放送局: CBS

プレミア放送日: 9/16/2005 (Fri) 21:00-23:00

製作: ブラガ・プロダクションズ、ファントム・フォー・フィルムズ、パラマウントTV

製作総指揮: ブラノン・ブラガ、デイヴィッド・ヘイマン、デイヴィッド・ゴイヤー

共同製作総指揮: ブラジ・シャット、マーク・ローセン、アン・マッグロール、ダン・オシャノン

クリエイター: ブラジ・シャット

監督: デイヴィッド・ゴイヤー、ピーター・ハイアムズ

脚本: ブラジ・シャット、ブラノン・ブラガ、デイヴィッド・ゴイヤー

撮影: スティーヴ・バーンスタイン、フランク・バイヤーズ

美術: カルロス・バルボサ、ステファニア・セラ

編集: コンラッド・スマート

音楽: ラミン・ジャワディ、スティーヴ・ジャブロンスキー

出演: カーラ・グギノ (モリー・キャフリー)、チャールズ・S・ダットン (J. T. ベイロック)、ブライアン・ヴァン・ホールト (キャヴィノー)、ロブ・ベネディクト (ルーカス・ペッグ)、ブレント・スピナー (ナイジェル・フェンウェイ)、ピーター・ディンクレイジ (アーサー・ラムジー)、ダイアン・ヴェノラ (アンジェラ・ハッテン)、ウィリアム・マポサー (ガネソン)


物語: 大西洋上で米軍用艦が卍型に展開する得体の知れない生命体のようなものに遭遇する。この物体を目にしたりなんらかの接触をした者は、身体に変調を来たすだけでなく、死なずに生き残った者は簡単には死なない超人的能力を身につけていた。国防省のベイロックは国家非常時応対プラン「スレッシュオールド」の開発者であるキャフリー博士の出馬を要請する。キャフリーは微生物学者のフェンウェイ、物理学者のペッグ、言語学/数学者のラムジー、そしてシークレット・エージェントのキャヴィノーを召喚して対策チームを結成するが、事件遭遇者のガネソンらは忽然と姿を消していた‥‥


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いやあ、今秋のアメリカTV界の、新シーズンの新番組攻勢には参った。何が参ったかというと、昨年の超常ミステリ・ドラマ「ロスト」の成功に意を得るところがあった多くの番組プロデューサーが、ここぞとばかりに挙って同様の番組を大量に企画、各ネットワークも柳の下の二匹目のどじょうを手に入れたいものだから、これを奨励していたような節があった。結果として、今秋、同工異曲の「ロスト」的超常系のミステリ・ドラマが、UPN以外の全ネットワークを通じてずらりと並ぶことになった。


昔、FOXの「X-ファイルズ」がヒットした時、やはり猫も杓子も挙って同様の番組製作に乗り出したことを思い出す。言うまでもなく、その中から成功した番組などほとんど出現しなかった。それなのにまたぞろ同じことを繰り返すネットワーク、懲りないよねえ。もちろん、このことはヒット番組を編成するということがいかに難しいかを如実に証明してもいる。


一方で、では昨シーズン、「ロスト」同様に大ヒットしたプライムタイム・ソープの「デスパレートな妻たち」を真似た番組が現れなかったのかというと、これが実に一本もなかったのだ。「デスパレートな妻たち」の場合、ジャンルこそプライムタイム・ソープというクラシックな系統であるのだが、それをコメディ仕立てで製作したというクリエイターのアイディアが光っていた。これは簡単に真似のできるものではなく、もし「デスパレートな妻たち」もどきの番組を製作した場合、批評家や番組関係者、果ては視聴者からもぼろくそに言われるだろうということは目に見えていた。そのため、誰も怖れて手をつけなかったものと思われる。


いずれにしても、おかげで新シーズンが始まる前、私は各ネットワークの新スケジュールを見ながら頭を抱えることになった。番組タイトルと製作者、出演者、簡単な内容の説明を読んだだけじゃ、番組の区別がつかないのだ。例えば、NBCの新番組「サーフェス (Surface)」の内容は、「兄弟が深海から現れた謎の生命体を追う」、であり、一方、WBの「スーパーナチュラル (Supernatural)」の場合、「兄弟が20年前に母を殺した正体の知れない生命体を追って全米を旅する」である。これだけを読んでどちらが面白そうかなんてまったく判別できない。演じる俳優もどちらも新人となればなおさらだ。それ以外の番組もどれもこれも似たり寄ったりで、結局、謎のエイリアンだか生命体だか殺人鬼だかがどこからともなく現れるという話ばっかりだったりする。番組編成スケジュールを見て溜め息をつきたくもなろうというものだ。


言及したついでに言うと、「サーフェス」と「スーパーナチュラル」では、前者の兄弟主人公はまだロウ・ティーンで、彼らに地上で迷子に? なってしまった深海生物の子供が絡んだりする。一応パニック・アクション的要素も絡めてはあるのだが、最も印象が似ているのはスティーヴン・スピルバーグの「E.T.」だ。一方「スーパーナチュラル」の方は、20代のハンサムな青年二人が、得体の知れない化け物を追って旅する様を描く話で、これはもう、完全にティーンエイジャーの女の子目当てに番組を製作しているのがありありだ。若者視聴者の多いWB放送ということもあり、かつてWBで放送されていた「バッフィ」を思い起こさせる。あるいは今放送中の「ヤング・スーパーマン (Smallville)」にも近いかもしれない。


こうやって一度でもちゃんと見ると、ああなるほど、こういう番組だったのかと納得でき、ちゃんと頭の中で区別できるようになる。まさしく百聞は一見に如かずだ。私の印象では、これらの番組の中で蛇が出るか何が出るかわからないというような、最も「ロスト」的なものに近いものを持っているのは、ABCの「インヴェイジョン (Invasion)」なのだが、「ロスト」と異なりエイリアン絡みと微妙に独自の特色があり、「ロスト」の轍を踏んではいても、単純に真似しているわけではないというのはよくわかる。後はこれだけの数の番組に住み分けが可能かということだが、こればかりは今しばらくは様子を見てみないことにはなんとも言えない。



これらの数多ある同種の番組の中で、私個人にまず真っ先にアピールしたのが、「スレッシュオールド」だ。理由は簡単、主演が「カレン・シスコ (Karen Sisco)」のカーラ・グギノだったからということに尽きる。グギノは20代にも30代にも見えるかなり年齢不詳の女優だが、ほぼすべての男性にアピールするんじゃないかと思えるコケティッシュな魅力を備えている。カレン・シスコとは「アウト・オブ・サイト」でジェニファー・ロペスが演じた登場人物名で、そのシスコを主人公としたTVシリーズが、「カレン・シスコ」だ。残念ながら番組は1シーズン持たずにキャンセルされてしまったが、それでもこの番組でグギノを知った視聴者は多かろう。映画の方では、これまで最も興行成績のよかったのは「スパイ・キッズ」シリーズだから大人はあまり見てないと思うが、今年、「シン・シティ」でまたなかなか印象的なところを見せた。いざとなると脱ぎっぷりもいいところが、これまた男性には強くアピールすると思う。


そのグギノが「スレッシュオールド」で演じるのは、政府で非常事態のための緊急対応プランを研究している女性博士キャフリーだ。キャフリーは各分野の異才を揃えて有事に当たるわけだが、その中の一人、異能の数学/言語学者に扮するのは、「ザ・ステイション・エージェント (The Station Agent)」で知られる小人のピーター・ディンクレイジで、しかもその彼が女たらしという設定になっているところが楽しい。キャフリーを責任者に任命する政府要人ベイロックに扮するのはチャールズ・S・ダットンで、こないだFOXの新番組「キラー・インスティンクト (Killer Instinct)」を見ていたら、恰幅のいい剃髪の黒人という、印象ではダットンと瓜二つのチャイ・マクブライドが、これまた警察管理職という似たような役柄で登場していた。アメリカTV界にそれほど詳しくない視聴者が見たら、絶対この二つの番組を混同してしまうだろうことは賭けてもいい。


プレミア・エピソードでは、謎の生命体? に遭遇した軍用艦の乗組員たちがそれぞれ謎の死を遂げたり、死ななかった者は、超人的生命力、運動能力を身につける。その一人ガネソンに扮するのがウィリアム・マポサーで、これは当然、昨シーズンの「ロスト」で、最も不気味な謎の男を怪演して強力な印象を与えたことが買われている。ただそこに立っているだけなのに、なんでこいつこんなに怖いんだと思わせてくれた。これだけ不気味な味が出せるマポサーに、昨年、「The Juon/呪怨 (The Grudge)」で普通の演技をさせてしまった清水崇は、やはりホラーという点以外では並みの演出家に過ぎなかったかと思わざるを得ない。


近年、この種のアクションが絡む番組においても女性が主人公に抜擢されることが多くなってきたが、不思議なのは、その主人公を演じる女優が、では運動神経に秀でているかというと、まずそうは見えない点にある。「スレッシュオールド」ではグギノはかなりアクション・シーンが多いのだが、シーンの良し悪しはともかく、やはりグギノはそんなに運動神経がいいとは思えない。これは「カレン・シスコ」でもそうだった。新シーズンの他の番組でも、FOXの「ボーンズ (Bones)」のエミリー・デシャネルだとか、あるいは昨年の「ヴェロニカ・マーズ (Veronica Mars)」のクリスティン・ベルだとか、はたまた「コールド・ケース (Cold Case)」のキャスリン・モリスだとか、男性とペアを組むわけではない女性一人だけの主人公であればあるほどこの傾向は顕著で、反比例的に運動神経は鈍くなっていくように見える。現在放送中の番組で、唯一、実際にもかなり運動ができそうだと思えるのは、「エイリアス (Alias)」のジェニファー・ガーナーくらいしかいない。


その理由としては、まず第一にアクションは一応演出と編集でごまかしが利くため、演技力の方が優先されるからということがある。実際にアクションができるかということよりも、いかにアクションをしているように見えるか、特に脅えたり奮起したりする時の表情が出せるかということが問題になるのだ。その方が主人公が窮地に陥った場合のサスペンスが増すことはもちろんである。アクションが絡むからといって、全部が全部「ジーナ (Xena)」のルーシー・ロウレスみたいに男勝りだと、主人公が追われている時の緊迫感が出ない。だからわざわざ逆に、そういうアクション向きでない女優を選ぶのだ。さらに私が殴られ系と読んで密かに応援している、目の周りに青タン作れば作るほど魅力が映える系統の女優がおり、グギノは明らかにその系列に属している。当然彼女が「スレッシュオールド」で主演している理由の大きな部分は、そのことと関係しているはずだ。できれば今後も番組製作者はしっかりとグギノに毎回一発はパンチを入れてもらいたいと、切に思う次第である。






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スレッシュオールド   ★★★

 
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