Last Week Tonight with John Oliver   ラスト・ウィーク・トゥナイト・ウィズ・ジョン・オリヴァー              

放送局: HBO

プレミア放送日: 4/27/2014 (Sun) 23:00-23:30

製作: シックスティーン・スティング・ジャック・プロダクションズ、アヴァロンTV

製作総指揮: ティム・カーヴェル、ジョン・ソデイ

ホスト: ジョン・オリヴァー


内容: ジョン・オリヴァーがホストのウィークリーの深夜トーク・ショウ。


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Last Week Tonight with John Oliver


ラスト・ウィーク・トゥナイト・ウィズ・ジョン・オリヴァー  ★★1/2

近年アメリカの深夜トーク界は大きな転換期を迎えている‥‥と、何年も前から同じことを何度も言い続けている気がするが、一度収まったかに見えたごたごたがまたぞろぶり返すということを、近年飽きもせず何度も繰り返しているという印象がある。これでやっと安定期か、と思ったら裏切られるということが続いている。


最近では、今度こそ、思った矢先にCBSの「レイト・ショウ (Late Show)」の御大デイヴィッド・レターマンが来季限りで引退を発表、矢継ぎ早にスティーヴン・コルベールの後継が電光石火で決まった。そう来たかと思っていたら、その余震も収まらないうちに、今度は「レイト・ショウ」直後に編成されている「レイト・レイト・ショウ (Late Late Show)」のクレイグ・ファーガソンが番組を去るという発表があった。


このタイミングからして、ファーガソンは次期「レイト・ショウ」ホストを狙っていたものが、コルベールに決まったために傷心して辞める決心をしたものと思われた。しかしそうではなく、ファーガソンは契約の切れる今年限りで辞めることを昨年自分自身で決断していたが、年が明けてその発表をする前にレターマンの方が先に引退を表明してしまったために、発表の時宜を逸してしまったらしい。もしかしたら、あるいはレターマンの引退発表の後、もし「レイト・ショウ」ホストの話が舞い込んだら気が変わる可能性はあったに違いないと思うが、それは起こらなかった。


コナン・オブライエンがケーブルのTBSに移って行ってしまった現在、ネットワークの深夜トークで最も癖のあるのは、明らかにファーガソンの「レイト・レイト・ショウ」だ。だいたい深夜トークというものは、オープニングのバンドの演奏と共にアナウンサーの紹介によってホストがステュディオに現れるものと相場が決まっている。30分番組のコメディ・セントラルの「ザ・デイリー・ショウ (The Daily Show)」や「コルベール・レポート (Colbert Report)」のように、最初からホストがデスクを前に椅子に腰かけているというオープニングのものもないことはないが、それとて特に奇を衒っているわけではない。


しかし「レイト・レイト・ショウ」のファーガソンのように、1時間番組であってもバンドがいず 、多くの場合、いきなり本人がカメラの前に立ってどアップで始まる、しかもよくわからないがなぜだか一般客をステージに立たせて掛け合いするという出だしで始まる深夜トークは、よくも悪くも「レイト・レイト・ショウ」以外にない。


しかもバンドがなければ当然バンドマスターもなく、つまりホストのファーガソンと掛け合いをしたりアナウンスをしたりだべったりする補佐的な役割のサイドキックもいない。「レイト・レイト・ショウ」でその役割を受け持っているのは、人間ではなく、ジオフという名の骸骨なのだ。むろん骸骨なのでほとんど動けない。一方おしゃべりはしないが、ステージ上を動き回るフィジカル・ギャグ専門のウマだかロバだかの着ぐるみキャラクターがこれまた常にいる。まるでセオリー通りではない。


また、番組にバンドが存在しないとはいっても、一通りのオープニングのギャグ・スキットが済んだ後はオープニング・クレジットに移り、そこではちゃんと音楽が流れる。しかもそこでドラムを叩いているのはファーガソン本人であり、テーマの歌詞を書いているのもファーガソン自身だ。つまり、ファーガソンだって、「トゥナイト (Tonight)」のジミー・ファロンほどではなくとも、多少の音楽の心得がないわけではない。それなのに番組内の要所要所で使われる音楽は録音という、番組の特殊性が際立っている。


要するにファーガソンの「レイト・レイト・ショウ」は、非常に癖がある。レターマンが「レイト・ショウ」引退を発表し、後継者の人選に注目が集まった時も、本来なら真っ先に名が挙げられて然るべきの、「レイト・ショウ」直後に編成されているファーガソンの名がほとんど無視されていたのも、零時半からの深深夜ならともかく、11時半からのマス相手の時間帯で、ファーガソンにホストが務まるとは誰も考えていなかったからだ。我々はオブライエンという大失態を既にこの目で見ている。その「レイト・レイト・ショウ」のファーガソンの次のホストはいったい誰になるのか。9年前にファーガソンに決まった時ですら、半年くらい時間をかけて人選を煮詰めていた。今回はどのように決めるのか。


さて、前置きが長くなってしまったが、そういう、いまだ動揺の走る米深夜トーク界に新たに一石を投じるのが、ジョン・オリヴァーがホストの、「ラスト・ウィーク・トゥナイト・ウィズ・ジョン・オリヴァー」だ。オリヴァーは上述のジョン・スチュワートがホストの「デイリー・ショウ」において、コレスポンダントを務めていた。「デイリー・ショウ」のコレスポンダントというと、現「コルベール・レポート」のホストであり、次期「レイト・ショウ」ホストのコルベールこそ、元「デイリー・ショウ」でコレスポンダントを務め、そこから「コルベール・レポート」ホストへと抜擢されたという経緯がある。ハイパーなコルベールに較べ、オリヴァーは逆にどちらかと言うとあまり表情を表に出さずにギャグをかます。「デイリー・ショウ」は、新たな才能を開拓する踏み石として機能している。


ところで「ラスト・ウィーク・トゥナイト」を放送するHBOは、ペイTVだ。毎月の視聴料を払わないと見れない。そのHBO、ネットワークやベイシック・ケーブル・チャンネルの番組とは微妙に体裁は違うが、深夜トークも編成している。現在放送しているのは、「リアル・タイム・ウィズ・ビル・マー (Real Time with Bill Maher)」で、過去には「デニス・ミラー・ライヴ (Dennis Miller Live)」、「ザ・クリス・ロック・ショウ (The Chris Rock Show)」なんてのもあった。放送禁止用語も使えるHBO番組であるからして、どれも際どい話題や用語を駆使し、普通ならネットワーク番組なら避けて通るポリティクスや人種的な話題を率先して採り上げるところに特色があった。


また、ラリー・サンダースの「ザ・ラリー・サンダース・ショウ (The Larry Sanders Show)」は、サンダースが深夜トークのホストという設定のコメディで、番組体裁が深夜トークそのまま、しかも毎回現実のセレブリティがゲストとして登場することもあり、何も知らずに見たら本当に深夜トークとカン違いすること確実の番組だった。


これらのHBO番組は、話のネタとしてポリティクスや時事問題を俎上に載せることが多い。「ラスト・ウィーク・トゥナイト」もその例に漏れないが、しかし「ラスト・ウィーク・トゥナイト」の場合、番組が印象として最も似ているのは、HBO番組ではなく、やはりこれまでオリヴァーが出演していた「デイリー・ショウ」だ。「デイリー・ショウ」でオリヴァーが担当していた部分の、これまでは抑えていた毒や四文字言葉等のリミッターを外して全開にしてみたのが、「ラスト・ウィーク・トゥナイト」という印象が強い。


因みに番組第1回で採り上げた話題は、冒頭のそもそもの最初に、人種差別発言で今巷を最も賑わせているNBAのLAクリッパーズのオーナーのドナルド・スターリング。白人、80歳で妻もいるが、30代くらいの黒人の血が入っているガールフレンドがおり、彼女に向かって、同じく黒人のNBAホール・オブ・フェイマーのマジック・ジョンソンと一緒にインスタグラムなんて撮るなと言っているのが公になって一大スキャンダルになった。NBAコミッショナーは人種差別は絶対許さないとして、スターリングに対しNBAから永久追放という厳罰処分、これを不服としたスターリングはNBAを訴えるなど泥沼になった。これに対しオリヴァーは、80歳の親父がインスタグラムを使えるなんて、とコメント。思わず笑わせてくれる。なかなかいい出だしだ。


その後は、ローマ法王、オバマケア、健康食品、NFLチアリーダー等の旬の話題を採り上げる。最も時間を割いて茶々を入れたのがインドの総選挙およびNSA関係で、世界最大のインドの選挙だが、西側ではほとんど報道されていないことを色々と例証を挙げ、コメントする。今インド関係の話題でアメリカで最もニューズになったのは、住宅地に豹が現れてパニックになったというものだった。NSAは、エドワード・スノウデンの盗聴暴露スキャンダル以来ずっと叩かれ続けている。ここではオリヴァーが前NSA長官のキース・アレグザンダーにインタヴュウしているという体裁で合成画面を構成してギャグをかます。


番組を見ての感想は、オリヴァーがFxxkと放送禁止用語を発する以外は、正直言って「デイリー・ショウ」の延長線上というものだが、それはそういうものだろう。実際それでなるほどと思わせたり笑わせたりする。週末の週一放送という編成条件が今後どういう風に番組の内容に影響してくるか、乞うご期待というところか。











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