放送局: IFC
プレミア放送日: 10/13/2000 (Fri) 22:00-23:30
製作: ミネルヴァ・ピクチュアズ・プロダクション
製作総指揮: キャロライン・カプラン
監督/脚本: アダム・サイモン
撮影: イモ・ホーン
編集: ポール・カーリン
内容: 60-70年代の黄金期のホラー映画がどのように時代の世相/人々の深層意識を反映していたかを読み解くドキュメンタリー。インタヴュウはジョージ・ロメロ、ジョン・カーペンター、トム・サヴィニ、デイヴィッド・クローネンバーグ、ウェス・クレイヴン、トビー・フーパー、ジョン・ランディス、他。
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「アメリカン・ナイトメア」を放送したIFCはIndependent Film Channel (インディペンデント・フィルム・チャンネル) の略で、文字通りインディ映画専門のチャンネルである。まだ放送を開始して数年の若いチャンネルで、チャンネル顧問にはマーティン・スコセッシやティム・ロビンスといった映画界のいかにもといった名前が連なる。通常ならまず見れないような埋もれた佳品や外国映画をノー・カット放送してくれ、オリジナルに近い体裁で見てもらおうと、アメリカのTVチャンネルにしては珍しくレターボックス・ヴァージョンで放送したりしているので、映画ファンに重宝されている。これでもうちょっと再放送が少なければ言うことないんだが。
IFCは大した頻度ではないがオリジナル番組も製作しており、これまでのところインディの映画作家を題材としたドキュメンタリーが多い。因みにIFCが初めて製作したドキュメンタリーは、この「アメリカン・ナイトメア」を監督したアダム・サイモンによるサミュエル・フラーを主題とした「ザ・タイプライター、ザ・ライフル、アンド・ザ・ムーヴィ・カメラ (The Typewriter, the Rifle, and the Movie Camera)」だった。話は変わるがIFCはインディ映画製作にも手を出しており、ジョン・セイルズの新作、「メン・ウィズ・ガン (Men with Gun)」製作にも金を出している。傑作だったのに劇場公開後、ほとんど話題にもならず消えてしまった。残念。
さて、「アメリカン・ナイトメア」であるが、これはホラー映画を扱ったドキュメンタリーである。60年代から70年代の、ホラー映画のクラシックと見なされる作品に焦点を当て、それが時代の世相や政情と暗に陽にどのように関わりあっていたのかを、その映画を製作した当人に話を訊きながら読み解こうと試みる。
見てなるほどなと思ったのが、ホラー映画がヒットするのは政情が不安定な時とか、とにかく何か問題があって人々が不安な気持ちを持っている時に多いという事実である。たとえば、ジョージ・A・ロメロのクラシック「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」は、ヴェトナム戦争と当時の黒人パワーの擡頭を抜きにしては語れない (黒人が主人公であり、その主人公は最後にゾンビにではなく、同類の人類(白人)に射殺されるのだ)という話なんか、大いに納得できるものであった。その他、トビー・フーパーの「悪魔のいけにえ」、ウェス・クレイヴンの「鮮血の美学」、デイヴィッド・クローネンバーグの「シーバース」、ジョン・カーペンターの「ハロウィーン」等を俎上に乗せ、当時の代表的なホラー映画を読み解く。残念なのはこの手の番組には欠かせない「13日の金曜日」シリーズが権利の問題でどうしてもクリップを手に入れることができなかったということだが、まあ、しょうがない。
IFCのような若いチャンネルは、チャンネルの自由度が高い。つまり、ある特集を組むと、朝から晩まで関連映画を続け様に放送したりする。こんなのはHBOやショウタイムのようなペイTVの大手では不可能な相談だろう。関連番組ということで、忘れ去られた昔の佳品、というか、これまで存在することを知ってすらいなかった作品が編成されたりして、新たな発見や驚きがあったりする。
実は「アメリカン・ナイトメア」のプレミアはハロウィーンも間近に迫った10月、それも13日の金曜にプレミアするという念の入れようで、しかもその前後を滅多に見れないインディのホラー映画で固めるという、ホラー・ファンにはたまらない編成をしていた。因みにその直前に組まれたのがクレイヴンの「サランドラ」、直後がフーパーの「悪魔のいけにえ」で、その後再放送をした時には、珍品中の珍品、クレイヴンのデビュー作「鮮血の美学」と抱き合わせで放送するという、「アメリカン・ナイトメア」で言及した作品を特集していた。
私は実は、ありがちなことだが、あまりにも有名な「悪魔のいけにえ」を見たことがなかった。話だけは色んなところでよく聞いてたんだけどね (しかし「悪魔のいけにえ」の原題、「Texas Chainsaw Massacre (テキサスの電動ノコ大量殺人)」を最初聞いた時は、この映画はコメディだと思った)。「サランドラ」、「鮮血の美学」に至っては、聞いたことすらなかった。両方ともファンの間では古典となっているようだが。それで今回、後学のために、ついでに「悪魔のいけにえ」と「鮮血の美学」を見てみることにした。
そしたら怖いじゃないか! こういうのを見ると、ホラー映画の監督はマスコミを意識して変に演出を加減しないインディ時代の作品、それもデビュー作が一番怖い、つまり傑作であるというのがよくわかる。フーパーなんてメイジャーになってのスタジオ作品なんて、「ポルターガイスト」とかホラーというより家族ドラマだったし、クレイヴンだって「エルム街の悪夢」も最初の第1作以外は結構こけおどし、「スクリーム」で面白いのはドリュー・バリモアが死ぬまでだった。
しかし「悪魔のいけにえ」の、この神経に突き刺さるキリキリとした怖さは何だ!? 「鮮血の美学」の、まったく常軌を逸した性的な怖さは、確かに「美学」と言っても過言ではない。ホラーのくせしてイングマール・ベルイマンの「処女の泉」を換骨奪胎したという「鮮血の美学」のモティーフもすごい。主人公(と思われた)女性が犯されて殺されるシーンなんて、本当にベルイマンやカール・ドライヤーみたいな崇高さと怖さがあった。その上に強制的にフェラチオさせられたその母親が相手のちんぽこを噛み切るというエログロさも忘れていない。世界各国で上映禁止となったのもむべなるかなである。ちんぽこ噛み切りはサム・ペキンパーの「戦争のはらわた」にもあったが、「鮮血の美学」の方がよほど痛そうでショッキングである。いや、「アメリカン・ナイトメア」も面白かったけど、こういう隠れたクラシックをやってくれるIFCは本当に捨て難いチャンネルだ。
