Dune


デューン 砂の惑星  (2021年11月)

今年いっぱいは映画館通いは控える、と決めてはいても、感謝祭、クリスマスと続くホリデイ・シーズンを前にまたぞろコロナ感染率がじりじりと上昇しているのを見ると、やはり多少憂鬱になる。今年いっぱいどころか、来年まで影響するのか。人々がヴァイオレンスや犯罪に走るのもなんとなくわかる気がする。 

 

さて、いずれにしてもドゥニ・ヴィルヌーヴの「デューン」だ。フランク・ハーバートの大河SFの原作は、かつて1984年にデイヴィッド・リンチが映像化している他、2000年にはTVでSci-Fi (現SyFy) がミニシリーズ化している。今回が3度目の映像化だ。 

 

それにしてもヴィルヌーヴ、最初、重厚なドラマ畑の人間かと思わせといて、近年撮っているのはSFばかりだ。2011年「灼熱の魂 (Incendies)」、2013年「プリズナーズ (Prisoners)」、2015年「ボーダーライン (Sicario)」と来て、いきなり方向ががらりと変わり、2016年「メッセージ (Arrival)」、2017年「ブレードランナー2049 (Blade Runner 2049)」に続き、今回の「デューン」と、これで3作連続でSFだ。これはもう、意外な一面を見たというよりも、実は元々SFもカヴァーしているということなんだろう。 

 

今回の「デューン」、聞くところによるとなんでもIMAX作品だそうで、今年いっぱいの映画館通いを断念した身としては、思わず溜め息が出る。なんでもIMAXで撮ればいいとは思わないが、IMAXで撮った「デューン」のイメージが悪いわけはなかろうというのは、たとえ今回はSci-Fiのミニシリーズを撮ったヴィットリオ・ストラーロがカメラを担当してなくても、容易に想像できる。しかもテクノロジーはこの20年でさらに進歩しているはずだ。 

 

とはいえ年末にもしかしたら帰省の可能性がある身としては、ここで万が一にもコロナに感染するようなことがあってはならず、一瞬迷いはしたものの、やはりIMAXでの鑑賞は断念する。こちらにとっては幸いなことにというか、「デューン」は劇場公開と同時に、HBO Maxがストリーミングでも提供しているのだった。 

 

さて一応前回のミニシリーズ見てることだしと思って、今回、特に予習復習なしに家見を始めたはいいものの、やはり、これ、苦しい。さすがに部族名や独特の固有名詞なんかはもう忘れているし、ストーリーも実は、細かい点は既に忘却の彼方で、見始めて30分もしないうちに、しまったな、これ、やはりおさらいしとくべきだったと思ったのだが、既に夜半過ぎで、これからまた他のことして再度映画見始めるだけの時間の余裕がない。一度見始めたものを途中で止めるのは癪だし、再度見直して眠くなったりするのはもっと嫌だ。と思って、しょうがないからストーリーを100%理解しないまま見続ける。 

 

そうやって見ているうちに徐々に記憶が甦ってきて、そうだった、主人公は砂漠の民と一緒に成長していくんだった、と思い出し始めたところで、映画は終わる。 

 

見終わってから後悔先に立たずとは思いつつも、かれこれ20年前に自分自身がSci-Fiのミニシリーズについて書いたレヴュウの、あらすじを読み返す。要するに、ミニシリーズの第1回と今回の「デューン」は、かなりの部分同じだ。 

 

とはいえ、やはり微妙な相違、前回と異なる取捨選択のあることもわかる。キャラクターとしては、ミニシリーズで大きな印象のあった、ポールのかすかな恋愛の対象だった皇帝の娘イルランが、今回はいない。これは、今回はポール (ティモシー・シャラメ) のラヴ・インテレストを、ゼンデイヤ演じるチャニ一人に絞ったためだろう。 

 

一方で、ジョシュ・ブローリン演じるガーニイ・ハレック、ジェイソン・モモア演じるダンカン・アイダホのような武闘派がミニシリーズではいなかった。要するに今回はよりアクションが楽しめることが、この布陣からもわかる。 

 

今回はポールと母のジェシカ (レベッカ・ファーガソン) が、砂漠で流浪の民フレメンと一緒に過ごすまでを描く。ということは、ミニシリーズと同じく、今回の「デューン」はたぶん3話構成だな。だいたい近年の大型SFは3部作になっているので、そのことには驚かない。リンチ版「デューン」は、長大な物語をたかだか2時間ちょっとに詰め込み過ぎて、わけがわからないとくさされていたので、むしろ分割は「デューン」向きと言える。 

 

実際調べてみると、既に第2話は再来年公開予定と発表されており、ヴィルヌーヴをはじめ、主要なキャラクターを演じる面々も変わらずクレジットされている。一方でどうやらヴィルヌーヴは第2話を「後半」と言っているようなので、もしかしたら3部作ではなく、前後編の2部作なのかもしれない。ミニシリーズの第1話同様、今回の「デューン」もほとんどつかみで終わっているようなものなので、話が本格的に動き出す、ヴィルヌーヴが本領を発揮するのは、次回以降ということになろう。 

 

主人公のポールを演じるシャラメは若手男優としては成長株筆頭で、特に、嫌味なハンサムを演じた「レディ・バード (Lady Bird)」、 意志の弱い新米兵士を演じた「荒野の誓い (Hostiles)」、そして見事アカデミー賞にもノミネートされた「君の名前で僕を呼んで (Call Me by Your Name)」と、続け様に3本の作品が公開された2017年は、シャラメのブレイクの年になった。 

 

とはいえ近年で最も印象的だったのは、実はやはり今風の青年なんだなと思わせた、昨年のNBCのスケッチ・コメディ・ショウ「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live)」でゲスト・ホストを務めた時だ。 

 

実は「デューン」は、当初昨年12月に公開予定だった。ほぼ時を同じくしたシャラメのSNLゲスト・ホストは、「デューン」プロモーションの意味が大きかったはずだ。しかし治まらないパンデミックの余波を受け、「デューン」公開は延期、しかしシャラメは予定通りSNLでゲスト・ホストを務めた。 

 

彼の立場を微妙なものにしたのは、その時、「デューン」配給を担うワーナー・メディアが、同社が配給する新規封切り映画の公開と同時に、傘下のストリーミング・サーヴィスのHBO Maxでも提供すると発表したことだ。もちろんその中には「デューン」も含まれていた。 

 

映画館チェーンが、この発表に反発したのは言うまでもない。なんとなれば、新作映画公開と同時にストリーミングでも配信されるのは、映画館側にとってはおまんまの食い上げになる可能性が高いからだ。シャラメがSNLに出演したのは、そういうごたごたが業界を賑わせている時で、たまたま渦中の真っ只中にいたシャラメが、ライヴ番組であるSNLで、なんらかの反応をするものと期待、もしくは予想された。 

 

シャラメは番組の最後で挨拶のためにステージに出てきた時、マスクをつけ、レジェンダリーのロゴが書かれたスウェットを着ていた。もちろんレジェンダリーは「デューン」の製作会社だ。そしてこの時世、皆がやさしくなれるといいね、と言ったシャラメの発言は、多くの者にとって、劇場チェーンを足蹴にしたワーナー・メディアに対する意見ととらえられた。彼も板挟みになって大変だ。 

 

蛇足だがシャラメの母は女優志望だったそうで、実はSNLにエキストラとして出たことがあり、その時のクリップを見せていた。シャラメはニューヨーク出身でもあるから、SNLに出るという話は、彼にとってそれほど違和感はなかったんだろう。 

 














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西暦10191年、アトレイデス家の当主レト (オスカー・アイザック) は、皇帝シャダム4世によって砂の惑星アラキスの統治を任される。この惑星は宇宙でたった一つ、すべての種族が羨望する秘薬「スパイス」を生産し、そのためこの惑星を御すものは宇宙を制するに等しいと考えられていた。アトレイデス家に対抗する勢力のハルコンネン家はそれが面白くなく、当主ウラディミール (ステラン・スカースガード) はレトの失墜を企んでいた。レトの一人息子ポール (ティモシー・シャラメ) は、預言者の家系出身の母ジェシカ (レベッカ・ファーガソン) の素質を受け継いでおり、見も知らぬ謎の女性が現れる得体の知れない予知夢に悩まされていた。そしてウラディミールがアトレイデス家に送り込んだ刺客の手によってレトは命を落とし、九死に一生を得たポールとジェシカは、生きとし生けるものがすべて死に絶えるという砂漠の真ん中に逃れる。そこは巨大なサンド・ウォームの巣食うところであり、生き延びていくためには砂漠の流浪の民フレメンの助けにすがるより他はなかった。ポールはそこで、夢に現れた女性チャニ (ゼンデイヤ) と邂逅する‥‥ 


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