放送局: UPN

プレミア放送日: 5/17/2005 (Tue) 21:00-22:00

製作: ア・フェアリー・ゾーン・プロダクション

製作総指揮: ブリトニー・スピアーズ、ケヴィン・フェダーライン

撮影: ブリトニー・スピアーズ、ケヴィン・フェダーライン

出演: ブリトニー・スピアーズ、ケヴィン・フェダーライン


内容: ブリトニー・スピアーズとケヴィン・フェダーラインの新婚前後の生活に密着する。


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セレブリティの私生活にカメラを持ち込んでその一部始終を記録するタイプのリアリティ・ショウは、芸能ニューズ番組もその範疇に含めると、ほぼTVの歴史に匹敵する、既に確立した一ジャンルと言える。


とはいえ、近年急激に増えたこの種のセレブリティ私生活密着型番組のはしりは、3年前のMTVの「ジ・オズボーンズ」だとすることに異論のある者はいまい。知る人ぞ知るヘヴィメタ界のプリンス、オジー・オズボーンとその家族の私生活をとらえた「オズボーンズ」は、あっという間にその年のTV界の話題を独占する人気番組となった。


その後、「オズボーンズ」にあやかろうと雨後の竹の子のように様々なセレブリティを主人公としたリアリティ・ショウが続いた。それらの番組は「オズボーンズ」に匹敵するほどの人気を勝ち得たわけではないが、それでも、ジェシカ・シンプソンとニック・ラシェイに密着した「ニューリーウェズ」、ジェシカの妹のアシュリーに密着した「ジ・アシュリー・シンプソン・ショウ」、パリス・ヒルトンとニコール・リッチーのとんでもペアの行動をとらえた「ザ・シンプル・ライフ」等は、かなり話題にもなったし、視聴率の上でもほどほどの成績は残した。


一方、この種のセレブリティ・リアリティ・ショウに共通するポイントとして、この種の番組にはAクラスのセレブリティは登場しないということが挙げられる。なんとなれば、半面パブリシティ的な性格を持つセレブリティ・リアリティは、本当に人気のある大スターにとってはまるで必要としないものであるからだ。むしろプライヴァシーを侵害されることに憤りを感じることの方が多かろう。トム・クルーズやジュリア・ロバーツやニコール・キッドマンがこの種の番組に出演するかどうかを考えてみれば、そのことは一目瞭然だ。


上に挙げた人気リアリティ・ショウも、ヘヴィメタ界の外に出るとほとんど知っている者がいないと思われるオジー、既に過去のグループとなってしまった98°のラシェイと、これまたカントリー界以外では知られていないジェシカ、デビュー前のアシュリー、キワモノ以外の何ものでもないパリスとニコールのように、はっきり言って彼らは、やはりどこから見てもB級でしかなかった。TV出演のおかげもあり、今では本人の知名度も番組が始まった当初よりも上がってはいるだろうが、それでも、彼らが本物のスターだと考えている者はほとんどいまい。


新セレブリティ・リアリティの「ブリトニー・アンド・ケヴィン: ケイオティック」がそれらの番組と一線を画しているのは、番組に登場するポップ・スターとしてのブリトニー・スピアーズが、やはりどこから見てもAクラスであることに疑いの入れようがないところにある。昨年の結婚そして妊娠のために今年はほとんど活動をしていないブリトニーだが、それでも、ブリトニーの人気に伍すことのできるシンガーがどれほどいるかというと、片手の指で充分足りるだろう。


確かにアシュリーはティーンエイジャーに絶大な人気を持っているし、ジェシカだって映画スターへの道を着々と進んでおり、アメリカでの知名度は非常に高い。しかし、世界を視野に入れてブリトニーとアシュリーとジェシカを並べてみた場合、その差は圧倒的である。特に基本的にカントリー・シンガーのジェシカの場合、アメリカ国外での知名度はほとんどないに等しいだろう。そのブリトニーが、これまでは本当の意味でのセレブリティをとらえたことはなかったセレブリティ・リアリティ・ショウに登場する。これは確かに興味をそそられる。


「ケイオティック」は、基本的に、結婚を間近に控えたブリトニーとケヴィンの私生活を記録するものだ。つまり、昨年後半の彼らの日常生活の記録、ツアーの舞台裏を撮影したものが主体となっている。しかし、その時にはまだ二人の私生活を記録した番組を放送するという案は具体的な形をとっていなかった。ということは、つまりこの番組の撮影は、基本的にブリトニーとケヴィン自らが、カメラをお互いに向け合って行っているという形が最も多い。本当にプライヴェイトのヴィデオを流用しているのだ。そしてこのことが番組をどんなにつまらなくしているかは、これはもう、ちょっと考えたら火を見るより明らかだろう。


専属のカメラマンがいないために、画面はほとんどブリトニーとケヴィンが交互にカメラを持って撮影するか、ブリトニーの場合、彼女がヴィデオ・カメラを目の前に持ち上げて、自分で自分を撮影するというシチュエイションが多い。もちろん他の人間によって映された二人やブリトニーのコンサートの抜粋、パブリシティの模様等も挿入されるため、全部が全部、二人が交互にお互いを映した映像だけで構成されているわけではないが、それでも、圧倒的に多いのは二人の顔がどアップでとらえられているショットである。


むろん二人、特にブリトニーは、その時は公開を目的としているわけではないヴィデオに映っているわけだから、ほとんどがすっぴんで、それをアップにされると、解像度がよくない家庭用ヴィデオ・カメラで撮影した映像であろうと、あちこちに吹き出物ができていたりするのがはっきりと見てとれる。さらに、百面相をしたりブタの鼻をしたりしているのだが、それを堂々と臆面もなく公開できるのは、スターとしての自信から来るのかそれともなんにも考えていないのか。たぶん後者だろうと思うが、心臓だなと思わざるを得ない。それにしても、パブリシティの写真やコンサートや人前に出る時のメイクがいかに上手かを改めて認識させてくれる。


そういう、ちょっとした本当の私生活を垣間見る楽しみはあるが、しかし、ただ、そういったおふざけやおのろけシーンが性懲りもなく延々と続くと、はっきり言って飽きる。どんなにブリトニーがスターでも、歌うわけでもダンスをするわけでもないブリトニーの、ただの化粧気のない顔のアップだけを延々と見て楽しんでいられるほどこちらも暇じゃないのだ。一瞬、Aクラス・スターの私生活を覗き見できると考えた視聴者の期待は、見事に裏切られたと言っていい。視聴者としては、番組の内容もAクラスを期待しているのだ。「オズボーンズ」ほどの意外性、フリークス性をどのスターも持てとは言わないが、せめてプライヴェイト・ヴィデオの垂れ流しはやめてくれ。


とはいえ、ところどころ爆弾発言なんかもあったりして、ケヴィンとのセックスは最高だとか、私が最も輝くのはセックスしている時、なんて堂々とブリトニーが発言しているのを聞くと、この女、バカか天才か、いや、やっぱりこれがスターというもんなんだろうと、ヘンに感心させたりもしてくれる。確か清純お色気路線で売り出したブリトニーが、煙草を吸っているシーンをとらえられただけでスキャンダル扱いになって、夜のニューズのトップ・ニューズになっていたのはたかだか昨年のことじゃなかったっけと思うのだが、それが「ケイオティック」では煙草はすぱすぱ吸うし、セックスの話題も豊富だ。これで二人が実際にセックスしているシーンさえ撮影して放送してくれたならば、あとの部分がどんなに面白くなかろうと我慢できたんだが。


「ケイオティック」は一と月間だけの短期集中放送だったわけだが、最終回では、サプライズで秘密裏に結婚式を挙げた二人の奮闘の模様と、現在、既に妊娠してお腹が大きくなっているブリトニーが登場するミュージック・ヴィデオ撮影の模様をとらえており、番組内でそのヴィデオ「サムデイ」が初放送される。つまり、結局「ケイオティック」は、ブリトニーとケヴィンの私生活をとらえた番組というよりも、全3時間の二人のプロモーション・ヴィデオと言った方がよほど的を得ている。たった数回しか放送されなかったのに、後の方ではブリトニーのファンからもつまらないと苦情紛々だったと聞く。当然といえば当然だろう。


実はこの種のセレブリティ・リアリティは、ブリトニーに限らず、最近ではAクラスに一歩及ばないくらいの程度のセレブリティも食指を伸ばし始めている。実際、自分は普段の生活をそのまましているだけでそれが金になるのならば、濡れ手に粟というものだろう。その種の番組で今、最も注目されているのは、ボビー・ブラウンの私生活をとらえたブラヴォーの「ビーイング・ボビー・ブラウン (Being Bobby Brown)」だと言える。


もちろんブラウンの私生活に興味があるというよりは、人々はその妻で、ドラッグのやりすぎでがりがりに痩せてしまったという噂の絶えないホイットニー・ヒューストンの方が気になるわけだが、たとえメインの登場人物ではなかろうと、今現在のホイットニーの素顔が見れるならば、それはめったにないチャンスだと人は思っているわけだ。さて、マイケル・ジャクソンのリアリティ・ショウはいったいいつ頃になれば見られるのだろうかと、ふと思ってしまう。






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