放送局: NBC

放送日: 5/16/2003 (Fri) 0:35-1:35

製作総指揮: ローン・マイケルズ、ジェフ・ロス

監督: アラン・カータン

ホスト: コナン・オブライエン


内容: NBCの人気深夜トーク・ショウ「レイト・ナイト」を、全編クレイメーションにて製作。


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のっけからコナン・ファンには悪いのだが、私はアンチ・コナン派である。自慢じゃないが、これまでに「レイト・ナイト」を面白いと思ったことなどほとんどない。一応、それでも過去に4、50回くらいは見ているのだが、それで笑った回数は、片手の指の本数で余裕で足りる。なぜだかいまだに続いている「イン・ザ・イヤー2000」のスケッチ・コーナーでは、あの、甲高い間延びした声を聞いた瞬間に、反射的にリモートに手を伸ばしてチャンネルを替えたくなるし、有名人の写真に唇だけ合成して好き勝手なこと喋らせるコーナーは、ただただ気味悪いだけだ。


どちらかというと、裏番組のCBSの「レイト・レイト・ショウ・ウィズ・クレイグ・キルボーン」の方がまだまだ私にとって面白いのだが、ま、笑いのツボは人それぞれだったりするし、実際、「レイト・ナイト」はエミー賞なんかも受賞していたりする。それに「レイト・レイト・ショウ」より「レイト・ナイト」の方が視聴率は高いということを聞いたりすると、私のテイストの方がメインストリームから外れているだけかと納得したりもする。


とはいえ、93年に番組が始まった当時は、「レイト・ナイト」が本当に面白くなかったのは、誰もが認めるところである。コナン本人ですら番組がつまらなかったことを認めており、NBC幹部から、これ以上視聴者からも批評家からも無視されたら番組はキャンセルだと脅されたことを楽屋裏ネタにして、なりふり構わず強引に笑いをとっていた時期もあった。というわけで、私はただつまらないから見てなかったのだが、私の同僚なんかは、お笑いトークなのにまったく笑えないので、コナンが痛々しくてあまりにも可哀想で見ていられなくなるので見ないと言っていた。それが一般的な「レイト・ナイト」評だったのだ。


「レイト・ナイト」はコナンがメインのホストだが、一昨年までは、アンディ・リクターという共同ホストがいた。共同ホストとはいっても、彼がやっていることは、話しかけてくるコナンに対してほとんど相づちを打つくらいのもので、ほとんど大した仕事はしていなかった。CBSのデイヴィッド・レターマンの「レイト・ショウ」では、そのくらいのお喋りならバンド・マスターのポール・シェイファーが担当しており、「レイト・ナイト」の直前に編成されているジェイ・レノの「トゥナイト」でも、やはり同様にケヴィン・ユーバンクスがレノのお喋りに茶々を入れるという役割を受け持っている。リクターのお喋りは、そのシェイファーやユーバンクスとほとんど変わらなかったりするのに、なんで共同ホストが必要なのかよくわからなかった。多分、「レイト・ナイト」でバンド・マスターを務めるマックス・ウェインバーグが、よほど話し下手か、そういうのを好きじゃないんだろうと思っていた。


結局、最終的にリクターは共同ホストを辞め、一昨年、FOXで「アンディ・リクター・コントロールス・ザ・ユニヴァース」というシットコムの主人公を務めたのだが、これがまた「レイト・ナイト」同様、人を選ぶような癖のあるシットコムで、最初の方だけはそれなりに話題になったのだが、段々人知れず消えていった。あれもねえ、あまり笑えなかったからなあ。いずれにしてもリクターが辞めたことが話題になったわけでもなく、その後の視聴率にも何の影響も与えなかったというのは、やはり彼がいようがいまいが何も関係なかったということの証左だろう。


で、「レイト・ナイト」であるが、そういう時代から番組自体が大きく変わったとは到底思えないのに、今では一応時間帯トップの視聴率を稼ぐ人気深夜トークとしての地位を確立してしまった。これは、何はともかく、番組が始まった時、裏番組にまだ「レイト・レイト・ショウ」が編成されてなくて競争相手がおらず、その時に番組を見始めたファンが律儀にまだ見続けているからとしか私には思えない。私の好み云々よりも、癖のあるコナンのギャグが大衆受けするようにはまったく思えないのだ。


というわけで私は最近は深夜トークの時間帯は、まずはその日の気分でレターマンの「レイト・ショウ」か、レノの「トゥナイト」を見た後、「レイト・ショウ」を見ている場合はそのまま「レイト・レイト・ショウ」に行き、「トゥナイト」を見ていた場合は、番組が終わった後、そこで「レイト・ナイト」をそのまま見ることなく、チャンネルを切り替えて、ABCの「ジミー・キメル・ライヴ」に移動することが多い。


そんなわけで久しく見ていなかった「レイト・ナイト」に久々にチャンネルを合わせたのは、とりもなおさず、この週はNBCの深夜番組や早朝のトーク・ショウがホストを交替するなど様々なスタントを行っており (詳しくはこちらを参照)、その一環として、「レイト・ナイト」は、なんと、1時間全部をクレイ・アニメーションで通すという冒険を試みたからだ。基本的にホストの顔で見せる深夜トークで、そのホストのみならず、ゲストや音楽パフォーマー、さらには会場内の観客まで全部粘土細工にしてしまおうという、そこまでやるなら面白そうだ。というわけで、私は本当に久々に「レイト・ナイト」を見たのであった。


その回は、まず、番組の冒頭の一瞬にだけ生身のコナンが登場、前口上を述べ、後は本当に最後まで生身の人間が登場することなく終わった。いや、というのは必ずしも正確ではない。というのも、時々、生身の人間の手が画面の外から伸びてきて、ちょこちょこと粘土細工に手を入れるからだ。もちろんそれが誰の手かはまったくわからないが。


この日のゲストはMTVの「ジャックアス」のジョニー・ノックスヴィルと、HBOの「カーブ・ユア・エンシューシアズム (Curb Your Enthusiasm)」のリチャード・ルイス、音楽ゲスト・パフォーマーはデイヴィッド・ボウイと、全員この手の洒落に理解を示した者たちで、一応歌がメインの音楽ゲストのボウイを除けば、この手の番組には本人の顔を売るために出演するはずのゲストが粘土細工では、ほとんど出る意味はあるまいと思われるのだが、それでも出るところが洒落者の所以である。とはいえノックスヴィルとルイスは二人共コメディアンの類いであり、シリアスな俳優は出ていなかったし、さすがに女性ゲストもいなかった。まあ、女性が本人にほとんど似ていない粘土細工になんかされるのを嫌うのはよくわかる。


ノックスヴィル、ルイス、ボウイでは、最も似ていたのはルイス、最も似ていなかったのはボウイで、ルイスはかなりの確率で誰だか当てられそうだが、ボウイの粘土細工を見てこれがボウイだと当てきれる奴は、はっきり言って皆無だろう。ノックスヴィルも、当てるのはかなり難しそうだ。そのノックスヴィルの「ジャックアス」ギャグをわざわざクレイメーションで再現していたのも笑えた。


しかし今回のクレイメーションで最も笑えたのが、観客席にいる悪友二人連れ (これももちろん粘土細工だ) が、場内からコナン当てに緊急の要件だといって電話をかけ、コナンが席を外した隙に (もちろんこれがあらかじめ決められたギャグじゃなかったら、たとえ誰だろうと電話なんか取り次ぐわけないが) 今のうちに写真を撮ろうぜとステージに上がって悪ふざけするというギャグで、この、わざわざクレイメーションでこういうギャグを撮る意味などかけらもないものを、わざわざやっちゃうところがおかしかった。これとまったく同じギャグを本当の人間が登場する実写でやっても多分まったくおかしくはないはずなのだが、それをクレイメーションでやると、とたんになにやら洒落っ気が出てきておかしくなるのだ。この辺、無意味な身体を張ったギャグを連発する「ジャックアス」と非常にテイストが似ている。こういうギャグを、クレイメーションじゃない普通の時にもやれないものか。


あと、次におかしかったのが最後のNG特集で、コマ送りで一こまずつ撮影中に、いきなりバランスが崩れて、立っているはずのコナンが倒れたり、椅子に座っているノックスヴィルがずるずると椅子からずり落ちたりする。その度に画面外から手が伸びてきてまた立たせたり元の位置に戻したりするのだが、何分小さな粘土モデルに細工しているので、ちょっとした拍子に手が他の粘土細工にぶつかって、コナンを立たせようとしたら、指が引っかかってノックスヴィルの腕を引きちぎったりする。あるいは何もしていないのにいきなり腕が落ちたりするのだ。さらにはコナンの頭がいきなりぼとりと落ちたのには笑ってしまった。本人も縁起が悪いと思ったのは間違いあるまい。


ボウイのパフォーマンスも、これがクレイメーションでやる意味がまったくないだけに、おかしいといえばおかしいと言えるが、しかし、3分間、音楽を聴きながらクレイメーションを見る意味はまったくないと言えよう。とはいえ、そのくせして、実物を撮る時と同じようにカメラが移動しながらの撮影だったり、パンしたりチルトしたり、フォーカスを送ってみたりなど、一応撮影手法自体は、会場にゲストを呼んでのパフォーマンスを撮影している時とまったく同じ体裁をとっている。ここでも、そういうことをする意味など少しもないところをわざわざ手間暇惜しまずやっているからこそおかしみが出てくる。


全般的にわりと感心させられた今回のクレイメーション・スタントであるわけだが、しかし、これも一回こっきりだからいいのであって、これを何度もやったら確実にすぐ飽きるだろう。実際、ノックスヴィルやルイスのインタヴュウを行なっている時、あるいはボウイのパフォーマンスなんて、実際に本人の顔を見ているわけではないので、かなり飽きが来る。粘土細工には細かい表情の変化なんてないのだ。でも、少なくとも私がこれまで「レイト・ナイト」を見て笑った回数をすべて足した回数よりも、この一回で笑った回数の方が多かった。その意味では充分評価に値するだろう。できれば今後も何か新しいギミックを開発してもらいたい。








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Late Night with Conan O'Brien

レイト・ナイト・ウィズ・コナン・オブライエン   ★★★

 
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