放送局: WB

プレミア放送日: 1/9/2003 (Thu) 21:30-22:00

製作: ブラス・リング・プロダクションズ、ゴー・シック・プロダクションズ、マインドレス・エンタテインメント、レネゲイド82プロダクションズ

製作総指揮: クリス・アブレゴ、マーク・クローニン、デイヴィッド・ガーファンクル、ジェイ・レンフロー、リック・テレス

監督: ローレン・アルヴァレス、エリク・フレミング、ジュリー・ヘムリン

出演: ゲイブリエル・カーテリス、コーリー・フェルドマン、MC ハマー、エマニュエル・ルイス、ジェリ・マンセイ、ヴィンス・ニール、ブランデ・ロデリック


内容: 既に過去の人となってしまった有名人を一同に集め、一つ屋根の下で生活させ、その一部始終をとらえるリアリティ・ショウ。


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リアリティ・ショウには数多くのサブ・ジャンルがある。クイズ・ショウ、デイト・ショウ、勝ち抜きサヴァイヴァル、タレント発掘番組等、それぞれに特色があり、それぞれに人気番組がある。最近の傾向としては、それらの幾つかが合体してさらにエンタテインメント性を高めようとしていることが挙げられる。その中で最近注目されているジャンルとして、セレブリティ系というものがある。


元々クイズ番組においては、有名人を大挙して登場させるセレブリティ・ヴァージョンが最も視聴率を稼ぐのは、今も昔も変わらない。「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア (Who Wants to Be a Millionaire)」 (ABC) や「ウィーケスト・リンク (Weakest Link)」 (NBC) においてもそうだったし、最近でも「ドッグ・イート・ドッグ (Dog Eat Dog)」 (NBC) で、セレブリティが登場する回が番組の目玉になっていた。クイズ番組ではない、体力勝負の勝ち抜きリアリティ、「フィア・ファクター (Fear Factor)」 (NBC) だってそうだ。


とはいえ、その種のリアリティ・ショウにおいては、セレブリティ・ヴァージョンはあくまでも客寄せの目玉として、たまさか編成される特番という位置づけでしかなかった。それがついに、MTVの大ヒット番組「ジ・オズボーンズ (The Osbournes)」辺りから、最初から最後まですべてセレブリティだけが登場する、セレブリティによるセレブリティのための、セレブリティ・オンリーのリアリティ・ショウが登場し始めたのだ。


まず「オズボーンズ」とほぼ時を同じくして、FOXがセレブリティに殴り合いをさせる「セレブリティ・ボクシング (Celebrity Boxing)」を製作、さらに一昨年に放送してそれなりの人気を得た「ブート・キャンプ (Boot Camp)」のセレブリティ版、「セレブリティ・ブート・キャンプ (Celebrity Boot Camp)」を昨秋放送した。これらはシリーズものではなく、一回こっきりの特番だったが、充分な話題を提供、「オズボーンズ」と共に、その後に続くセレブリティ番組の嚆矢となった (「セレブリティ・ブート・キャンプ」には、私も昔、ファンだったティファニーが出ており、思わず人選におおっと唸ってしまった。しかしティファニーは今ではごく普通のアメリカアメリカしたおばさんになっており、しかも番組自体は別に大して面白くなかった)。


「オズボーンズ」はまた、セレブリティに密着して、その私生活を白日の下に曝け出すという似たような企画を、雨後の竹の子のようにあちこちで生み出した。既にE!の「ジ・アナ・ニコール・ショウ (The Anna Nicole Show)」は、中身の質はともかく中堅ヒット番組として確立しており、これに味を占めたE!は、今度はセレブリティのデイト番組「スター・デイツ (Star Dates)」の放送を開始、また一方で、企画倒れで訴訟沙汰になったVH1の「ライザ&デイヴィッド (Lisa & David)」みたいな番組もあり、リアリティ・ショウの一つのジャンルを確立している (この辺りの詳細はこちらを参照)。


そして年が明け、ABCが「ザ・モール (The Mole)」のセレブリティ・ヴァージョンである「セレブリティ・モール・ハワイイ (Celebrity Mole Hawaii)」、WBがセレブリティの共同生活をとらえる「ザ・サーリアル・ライフ」の放送を開始、さらに、英国で放送され人気となった、セレブリティの勝ち抜きサヴァイヴァル番組の米国版である「アイム・ア・セレブリティ...ゲット・ミー・アウト・オブ・ヒヤ (I'm a Celebrity... Get Me Out of Here)」放送も始まるなど、この分野はにわかに活況を呈している。


セレブリティがゲストとして登場するクイズ番組と異なり、この種の番組ではセレブリティそのものが主人公となり、毎回番組を引っ張って行かなければならない。が、素人考えでもわかる通り、本当に今現在人気のあるスターがこの種の番組に出る気になるかというと、そんなことは100%あり得ない。わざわざ自分の価値をおとしめるようなものだからだ。もちろん「サバイバー」だってセレブリティ・ヴァージョンが企画されたことはあったし、実際、もし「サバイバー」にシュワルツネッガーやスタローンが出るとでもなったら、私だって万難を排してでも見るし、高視聴率は約束されているようなものだが、それが実現することはまずないだろう。それで結果として、この種の番組は、「過去の」セレブリティ、あるいは2線級、B級のセレブリティばかりが登場することになる。


「サーリアル・ライフ」 (ここは日本語風にシュール・ライフとでも呼んだ方が感じが出るんだが) は、やはりB級セレブリティ7人が、10日間、一つ屋根の下で共同生活を送る様をとらえたリアリティ・ショウである。見知らぬ他人同士の共同生活というと、どうしてもCBSの「ビッグ・ブラザー」を思い出さずにはいられないが、「サーリアル・ライフ」は「ビッグ・ブラザー」のように参加者が一人ずつ追放されていく勝ち抜きゲームでもなければ、賞金がかかっているわけでもない。どちらかというと、「オズボーンズ」に近いと言える。あるいは、セレブリティ版の「リアル・ワールド (Real World)」と言ってもいいかもしれない。


その番組参加者はというと、MCハマー、エマニュエル・ルイス、ブランデ・ロデリック、コーリー・フェルドマン、ゲイブリエル・カーテリス、ヴィンス・ニール、ジェリ・マンセイの7人。この全員をすぐに誰が誰だか言い当てられる人は、よほどの芸能通だ。「ユー・キャント・タッチ・ディス」が世界中でヒットしたMCハマーは、まあ、30代以上であればだいたいの人が知っていると思う。エマニュエル・ルイスも、一時マイケル・ジャクソンとセットで有名となったあの坊や (今では30代だが) と言えば、これまた、あああれかと思い出せるだろう。


ブランデ・ロデリックは「ベイウォッチ・ハワイイ」出身で、ゲイブリエル・カーテリスは「ビバリーヒルズ青春白書」で、優等生アンドレアを演じていた。ヴィンス・ニールは、メタル・ファンからは神様のように崇められているモトリー・クルーのヴォーカルなんだが、一般の人は、やはり名前を聞いただけではぴんとこないかもしれない。ジェリ・マンセイは「サバイバー2」でビッチとして有名になった、最も新しいセレブリティだ。そのため、どちらかと言うと、今ならもしかしたら彼女が最も知名度があるかもしれない。


コーリー・フェルドマンは「グーニーズ」、「グレムリン」、「13日の金曜日」シリーズ等に出演しているが、最も印象的だったのは、「スタンド・バイ・ミー」の多感な少年テディ役だろう。とはいえ、それでも「スタンド・バイ・ミー」は誰の目から見てもリヴァー・フェニックスの映画だったし、コーリーを覚えている者は多くはあるまい。要するにやはり彼も文句なしに今では忘れられたB級セレブリティであるわけだ。


これらの映画界、TV界、音楽界から寄せ集められたスターもどきのセレブリティを集め、共同生活を送らせるわけだが、しかし、B級とはいえ、彼らはやはり元有名人、「ビッグ・ブラザー」のように、一緒に暮らしている間にできちゃったなんてカップルが出現する確率は低そうだし、ヘンにカメラ慣れしている人間を見るのが面白いかどうかは、すこぶる疑問だ。いきなりカメラを意識して受けに走るなんてことはないだろうな。日本の下手なヴァラエティ番組みたいになっていたらどうしよう。こんな番組を見る意味があるのだろうか。


と思いながら見始めたのであるが、これが結構面白いのだ。「オズボーンズ」や「リアル・ワールド」とは、また違った面白さがある。特に「サーリアル・ライフ」では、番組を面白くしているのがコーリー・フェルドマンであるということは論をまたない。彼は本当に「スタンド・バイ・ミー」でのテディさながらのセンシティヴな人間であるようで、すぐ泣くよく泣く。寂しいといっては泣き、誰それと意見が合わないといっては泣く。周りの人間も呆れたり苛立ったりしているのだが、だからこそ番組としては面白くなった。


プレミアの回では、ヴェジタリアンのコーリーが、皆と食うものが合わなくていきなり揉める。ヴェジタリアンならヴェジタリアンで、自分だけ野菜を食って他の者が食うものには口出ししなければいいものを、動物は食べられるために生きているわけではないと言い出して、他の人間と言い合いになる。あるいはゲイブリエルやジェリからシカトされたりする。彼女らが頭に来てるのが第三者にははっきりわかるのに、それを気づかず自分の意見を口にして場を白けさせるやつ、こんなやつ、どこにも必ず一人はいるよなあ。あんたがヴェジタリアンなのはわかったからさ、ちょっと黙っててくれる? あるいは、最初からこんな番組になぞ出るべきではなかったのだ。要するに彼は、センシティヴというよりは、単なるわがままの泣き虫なのだな。


さらにこの日のディナーは、屋外でテーブルの上に横になった裸の美女の上に寿司を並べ、それをいただくという演出で、今度はこれを見て、今は伝道者として第2の人生を歩んでいるハマーが気分を害する。女性を食器に見立て、その上に食べ物を置くという行為が、彼の道徳概念を著しく害したのだ。エマニュエルも生ものは受けつけないだけでなく、コーリーも魚もダメなようだ。結局男性陣では唯一ヴィンスだけが、我関せずという感じでうまそうに寿司をぱくつき始める。女性陣はゲイブリエルもブランデもジェリも演出と割り切ってうまそうに寿司を食っている。身体の上に葉っぱを置いて、その上に置いてある寿司は、とっとと食わないとネタの新鮮さが失われてしまうので、これはもう、とにかく早く食うにこしたことはないのに。結局ハマーとエマニュエルとコーリーは、出前のピザがこの日の晩飯となった。初日から先が思いやられることで。


「サーリアル・ライフ」はこの泣き虫コーリーを主体として進み、思わぬ展開として、現在婚約中のコーリーが、彼らの共同生活の最終日、すなわち番組の最終回で、そのフィアンセのスージーと結婚式を挙げるということになった。番組は既にこの最終回の放送を終えているのだが、私が最初、コーリー、おまえ、いったい何を考えているんだと驚いた、彼らが共同生活を営んでいる一軒家の裏庭で行われた結婚式が、実はかなり感動的だった。


アメリカのドラマやシットコムでは、登場人物のウェディングが番組の重要な節目となって、大々的に宣伝したり、実際にかなり高い視聴率を獲得する場合が多い。私は本当のところを言うと、あまりにもそういうのを見過ぎたために、番組内での視聴率稼ぎのためのウェディングというのには食傷気味である。今回も、ドラマの中の作り事ではなく正真正銘本物の現実であろうとも、別に赤の他人の結婚式なんてどうでもいいんだけどなあと思っていた。


しかし、よく考えると、このメンツ、牧師 (伝道師) もいれば歌手 (メタル・シンガー) もおり、その他ダンサーもモデルも役者も、エンタテイナーが勢揃いしているという、この種のお祭りごとにはまたとない面々が揃っている。さらに感激屋のコーリーに、やはり一生に一度のイヴェントということで緊張している新婦が加わって、TVウェディング慣れしている私にとっても、なかなか印象的なウェディングを演出してくれた。最近の演出過剰のドラマのウェディングよりも、よほど面白かった (しかしコーリーが着ていた、あのニッカーボッカーみたいな花婿衣装はなんとかしてくれと思ったが)。


「サーリアル・ライフ」はこのようにわりと面白かったので、結構口コミで話題となり、それなりの数の視聴者が見たため、WBは強気になり、既に第2弾製作を決めている。しかし、この種の番組は、人選がすべてである。特にこの第1シーズンで一人で番組を盛り上げていたコーリーのような参加者を見つけられるかが、第2弾も成功するかの鍵となろう。私の印象から言うと、それはかなり難しいんではないかという気がするんだが。







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The Surreal Life

ザ・サーリアル・ライフ   ★★★

 
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