放送局: FOX

プレミア放送日: 6/16/2004 (Wed) 20:00-20:30, 21:00-21:30

製作: 20世紀FOX TV、ブニム-マーレイ・プロダクションズ

製作総指揮: ジョナサン・マーレイ

共同製作総指揮: ケヴィン・リー

製作: パトリック・マーフィ、ロス・ブライテンバック、スコット・ヴィラ、ニコール・ヴォリアス、ベン・ソールター

共同製作: ローラ・コーコイアン、クローディア・フランク、シンシア・マツガー、ロス・マッコールアーロン・ピーターズ

出演: パリス・ヒルトン、ニコール・リッチー


内容: 昨冬放送され、人気を博したリアリティ・ショウの第2シーズン。


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アメリカのネットワークの2003-04年度シーズンで最も話題になったリアリティ・ショウの新番組は、誰の目から見てもNBCの「ジ・アプレンティス (The Apprentice)」であることは間違いない。しかし、視聴率という点ではせいぜいその半分くらいしか稼いでないのにもかかわらず、話題性という点から見れば、「アプレンティス」に勝るとも劣らないほど注目された番組があった。それが「シンプル・ライフ」だ。


「シンプル・ライフ」は、ホテル王ヒルトン家の長女パリスと、ミュージシャン、ライオネル・リッチーの長女ニコールという、最近の甘やかされている女子供の中でも特にスポイルされていると思われる二人を、アーカンソーのド田舎で共同生活させてみる様をとらえたリアリティ・ショウだ。最近ちょっとした流行りの、セレブリティ本人ではなく、そのセレブリティの子供、あるいは弟妹近親縁者を主人公にしてみた番組である。


「シンプル・ライフ」は、当初、昨年8月にプレミア放送が予定されていた。プレミア放送日も早くから発表になっていた。しかし、たぶん、でき上がった番組がしょうもないものだったのだろう、番組は12月まで放送が延期された。その後、番組は編集に編集を重ねて引き締めを図ったと思われる。あるいは、他の同様のセレブリティ系番組が既に出尽くした後に放送することによって、漁夫の利を狙ったのかもしれない。また、その近辺でニコールの麻薬所持問題が起こったので、その辺のスキャンダルを避けたという見方もできる。


いずれにしても、そして延期されたプレミア放送日が近づくにつれて、番組にとってはまたとない僥倖が起こった。それがパリスのHヴィデオ漏洩スキャンダルであることは言うまでもない。このスキャンダルは、パリスが昔、当時のボーイ・フレンドであるリック・サロモンとHしているところを録画したヴィデオが、インターネットを介して瞬く間に全米中に広まったというもので、昨年暮れ、私のe-メイル・アドレスには、このヴィデオをストリーミングで売りますというジャンク・メイルが、多い時は一日何十通も送られてきたほどだ。


この事件が、番組にとってまたとないパブリシティになったことは疑いの入れようがなく、あっという間にパリス・ヒルトンという名前は、お茶の間で家族が話題にするほどの固有名詞となってしまった。そういう時に放送が始まった「シンプル・ライフ」に人々が興味を惹かれたのも当然だろう。番組は瞬く間に、ヒット番組の仲間入りをしてしまったのであった。


私は、このスキャンダル、早くからパリスのHヴィデオを手に入れていたFOX関係者が、意図的にそのヴィデオ「One Night in Paris」を漏洩したものと睨んでいる。さもなければ、こんな見事なタイミングでこんな事件が起こるとは到底思えない。あきらかに何者かが裏で手引きしたという感じが濃厚にするのだ。ついでに言うと、パリスおよびヒルトン家は、サロモンとヴィデオのディストリビューターを訴え、今度は逆にサロモンが名誉毀損でヒルトン家を逆訴訟するなど、事態は泥沼化していたのだが、このたび、ヒルトン家は正式に訴訟を取り下げた。たぶん、これ以上事態を悪化させることに何の意味もないことに気がついたのだろう。あるいは、穿った見方をすれば、もう充分元を取るほどのパブリシティを得たと感じたか。


そういうわけで注目度の高かった「シンプル・ライフ」は、昨年成功したリアリティ・ショウの一つとなった。その第2シーズンとなる今回は、今度は、フロリダからハリウッドまで、キャッシュもクレジット・カードも持たないパリスとニコールの二人が、途中で日銭を稼ぎながらキャンピング・カーで旅していく様をとらえる。


しかしこの番組、昨年プレミアを見た時から、私はまったく好きになれなかった。それどころか、私の目から見ると、腹が立つとしか言いようがなかった。本当に、こいつら、スポイルされて育てられてきた、ただのバカのねーちゃんにしか見えない。おつむに脳みその代わりに犬の糞が詰まっているんじゃないのか。番組は、その、くるくるパーのパリスとニコールが、常軌を逸した言動で周りの者を唖然とさせる様をとらえるのだが、正直言って、社会を舐め切ったその態度は、不愉快以外の何ものでもない。


しかし、その番組がわりと人気があるということは、つまり、見方を変えるとそれなりに面白くないこともないというわけで、つまり、視聴者がパリスとニコールに同化して周囲を煙に巻くことに快感を覚えることができるなら、確かに見てて面白くないわけでもないのだ。たぶん、この番組を見て素直に面白いと感じるのは、同年代の視聴者、および、こういう孫にねだられると嫌と言えないおじいちゃんの年代であると思われる。実際、番組内では、年輩の者ほど彼女らの我が儘によろしく付き合ってあげているようだ。


一方、私のような、彼女らと同年代でもなく、若い子を甘く見てやるほど歳も行ってないくらいの年代の者から見ると、こういった我が儘し放題のバカ娘たちは、ただただ腹に据えかねる。天誅を食らわせてやるべきだと思う。第2シーズンのプレミアでは、いきなり所持金なしでキャンピング・カー共々放り出されたパリスとニコールが、金を一銭も持ってないことを知りながら、通行料金の要るフリーウェイの窓口につけて、金が払えないためにつっかえて、後ろに渋滞を引き起こしてしまう。まさか窓口の係員もそんなやつ、これまで一度も経験したことがなかったんだろう、「オー・マイ・ゴッド」を繰り返すだけで、ではどうしたらいいかというと、ちょっといい案がひねり出せない。


そのうちニコールは助手席から外に出て (運転しているのはパリスだ)、その辺を通過する車のお兄ちゃんたちにお金をせびり出すのだ。一応、若いねーちゃんに頼まれ、その後ろでカメラが撮影しているもんだから、にーちゃんたちは多少なりともいいところを見せようと乞われるままに2ドル、3ドルとニコールに手渡している。しかし、その間にもどんどんキャンピング・カーの後ろには列ができ、クラクションが鳴り止まない。もし私が運悪くこいつらの後ろでつかえてしまって、もしたまたまグローブ・コンパートメントに弾を装填してある銃が入っていたなら、こいつらは今頃棺桶の中だ。


いったい、世の中に不愉快なことは多いが、スーパーマーケットで並んだキャッシャーで、あと一人という時に前に並んでいたばばあがいきなり小銭を数え出してもたつく時と (だいぶ前から合計金額は表示されてんのに、レジの子が商品をプラスティック・バッグに詰め終わるまで何もせず、また、そういうやつに限ってこの値段はおかしいだのなんだのとごねる)、ここが一番すいていそうだなと並んだフリーウェイの料金所の窓口で、やはり前の方でなんだかごたごたがあって、他のレーンの車が流れているのに自分が並んだレーンが流れない時ほど頭に来ることはない。その理由が金を持たないドライヴァーのせいにあり、そいつが他のドライヴァーに金を無心しているなどとなったら、世の中のドライヴァーの半分以上はそんなやつ撃ち殺してしまえと思うだろう。こんなやつらがいるからロード・レイジなんていうのが社会問題となるのだ。


パリスとニコールの我が儘ドライヴはその後も続き、ガスがなくなってきたため、通りがかりのガス・ステーションでガスを入れようとするのだが、キャンピング・カーのようなでかい車を乗り回したことのないパリスは、ポンプ前にうまく車を寄せられず、これも近くにいる他人任せ。コンビニの中では、今度はニコールがやっぱりガス代を人にせびっている。しかし、やっぱり、若い女の子とTVカメラがセットになると、普通の男性というものはついつい何がしかのお布施をしちゃうんだよねえ。


さて、二人はその後、とある牧場に落ち着くのだが、実はその牧場で、馬に乗ったパリスが馬を速く走らせすぎた挙げ句、落馬してしまう。甘ったれのクソねーちゃんであるが、しかし仮にもヒルトン帝国の世継ぎ娘である。落馬といっても命に別状はなく、ケツの下に大きな打撲傷があるだけなのだが、すぐさまヘリコプタが呼ばれ、緊急入院と相成った。これは実際に起こった事故であり、パリス、番組撮影中に緊急入院とかで、この春、わりと大きく報道されるニュースにもなった。FOXは一瞬真っ青になったと思うが、すぐに考え直し、その時の報道合戦の模様をも含めて番組にまとめてしまった。転んでもただでは起きないこの根性はさすがである。別に私としては、落馬したパリスがそのまま人事不省になって、番組が打ち切りになってしまってもまったくかまわなかったのだが。





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