放送局: コメディ・セントラル

プレミア放送日: 7/23/2003 (Wed) 22:30-23:00

製作: ジャージーTV

製作総指揮: デニー・デヴィート、ジョン・ランドグラフ、マイケル・シャンバーグ、ポール・ヤング、ピーター・プリンシパト、ステイシー・シェール

クリエイター/脚本: ベン・ギャラン、ケリ・ケニー、トマス・レノン

監督: マイケル・パトリック・ジェイムス

出演: ベン・ギャラン (トラヴィス・ジュニア)、カルロス・アラズラキ (ジェイムス・ガルシア)、ケリ・ケニー (ウィーグル)、トマス・レノン (ダングル)、ウェンディ・マクレンドン-コヴィ (クレメンタイン・ジョンソン)、ニーシー・ナッシュ (ライニーシャ・ウィリアムス)、セドリック・ヤーブロー (ジョーンズ)


内容: FOXが放送している人気長寿番組「コップス (Cops)」のパロディ。


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コメディ・セントラルは、チャンネル名が示す通り、コメディ専門のチャンネルだ。普通、コメディ・セントラルと聞いて一般の人がすぐに思い出すのは、大ヒットした「サウス・パーク」だろう。で、その次に思い出す番組というのは、多分、ジョン・スチュワートがホストの深夜トーク・ショウ「ザ・デイリー・ショウ」、そしてその次は‥‥おそらく、もうないのではないか。


もし、たまにでもコメディ・セントラルにチャンネルを合わせることのある視聴者なら、今ではABCに場所を移して自分の深夜トーク・ショウ「ジミー・キメル・ライヴ」を持つようになった、ジミー・キメルが共同ホストを担当していた「マン・ショウ (Man Show)」くらいは見ていたかもしれない (もし男性なら)。が、普通、ごく一般的な視聴者が見ているコメディ・セントラル番組は、その辺止まりだと思う。かくいう私も、せいぜいそれくらいしか見ていない。


あと、このチャンネルで、一応、最近のオリジナル番組で少なくとも話を聞いたことがあるのは‥‥「チャペルズ・ショウ (Chappelle's Show)」、「アイム・ウィズ・ビジー (I'm with Busey)」、「インソムニアック・ウィズ・デイヴィッド・アテル (Insomniac with David Attell)」、「クランク・ヤンカーズ (Crank Yankers)」と、せいぜいこんなもんだろう。あとは「サタデイ・ナイト・ライヴ」とか、「ザ・キッズ・イン・ザ・ホール」とか、昔の番組の再放送ばっかりだ。


と、このチャンネルの番組には、別格の「サウス・パーク」を除き、ヴァラエティ/リアリティ・ショウ的なお笑い番組が多い。それが最も手軽に作れる番組だからだ。だからこそ今回のコメディ「レノ911!」には、ちょっと興味を惹かれるものがあった。30分コメディとしては、一昨年の「ダッツ・マイ・ブッシュ!」以来で、なんで両番組共、番組タイトルの最後にエクスクラメーション・マークがついているのか不思議な気もしないではないが、そういうもんなんだろう。きっと、何か、視聴者を煽り立てるような効果を狙っているに違いない。


さて、その「レノ911!」であるが、この番組、元々はFOX用として2年前に企画された番組である。それがずっとお蔵入りになっていたものを、コメディ・セントラルが発掘してきて再開発したものだ。その内容は、現在FOXが土曜夜に放送している、隠れた人気番組「コップス」のパロディとなっており、つまり、だからこそFOX用として企画され、また、だからこそFOXが却下したものと思われる。


「コップス」は、「隠れた」人気番組という形容詞がつくことを見てもわかるように、誰もが見ている大ヒット番組というわけではない。しかし、FOX開局以来、十数年不動のラインナップとして編成されていることを見てもわかる通り、安定した人気がある。その内容は、全米各地の警官 (コップ) と共に彼らのパトロール・カーに同乗し、様々な事件を記録するというもので、基本的にドキュメンタリーの体裁をとっているが、ある意味で現在流行のリアリティ・ショウのはしりとも言える。


というのも、「コップス」でとらえられる事件や、どこかピントのずれた犯罪者、さらに彼らを捕えようとするコップたちとのやりとりや追跡劇は、思わず苦笑、たまに唖然、時に爆笑を誘うものであったりするからだ。基本的に事実であり、真面目に職務を推進しようとしているであろうコップたちには悪いが、この番組をギャグ、あるいはコメディとしてとらえている視聴者は多いだろう。実際の話、「コップス」は至るところでギャグの種にされている。そのため、それを完全にそのままパロディにしてしまおうというアイディアが出てきたのも納得できる。


「レノ911!」は、ネヴァダ州レノというとある町を舞台に、そこで働くコップたちの働きぶりを追いかける。番組の作りとしては、本当に「コップス」そのままなのだが、最大の違いが、「コップス」で登場する間の抜けた犯罪者同様、「レノ911!」ではコップたちもピントがずれているということだ。ゲイのコップやすぐに撃ちたがるコップ、ストリップ嬢上がりの女性コップ等が、誤認逮捕は日常茶飯事、小さな犯罪をさらにとり返しもつかない事件にしたり、あるいは自分らが事件の当事者となってしまう。因みに番組タイトルの911は、アメリカにおける警察/消防用緊急電話番号のことだ。


この番組が、「コップス」を知っていると倍楽しめることは間違いない。とにかく番組進行がまったくそっくりで、それだけで既におかしい。元々「コップス」だって、かなりずれた容疑者が登場することで笑いを誘っていたりしたわけだが、彼らと対峙するコップたちまでずれると、かなり笑える。「コップス」では、番組内で、パトロール・カーに乗って警ら中のコップにインタヴュウ、というか、独白させるシーンが多い。「レノ911!」はそのシチュエイションをそのまま使ってギャグをかますのだが、思わず吹き出してしまう。もちろん、多くの登場人物による様々なスキット/シチュエイションが描かれるため、中にはつまらないのもあるのだが、それでも、かなり笑えると言えよう。


私が見た回で最も笑えたのが、強盗が押し込んでいるという知らせを受けたコップ二人が現場に急行、通りを歩いている、カバンを下げた二人連れの男に銃を向けて地面にひれ伏させたところ、それが実はエホバの証人の宣教師だったというものだ (エホバの証人の本拠地はネヴァダにある)。いきなり銃を突きつけられて、地面に突っ伏して泣いている二人を尻目に、間違いに気づいたコップがパトカーに戻って、失敗を反省するでもなく、見たかあいつら、泣いてたぜ、なんてバカにしているのだが、いや、こういう自分に関係ない差別ギャグって笑ってしまう。自分が善人ではないことを痛感してしまうのであった。それにしてもエホバの証人って、やはりこちらでも胡散臭いと思われてんだよねえ。


もう一つ面白かったやつが、ゲイのコップがパトカーで町を流していると、迷子になった犬を探してくれと若い男性が頼みに来る。その男を同乗させて犬を探しているうちに、なにやら二人はヘンな雰囲気に‥‥というもので、これまたなにやらあまりにもふざけてておかしい。その他、すっぽんぽんで町を徘徊する男を追うというものや、売春を取り締まるために自分が売春婦に化けて客を引こうとするのだが、そのあまりのセンスのなさに誰も寄りつかない女性警官だとか、つまらないがわりと笑えるギャグが満載である。


この回の最後は、だだっ広い土地の真ん中で (ネヴァダ州なのだ) 疑わしいアイス・クリーム・トラックに気づいたコップが、トラックの後部に隠してあった違法花火を発見する。そのアイス・クリーム屋、英語をろくすっぽ話せないチャイニーズという設定になっているんだが、花火を押収しようとするコップから逃げようとして発する切れ切れの言葉が、どう聞いても日本語なのだ。どうやらアメリカ人から見ると中国人も日本人も同じなので、適当に日本人が中国人の役をしているみたいなのだが、中国人という設定なのに (アメリカの違法花火はほぼ100%中国製だ)、途切れ途切れに「あれーっ」とか「なにをする」だとか、日本語の感嘆詞を挟むな! 紛らわしいだろ!


そのコップたち、大量の花火を押収するために署から応援を頼むのだが、結局、最後はその花火を使って皆でどんぱち楽しくやり始める。そのうちにトラックの中に向かって発射されたロケット花火が、中の大量の花火に引火、トラックもろ共燃え上がる、というふうになるのだが、うーむ、このわざとらしさ、たまらないものがある。


惜しむらくは「レノ911!」が「コップス」の直前か直後に編成されていたら、それこそ究極のパロディになったと思うんだが、いくら冗談のわかるFOXでも、そこまでやる気にはなれなかったようだ。ま、それもわからないではない。冗談で済めばいいけど、まかり間違うと「レノ911!」だけでなく、「コップス」共々共倒れになる可能性だってあったわけだし。それに第一、現在のFOXの土曜夜の編成は、8時「コップス」、9時「アメリカズ・モスト・ウォンテッド」という不動のラインナップが何年もずっと続いており、FOXはこの時間帯をいじりたくないだろう。で、結局「レノ911!」はコメディ・セントラルで放送されることに相成ったわけだが、いや、この番組、かなりカルト受けするんじゃないだろうか。








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Reno 911!

レノ911   ★★★

 
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