ザ・レイト・レイト・ショウ・ウィズ・ジェイムズ・コーデン   The Late Late Show With James Corden

放送局: CBS

プレミア放送日: 3/24/2015 (Tue) 0:35-1:35

製作: CBS テレヴィジョン・ステュディオス、フルウェル73プロダクションズ

ホスト: ジェイムズ・コーデン

バンド・リーダー: レジー・ワッツ


内容: 新ホストが就任した深夜トーク「ザ・レイト・レイト・ショウ」。


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The Late Late Show With James Corden


ザ・レイト・レイト・ショウ・ウィズ・ジェイムズ・コーデン  ★★1/2

昨年末、10年間続いた深夜トーク「レイト・レイト・ショウ」ホストのクレイグ・ファーガソンが番組を降板した。後任のジェイムズ・コーデンの起用はその前から明らかになっており、3月から番組がスタートすることも発表になっていた。


それまで番組は臨時ホストを何人も交代で投入して、好き勝手放題という感じで放送を続けた。わりとよく知られているパーソナリティから初耳という者まで、手を替え品を替え臨時ホストが登場した。10年前にファーガソンが前ホストのクレイグ・キルボーンの後を継いで新ホストに就任する時も、その時はまだ決まっていないホストの人選を行うためとはいえ、かなり長い間臨時ホストを取っ替え引っ替えで凌いでいたから、「レイト・レイト・ショウ」のホストが代わる時の臨時ホスト・トライアルというのは、番組のお約束になるかもしれない。


「レイト・レイト・ショウ」自体はLA収録なのだが、この時期はNYのCBSから放送する時もあった。今冬のNYは後半厳寒になり、一と月以上氷点下の気温が続き、大雪に悩まされた。交通機関が麻痺し、その時NYでホストを予定していた者が来れなくなったため、急遽ホイットニー・カミングスがプロの臨時ホストと言って登場したこともあった。NYで普段は朝、「ディス・モーニング (This Morning)」を放送しているスタジオから、リージス・フィルビンが観客なしでデイヴィッド・レターマンとポール・シェイファーにインタヴュウするというスタイルで1時間を通したこともあった。


CBSの女性向け日中トークの「ザ・トーク (The Talk)」ホストの面々がそのままやって来たこともあった。シンガーのジョン・メイヤーは、さすがに下手くそだった。それにしてもなんでメイヤーがホストなんてするんだ? いずれにしても色々と事情はあったろうが、本当になんでもありという感じで好きなようにやっていた。毎回スタイルが変わるので、それはそれで次は何やるんだろうと興味深く、別に正ホストなんか起用しなくても、これでずっとやっていけないこともないんじゃないかと思えたくらいだ。


さて、新ホストのコーデンは、本国英国ではそこそこ名の知られているコメディアンらしいが、アメリカでははっきり言って無名だ。それで直前に編成されている「レイト・ショウ (Late Show)」にゲストとして招かれ、ホストのデイヴィッド・レターマンから紹介されがてら話をしたこともあった (コーデン以前の「レイト・レイト・ショウ」はレターマンのプロダクションが番組を製作している。)


コーデンは色々と映画にも出ているが、私にとってもほとんど初めて見る顔だ。それで最初は誰かに似てるな、同じくコメディ系俳優のジム・ギャフィガンみたいだなと思っていたのだが、そこでレターマンがコーデンに向かって、で、あんたはアンディ・リクターの変装じゃないだろうな、と言うので、思わず膝を打った。そうだ、リクターだ、なんでリクターを思い出さなかったんだ。こんなにそっくりなのに。というか、あまりにも似過ぎているために別人として思い出せなかったという感じだ。


「レイト・レイト・ショウ」前任のファーガソンはスコットランド出身、コーデンはイングランド出身で、同じ英語を喋るとはいえ、アメリカ人と英国人のギャグ・センスには多少違いがある。むろんそこを買われての起用ではある。コーデンがレターマンのゲストとして招かれた時に話していたのだが、彼には生まれたばかりの娘がいる。彼は妻が出産する時に立ち会うつもりでいたところ、親戚のおじさんに止めた方がいいとたしなめられたそうだ。子供が生まれてくるのを見るのは、まるで火事に遭うのと同じだ。それは再建するだろう、しかし二度と同じものにはならない。レターマンも思わずなんと返していいか言葉に詰まっていたが、そうそう、これこれ、このセンスこそ、いかにも英国のブルー・カラーらしいギャグ・センスだ。この感覚で乗り切っていくか。


コーデンの「レイト・レイト・ショウ」、第1回は、ステュディオに姿を現したコーデンが一通り挨拶した後、どうやって自分がこの大役に抜擢されたかをヴィデオで紹介する。実はこの抜擢は、チョコレート・バーに入っていたゴールデン・チケットを偶然手に入れたからだった。


ゴールデン・チケットとは、もちろん「チャーリーとチョコレート工場 (Charlie and the Chocolate Factory)」でチョコレート・バーに挿入されていた、あのゴールデン・チケットだ。要するに当たりクジだ。CBSのCEOレス・ムーンヴェスは、ゴールデン・チケットを手に入れた者に「レイト・レイト・ショウ」ホストの座を与えると発表する。


このゴールデン・チケットを手に入れようと、アメリカ中のコメディアンや職にあぶれたホストがチョコレートを買い占めるが、たまたま前に立っていたチェルシー・ハンドラーが落としたのをコーデンが拾ったチョコ・バーに、そのゴールデン・チケットが入っていたのだ。ハンドラー以外にも、ケイティ・コーリック、クリス・ロック、エディ・レッドメイン、ビリー・クリスタル、レナ・ダンハム、ジョージ・ロペスといった、現実に今働いてなさそうなタレントが大勢カメオ出演しているのがなんともおかしい。


しかしカメオ出演といえば、そのゴールデン・チケットを手に入れたコーデンがホストとして成功するための虎の穴のような秘密トレーニング施設を訪れると、覗き穴から顔を出して誰何するのがジェイ・レノだったというのが最も笑えた。レノは前回のファーガソンがホストの「レイト・レイト・ショウ」の最終回でも最後のゲストとして登場していた。ここではまだ英国アクセントの抜けないコーデンをスパルタ式で鍛え直す。


シャイア・ラブーフ、アリソン・ジェニーといったコーチと共に、フィジカルなトレーニングを指導しているのはアーノルド・シュワルツェネッガーで、挫けそうになるコーデンを優しく慰め激励するのはメリル・ストリープだ。このサポート布陣があれば、実際どんな職業でも対応できそうだ。


そして晴れて第1回を迎えたコーデンの「レイト・レイト・ショウ」の最初のゲストは、トム・ハンクスとミラ・クニス。ハンクスはこの種の番組の節目のゲストとして呼ばれるのがほとんど約束事になってきている。クニスはさり気なくエンゲージ・リングを指にはめての登場で、アシュトン・クッチャーと正式に付き合っていることを発表。


番組としての従来の深夜トークと最も異なるのがここだ。これまでは深夜トークでは番組ゲストは何人かいて、順次一人ずつ出てきてホストと話をするというのが定番スタイルだった。しかしコーデンの「レイト・レイト・ショウ」では、何人かいるゲストが全員一緒に出てきてコーデンと話をする。要するにインタヴュウというよりは雑談に近い。これはBBCアメリカの「ザ・グレアム・ノートン・ショウ (The Graham Norton Show)」の体裁を模している。どちらかというと英国ではこういうスタイルの方が一般的なのだろうか。一つの話題を深く掘り下げることはできないが、和気藹々とした雰囲気やゲストの当意即妙の受け答えが楽しめる。果たしてこのスタイルがアメリカでも根付くか。


その他第1回で印象的だったのは、コーデンとハンクスが早変わりでハンクスがこれまでに出演した映画のキャラクターに扮するというもので、コーデンもハンクスも身体張ってるなと結構感心した。トークではほぼ定番の最後の音楽ゲストは第1回ではなく、代わりにコーデン自身が替え歌を披露。一瞬ピアノも弾けるのかと思ったが、それは替え玉だった。


番組第2回のゲストはパトリシア・アークエット、クリス・パイン、モデスト・マウス。第3回はケヴィン・ハート、ウィル・フェレル、レオン・ブリッジス。木、金曜夜はCBSが放送権を持っている大学バスケットボール選手権が佳境を迎えてプライムタイムに中継されており、これがだいたい深夜までかかるため、「レイト・レイト・ショウ」の放送はなかった。


これまでで面白かったかどうかはともかく最も印象に残ったエピソードは、コーデンがステュディオを出て近くの一軒家を続け様に訪れ、その家に住む一般人と一緒に番組を構成するというものだ。たぶんやらせじゃないだろうと思えるのは、実際にこの企画が成功するかどうかがわからないコーデンがむやみに緊張しているのが見てとれるだけでなく、実際に打ち合わせなぞしていないのだろう、訪れた家先で住人から断られたりしているからだ。


やっと承諾をもらった家でも、正直言って彼らは素人であり、番組進行としてはほとんど助けにならない。その反応を見るのこそ面白いと言えなくもないが、コーデンはなんとか場を盛り上げようと必死で、「I’m on fire!」を連発してエキサイトしているが、お前一人だけが無理して盛り上がっているようにしか見えないよ。


とはいえ、こういう冒険が許されるのが深々夜トークの特権でもある。まさか「レイト・ショウ」や「トゥナイト」が1時間丸々外で撮影するとも思えない。ファーガソンとはまた違った意味でメイン・ストリームとは言い難いコーデンの起用は、それはそれでなかなか悪くないと思う。











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