通のブロンド・アメリカン・ガールにしか見えなかったシャノンがえらく変身して、いかにもトップ・モデル然としていたことで、少なくともこの舞台ではエイドリアンよりもシャノンの方が映えていた。ジャッジの判断は確かなようだ。どこをどうすれば、この子はどう変身するかということをちゃんとわかっているんだろう。うーん、やはり蛇の道は蛇か。それにしても別に太っているわけではないエイドリアンが、他のモデルの中に入ると、太めに見えたことが驚きだった。スーパーモデルって、皆よけいな贅肉はまるでついてないわけね。


これで、最後の最後になってシャノンの株がぐーんと上がったことになる。まずいな、私はやはりエイドリアンを応援しており、彼女に勝ってもらいたいんだが。エイドリアンは性格に表裏がなく、とにかくパーソナリティに好感が持てる。カメラの前で平気でげっぷしてそれでも誰からも反感を受けない率直さは、顔とスタイルだけじゃない、彼女の大きな魅力だ。男っぽいと言えなくもなく、もしかしたらそれがマイナス材料になる可能性もなきにしもあらずだが。


そして最後、アメリカズ・ネクスト・トップ・モデルに選ばれたのは‥‥私の願いを聞き入れたか、エイドリアンだった。ほっ。おめでとうエイドリアン。しかしバンクスは実はエイドリアンは最初で落ちると思っていたと言っていたし、最後のジャッジの喧々囂々の議論を見ても、シャノンとの差は僅差だったのは確かだろう。いずれにしてもエイドリアンが宣伝に出るなら、彼女をサポートする意味でも、レヴロンの化粧品じゃない限り、できるだけ私も商品購入して貢献するつもりでおります、はい。







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America's Next Top Model

アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル   ★★★

 
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