Spy Kids 3-D: Game Over


スパイキッズ 3D: ゲーム・オーヴァー  (2003年8月)

本当は「パイレーツ・オブ・カリビアン」を見に行こうとしていたんだが、この映画、2時間半もあるためになかなかこちらと時間が噛み合わない。それでああどうしようとだらだらと時間を潰し、ますます選択肢を縮める羽目になり、結局「スパイキッズ」シリーズの3Dの最新作に落ち着いた。無論私は1も2も見てないのだが、今回はとにかく3Dというギミックに惹かれた。ガキと一緒だな、こりゃ。


ジュニ (ダリル・サバラ) はOSSを引退、普通の子供として暮らしていこうとしていた。そこへ姉のカーメン (アレクサ・ヴェガ) が、ゲームを使って世界支配を企むトーイメイカー (シルヴェスタ・スタローン) が開発したヴィデオ・ゲーム「ゲーム・オーヴァー」のヴァーチャル・リアリティ世界に閉じ込められてしまったという知らせがもたらされる。一時は引退を決意したジュニだったが、姉と世界を悪の手から救い出すべく、自分もまたコンピュータ・ゲーム世界に身を投じるのだった‥‥


3Dというと私が見た3D作品で最も新しいのは、既に何年も前にフロリダのユニバーサル・ステュディオスで見た「ターミネーター2: 3D」で、その前になると東京ディズニーランドのマイケル・ジャクソンが主演していた「キャプテンEO」くらいである。一応、IMAXの3Dなんてのもその気になれば見れないこともなかったのだが、わざわざ遠出しなければならないし、ずぼらさにかまけて見ていなかった。


というわけで、子供にせがまれたわけでもないのに今さら何をこの歳で、という感じなのだが、ま、いいかと見に行った。劇場の窓口で切符を買って、いつものように中に入っていこうとしたら、待て待てと呼び戻され、なんだ、ちゃんと金は払った上にジミー・ファンドに1ドル寄付までしたぞと思って振り向いたら、これを忘れていると言って、3Dメガネを渡された。おお、そうだ、今日は3D映画を見に来ているんだった。


3D映画を見るというのは、見る方の感じとしては、ディズニーランドに行く感覚とそう変わらない。実際の話、今さらディズニーランドに行こうという気はさらさらないが、それでも、3D映画というと、なんとなくいつもの映画を見に行く感覚とは違う、バカンスだかを楽しむような華やいだ気持ちになる。要はそういうことだ。


とはいえ、あの、安物の3Dメガネというのは、鼻が痛くなっていかん。正確に言うと鼻のつけ根なのだが、私はメガネをかけているので、その上からまた3Dメガネをかけると、どうしても鼻当て (というんだろうか) が食い込んでそこが痛くなる。その上、右が青、左が赤の3Dメガネを長時間かけていると、どうしても眼がしばしばしてくる。


こんなんで1時間半もいられるわけないから、作品自体も全編3Dでできているわけではなく、冒頭で作品レギュラーのアラン・カミングが出てきて、今回は3Dだぞ、でも全部3Dというわけではないぞ、3Dのシーンになったら登場人物も3Dメガネをかけるし合図をするから、で、3Dじゃない部分になったり目が疲れたらコンセッション・スタンドで高いポップ・コーンを買ってきて食べよう、みたいな前口上を述べる。まったく何かのアトラクションみたいで、やはり普通に映画を見ているのとは違う。


実際に3Dのシーンになると、スクリーン一杯に「Glasses On (メガネ着用)」と表示が現れ、3Dシーンが終わると、ご丁寧にも「Glasses Off」と表示が出て、3Dメガネをはずすようになっている。作品としても登場人物がヴァーチャル・リアリティ世界に入り込むという設定だから、3Dが最も効果的に見えるようなわざとらしい演出もあまり気にならないし、変な小道具やCGも受け入れられる。日本のロボット・マンガや「トイ・ストーリー」をパクったようなロボ同士の戦いや、「スターウォーズ」のパクりにしか見えないカー・レース、これまで何度も聞いたことがあるヴィデオ・ゲームを利用した世界征服計画等、オリジナリティという点ではちと問題あるという気がするが、ポイントは3Dシーンをうまく活用することにあり、こちらもそれだけを見に行っているのだから、別に構わないだろう。3Dじゃない実写でこういう展開なら、途中で我慢できなくなって席を立って帰ったのは間違いないところだが、ま、意識してパロディに徹しているのかもしれないし。


その3Dシーンで私が最もよくできていると思ったのは、あぶくのようなものがぶくぶくと宙に浮かぶシーンで、客席でも思わず手を伸ばしていた子供たちもいた。他にも色々あったんだが、後半になると、3Dシーンを楽しむというよりも、段々じんじんと痛くなってきた鼻のつけ根の方が気になって、スクリーンに集中できなくなってきた。かすかにメガネを持ち上げながら見ていたりして、ええい、もういいやととっちゃったりしたのだが、そうすると3Dメガネなしでは、スクリーンが赤と緑でにじんで、何が何やらよくわからない。


そのあぶくのシーンでも、「T2: 3D」で、伸びてくるT-1000の頭部を、お、危ない、と思わずよけようとして頭を引っ込め、その直後にちょっと恥ずかしいことしたぜ、へへーっと自分自身で照れてしまったほどできがよかったわけではない。やはり3D専用の専門館と、普通の映画館で便宜的に3D映画をかけるのとは効果に違いがあったのか、あるいはそもそもの3D映像を作る段階からして、その技術に差があったのかはよくわからない。


演出のロバート・ロドリゲスは、いつの間にやらアクション映画の監督というよりも、「スパイキッズ」シリーズのせいで、子供映画専門の監督して定着してしまった。彼もスティーヴン・ソダーバーグ同様、自分の作品は自分で撮影するのだが、今回の3Dまで彼自身が撮影監督にクレジットされていた。こんな、ほぼCGが全編を覆っている作品でも、どうしても自分でやりたかったようだ。それでも、確かに撮影監督としても一流だと思わせてくれるソダーバーグに較べ、ロドリゲスが撮影までやってしまうのは、腕のせいというよりも、ロドリゲスがまだインディ色が抜けきらないからという気がする。ついでに言うと、撮影のみならず、脚本から編集、舞台装置、音楽までロドリゲスが一人でこなしている。自分の作品にすごく思い入れが強いんだろう。


出演も、そのインディからハリウッド初期に培った人脈を相変わらず起用している。ジョージ・クルーニーを筆頭に、アントニオ・バンデラス、サルマ・ハイエック等がいつも登場するわけだが、だからロドリゲス組というよりも、クルーニー組が大挙出演、みたいな印象を与えてしまうのが、今のところロドリゲスがまだハリウッドの一流監督として認識されていない所以だ。最後のエンド・クレジットに被さったNG特集では、OSSのトップに扮したクルーニーが、スタローンの真似をして自分で吹き出してしまい、これで俺のキャリアもおしまいだ、なんて思わず口走るシーンがあったりしておかしかった。他に、「ロード・オブ・ザ・リング」のイーライジャ・ウッドがヒーロー的な役で出演しているが、小人のホビットとしてやゲーム世界ではヒーローでも、普通の映画ではヒーロー役としての出演のないところが、これまた彼の特性を表していて何やらおかしい。あ、そうそう、今回悪役として登場のシルヴェスタ・スタローンこそが、これでキャリアの終わり、みたいな印象を私は受けました。







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