放送局: FX

プレミア放送日: 6/16/2003 (Mon) 23:00-23:30

製作: 3アーツ・エンタテインメント、20世紀FOXTV

製作総指揮: エディ・フェルドマン、オーランド・ジョーンズ、アーウィン・ストフ

製作: ミシェル・デヴォー、レイニー・ソーキン・ストルナンスク

監督: トム・マグワイア

ホスト: オーランド・ジョーンズ


内容: 黒人タレント、オーランド・ジョーンズがホストを担当する深夜トーク・ショウ。


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現在、アメリカの深夜トークは主としてネットワークが牛耳っている。NBCの「トゥナイト」、「レイト・ナイト」、CBSの「レイト・ショウ」、「レイト・レイト・ショウ」が、いわゆる4強と言われる番組であり、さらにNBCはその後の深々夜の時間帯に、MTVのVJとして知られるカーソン・デイリーを起用した「ラスト・コール」を編成、ABCも負けじと「ジミー・キメル・ライヴ」を持ってくるなど、基本的に深夜トークは、ネットワークが受け持っていると言ってしまって差し支えなかろう。


とはいえ、ケーブルTVにも深夜トーク番組がないこともない。その代表がコメディ・セントラルの「ザ・デイリー・ショウ」で、番組ホストのジョン・スチュワートは、一人ケーブルTVで気を吐いているという感がある。ジミー・キメルが同じくコメディ・セントラルで持っている「マン・ショウ」も、大きな範疇で括ればトークと言えないこともないのだが、10時半スタートというのは、深夜トークというには始まる時間が早すぎる。


MTVでは、ドリュー・バリモアに捨てられたトム・グリーンがホストの「ザ・ニュー・トム・グリーン・ショウ (The New Tom Green Show)」も始まった。ただしこの番組、頭に「ニュー」という文字が新しくつけられたことを見てもわかるように、旧「トム・グリーン・ショウ」とはまるで趣を異にしている。旧「トム・グリーン」は、トークというよりは「ジャックアス」的なおちゃらけヴァラエティとして存在していたが、今度は正攻法のトーク番組として復活してきたものだ。グリーンは最近、年取ったせいかとみに休みをとることが多くなってきたデイヴィッド・レターマンの「レイト・ショウ」でも代替ホストを務めたりして、間抜け男からの印象の脱皮を図っている。いずれにしても、ケーブルTVにおけるトーク番組といって思い出すのはせいぜいこれくらいのもので、これまでは深夜トークがネットワークの独壇場だったということには疑問の余地はなかったわけだ。


そこに編成されたケーブル・チャンネルの新深夜トークが、このFXの「ジ・オーランド・ジョーンズ・ショウ」である。FXはFOX傘下のケーブル・チャンネルで、その中味は、20世紀FOXTVが製作したTV番組の再放送が最も多い。しかし、最近オリジナル番組の開発にも力を入れており、「ザ・シールド」なんて、多分ネットワークで放送するにはちょっと無理そうな、なかなかエッジィな番組を編成して注目を集めたり、あるいは最近はわりと面白そうなTV映画を製作放送していたりする。


そのFXが初めて編成する深夜トークが、この「オーランド・ジョーンズ」であるわけだ。オーランド・ジョーンズという人選がまず曲者で、彼がこれまでに出演した映画を見れば、ジョーンズが口が立つであろうということはよくわかるのだが、だからといって、そのことがすぐホスト業とは結びつくまい。なんとなれば、自分が話し好き、話し上手であるということと、相手からうまく話が引き出せる話術の持ち主であるということは、まったく別物であるからだ。


実際の話、話がうまいからといってトーク番組のホストがうまく務まるかどうかは、まったく疑問である。というか、だいたいにおいて、そういう人選で選ばれたホストが担当する番組は、面白くない。例えば、これは深夜トークではなく、日中に放送されている一番人気の「オプラ・ウィンフリー・ショウ」の場合、番組の人気の大部分を、ホストのオプラの話術ではなく、視聴者と同じ視点から対象を見るという、オプラの番組に対する姿勢に負っている。視聴者と同じ立場に立って、笑ったり泣いたり怒ったりする彼女の姿勢こそが、多くの視聴者の共感を得ているのだ。つまり、もちろん、一定の話術というものは必要であろうが、それよりも、ホストのキャラクターこそが、番組の人気を左右する。


話を元に戻すと、深夜トークになると、通常、1時間番組の後半30分程度がゲストを招いてのお喋りとなるわけだが、二大人気の「トゥナイト」と「レイト・ショウ」の場合、そのゲストの人選にほとんど差があるわけではない。どちらも一流どころを毎回呼んでいる。それにゲストに対する質問の仕方や話の引き出し方を見ても、「トゥナイト」のジェイ・レノと「レイト・ショウ」のレターマンで特に差があるとも思えない。どちらかというと、皮肉っぽいレターマンの方がとげが多く (昔、番組ゲストとして出たシルヴェスタ・スタローンをおちゃらかして、本気で怒らせたのは有名な話だ)、レノはどちらかというと当たりが柔らかいという傾向はあるが、技術としての差はそれほどないだろう。


つまり、私が何を言いたいかというと、深夜トークの場合、ホストのキャラクターの部分以外では、ゲストの人選よりも、それに至る30分間のスケッチ・コメディ/ヴァラエティ的なギャグの部分のできが、番組の人気に大きく影響するということだ。無論、A級とは言えないが癖のある人選を見せるABCの「ジミー・キメル」や、音楽通にはたまらない人選のNBCの「ラスト・コール」のように、おやっと思う人物をゲストに呼ぶことでアピールしている番組もあるが、両番組共まだ放送が始まってそれほど経っていない新しめの番組であり、人気はまだ確立していない。つまり、癖のある人選は、大物をそれほど呼べないことの裏返しでもあるのだ。


一方で「ラスト・コール」は30分番組であり、ギャグで見せる部分はほとんどなく、人選こそがすべてである。同様に30分番組の「オーランド・ジョーンズ」は、体裁から言えば「ラスト・コール」に最も近くなりそうだが、しかし、「オーランド・ジョーンズ」においては、時間は30分でも、その内容は、ジョーンズのジョークからギャグ・スキット、ゲストを交えてのおしゃべり、音楽ゲストの演奏まで、基本的に1時間の深夜トーク番組がやることを30分に短縮しただけだ。


さて、その「オーランド・ジョーンズ」、私が見たエピソードのゲストは、モハメッド・アリの娘、レイラと、なかなか知名度のある人選だったが、翌週から、すぐに聞き覚えのない名前ばかりになった。因みに番組も始まってしばらくした7月最終週のゲストは、マーク・ヴァリー、ジョージ・ロペス、コンスタンス・マリー、ジョー・パントリアーノ、エディ・グリフィンといった面々で、「マトリックス」や「メメント」等の癖のある脇役で知られるパントリアーノを除けば、知名度という点では、やはりそれほど大したメンツではない。アメリカのTV界をよく知っていれば、ロペス、マリーというラテン系の俳優が、現在ABCで放送されている「ジョージ・ロペス・ショウ」の出演者ということくらいは知っているだろうが、ヴァリー、グリフィンの名前まで知っている者は少なかろう。私も知らなかった。


音楽ゲストの方も同様で、まず、わりと知られている名前を起用しているはずの、放送第1週目の私が見た回に登場したケイオスという、ヴォーカルに生ギター、パーカッションのバンドですら、既にもう知らないバンドだ。音楽自体はわりと面白かったけど。その他、やはり7月最終週の音楽ゲストは、モニカくらいなら知っているが、その他のザ・ソウル・オブ・ジョン・ブラック、ビッグ・ギップ、モルーン5、アンクル・クラッカー等の名前は、やはり聞いたこともない。ゲスト、音楽ゲスト、共に白人より黒人やスパニッシュ系等のマイノリティが多いのは、やはり黒人のジョーンズの交友関係が中心となっているからだろう。番組としても、いきなりネットワークの深夜トークと競合することは避け、まずは黒人を中心とするマイノリティに定着しようとする姿勢が窺える。実際、スタジオにいる観客も、ほとんどが黒人を中心とする有色人種の方が多いように見受けられた。


番組内のギャグ・スキットは、これまた黒人文化である、独特の握手や手や指先を使った挨拶、パフォーマンスを内輪ギャグにして、この握手 (ハンドシェイク) の仕方をマスターするための養成機関、ハンドシェイク・インスティテュート・オブ・テクノロジーができたという学校案内をするもので、なかなか笑えた。実際、アメリカン・スポーツのNBAやMLBをよく見ている者ならわかると思うが、あの種の身振り手振りや挨拶には流行りすたりがあって、見ていると、年々変化しているのがわかる。結構微妙なのだ。だからこそ、その微妙さでコミュニケートできるかどうかが、そのチーム、コミュニティの一員であるかどうかを判断する材料になる。同じような作法ができないのは、即、部外者を意味するのだ。その流行に乗り遅れないよう、握手の仕方を教える養成機関ができたというギャグは、こういう作法を発展させてきた黒人自身ですらついていけなくなってきていることの現れで、なにやらおかしい。しかし、こういう閉鎖性は、文化、という気がする。


その他にも、短いアニメーションなんかもあって、たった30分の間に、色々とぎゅう詰めしている。なかなか内容としては濃いんでないかというのが、番組を見た私の印象だ。「オーランド・ジョーンズ」が、すぐさまネットワークの深夜トークと伍すほどの人気を獲得するとは到底思えないが、黒人を中心とするマイノリティにはそれなりに人気が定着するような気がする。白人ホストで占められているネットワークの深夜トークに飽き飽きしていた者は、かなりの数がいるはずで、有色人種の枠を超えてアピールする可能性も少なからずあろう。


私は、特に、これまで見たことも聞いたこともなかったが、それなりに面白い演奏をするバンドを紹介してくれるところをありがたく感じた。PBSの「セッションズ・アット・ウエスト54th」が終わって以来、こういうマイナー・バンドを発見する番組をとんと見なくなったからだ。今後、「オーランド・ジョーンズ」が定着するか、ちょっと興味を惹かれるところである。







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The Orlando Jones Show

ジ・オーランド・ジョーンズ・ショウ   ★★1/2

 
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