ハリー   Harry 

放送局: シンジケイション (NYではFOX) 

プレミア放送日: 9/12/2016 (Mon) 16:00-17:00 

製作: HCプロダクションズ、カーツィ・プロダクションズ 

製作総指揮: ジェイソン・クルツ、ハリー・コニックJr.、エリック・スタンジェル 

ホスト: ハリー・コニックJr. 

 

内容: ハリー・コニックJr.がホストの日中トーク・ショウ。


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Harry


ハリー  ★★1/2

近年、平日日中に編成されるシンジケイション番組においては、疑似法廷番組の「ホット・ベンチ (Hot Bench)」をほぼ唯一の例外として、これといった成功した番組は現れていない。ホストの知名度が高かったトーク・ショウの「ケイティ (Katie)」「ザ・メレディス・ヴィエイラ・ショウ (The Meredith Vieira Show)」等も、長続きしなかった。 

 

一方、かつて平日日中の定番と言えた、時間のある婦女子を相手とするソープ・オペラもどんどん淘汰されて消えて行きつつある。結果として増えているのはニューズで、現在ABCは夕方4時から7時まで3時間ニューズだし、NBCも5時から2時間ニューズだ。この分だとCBSやFOXがこの流れに追随するのも時間の問題という気がする。 

 

今シーズンのシンジケイションでは、ミュージシャンのハリー・コニックJr.がホストの「ハリー」と、プロのシェフのロバート・アーヴァインがホストの「ザ・ロバート・アーヴァイン・ショウ (The Robert Irvine Show)」の2本のトーク・ショウが投入された。 

 

「ロバート・アーヴァイン・ショウ」はプロのシェフ兼ライフ・コーチのロバート・アーヴァインが、人々の様々な悩みや問題を聞くもので、感じとしては「ドクター・フィル (Dr. Phil)」路線を狙っているもののようだが、でき上がったものは、限りなくやらせ横溢の「ジェリー・スプリンガー・ショウ (Jerry Springer Show)」に近い。 

 

一方、「ハリー」ホストのハリー・コニックJr.は、ジャズ界では結構知られたピアニスト/ヴォーカルであり、俳優としても活動している。しかしその知名度が一気に広まったのは、なんといっても2014年、FOXの勝ち抜きシンギング・コンペティション「アメリカン・アイドル (American Idol)」のジャッジとして抜擢されてからだろう。 

 

「アイドル」は、当時既に人気に陰りが見えていたとはいえ、まだまだ視聴率上位の常連だった。ジャッジに起用されたコニックJr.とジェニファー・ロペス、キース・アーバンの3人は結構相性がよかったようで、なかなかよかった。実はわりとお笑い系の入っているコニックJr.はなかでもコミック・リリーフ的位置付けで「アイドル」を盛り上げた。「ハリー」は「アイドル」がなければ企画が生まれなかったのは間違いない。 

 

日中トークの場合、特にこの時間帯にTVを見ている女性陣にアピールできなければ、成功は覚束ない。それでよくホスト自身の家族もステュディオに現れ、ファミリー志向であることを強調する。「ハリー」でも奥さんのジルがちゃんとステュディオに座っており、コニックJr.も彼女に感謝して I love you を連発する。日本人の感覚からしたらやり過ぎと思わないこともない。 

 

番組第1回のゲストはサンドラ・ブロック。コニックJr.とブロックは、かつて「微笑みをもう一度 (Hope Floats」で共演している。コニックJr.は、実はかつては肉体派カントリー・ボーイという位置付けで売ろうとしていたこともあったのだった。 

 

当時既に人気女優だったブロックに対してコニックJr.はほとんど無名に近く、自分がオーディションでどれだけ印象を残したかどうかが気がかりでしょうがなく、ブロックの自家用ジェットに乗り込んで、経過をなんとか訊き出そうとトライしたらしい。するとブロックはブラウスのボタンを外して脱ぎ始めたので、かなり焦ったところ、ブラウスの下から現れた素肌のお腹の上に「You got the part (あんたで決まり)」と書いてあったという裏話を披露。こういう実話の方がよほど映画っぽい。 

 

後半はビューティ・パーラーを経営して子育てもこなすスーパーマザーを紹介、続いてラッセル・クロウやクリスティン・ベル、ゾーイ・デシャネル、ジョン・ステイモスといったセレブリティがカメオ出演し、おしゃべりする体裁でコニックJr.がギャグをかます。最後は自分の新アルバムから「(アイ・ライク・イット・ウェン・ユー) スマイル ((I Like It When You) Smile)」を披露。実を言うとやはりしゃべりよりも音楽の方が水を得た魚という感じで、本業という感触が強い。 

 

番組第2回のゲストは現在FOXの「エンパイア (Empire)」に出演中のテレンス・ハワード。ハワードはギターがうまく、コニックJr.のピアノと共演。それ以外にも、ステュディオ内の客とラップを歌ったり、マーチング・バンドを呼んで演奏させたりと、音楽をふんだんに使う展開。正直言って、その方がコニックJr.の強みも活かせていいと思う。 

 

NBCの深夜トークでジミー・ファロンがホストの「ザ・トゥナイト・ショウ (The Tonight Show)」も、本人が音楽好きだけあって、音楽を絡ませるコーナーが最も面白く、できがいい。また、元々時事政治ネタ志向だったジョン・スチュワートの「ザ・デイリー・ショウ (The Daily Show)」(コメディ・セントラル) 出身のジョン・オリヴァーの「ラスト・ウィーク・トゥナイト (Last Week Tonight)」(HBO)、スティーヴン・コルベアの「ザ・レイト・ショウ (The Late Show)」は、やはり政治をこき下ろす時が最も冴える。コルベアなんて、毎回ほぼ必ず冒頭のモノローグの最初の10分くらいを、ドナルド・トランプを罵倒することに費やす。よくもまあ毎回毎回こんなにバカにしまくって罵倒ネタが尽きないと思うくらいだ。 

 

しかしコルベアは、実はその部分が番組としては最も面白い。つまり、やはり自分の得意分野で勝負している時が最も面白いのだ。コニックJr.も、本人がピアノを弾いて歌っている時もそうなら、音楽のできるゲストと一緒にプレイしている時が最も興味深い。この辺りの強みを生かして番組作りができるなら、ファロンの「トゥナイト」のように成功できるかもしれない。 









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