Terriers   テリアーズ

放送局: FX

プレミア放送日: 9/8/2010 (Wed) 22:00-23:15

製作: FOX21、ミッドキッド・プロダクションズ、リクショウ

製作総指揮: マーニー・ホクマン

共同製作総指揮:  エド・ミルコヴィッチ

クリエイター: テッド・グリフィン、ショーン・ライアン、ティム・ミニア

出演: ドナル・ローグ (ハンク・ドルワース)、マイケル・レイモンド-ジェイムズ (ブリット・ポラック)、キンバリー・クイン (グレッチェン・ドルワース)、ローラ・アレン (ケイティ・ニコルズ)、ジェイミー・デンボ (マギー・レファーツ)、ロックモンド・ダンバー  (マーク・グスタフソン)


物語: 元刑事、現私立探偵のハンクは、ブリットと組んで私立探偵として細々と営業している。そのハンクに持ち込まれた仕事は、今や身を持ち崩してアル中状態の元同僚で、別れた妻との間にできた娘エレノアと連絡がとれなくなった、何かの犯罪に巻き込まれた可能性がある、なんとか探し出して欲しいというものだった。昔とった杵柄で警察の情報網を使い、携帯の使用履歴から最後に電話がかけられた場所を見つけたハンクは、海沿いの掘っ立て小屋の中に、射殺された男の死体を見つける。男のポケットにはエレノアの携帯があった。さらに嗅ぎ回る二人にエレノアの方から接近してくるが、彼女は事件とは無関係を主張する。エレノアを逃がしたハンクとブリットはさらに捜査を進め、予想以上に大きな事件の裏側に気づく‥‥


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一時ベイシック・ケーブル・チャンネルでエッジィな時代の先端を行くドラマといえばここという印象のあったFXであるが、近年はそのお株を「マッド・メン (Mad Men)」「ブレイキング・バッド (Breaking Bad)」を擁するAMCにとられた感がある。


一方のFXは、かつての人気ドラマ「ニップ/タック (Nip/Tuck)」が最終回を迎え、「レスキュー・ミー (Rescue Me)」も最盛期を過ぎ、今春編成した「ジャスティファイド (Justified)」は私的には非常に気に入ったドラマなのだが、いかんせん視聴者をつかまえきれない。なぜだかここへ来て既に3シーズン目を迎えるバイカー・ドラマの「サンズ・オブ・アナーキー (Sons of Anarchy)」の注目度が高まっているが、ブームを巻き起こすまではもう一息という感じだ。


という状況下で始まった私立探偵ドラマの「テリアーズ」だが、これがまた「ジャスティファイド」に輪をかけて癖のある、というか脱力ものの番組なのだ。意図的にこういう番組を続けて編成しているとすれば、かなりの冒険と言える。


「ジャスティファイド」はUSマーシャルというれっきとした国家公務員を主人公とし、彼が犯罪者を追うドラマであり、「テリアーズ」は私立探偵コンビが犯罪者やそれらしきものを追う。ではあるが、両者とも追われる方もそうなら追う方もなんというかちょっと間が抜けている。というか、ちょっと一般通念からいってものの考え方が少しばかり違う。もしくは、彼らなりのものの考え方、主張がある。そのため、ちょっとずれた印象を与えるのだ。


あるいは、「テリアーズ」の場合、あまり働きたがっているようには見えない主人公や西海岸の陽光といった雰囲気が、かつての「ロックフォードの事件メモ(The Rockford Files)」や「私立探偵マグナム (Magnum P.I.)」あたりを思い出させるという者もいるかもしれない。特に背景がほとんど同じという点で、「ロックフォードの事件メモ」とはかなり近いものがある。


しかし、「テリアーズ」と本当に印象が近いものを挙げろと言えば、それはTVではなく、2004年公開映画の、「サイドウェイズ (Sideways)」だ。特に新しい映画というわけでもない「サイドウェイズ」を即座に思い出したことからも、この2本はノリがかなり似ていると言っていい。なかなか練られた脚本、セリフ回し、ひねったユーモア、西海岸のバックグラウンド、そしてでこぼこコンビの主人公が、「サイドウェイズ」を彷彿とさせる。


ドナル・ローグ演じる主人公の一人ハンクは、いまだに別れた女房のことが忘れられないが、「サイドウェイズ」でポール・ジアマッティ演じた主人公マイルズもそうだった。別れたというより、二人とも愛想を尽かされて女房に捨てられた、という方が正しいだろう。ハンクの別れた女房グレッチェンは、新しい生活を始めるために家を売ろうとするのだが、ハンクは所有している金を全部注ぎ込んでもそうさせまいとする。感傷旅行に浸るマイルズといいハンクといい、体格の差はあってもどっちも前に進めない後ろ向きなやつらなのだ。


そして、実はこちらの方こそ「サイドウェイズ」を連想させる最大の理由なのだが、マイケル・レイモンド-ジェイムズ演じるブリットが、「サイドウェイズ」のトマス・ヘイデン・チャーチにそっくりなのだ。実際の顔もかなり似ていれば、性格づけ、全体から発する雰囲気、オーラが瓜二つで、あんたらいつもラリッてないかというこの脱力いい加減さがたまらなく共通している。チャーチがブリットを演じていても、まったく違和感なく収まるだろう。ハンクとブリットがビールではなくワインを飲んでいたら、もっと印象が似るに違いない。


ローグはネットワークを変えながら5シーズン続いたシットコムの「グラウンデッド・フォー・ライフ (Grounded for Life)」で最もよく知られており、最近ではABCの「ザ・ナイツ・オブ・プロスペラティ (The Knights of Prosperity)」というコメディにも出ていた。ただしこの番組は現在ではローグの主演作というよりも、共演でABCの「モダーン・ファミリー (Modern Family)」でブレイクしたソフィア・ヴァーガラの出世作としての方で知られている。レイモンド-ジェイムズは、HBOの現在の看板番組「トゥルー・ブラッド (True Blood)」に出ていた。


実は「ジャスティファイド」も「テリアーズ」も悪くない、というかレヴェル的にはかなり高いと思うが、それでもアクションもなかなか悪くない「ジャスティファイド」に較べ、「テリアーズ」はさらにオフ・ビートという印象を受ける。こっちだって私立探偵ドラマだからそれなりにアクションもあるのだが、よれよれジーンズを穿き、プール工事サーヴィスというロゴの入ったピックアップ・トラックに乗って街を流すと、それでもう気分は西海岸だ。悪くない番組なんだが、これが多くの視聴者を獲得する可能性は、そんなに高くはないような気がする。








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Terriers


テリアーズ   ★★★

 
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