放送局: コメディ・セントラル

プレミア放送日: 6/24/2004 (Thu) 22:00-23:00

製作: ソー・テレヴィジョン

製作総指揮: グレアム・スチュアート

シリーズ製作: ジョン・マグナソン

製作: ヴィクトリア・アシュボーン

監督: スティーヴ・スミス

ホスト: グレアム・ノートン


内容: グレアム・ノートンがホストのトーク・ショウ。


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ベイシック・ケーブル・チャンネルのコメディ・セントラルは、名前の通り、一日中お笑い関係の番組を放送しているチャンネルだ。人間、誰でも笑える番組を見たいと思う時があり、その時にネットワークで面白そうなシットコムが放送されていない場合、このチャンネルに切り替える視聴者は、特に若い層を中心にかなりいるんじゃないかと思われる。


「サウス・パーク」の成功で一躍知名度を上げたこのチャンネルの最新ヒット番組は、今年のエミー賞にもノミネートされている「チャペルズ・ショウ (Chappelle's Show)」だろうが、それ以外にも「レノ911 (Reno 911)」とかがあるし、深夜にはジョン・スチュワートがホストの「デイリー・ショウ (Daily Show)」もあるなど、再放送番組が多すぎるという欠点はあるけれども、固定視聴者は少なくない。


グレアム・ノートンがホストの「ザ・グレアム・ノートン・エフェクト」は、そのコメディ・セントラルによる最新の番組だ。アイリッシュのノートンは、元々は英国で「ソー・グレアム・ノートン (So Graham Norton)」というトーク・ショウのホストをしていた。それが評判になったため、コメディ・セントラルが試しにアメリカでもこの番組を数エピソード放送してみたところ、わりと好評だったため、アメリカ版製作に踏み切ったものだ (因みに「ソー・グレアム・ノートン」は、アメリカではBBCアメリカでも時々放送している。)


あからさまにゲイのノートンの番組の特徴は、あからさまなセックス・ジョークがふんだんに登場することにある。「エフェクト」はその路線をさらに推し進めた感があり、とにかく下ネタのオン・パレードだ。ギャグのほとんどすべてがセックス絡みであり、あまりに露骨なので、これは視聴者を選ぶんじゃないかなという気もしないでもない。それが今のところ、視聴者の反発も買わないで、むしろ好意的に迎えられているのは、ひとえにノートンのパーソナリティによるところが大きい。


ノートンは、本当に無邪気に楽しそうに、それこそ子供が親に向かってなんで子供ができるの? と訊くような乗りで、ゲストに質問したり、コメントを差し挟んだりする。本当にそういう話やジョークが好きなんだろうなあという感じで、ここまで嬉しそうな顔して下ネタばかりやられると、こちらも苦笑するしかないというか、あるいは、ついつられて爆笑してしまう。「ソー・グレアム・ノートン」が英国で受けたというのはわかる気がするが、単純にバカ・ギャグが最も幅を利かせるアメリカでも彼が受けるのは、もっとよくわかる。露骨で単純でストレートのノートンの下ネタ・ギャグは、むしろ英国よりもアメリカ向きだ。コメディ・セントラルが彼を起用して番組を製作したのも当然だろう。


栄えあるその番組第1回のゲストはサンドラ・バーンハートで、わりとゴージャス (けばいとも言える) でセックス・ゴッデスみたいなバーンハートがゲストなのはわからないでもないが、しかし、バーンハートって、私が覚えているのははるか遠い昔の「キング・オブ・コメディ」か、ごく短命に終わったA&Eのトーク・ショウ「ザ・サンドラ・バーンハート・エクスピリエンス (The Sandra Bernhard Experience)」くらいしかなく、アメリカの視聴者だって、彼女のことをそんなに知っているかどうか疑わしい。バーンハートは既にノートンと知己があり、以前にも彼の番組にゲスト出演したことがあるというから、単にその辺の縁で招かれただけということかもしれない。プレミアのもう一人のゲストはマーロン・ウェイアンズで、こちらは最新作の「ホワイト・チックス (White Chicks)」が公開間近ということもあり、その宣伝も兼ねて出演しているのだろう。


とにかく最初から最後までセックス・ギャグだらけなのだが、なかなか笑ったのが、バーンハートそっくりの人形 (ダッチ・ワイフと言ってしまってもいいかもしれない) を作り、それをとあるバーの隅の席に置き、近寄ってくる男性に声をかけるというもの。人形自体がよくできており、また、顔の半分を覆い隠すようなかつらを被っているため、暗いバーの片隅に置かれると、ゴージャスなねーちゃんが一人雰囲気たっぷりに座っているように見える。しかも人形の内部にはスピーカーが埋め込まれてあり、近くの席に座った男にマイクを通してバーンハートが囁きかけると、皆近寄ってくる。もちろんその模様を隠しカメラでとらえるわけだ。最初の男なんかは、バーンハートに、すぐに行くからトイレでパンツ下ろして待っててと言われ、慌ててストゥールを降りて去るのだが、いや、これは是非ともトイレにもカメラを設置しておいてもらいたかった。


他のコーナーでは、ステージに上がった何人かの男女に対し、客席にいるその関係者の一人の、セックス中の喘ぎ声の録音が流れる。一瞬のつまり声や絶叫型など、それだけでもかなり楽しめるのだが、本題はこれからで、その本人の相手が、ステージ上にいる誰かを当てるというものだ。その人の歳格好だけを参考に、似たような歳の異性を探すとそれがとんでもなく、もちろんそうであったりもするのだが、そうでない時もある。ゲイのノートンの番組でもあり、ゲイ同士のカップルである可能性も高いのだ。そしてそういう風に思わせといて、最後はゲイ同士のカップルですらなく、男女合わせた3Pだったというオチまでついていた。


でも、これって、やらせじゃないよな。こんなのを公にしてしまって、他の観客並びに全米の視聴者と共に自分で自分を笑ってしまうこの神経の図太さにはなかなか感心してしまう。あるいは、自分でも多少なりとも恥ずかしいことをしているという気持ちがあり、照れ隠しに過剰に反応して自分で大笑いしているという部分もあるんじゃないかと思うが、それでもかなりの面の皮だ。アメリカ人全員がここまでセックスに対してオープンだとは思わないが、かなり露出好きな性向を持つ人間は多いようだ。


実際の話、番組の冒頭ではノートンが観客席に上っていって、「あらぬ時にあらぬことをしているのを見つかってしまった体験」を訊くのがだが、それがまた、よくもまあこんなことをという話ばかりなのだ。もちろんそういう下ネタは仲間内でする分には充分面白く、私だってやるのだが、それを内輪だけでするのと電波に乗せて全米に振り撒くのとでは、雲泥の差がある。自分の恥を公衆の面前にさらし、聞く方も面白い話として受け止めることができるというのは、民度が高いのか低いのか。私個人としては、別にこういう開けっ広げさは嫌いじゃない。


因みに2回目以降の番組のゲストは、ジェニファー・ティリー、ジュリー・デルピー、アラン・カミング、ポール・ラッド、ルポール、マコーレイ・カルキン、シャロン・ストーン、ミナ・スヴァリ、シャネン・ドハーティ、ジョーン・リヴァースといった面々で、このメンツを見ても、ノートンの趣味がわかろうというものだ。「エフェクト」はわりと好評につき、既に第2シーズン製作が決定している。当分ノートンはイギリスとアメリカを行ったり来たりする生活に追われることになるかと思われるが、どうかこのテンションを落とすことなく続けていってもらいたい。私の意見では、「エフェクト」は、ノートンがもっとアメリカ的ユーモアおよびアメリカの生活に慣れた、次シーズンの方がもっと面白くなるという気がする。 






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The Graham Norton Effect

ザ・グレアム・ノートン・エフェクト   ★★1/2

 
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