放送局: CBS

プレミア放送日: 1/4/2005 (Tue) 0:35-1:35

製作: ワールドワイド・パンツ

ホスト: クレイグ・ファーガソン


内容: クレイグ・キルボーンの跡を継いだクレイグ・ファーガソンがホストの「ザ・レイト・レイト・ショウ」のプレミア・エピソード。


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昨夏、突然の降板を宣言したホストのクレイグ・キルボーンが番組を去った後、CBSの「ザ・レイト・レイト・ショウ」は後任のホスト探しで二転三転した。あとの方ではホストがいないというそのことを逆手にとってパブリシティに仕立て上げ、ありとあらゆる業界からホストになりたい、あるいはホストというのを一度やってみたかったんだという者を、とっかえひっかえ臨時ホストの座に座らせた。


実際、シリアスに次期ホストの座を狙っていた者からほんの座興としてしか考えていなかった者まで、9月から10月にかけて臨時ホストを担当した者は、キルボーン後最初の臨時ホストとして登場したドリュウ・ケリーを筆頭に、アナ・ギャステヤー、デイヴィッド・デュカヴニー、ボニー・ハント、ジェイソン・アレキサンダー、アイシャ・タイラー、トム・アーノルド等、一度限りの者から何度もゲストを担当した本命まで20人以上を数えた。


なかでも当初業界で囁かれていた本命は、NBCドラマの「エド」やVH1のカルチャー関係番組のコメンテイターとして知られるマイケル・イアン・ブラックで、9月の段階では番組製作のワールドワイド・パンツのプロデューサーまでが本命はブラックと公言していたのだから、ブラックが選ばれる確率はかなり高かったはずだ。ところが、実際に様々な者にゲストをさせてみると、これが意外と思ってもいなかったメンツが、かなり手慣れた、印象的なホスティングのスキルを見せた。そういうわけで、いきなり予想は白紙撤回、誰がホストの座を射止めるか、状況はまったくわからなくなった。


11月、CBSは、その中から上述のブラックを筆頭に、クレイグ・ファーガソン、D. L. ヒューリー、デミアン・ファーイの4人を最終候補として絞り込み、それぞれに一週間ずつ番組ホストを担当させてホストを決める最終選抜を行った。まずファーガソンを皮切りに、ヒューリー、ファーイ、ブラックの順で最終テストに挑んだ。


ファーガソンはシットコムの「ザ・ドリュウ・キャリー・ショウ (The Drew Carey Show)」で最もよく知られている、どちらかと言えば性格俳優だ。黒人コメディアンのヒューリーも、以前UPNで5シーズン続いたシットコムの「ザ・ヒューリーズ (The Hughleys)」に主演していた。MTVの音楽番組「トータル・リクエスト・ライヴ (Total Request Live: TRL)」出身のファーイは、この4人の中では最も若い。実際に若いだけじゃなくその上童顔なので、見ようによってはティーンエイジャーにすら見える。


彼らのホスティングを見ていると、なるほどどれもなかなか面白く、彼らが最後まで残されたのがよくわかる。ファーガソンはスコットランド人で、「ドリュウ・キャリー・ショウ」では嫌みなボス役を演じていた。スコットランド訛りの英語が逆に愛嬌を醸し出しており、アイリッシュ訛り丸出しでアメリカで人気を獲得している「ザ・グレアム・ノートン・エフェクト (The Graham Norton Effect)」のグレアム・ノートンのように、彼もいい線行くかもしれないと思わせるものがある。


ヒューリーの場合、ジョークの質やホスティングの技術よりも、黒人ということが最も大きなポイントだったと思われる。これまでアメリカTV界の深夜トークというジャンルで、黒人ホストが成功した例はない。たぶん、FOXの「ジ・アルセニオ・ホール・ショウ (The Arsenio Hall Show)」がそれなりの成績を残した唯一の番組だろう。昨年の「ジ・オーランド・ジョーンズ・ショウ (The Orlando Jones Show)」もダメだった。しかし、深夜トークを視聴する潜在的黒人視聴者はかなりの数に上るはずで、彼らのツボに訴えることのできる黒人ホストをつかまえることができれば、ほとんどこのジャンルで一人勝ちするのも夢ではない。一方、もちろん白人視聴者が逃げていく可能性も考慮しないといけないわけだが。


ファーイは若者向けの「TRL」出身ということもあり、なかなか若者受けしそうなちょっと捻ったジョークを連発する。それになんといっても若いということは、もしホストに決まった場合、今後30年は安泰と思われるし、将来性という点でも最もポイントが高いのは事実だ。一方、逆に若くつぶしが利くために、キルボーンのように、途中でやーめたと勝手に辞められる可能性だってなきにしもあらずとも言える。つまり若いということは、製作者側にとっては必ずしも利点ばかりではない。もちろん、ブラックがいまだに本命のままでいるのも事実で、やっぱり、結局彼がホストとということで落ち着いてしまうのかもしれない。最終テストでトリを務めるということからも、彼が本命という匂いはぷんぷん漂ってくる。


そして12月頭にCBSが発表した「レイト・レイト・ショウ」の次期ホストは、大方の予想を裏切り、ファーガソンという大番狂わせだった。もちろんファーガソンのホスティングだって悪くなかったのだが、私はやっぱりブラックかなと思っていた。よくも悪くも彼が一番無難という印象が強かったのだ。さり気ないきついジョークや、裏番組の「レイト・ナイト」ホストのコナン・オブライエンのようなずれ具合が、この時間帯のトーク番組のホストとしては最も適しているように思われた。要するに、最初、彼が本命と思われた理由もまさしくそこにあったわけだし、その点は動くまいと思われたのだ。


抜擢されたファーガソンは俄かに忙しくなり、「レイト・レイト・ショウ」の直前に編成されているデイヴィッド・レターマンがホストの「レイト・ショウ」にもゲスト出演して新年から始まる自分の番組をアピールした。「レイト・ショウ」と「レイト・レイト・ショウ」を製作しているのはレターマンの番組製作会社であるワールドワイド・パンツであるから、これは当然だろう。


また、ファーガソンの起用が発表された後も、「レイト・レイト・ショウ」はファーガソンが番組の準備を整える間、番組を続けていかなければならないため、相変わらず臨時ホストを投入して急場を凌いだ。既に次期ホストは確定、今回は誰にとっても一時的なものであるわけだから、9月10月よりもっとヴァラエティに富んだパーソナリティがホストに起用された。スーザン・サランドン、FOXのスポーツ・キャスターのジョー・バック、サラ・ルー (「レス・ザン・パーフェクト」)、ドン・チードル、リア・レミニ (「キング・オブ・クイーンズ」) 等で、サランドンとチードルは自分の映画最新作の宣伝の意味が大きいだろうし、CBSのシットコムで主演しているルーやレミニはなおさらそうだ。


最も笑えたのが「フルハウス」の (というよりはアメリカでは「アメリカズ・ファニイスト・ホーム・ヴィデオス」で知られている) ボブ・サゲットがホストを担当した回で、番組収録中、ふと後ろになにやら気配を感じたサゲットがはっとして振り向くと、セットの後ろをファーガソンその人が通り抜けていくではないか。サゲットが、おお、これは! 皆さん、次期「レイト・レイト・ショウ」ホストのクレイグ・ファーガソンですと紹介すると、そのファーガソン、ふふふと笑い、そう、オレが次期ホストのファーガソンなんだよ、忙しいんだよ、あんたはたった一回きりのホストだけどね、でもオレが本当のホストなんだよ、ふふふと、絶句するサゲットに対してやたらめったら嫌みたっぷりの捨てゼリフを投げつけて去っていった。はっきり言ってあれには笑ってしまった。たぶん本当に忙しくて、この日も打ち合わせかなんかでスタジオに来てたんだろう。それで急遽アドリブでジョークをかますことになったんだと思うが、笑わせてくれる。


さて、そんなこんなでファーガソンがホストの「レイト・レイト・ショウ」の第1回は、1月3日 (正確には既に1月4日である) の夜零時35分から始まった。栄えある番組第1回の最初のゲストはデイヴィッド・デュカヴニーで、これはそれまでにも臨時ホストやらゲストやらで忙しく「レイト・レイト・ショウ」の役に立ってきたデュカヴニーの貢献に対する意味合いもあろう。次のゲストがCBSのシットコム「キング・オブ・クイーンズ」に出演しているニコール・サリヴァンで、こいつはCBS繋がりかと思っていたら、サリヴァンは、実はファーガソンが10年前に来米した時に最初にデイトした相手なのだそうだ。


番組第1回ということでスタジオに花とかが贈られてきていたそうだが、その贈り主の一人はなんと現在ABCで放送中の裏番組の深夜トーク「ジミー・キメル・ライヴ」のホスト、ジミー・キメルだった。ファーガソンはそのジョークをまぶした手書きのお祝いのカードを見せていたが、こういうところ、アメリカのショウビズ界は大人だと感じさせる。もう一本の、こちらは完全に時間帯が重なる裏番組のNBCの「レイト・ナイト」のコナン・オブライエンもこれくらいの洒落っ気を見せてもよかったのに。


もちろんファーガソンはトライアウトでうまくやったからホストに選ばれたのだが、それでも今回が本格的なホスト業の初日だというのに、これだけそつなくこなすのはやはり大したものだ。ファーガソンは最初、ほとんど冗談のつもりで臨時ホストを請け負ったのだが、やってみるとこれこそが本当に自分がやりたかった天職だと感じたそうだ。それで天下のネットワークの深夜トークのホストという金的を射止めたんだから、やはり天賦の才があった上に、実際に本人に向いていたんだろう。内容にはあまり関係ないが、ファーガソンがホストになってからの「レイト・レイト・ショウ」のオープニングのテーマ・ソングも、乗りがよく、数多ある深夜トーク・ショウの中で最も憶えやすく印象的で、私にとってはポイント高い。


これまでにも何度か書いているが、私はオブライエンの「レイト・ナイト」とはあまり波長が合わず、ほとんど笑えないために、チャンネルを合わせることはめったにない。そのため、当然今ではこの時間帯は、特に他に見たい番組があるのでもない限り、だいたいファーガソンの「レイト・レイト・ショウ」を見ている。実際、既にもう何年もこの仕事をしているようなホストぶりが板につき始めており、安心して見れる。


この際はっきり言わせてもらうが、ファーガソンの「レイト・レイト・ショウ」は、キルボーンの「レイト・レイト・ショウ」より面白い。もっとファーガソンの知名度が上がって大物のゲストをスタジオに招くことができるようになったら、まだ面白くなるだろう。これまではほとんど競争がなかったため、この時間帯の視聴率争いで一応1位に君臨していたオブライエンの「レイト・ナイト」も、うかうかしているとすぐに追いつかれるんじゃないかという気がする。NBCが4年後にオブライエンに「トゥナイト」の次期ホストの座を約束したことが裏目に出ないといいが。





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The Late Late Show with Craig Ferguson

ザ・レイト・レイト・ショウ・ウィズ・クレイグ・ファーガソン   ★★1/2

 
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