放送局: ABC

プレミア放送日: 10/1/2003 (Wed) 22:00-23:00

製作総指揮: デニー・デヴィート、マイケル・シャンバーグ、ステイシー・シェール、ジョンランドグラフ、ボブ・ブラッシュ、マイケル・ディナー

共同製作総指揮: ジェイソン・スミロヴィッチ、ロバート・パーム

製作: バリー・ソネンフェルド、ロブ・コーン

監督: マイケル・ディナー

脚本: ボブ・ブラッシュ

原作: エルモア・レナード

撮影: ウォルト・ロイド

編集: ビル・ジョンソン

音楽: ジョン・アーリック

美術: グレッグ・メルトン

出演: カーラ・グギノ (カレン・シスコ)、ロバート・フォースター (マーシャル・シスコ)、ビル・デューク (エイモス・アンドリュース)、パトリック・デンプシー (カール)、ゲイリー・コール (コナー)、ベニート・マルティネス (フエンテス)


物語: FBIエージェントのカレン・シスコは、同僚と二人で潜伏中の犯罪者を追跡中に撃たれ、一時的に記憶を喪失してしまう。それでも働こうとするシスコに上司は休養を命じ、憂さ晴らしに出かけたバーである男と意気投合して一夜を共にしたシスコは、後日、シスコを監視していた者たちによって、男が銀行強盗の一味であることを知らされる。


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期待して楽しみにしていた番組が、まだ何度も放送されているわけでもないのに視聴率不振でキャンセルされる。自分の嗜好がマイナーであるのを痛感するのは、こんな時だ。特に昨今、このパターンが多い。


例えば昨シーズン、私が最も期待していた新番組は、スティーヴン・ボチコがCBSで製作した刑事ドラマの「ロバリー・ホミサイド・ディヴィジョン (Robbery Homicide Division)」だったが、年末までに姿を消した。昨シーズンの新番組の中では、面白さという点では、同じCBSで始まった「ウィズアウト・ア・トレイス (Without a Trace)」に一歩譲るかもしれないが、質の高さという点では、どの番組と較べてみても遜色なかった。


そして今年も既に、昨年、たった2回放送されただけでキャンセルされた「ガールズ・クラブ (Girls Club)」の雪辱なるかと私が注目していたデイヴィッド・E・ケリー製作の「ザ・ブラザーフッド・オブ・ポーランド、NH (The Brotherhood of Poland, N.H.)」(CBS) が、やはり数回放送されただけでキャンセルされているだけでなく、もう一本の期待していたABCの「カレン・シスコ」も少しばかり不振で一時的に棚上げされているなど、相も変わらず私が注目していた番組の成功率は低い。特に「カレン・シスコ」の場合、成功するかどうかはともかく、シーズン開始前の下馬評では最も批評家受けがよかったなど、私だけでなくTV批評家も注目していたのだ。


他方、もう一本、これも面白そうだなと思っていた、またまたジェリー・ブラッカイマーがCBSで製作している「コールド・ケース (Cold Case)」の方は、順調に視聴者を獲得している。現在、私がほぼ定期的に見ている新番組は、この「コールド・ケース」と「カレン・シスコ」くらいだ。


「コールド・ケース」と「カレン・シスコ」には、期せずして大きな共通点がある。両方共、女性のプロフェッショナルが主人公ということだ。しかも「コールド・ケース」では刑事、「カレン・シスコ」ではFBIエージェントと、どちらかというとこれまでは男性が活躍していたポジションで、女性が陣頭指揮をとっている。両主人公共、美人の部類に入ると言えると思うのだが、二人共それなのにどちらかと言うと見かけの手入れはそっちのけで、犯罪捜査の方に余念がない。


特に「コールド・ケース」主人公リリィ・ラッシュを演じるキャスリン・モリス (「マイノリティ・リポート」でトム・クルーズの奥さんを演じた人だ) は、かなり美人と言っていいだろう。それがいつ見ても髪はぼさぼさ、人手が足りないために自らオフィスで徹夜作業を厭わない、男勝りのワーカホリックというキャラクターとして設定されている。無造作に後ろで束ねて留めたブロンドの髪にペンを突き刺しているところなんて、逆に色気があるとも言える。これをブスがやっちまったら話にもなんないのだが。


一方の「カレン・シスコ」はフロリダを舞台としており、主人公のカレン・シスコはオープン・カーを乗り回し、その父はハーバーにボートを所有している。そのためシスコはいつもなにやら戸外にいる機会が多く、やはりこちらもだいたいいつでも髪が塩風にはためいているという印象があり、お肌や髪の手入れが大変だろうという気にさせる。


ラッシュもシスコも二人共、当然携帯を肌身はなさず持ち歩いているわけだが、電話を受ける時に名字を名乗る。プロフェッショナルだから当然で、仕事中に同僚とファースト・ネイムで呼び合うことなどないし、ましてやハローと言って電話を受けたりはしない。モリス演じるリリィ・ラッシュは、同僚から、リリィではなくラッシュと呼びかけられるし、カーラ・グギノ演じるシスコは、電話をとる時、「シスコ」といって携帯を耳に当てる。それらが最初見た時、なにやらとても新鮮に見えた。特に「カレン・シスコ」では、事件が終わって父といっしょにボートの上で今まさに寛ごうとしているシスコが携帯で呼び出しをくらい、シスコ、と言って電話をとるというシーンで幕を閉じるエピソードが何回かあり、非常に印象に残る。


さらにモリスもグギノも二人共、これらの番組に主演するのと時を同じくして、映画でも出演作が相次いでいる。要するに二人共、そういう上り調子の時期に当たっているのだろう。一方、今シーズン、これといって男性主人公が活躍する番組はない。WBの「ターザン (Tarzan)」だって既にキャンセルされちまったし。おかげで今シーズンの新番組における私の印象は、女性が活躍しているなということに尽きる。


「カレン・シスコ」は特に主人公の魅力が番組の中核を占め、グギノがいなかったら番組自体が成り立たなかったろうと思わせる。特に美人とは言えず、スタイルも大してよくないが、ジュリエット・ルイスを思い起こさせる、愛嬌のある、魅力的な顔立ちをしている。そのグギノが男性エージェント顔負けの活躍をするところが、この番組の最大の見所だ。


プレミア・エピソードでは、シスコは潜伏中の犯罪者の部屋を急襲し、パートナー (男性) の勇み足のために撃たれ、ショックで一時的な記憶喪失になってしまう。後で記憶を快復したシスコは、パートナーの失態を上司に報告することはしないが、本人に向かって、あんたにはこの仕事は向いてない、辞めなさい、と淡々と言う。また、恋仲になった男が犯罪者と知ったシスコは、男を見逃すようなことはせず、少なくとも表面上は平気で男に銃を向ける。撃たない方に賭けた男が逃げようとするとすかさず発砲して、仕事には情を差し挟まないところを見せるのだ。


「カレン・シスコ」は、エルモア・レナード原作、スティーヴン・ソダーバーグ監督の「アウト・オブ・サイト」で、ジェニファー・ロペスが演じたFBIエージェント役を主人公として再構成したものだ。結局「アウト・オブ・サイト」でも、ロペス演じるシスコはジョージ・クルーニー演じるけちな犯罪者と恋仲になってしまうのだが、「カレン・シスコ」でもグギノ演じるシスコは、やはり恋多き女として造型されている。スパニッシュ系の多いフロリダという場所柄を考えるならば、ロペスは文句ない配役だったと思えるが、「カレン・シスコ」を見た後だと、グギノの方が役柄に見事にはまっているという気がする。


私はこれまでグギノを知らなかったのだが、今夏、たまたま見た「スパイ・キッズ 3-D」で初めて見、それからそんなに時間も経たないうちに、今度は「シンギング・ディテクティヴ」で、主人公を演じるロバート・ダウニーJr.が幼い時の淫乱な母親という役を好演、この女優はわりといいぞと思わせた。私はケイト・ブランシェットとか、殴られ系の女優が結構好きなのだが、グギノも「シンギング・ディテクティヴ」で、やはり印象的に殴られてくれる。


「カレン・シスコ」では、やられたりもするが、やり返すところが身上となっており、それもまたいい。どっちかっつうと鼻っ柱が強そうなグギノは、「シンギング・ディテクティヴ」より、やはり「カレン・シスコ」の方が向いていると言える。「カレン・シスコ」はせっかくの今シーズンの収穫なんだから、ABCは一時的に棚上げの現在の状態からそのままキャンセルなどせずに、年が明けたら新エピソードをちゃんと放送してもらいたい。







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Karen Sisco

カレン・シスコ   ★★★

 
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