ザ・レイト・ショウ・ウィズ・スティーヴン・コルベア  

The Late Show with Stephen Colbert

放送局: CBS

プレミア放送日:  9/8/2015 (Tue) 23:35-0:35

製作: スパルティナ・プロダクションズ

製作総指揮: スティーヴン・コルベア、ジョン・スチュワート

ホスト: スティーヴン・コルベア

バンド・リーダー: ジョン・バティスト


内容: 新ホストが就任した「レイト・ショウ」。


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The Late Show with Stephen Colbert


ザ・レイト・ショウ・ウィズ・スティーヴン・コルベア  ★★1/2

面白いもので前任のデイヴィッド・レターマンがホストをしていた時の「レイト・ショウ」は「Late Show」なのに、スティーヴン・コルベアに代替わりした「レイト・ショウ」は、「The Late Show」と、定冠詞がつく。これは後ろにつく「デイヴィッド・レターマン」が固有名詞で、「スティーヴン・コルベア」が一般名詞ということか。


などという個人的な疑問はともかく、ついにスティーヴン・コルベアがホストの「レイト・ショウ」は始まった。昨年ジミー・ファロンがNBCで「トゥナイト (Tonight)」ホストに就任した時は、ファロンは既に直後の時間帯で長らく「レイト・ナイト (Late Night)」を経験していたこと等もあって移行はスムーズだったことに較べ、今回は一介のケーブル・チャンネルからネットワークへの移動、架空の人物によるホストという番組体裁からコルベア本人の登場等、大きな変革が見られたため、ファロンの時よりも今回の方が注目されていたという感じがする。特に、アメリカを代表するパーソナリティの一人であるデイヴィッド・レターマンの後を継ぐということは、米深夜トーク界において大きな出来事だし、CBSも派手に番宣を展開してバックアップした。


その注目された番組の第1回、オープニングのモンタージュではコルベアが名も知らぬ一般人共々、各地でベイスボールの始球式よろしくアメリカ国家を歌う。深夜トークのホストは、ジミー・ファロンやCBSの「ザ・レイト・レイト・ショウ (The Late Late Show)」(こちらも定冠詞つきだ) のジェイムズ・コーデンにせよわりと歌える者が多く、実はコルベアも思いがけずも結構歌が上手いという印象を持っていたのだが、この時はたぶんわざと調子を外して歌っていたようだ。そして国家斉唱が終わり、ベイスボールのグラウンドでマスクを外して「プレイ・ボール」と宣言したのは、コメディ・セントラルで「ザ・デイリー・ショウ (The Daily Show)」を辞めたばかりの、かのジョン・スチュワートだったという趣向。


カメラがステュディオに切り替わると、コルベアが足を振り上げライン・ダンスよろしく踊りながら登場、ピアニカを吹きながらコルベアと共にステュディオを所狭しと一緒に踊り回るのは、バンド・リーダーのジョン・バティスト。演奏はステイ・ヒューマンだ。観客もスティーヴン、スティーヴンと声を上げて盛り立てる。


歓声が治まりコルベアのモノローグがはじまる。と、ステュディオ最前列に座っているCBSのCEOレスリー・ムーンヴェスにコルベアが気づく。ムーンヴェスはデスクの上のレヴァーを握っていて、左右に振れるようになっている。右に振れると「レイト・ショウ」、左は「メンタリスト (Mentalist)」と記されていて、もしコルベアのショウが面白くなかったら、即座に放送を「メンタリスト」に切り替えると宣告する。コルベアがなおも突っ込もうとすると、間髪を入れずにムーンヴェスはレヴァーを操作、すると実際に番組は進行中の「メンタリスト」に切り替わってしまった。なかなかきついジョークだ。


通常、番組のテーマを演奏するモンタージュは番組冒頭に入るものだが、「レイト・ショウ」はコルベアが一通りオープニングのモノローグを終えてから始まる。このモンタージュがなかなか秀逸で、実際の撮影にCGやたぶんミニチュア・モデルも合成してあると思うのだが、芸コマでよくできている。その後、デスクの後ろに座り直してからのジョークには、かなりの時間をドナルド・トランプを揶揄することに割く。新番組になっても、やはりポリティカル・ジョークが多いことには変わりないようだ。


番組第1回の栄えある最初のゲストは、ジョージ・クルーニー。レターマンの「レイト・ショウ」最終回からまだ引きずっているという感じ。いずれにしても深夜トークの節目に登場するパーソナリティは、クルーニーかトム・ハンクスというのが定着しつつある。その次に登場したゲストは、共和党の大統領候補のジェブ・ブッシュ。最後はバティストとステイ・ヒューマンがメイヴィス・ステイプルス&フレンズを迎えて、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「エヴリデイ・ピープル (Everyday People)」を歌う。


これで終わりではなく、最後、無事第1回の収録を終えたコルベアがロッカー・ルームでネクタイを外して帰宅しようとすると、そこにいたのは同僚、というか裏番組のライヴァルのファロンで、コルベアがお先に、とファロンの肩を叩いて退出する。ネットワークが違うのに同じロッカー・ルームを使っているのか。と思ったら、このロッカー・ルームはネットワークの壁を超えて深夜トークの歴代ホストが使っているようで、見知った名前のタグがそれぞれのロッカーに掲げられている。ま、「トゥナイト」を収録している6番街のロックフェラー・センターと「レイト・ショウ」を収録しているブロードウェイのエド・サリヴァン・シアター間は、徒歩10分もかからない。


直後編成の「レイト・レイト・ショウ」ホストのコーデンは、レターマンの「レイト・ショウ」最終回の時、わざわざLAからNYまで出張ってきていた。今回はLAを離れないが、それでもやっぱり自分の番組の中で色々とコメントする。というか、明らかに自分の時と較べてCBSの番宣のバックアップに差があり、「レイト・ショウ」の方が推されている。それで拗ねてたりしている。「レイト・レイト・ショウ」は番宣は自分でしなければならなかった、と、コーデン自身がLAの街中で手書きの看板を持って広告宣伝に努めていたりするのだった。


これまでのところ、番組としての最も印象的な事件は、番組内ではなく、TVに映らなかったところで起こっている。コルベアが翌日番組第2回の冒頭で明らかにしたところによると、プレミア・エピソードを収録したコンピュータが放送直前までクラッシュを繰り返したため、一時は放送を諦める直前まで行ったそうだ。放送に間に合ったのは僥倖だったらしい。コルベアは職を失うことも考えたようだ。


また、3日目に話題の新タクシー・サーヴィスのウーバー (Uber) のCEOトラヴィス・カラニックがゲストとして招かれた時、ステュディオ内にいたイエロー・キャブの関係者からかなり野次られ、収録をやり直せざるを得なかったということだ。そこをコルベアがうまくとりなして事なきを得たそうだが、当然その部分は放送時にはカットされていた。しかし一視聴者としては、それこそを見たかった。



放送第1週の番組ゲストは以下の通り:


9月8日 (火): ジョージ・クルーニー、ジェブ・ブッシュ、メイヴィス・ステイプルス&フレンズ

9月9日 (水): スカーレット・ヨハンソン、イーロン・マスク、ケンドリック・ラマー

9月10日 (木): ジョー・バイデン、トラヴィス・カラニック、トビー・キース

9月11日 (金): エイミー・シューマー、スティーヴン・キング、トラブルド・ウォーターズ



因みに金曜の音楽ゲストのトラブルド・ウォーターズとはポール・サイモンのバンドで、コルベアも飛び入りで参加して口笛を吹いていたが、正直言ってこれはイマイチだった。


放送第2週のゲストには、スティーヴン・ブレイヤー最高裁判事、バン・キムン国連事務総長、バーニー・サンダース上院議員等がおり、第1週のジェブ・ブッシュやジョー・バイデン副大統領らと合わせ、政治関係者が多い。やはり完全に「ザ・コルベア・レポート (The Colbert Report)」の色を払拭するわけにはいかないようだ。


政治家をジョークの俎上に載せている時に較べ、本人たちがゲストとして出てくると、どうしてもお笑いというよりは硬めのインタヴュウみたいになってしまうのは如何ともし難い。私個人の嗜好としては、深夜トークはやはり肩の凝らないエンタテインメントとして機能してもらいたいので、ギャグのネタにするならともかく、あまり政治家本人をゲストとして呼ばなくてもいいと思うのだった。


個人的にこれまでで最も印象的だったのは、作家のジョン・アーヴィングがゲストに呼ばれて、番組の最後にパジャマを羽織ってナイト・キャップ姿のコルベアに、アーヴィングがベッドタイム・ストーリーとして自作を読んで聞かせたセグメントだ。こんな感じだ。



「「クマの前で血を流しちゃダメだ」


扉の開いているガレージの中にクマがいた。

クマは絶対にガレージの中から外に出ようとはしなかった。

ウンチをする時も。

少年の仕事は、クマのウンチを片づけることだった。

クマはそれを恥ずかしく思っていた。

少年は、サーカスのパフォーマーから、クマの前では絶対に血を見せないようにと言われていた。

ある日、少年は手に怪我をした。

血がクマの水入れの中に滴り落ちた。

少年は怖くなって表に駆け出した。

クルマが走っている中に飛び出した少年は、撥ねられて死んだ。

この教訓は、通りを渡る時はクルマに気をつけること、だな。」




こいつは面白かった!










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