ザ・デイリー・ショウ・ウィズ・ジョン・スチュワート   The Daily Show with Jon Stewart

放送局: コメディ・セントラル

プレミア放送日: 1/11/1999 (Mon) 23:00-23:30

最終回放送日: 8/6/2015 (Thu) 23:00-23:30

製作: コメディ・セントラル

製作総指揮: ジョン・スチュワート

ホスト: ジョン・スチュワート


内容: 17年間続いた、ジョン・スチュワートがホストの深夜トーク・ショウの最終回。


_______________________________________________________________

The Daily Show with Jon Stewart


ザ・デイリー・ショウ・ウィズ・ジョン・スチュワート  ★★1/2

「ザ・デイリー・ショウ」は、アメリカの深夜トーク界においてかなりヴェテランの部類に入る。元々のホスト、クレイグ・キルボーンによる番組第1回が始まったのが1996年のことだから、今年20シーズンを迎える、ヴェテランもヴェテランだ。


その後1999年にキルボーンがCBSに引き抜かれて「ザ・レイト・レイト・ショウ (The Late Late Show)」ホストに就任、代わってホストに就いたのが、ジョン・スチュワートだ。スチュワートによる「デイリー・ショウ」は、その後かなりポリティカルな方向へと方針を転換する。


2000年代前半においては、深夜トークといえば、ジェイ・レノがホストのNBCの「トゥナイト (Tonight)」と、デイヴィッド・レターマンのCBSの「レイト・ショウ (Late Show)」がまず何はともあれ双璧で、それらに深々夜のNBCのコナン・オブライエンがホストの「レイト・ナイト (Late Night)」、CBSのキルボーンの「レイト・レイト・ショウ」を足したネットワークの四天王が、深夜トークを代表していたと言っても過言ではない。


ケーブル・チャンネルのコメディ・セントラルが編成する「デイリー・ショウ」は、いかんせん視聴率という点ではネットワーク番組には及ばなかったが、しかし業界や若者受けはよかった。2002年からの連続エミー賞受賞という実績も、そのことを証明している。因みにABCの「ジミー・キメル・ライヴ (Jimmy Kimmel Live)」が始まったのが2003年、「デイリー・ショウ」スピンオフのスティーヴン・コルベアがホストの「ザ・コルベア・レポート (The Colbert Report)」が始まったのは、2005年だ。


私の場合、残念ながらこれらの番組のうち、コメディ・セントラルによる2本、「デイリー・ショウ」と「コルベア・レポート」は、ほとんど見ていない。これは番組の出来不出来というよりも、この時間はニューズ番組を見るという、私のルーティーン・スケジュールを崩す気になれなかったという個人的な理由から来ている。


現在のようにDVRが広く普及しているわけではなく、リモートのボタン一つで裏番組でも新エピソードはすべて録画してくれるという便利なものがなかった時代、どうしてもある番組を見るためには、裏番組は犠牲にならざるを得ない。私の場合、一日のニューズは夜11時からのネットワークのニューズを見て、その後深夜トークを見ることが慣習化しており、そのルーティンを崩してまで11時からの「デイリー・ショウ」を見る気がしなかった。「デイリー・ショウ」を見るためにはニューズは、例えば10時からのFOXやCNN等を見なければならなくなるが、しかしそうするとだいたい面白いドラマが固まる三大ネットワークのドラマを見逃すことになる。「デイリー・ショウ」を見ることは、当時鉄板の面白さだったNBCの「E.R.」を見逃すことを意味するわけで、私にとってそこまでする魅力は、「デイリー・ショウ」にはなかった。


また、やたらとポリティカルな視点を番組に持ち込むスチュワートの「デイリー・ショウ」は、風刺が利いていて、見るとははんと思わせられることは確かではある。とはいえ、そこで笑うためには現在のアメリカの政治状況に通じている、とは言わないまでも、一般的な前知識は持っている必要がある。しかし、ノンポリの私の場合、固有名詞を知らない場合が多く、ポリティカル・ジョークにあまり笑えない。それに、いつ見てもやたらと叫んでいる暑苦しいおっさんという印象が強いスチュワートのホスティング・スタイルは、私にはあまりアピールしなかった。というわけで、私はほとんどの場合、「デイリー・ショウ」の時間帯はネットワークのニューズを見ていたのだった。


その「デイリー・ショウ」を降りるというスチュワートの発表があったのは、今春のことだ。盟友のコルベアがレターマンの後継者として「レイト・ショウ」を継ぐために「コルベア・レポート」を去ってすぐのことで、これでコメディ・セントラルの深夜トークも大きな変革期を迎えることになった。


「デイリー・ショウ」は安定した人気があったから、スチュワートの降板のニューズは意外ではあったが、レターマンが「レイト・ショウ」を辞めると言った時ほど電撃的だったわけではない。なんとなればスチュワートは一昨年、自身が監督する映画「ローズウォーター (Rosewater)」撮影のために、「デイリー・ショウ」をかなり長い間休んで中東に行っている。その間の「デイリー・ショウ」ホストは、現在HBOで「ラスト・ウィーク・トゥナイト・ウィズ・ジョン・オリヴァー (Last Week Tonight with John Oliver)」ホストに就任しているジョン・オリヴァーが担当した。そんなことがあったから、スチュワートが何か、「デイリー・ショウ」以外のキャリアを考えていてもおかしくないという雰囲気は、確かにあった。業界の反応も、やっぱりという感じなのが結構あった。要するにこの辺が潮時だと思ったのだろう。


番組が最終回を迎える週のゲストは、月曜がエイミー・シューマー、火曜デニス・リアリー、水曜がルイス・C.K.。木曜の最終回はゲストというゲストはいないが、当然のように様々な関係者が現れて別れを惜しむ。ちょうどこの日は共和党の大統領候補のディベートの第一回に当たっており、クリーヴランドから中継という設定の元、番組のコレスポンデントが大挙して登場、その中にはスティーヴ・キャレルもいる。「デイリー・ショウ」の次期ホストに決まっているトレヴァー・ノアも顔を出したと思ったら、初代ホストのキルボーンまで姿を現す。結構老けてて一瞬誰だかわからなかった。


実際の政治家も多く顔を見せて一言述べる。ヒラリー・クリントン、ジョン・ケリー、ジョン・マッケイン、クリス・クリスティ等々。そしてエド・ヘルムズが現れ、ジョン・オリヴァーが登場し、最後に出てきてあつい労いの言葉をかけるのは、もちろんスティーヴン・コルベアだ。スチュワートも思わず言葉を詰まらせる。


最後だからお祭り気分で終わるかなと思ったが、モノローグでは「If you smell something, say something(キナ臭いものを感じたら、発言しろ)」と、当然っちゃあ当然だが最終回もいつもながらにスチュワートのテンションは高く、いつもの暑苦しいおっさんという印象から変わらない。


私にとって最終回で最も印象的だったのは、1シーン1ショットの移動撮影のように番組スタッフを全員紹介したセグメントで、途中マーティン・スコセッシも登場してスチュワートに一言述べる。全員を紹介したカメラがそのままステュディオに入っていくとそこでは観客が待っていて、ショウが始まるという趣向。


最後を締めたのは御大ブルース・スプリングスティーンで、「ランド・オブ・ホープ・アンド・ドリームス (Land of Hope and Dreams」と、「ボーン・トゥ・ラン (Born to Run)」を歌う。すでに番組予定時間を大幅に超過していて、どうやらスプリングスティーンは一曲歌って終わりだろうと思っていたようで、もう一曲、みたいな指示が出て驚いている風だった。30分番組のはずが、結局1時間近くかかった。コメディ・セントラルもスチュワートへの餞として、カットするなど手を入れることはほとんどしなかったようだ。


スチュワートは「レイト・ショウ」を辞めた後、しばらくしてプロレスのWWEのリングに乱入して椅子を振り回して暴れて、ニューズになっていた。どうやら今のところは自由を満喫しているらしい。もしかしたらプロレスラー、ジョン・スチュワートの姿を見れるのも、遠い未来の話ではないかもしれない。しかし、それにしてもスチュワートって、先代中村勘三郎そっくり。勘三郎も癇癪持ちっぽかったからなあ。










< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system