レギオン   Legion 

放送局: FX 
プレミア放送日: 2/8/2017 (Wed) 22:00-23:30 
製作: 26キーズ・プロダクションズ、ザ・ドナーズ・カンパニー 
製作総指揮: ノア・ホウリー、ジョン・キャメロン、ローレン・シュラー・ドナー 
出演: ダン・スティーヴンス (デイヴィッド・ホーラー)、レイチェル・ケラー (シドニー (シド)・バレット)、オーブリー・プラザ (レニー・バスカー)、ビル・アーウィン (ケアリ・ラウダーミルク)、ジェレミー・ハリス (プトノミー・ウォレス)、アンバー・ミッドサンダー (ケリー・ラウダ―ミルク)、ケイティ・エイゼルトン (エイミー・ホーラー)、ジーン・スマート (メラニー・バード) 

 

物語: デイヴィッドは少年時代から幻聴幻覚を覚え、テレキネシスを使うなど、尋常じゃない時期を過ごし、結果として今では精神病院で過ごしていた。ある時、デイヴィッドのいる病院にある女性が入院してくる。デイヴィッドはその女性シドを一と目で気に入り、二人は親密になるが、シドは人とスキンシップを極端に嫌い、二人は手を繋ぐこともなかった。暫くしてシドは状態がよくなったとして退院する。その日デイヴィッドはついにシドにキスするが、その時デイヴィッドの中で何かが炸裂し、病院内は大惨事になる。デイヴィッドはある者たちに捕らえられ、尋問を受けるが、デイヴィッドはあの事件を起こしたのはシドであり、シドとキスを交わした瞬間に、二人の身体が入れ替わったのだと主張する‥‥


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Legion


レギオン  ★★1/2

「リージョン」、あるいは「レギオン」は、マーヴェル・コミックスの映像化だ。話を最初に聞いた時は、そうか、2010年に公開された「レギオン (Legion)」のシリーズ化か、そうか、あれはマーヴェルの映像化だったのか、道理でなんかヘンに細部が作り込まれているなとは当時思ったのだ。 

 

ところがどっこい、今回FXが放送する「レギオン」は、映画とは無縁だ。どうやら映画版「レギオン」は、あれはあれでオリジナル作品の由。堕天使ミカエルとかゲイブリエルとか、そういう下敷きとなる話と組み合わせて、話を膨らませたようだ。 

 

今回の「レギオン」は、実は「X-メン (X-Men)」のスピンオフだそうだ。「X-メン」は「デッドプール (Deadpool)」における異次元ヴァージョンのX-メンを別にすると、正統的なスピンオフ映像作品はウルヴァリン・シリーズしかなく、それに続くものと言える。ついでに言うと今秋には、FOXがTVシリーズ「ザ・ギフティド (The Gifted)」を編成することが決まっている。 

 

いずれにしても、「X-メン」関連でデイヴィッドを見た記憶がない。それで調べてみたら、なんとデイヴィッドはX-メンの首領、チャールズ・ゼイヴィアの息子だった。チャールズが第二次大戦後の中東で知り合ったホロコースト・サヴァイヴァーの女性ガブリエルとの間にできた子だそうで、彼女がそのことを黙っていたために、チャールズは自分に息子がいることを知らなかった。 

 

これはちょっと、設定としては無理がある。たとえガブリエルが自分の妊娠を自覚した時にチャールズがそばにいなかったとしても、史上最強のテレパスで、やろうと思えば地球のどこにいる誰の意識にでもアクセスできるチャールズが、たとえ地球の裏側にいようとも自分の恋人の妊娠を知覚し損ねたという設定は、納得し難い。たとえなんらかの理由でガブリエルがそのことを隠していたとしても、きっとお腹の中の子は自分の存在をチャールズに知らしめたに違いない。 

 

そういう疑問点を別にすると、デイヴィッドが物心ついてからずっと精神病院に収容されていたという設定はわかる。そもそもチャールズがガブリエルに会ったのは、ホロコーストのせいで精神を病んでいたガブリエルが入院していた精神病院だった。チャールズ自身、「ローガン (Logan)」ではほぼ痴呆老人化していて、なまじまだテレキネシスが使えるだけに危ない存在になっていた。デイヴィッドの立ち位置とほとんど変わらない。 

 

デイヴィッドは少年時代のある時期から幻聴幻覚を覚え、テレキネシスを使うなど、尋常じゃない力を有していた。しかしもちろん、その力は社会と相容れず、長じて精神病院に入り、薬漬けになってなんとか爆発しようとする力を押し留めていた。しかしある時新しく入院してきたシドを見てからその日常の歯車が狂い出す。実はシドはデイヴィッドを救出奪回しようとするある組織から送り込まれた組織の一員だった‥‥ 

 

ということがわかるまでだけが番組第1回で、1時間半も使ってやったことは舞台設定のお膳立てだけという、そのリズム、テンポとダークさが、他のマーヴェル・コミックスのスーパーヒーローものとは大きく感触が異なる。「X-メン」は元より、「アベンジャーズ (The Avengers)」や、「スパイダー-マン (Spider-Man)」等の主流映画作品とは全然違うし、現在ネットフリックスが展開している「デアデヴィル (Daredevil)」や「ジェシカ・ジョーンズ (Jessica Jones)」、「ルーク・ケイジ (Luke Cage)」、「アイアン・フィスト (Iron Fist)」等の、「ディフェンダーズ (Defenders)」関連ともかなり印象は異なる。 

 

「ディフェンダーズ」も結構暗めのマイナー志向という感触はあったが、「レギオン」はさらにオフ・ビートだ。なんせ主人公のスーパーヒーローは、自分の力を自覚せず、もう何年も精神病院に入れられたきりだ。感情が昂ぶると力の制御ができなくなってどんな破壊的状況をもたらすか誰にもわからないので、皆戦々恐々として恐る恐るデイヴィッドに接している。 

 

そのデイヴィッドが、新しく入所してきた女の子シドを好きになる。ところがその子もまんざらでもなさそうなのに、他人とのスキンシップは一切却下で、デイヴィッドにも指一本たりとも触らせない。そうこうしているうちにシドは退院の運びとなり、最後のチャンスでついにデイヴィッドはシドにキスをする。デイヴィッドとシドの感情が絡み合って炸裂した結果、周囲が壊滅的打撃を被る。しかもデイヴィッド曰く、キスした結果デイヴィッドとシドの身体と頭が入れ替わってしまったという。デイヴィッドはまるで拷問のような尋問を受ける。その思考に入り込んで助け舟を出してきたのが、シドだった‥‥ 

 

と書いてはみても、なんかしっくり来ないのが「レギオン」の不思議なテイストだ。そもそも、いったい誰がどうしてここまでデイヴィッドの力を怖れて隔離する必要があるのか。マグニトの手先か。しかしチャールズさえ知らないデイヴィッドの存在を、マグニトが知っているとも思えない。第一、マグニトならそのことを知っても、何もしないでほっておくだろう。 

 

まあそういう敵味方や力関係はそのうちおいおい明らかになるだろうとはいえ、やはりこの展開、リズムは、近年のスーパーヒーローものとしては最も異色と言える。世界最強のテレパスの、たぶんそれを潜在的に凌ぐくらいの力を持つ息子の話で、しかも物心ついてずっと精神病院だから、さもありなんとは言えるかもしれない。 










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