放送局: IFC

プレミア放送日: 8/2/07 (Thu) 0:00-1:15

製作: オーチャード・フィルムス・プロダクション

製作: レスリー・クレインバーグ

監督: リサ・アデス、レスリー・クレインバーグ


内容: 主としてインディペンデント映画において描かれてきたセックス描写の変遷を紐解く。

第1部「検閲済み (Censored)」

第2部「タブー (Taboos)」

第3部「ティーンエイジャー (Teens)」

第4部「エキストリームス (Extremes)」


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インディペンデント映画専門のケーブル・チャンネル、IFC (Independent Film Channel) は、不定期ではあるが、オリジナル番組も製作している。だいたいは「Zチャンネル」「アメリカン・ナイトメア」のような映画に関係するドキュメンタリーであるが、先頃放送された「ザ・ブリッジ」のような直に映画とは関係のない作品もあるし、癖のあるコメディ (「マイナー・アカンプリッシュメンツ (Minor Accomplishments)」、「ザ・ビジネス (The Business)」) なんかもある。


日本人という立場から見た場合、実は近年のIFCは、和製アニメの紹介で知られている。アニメといえば、だいたいアメリカでアニメを放送するチャンネルとなると、元WB (現CW) 系列局かFOX、あるいはカートゥーン・ネットワークというのが相場だったが、基本的にCW、FOXが放送するアニメは子供向けが多い。カートゥーンでは大人も見れるアニメとかもやっていたりするが、それだけではまだ足りない。


というわけで最近は、IFCがそのニッチ視聴者層開拓を目指して「サムライ7 (Samurai 7)」、「ガンスリンガー・ガール (Gunslinger Girl)」、「バジリスク (Basilisk)」なんかを放送している。IFCはさらに毎週土曜朝に、「サムライ・サタデイズ (Samurai Saturdays)」と題して、アニメや映画を問わず日本の時代劇ものを放送している。立派なレギュラー枠で、最近ではふと思い出してチャンネルを合わせる度に勝新の「座頭市」シリーズをやっていたりする。アメリカでも「ブラインド・スウォーズマン」の人気は高い。しかし、土曜の朝っぱらから「座頭市」か。


話が逸れたが、そのIFCが放送した最新のドキュメンタリーが、この「インディ・セックス」で、読んで字の如く、これまでインディペンデント映画を中心に描かれてきたセックスの描写の変遷をとらえようという試みだ。元々セックスが前面に押し出される作品はメイン・ストリームに乗りにくく、スタジオ・システム外から突発的に現れるか、外国映画のことの方が多かった。しかも基本的にペイTVのIFCは、それらの作品からのクリップをノー・カットで放送できる。いかにもインディ映画専門のIFCに向いたテーマと言える。


番組は4日連続で深夜零時から放送された。回毎にテーマが異なり、第1話から順に「検閲済み (Censored)」、「タブー (Taboos)」、「ティーンエイジャー (Teens)」、「エキストリームス (Extremes)」とテーマ分けされている。これらの区分けは、なるほどと思える一方、かなり恣意的ともいえる。例えば「ティーン」の回で「ポーキーズ (Porky's)」等、なるほどと思える作品が入っている一方、「ロリータ (Lolita)」がここではなく、「エキストリームス」で紹介されていたりする。「検閲済み」の回に「エクソシスト (The Exorcist)」を入れているのは納得できるが、「狼たちの午後 (Dog Day Afternoon)」があるのはいまいちよくわからない、といった具合だ。さらに、思い切り昔に話が飛んで時代順に見ていくかと思えば、あっという間に現代に戻ってくるなど、その視点が一定ではないという印象を受ける。


また、こういう選ばれて紹介されている作品に輪をかけて納得できないのが、作品内に登場してコメントする人間の人選で、とにかくそのほとんどの人たちをまったく知らないため、発言に説得力がまるでない。元々セックスというものは個人の性向が色濃く出るものだから、そこへまったく知らない者が個人の意見を述べても、はっきり言ってほとんど聞く耳持てない。あんた、だーれ、ってな感じだ。特に、シリーズを通してフィーチャーされている、ディータ・フォン・ティースという女性はいったい何者なんだ。まったく初耳だぞ。と思って調べたら、なんでも彼女は「バーレスクの女王」としてその方面ではつとに知られている存在だとか。とはいえもちろん、私はまったく知らなかった。


日本映画からは大島渚の「愛のコリーダ (In the Realm of the Senses)」だけが結構詳しく紹介されているが、もちろん日本映画が「コリーダ」だけということはない。とはいえ、海外でも紹介されている日本のこういった作品の数は確かに限られているだろう。それにこういう作品における選択というのはどうしても客観的なものにはなり得ず、製作者の主観、個人的なセンスが色濃く出るだろうから、特に目くじら立てることのこともないとは思う。ではあるのだが、しかし、やはり、これは納得できないなあというのが多々ある。


例えばデイヴィッド・リンチは、「ブルー・ベルベット (Blue Velvet)」や「ワイルド・アット・ハート (Wild at Heart)」等が紹介されているが、私の意見ではリンチが目指しているのは美学であって、エロティシズムではない。しかし、美学とエロティシズムを同一のものと考える者も当然いるだろう。クローネンバーグ作品だって、ここにとり上げられている「ヴィデオドローム (Videodrome)」や「戦慄の絆 (Dead Ringers)」よりも、初期の「ラビッド (Rabid)」や「シーバース (Shivers)」の方がエロかったという印象がある。


シャーロット・ランプリングの「愛の嵐 (The Night Porter)」は納得としても、彼女が出演している最近のフランソワ・オゾン作品や「ヘディング・サウス (Heading South)」(これは新しすぎるか) がないのは不満。それにランプリングといえば「地獄に堕ちた勇者ども (The Damned)」にも言及しておく必要はないのか。ヴィスコンティは? 綺麗過ぎる? ニコラス・ローグの「赤い影 (Don't Look Now)」が紹介されているのはわかるが、しかし私はローグなら「美しき冒険旅行 (Walkabout)」か「ジェラシー (Bad Timing)」を選ぶ。ティルダ・スウィントンの「猟人日記 (Young Adam)」があるならデレク・ジャーマンの諸作品もあっていいし、ピーター・グリーナウェイやペドロ・アルモドヴァルやパトリス・シェローやダリオ・アルジェントやポール・ヴァーホーヴェンの作品がまったくないのはなぜだ。「カリギュラ (Caligula)」をこれだけ詳しくやっているのにパゾリーニ作品がどこにもないぞ、等々、納得できない点が次々に目につく。


とはいうものの、実はこの種の作品は、自分の趣味と一致することはまずないのは最初からわかりきっている。そんなことより、番組の不満や欠点を言い募って友人知人らとあれがないこれもないと喧々囂々と協議したりするのがなによりも楽しかったりする。だからそれはそれで存在価値はあるだろう。それよりも、自分の知らなかった作品を教えてもらうことこそが醍醐味だったりする。今回の私の発見はフランスのカトリーヌ・ブレイヤで、私はこれまでブレイヤという名前をまったく知らなかった。知る人ぞ知るという感じに見受けられたが、とにかくこれまで彼女は私の知識の空白地帯にいたので、この発見は大きかった。彼女の作品はすごそうだった。これはとっととDVD買うか借りるかして見なくては。


今回、番組放送に合わせてIFCとSNS系サイトのナーヴ (nerve.com) が共同で過去の映画から選んだ、「グレイテスト・セックス・シーン・ベスト50」のリストを下に挙げる。実はかなりの作品が番組の中では言及すらされていないだけでなく、番組内で挙げられている作品よりもさらに承服しがたい作品が羅列されているのだが、これまた番組同様、このリストを肴に友人知人と話が弾むのは必至だ。その上未見の作品があったりすると、やはり気になるのも事実である。下記リストのどれくらいを見ているか知っているかで、あなたのH度がわかる、なんちって。しかし、それでも、「赤い影」が1位か。10位の「ヤング・フランケンシュタイン」なんて、そもそもあれは笑いをとるためのセックス・シーンだったはず。14位の「チーム・アメリカ」は、そもそも人形劇なんだが‥‥



50. Ken Park (2002)

49. Laurel Canyon (2002)

48. Fur: An Imaginary Portrait of Diane Arbus (2007)

47. The Dreamers (2003)

46. Sex Lies and Videotape (1987)

45. Breaking The Waves (1996)

44. Poison (1991)

43. Tie Me Up! Tie Me Down! (1990)

42. High Art (1998)

41. High Fidelity (2000)

40. The Lover (1992)

39. The Piano (1993)

38. Shortbus (2006)

37. Shaft (1971)

36. Boogie Nights (1997)

35. Network (1976)

34. The End of the Affair (1999)

33. The Last Seduction (1994)

32. Being John Malkovich (1999)

31. Storytelling (2001)

30. Me and You and Everyone We Know (2005)

29. 9 Songs (2004)

28. Henry and June (1990)

27. Boys Don't Cry (1999)

26. Out of Sight (1998)

25. Female Trouble (1974)

24. The Cooler (2003)

23. Brokeback Mountain (2005)

22. The Wayward Cloud (2005)

21. The Kiss (1896)

20. Bound (1996)

19. Sex and Lucia (2002)

18. Unfaithful (2002)

17. Body Heat (1982)

16. Coming Home (1978)

15. Get Carter (1971)

14. Team America: World Police (2004)

13. Y Tu Mama Tambien (2001)

12. The Night Porter (1974)

11. Ecstasy (1933)

10. Young Frankenstein (1974)

9. The Big Easy (1987)

8. Secretary (2002)

7. My Beautiful Laundrette (1985)

6. Betty Blue (1985)

5. The Unbearable Lightness of Being (1988) Philip Kaufman

4. Risky Business (1983) Paul Brickman

3. Mulholland Dr. (2001) David Lynch

2. A History of Violence (2005) David Cronenberg

1. Don't Look Now (1973) Nicolas Roeg  






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インディ・セックス   ★★1/2

 
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