The Mentalist  ザ・メンタリスト

放送局: CBS

プレミア放送日: 9/23/2008 (Tue) 21:00-22:00

第2シーズン・プレミア放送日: 9/24/2009 (Thu) 22:00-23:00

製作: ワーナー・ブラザースTV、プリムローズ・ヒル・プロダクションズ

製作総指揮: ブルーノ・ヘラー、デイヴィッド・ヌッター

製作: チャーリー・ゴールドスタイン

監督: デイヴィッド・ヌッター

クリエイター/脚本: ブルーノ・ヘラー

撮影: ビル・ロー

美術: マイケル・ノヴォトニー

編集: ポール・カラシック、デイヴィッド・エクストロム

音楽: ブレイク・ニーリー

出演: サイモン・ベイカー (パトリック・ジェイン)、ロビン・タニー (テレサ・リスボン)、オウェイン・ヨーマン (ウェイン・リグスビー)、ティム・カン (キンボール・チョー)、アマンダ・リゲッティ (グレイス・ヴァン・ペルト)


物語: 似非霊媒で元TVパーソナリティのパトリック・ジェインは、シリアル・キラーのレッド・ジョンによって家族を惨殺され、以降一線からは退き、その類い稀なる観察眼を買われて現在では非公式の警察のアドヴァイザーとして力を貸していた。テレサ・リスボン刑事は浮ついてとらえどころのないジェインの口出しを気に入ってはいなかったが、しかし警察の杓子定規にとらわれないジェインの自由な発想が、犯罪解決に役立っていることもまた事実だった‥‥


Lie to Me  ライ・トゥ・ミー

放送局: FOX

プレミア放送日: 1/21/2009 (Wed) 21:00-22:00

第2シーズン・プレミア放送日: 9/28/2009 (Mon) 21:00-22:00

製作: イマジンTV、サミュエル・バウム・プロダクションズ、20世紀FOX TV

製作総指揮: サミュエル・バウム、ブライアン・グレイザー、デイヴィッド・ネヴィンス、スティーヴン・マエダ

製作: ジェフリー・ダウナー

クリエイター/脚本: サミュエル・バウム

監督: ロバート・シュウェンケ

撮影: フロリアン・ボールハウス

編集: ソーン・ノーブル

音楽: ダグ・デアンジェリス

美術: アレック・ハモンド

出演: ティム・ロス (キャル・ライトマン)、ケリ・ウィリアムス (ジリアン・フォスター)、モニカ・レイムンド (リア・トレス)、ブレンダン・ハインズ (イーライ・ローカー)、エリカ・クリステンセン (ソフィー/トリシャ/ジェシー/RJ)


物語: 人間の嘘を見破ることに長けたキャル・ライトマンは、その技術を各種犯罪解決に役立てるコンサルタント企業を起こし、主として政府からの仕事を請け負っていた。ある時ライトマンが自著のサイン会でサイン中に、血だらけの女性ソフィーが現れる。彼女は記憶をなくしているだけでなく、別の人格が入れ代わり立ち代わり現れる多重人格だった。果たしてソフィーは殺人犯かそれとも被害者か、あるいは多重人格の振りをしてライトマンを騙しているだけなのか‥‥


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昨2008-09年シーズンに始まった番組で最大のヒットは、当然CBSの「ザ・メンタリスト」であるわけだが、シーズン半ばで面白いことが起こった。年が明けてからFOXが投入した新番組「ライ・トゥ・ミー」が、大まかな内容だけを聞くと、ほとんど「メンタリスト」と瓜二つだったからだ。どちらも相手の嘘を見破ることに長けた男が主人公で、犯罪捜査に役立てるという話らしい。その両方ともが警察機構の内部の人間ではなく、外部の人間として捜査に協力するというところまでそっくりだ。


もちろん作っている人間は同じではなく、実際に両番組を見てみると、その肌触りはまったく異なる。むしろ粗筋だけを聞くと同一番組としか思えない番組が、こうも違う番組であることに感心するくらいだ。そしてまた、両者とも視聴者をつかんで今シーズンまで続いていることを見てもわかる通り、両方とも結構面白い。


「メンタリスト」の主人公パトリック・ジェインは、かつてインチキ霊媒としてTVで人気者だった。要するに「クロス・カントリー (Cross Country)」のジョン・エドワード、もしくは「ビヨンド (Beyond)」のジェイムズ・ヴァン・プラーグのようなことをやって金を得ている。パトリックはしかし、確信犯の詐欺というところが違う。霊媒は商売なのだ。二枚目のパトリックは人当たりもよく口もうまく、女性に絶大なる人気を誇っていた。


しかしある時、パトリックの妻と子とが連続殺人鬼に惨殺されるという事件が起きる。それ以来パトリックは一線を離れ、今では非公式の警察のアドヴァイザーとして協力しながら、一方で殺人鬼のレッド・ジョンを追っていた。元々観察眼は人一倍優れているパトリックは、捜査陣が見落とす数々の些細な証拠を拾い上げ、目撃者や承認の偽証、嘘を見破ることで事件を解決に導く。正直言って部外者であり、態度のでかいパトリックは、刑事部屋の皆から多少煙たがれているのだが、しかし彼の観察眼、推理力が、事件解決に大いに与って力があるのもまた確かなのだった。


主人公パトリックを演じるのが、「堕ちた弁護士 -ニック・フォーリン (The Guardian)」のサイモン・ベイカーで、彼を扱いかねながらも内心では頼りにしている上司リスボンにロビン・タニーが扮している。ベイカーは、元々持っていた、いたずら少年がそのまま大きくなったという感じが役柄とうまくはまっている。タニーは、私は彼女を見るたびになぜだかFOXの「ボーンズ (Bones)」のエミリー・デシャネルを思い出してしまう。よく見ると特に似ているというわけでもない。実際タニーと、エミリーにそっくりの妹のゾーイ・デシャネルとではまったく似ているとは思わないのだが、タニーとエミリーはかなり印象が被さる。特に気の強そうなところとか。


「メンタリスト」は、骨子としてはかなりシャーロック・ホームズものに近い。要するに名探偵が、人々が見落としたこと、考えのおよばないことに気づいて謎を解明する。パトリックが秘密主義で、自分が気づいたことをすぐには明らかにせず、最後に大見得を切って真相当て、種明かしをするところなんかがまたいかにもだ。かなり見栄坊でガキ大将的なところがあり、なにかともったいをつけたがるのだが、ホームズが現代に生きていたら、こんな感じに近くなるんじゃないかと思う。


番組自体の印象としては、TNTの「ザ・クローザー (The Closer)」を思い出す。最後に名探偵/主人公が真相を暴いて大団円という物語の構造よりも、軽いユーモアやアクションの絡め方から来る印象が似ている。そのために、どちらかというと若い視聴者よりも中高齢以上の視聴者に受けているが、番組自体はよくできていると思う。これが視聴者の平均年齢の高いCBSで放送されて人気を獲得しているのもよくわかる。


一方、若者に強いFOXの「ライ・トゥ・ミー」の主人公キャル・ライトマンは、ちょっとした挙措動作から人が嘘をついているかどうかを見破ることに長けた能力の持ち主だ。つまり能力だけを見ると、「メンタリスト」のパトリックも「ライ・トゥ・ミー」のライトマンもほとんど変わらない。二人共見過ごされがちな些細な表情の変化や反応から本当/嘘を見分け、犯罪捜査に役立てる。最も異なるのは、ライトマンのそういう観察眼がほとんど人間だけに向かい、パトリックのように、犯罪の起こった現場から見過ごされた証拠を拾い出すという風にはならないことだ。そのため、「メンタリスト」は前述したようにホームズもの的な謎解きの面白さがあり、「ライ・トゥ・ミー」は謎解きだけでなく、なぜその人は嘘をついているのかという、人間ドラマ的な面白さがある。


主人公ライトマンを演じているのがティム・ロスで、最近では「インクレディブル・ハルク (The Incredible Hulk)」でもなにやら陰性の悪役を怪演していたが、ここでも陽性とは決して言えない役柄で、これまたよくはまっている。妻子を殺されたパトリックを主人公とする「メンタリスト」が、ベイカーを主人公とすることで飄々とした味を持っているのに、たかだか離婚の危機はあっても愛らしく頭のいい娘とはいい関係のライトマンは、ロスが演じることで暗めの印象を持っていることが面白い。


ライトマンは、人の嘘を見分ける専門家として、自分の事務所、というよりはかなり大きな企業を持ち、主として政府関係の仕事を請け負っている。時として鑑定する相手は政府の大物だったりし、嘘か真かを見極めることは非常にセンシティヴかつ国の将来にかかわる重要な事柄だったりする。時には暴走しそうになるライトマンを牽制しながら仕事をするのが、共同経営者 (に近い立場) のジリアン (「プラクティス (The Practice)」のケリ・ウィリアムス) で、その他、イーライ (ブレンダン・ハインズ)、リア (モニカ・レイムンド) といったチームを組んで仕事に当たるところが、事実上一匹狼の「メンタリスト」のパトリックと大きく異なる点だ。


第2シーズンのシーズン・プレミア・エピソード「ザ・コア・オブ・イット (The Core of It)」では、多重人格と見なされる女性をめぐって話が展開するのだが、こういう話では、演者が人格を演じ分けなければならない。当然演技力が要求される。ここで思い出すのは、昨年タミー・ブランチャードが16重人格者という難題を演じた「シビル (Sybil)」で、私はブランチャードを買っている者だが、それでもかなり無理という印象を持つのを禁じ得なかった。


ここで4重人格者の演じ分けに挑むのはエリカ・クリステンセンで、いまだにスティーヴン・ソダーバーグの「トラフィック (Traffic)」の印象で覚えているのだが、このエピソードを見ると、かなりの演技力であることがわかる。実際に別人格に見えるのだ。ちょっとした動きや表情を人格によって使い分けており、かなり感心してしまった。正直言って、「シビル」のブランチャードよりこちらの方が説得力がある。マット・デイモンの「ジェイソン・ボーン」シリーズ・レギュラーのジュリア・スタイルズと似ているが、そのために双方共に損しているという印象を受ける。


「メンタリスト」と「ライ・トゥ・ミー」とでは、「メンタリスト」の方が視聴率では断然上回っているのだが、両方ともできはいいし、若い視聴者はたぶん「ライ・トゥ・ミー」の方を好むだろう。私もどちらかというと、できはともかくどちらが好きかと訊かれると「ライ・トゥ・ミー」の方なのだが、「メンタリスト」も充分面白い。皆、よくアイディアが尽きないよなと思う。









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Lie to Me   ライ・トゥ・ミー   ★★★

 
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