Captain America: Civil War


シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ  (2016年5月)

アメリカのスーパーヒーローは、どんどん徒党を組み、組織化するようになってきている。最初から複数ヒーローの寄せ集めだった「X-メン (X-Men)」はともかく、スーパーマンもバットマンも共闘し始めるようになった。


しかしスーパーヒーローの寄せ集めという点では、マーヴェル・コミックスの「アベンジャーズ (Avengers)」が、その代表と言える。彼らは単にスーパーヒーローというよりも生命としての種も時代も超越する者たちが一時に集まり、物事に秩序をもたらすというよりも、カオスを導いているようにしか見えない。


ただですら強力なエゴを持ち、協調精神より唯我独尊的正義の押しつけの方に存在意義を見出すスーパーヒーローたちは、当然のことながら仲間割れを起こす。今の時代、正義は絶対ではなく相対的なものなので、全員一致の行動なぞとりようがない。そしてスーパーヒーローが慢心し、独善的な行動に走ったり自惚れることによって、人々から疎まれ始める。


アベンジャーズの面々は、アイアンマンことトニー・スタークを筆頭とする者たちと、キャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャースを立てる二派に分裂する。ここはひとまず自制して、おとなしくしている方がいいんじゃないかという割り合い大人の意見を口にするのが、これまでは唯我独尊的スーパーヒーローの代表と言えたトニーであることが、なんとも面映ゆい。トニーの経営する事業は国相手の武器商人という面があったから、自分の理想より会社の利益を優先したとも言える。


一方、元々別の時代から連れて来られたアウトサイダーのスティーヴの場合、失うものは何もないので、自分が信じる正義のために邁進あるのみの姿勢を崩さない。たった一人の友人と言えるウィンター・ソルジャー/バッキーを助けるためならなおさらだ。かくして二派に分裂したアベンジャーズの面々は、お互いの信じるもののために敵対する。


もう、最初からわかりきっていたことなんだが、スーパーヒーローを寄せ集めても、世界平和のためになるどころか、仲間割れが起きる。これはもう、確実だ。自分が信じる正義のために全身全霊傾けられないような者ならスーパーヒーローになる資質なぞないし、そのことはスーパーヒーローが二人いればそこに必ず確執が起きることを示している。それまで調停役だったニック・フューリーもSHIELDのフィル・コールソンもいない。


そしてもちろん、衝突が起きた場合、スーパーヒーローがそこで引くことはない。トニーは、分が悪いと見ると新しいスーパーヒーローを味方に引き入れないとと考え、よりにもよってスパイダーマン/ピーター・パーカー (トム・ホランド) をスカウトする。一方スティーヴ側には、アントマン/スコット・ラング (ポール・ラッド) が助っ人として参加する。


ついに、映画でもスパイダーマンがアベンジャーズ・シリーズに登場した。それにしてもニューヨークのクイーンズ出身の庶民派スーパーヒーロー、スパイダーマンは、これまでの前2シリーズでは、それでも一軒家に住んでいたが、今回は大型住居コンプレックスのレフラク・シティに住んでいるようだ。どうやらスパイダーマンもダウンサイジングさせられたらしい。しかし、いずれにしても、そうなると、アンドリュウ・ガーフィールド主演の「アメイジング・スパイダーマン (The Amazing Spider-Man)」は第3作はないのか。ああ、もうマーヴェルのスーパーヒーローものは横の連絡がこんぐらがってわかり難い。


それよりもなによりも、ついにスパイダーマンが登場した以上、マーヴェル・コミックスの最後の砦、X-メンもアベンジャーズ・シリーズに絡んでくる可能性はあるのか。既にX-メンはお茶らけヴァージョンとはいえ、「デッドプール (Deadpool)」で他作に登場した。逆に言うとギャグに登場するくらいなら、「アベンジャーズ」にも登場する可能性はないわけではなさそうだ。


いくらなんでも話に隔たりがあり過ぎる嫌いはなきにしもあらずだが、それでもと思って調べてみると、マーヴェル・コミックスでは既にアベンジャーズ vs X-メンが実現していた。ということは、これもやはり実写化される可能性は高そうだ。その場合、世界平和がもたらされるというよりは、世界は壊滅的打撃を被る可能性の方が断然高いと思う。ある意味スーパーヒーローの大量存在は、キム・ジョンウンをお膝元に抱えているようなものに近い。どっちに転んでもとにかく世界は、一度大きな痛い目に遭うのは必須の事態になってきた。心証としては、スーパーヒーローの仲間割れのとばっちりを食うのは真っ平御免なんだが。










< previous                                      HOME

アベンジャーズの面々はラゴスで活動していたが、追い詰めた悪者が自爆し、その時に罪のない一般人も巻き添えにしてしまう。世論は野放しのスーパーヒーローの活動に懐疑的となり、国連がアベンジャーズを統括すべきという意見が大勢を占めるようになる。トニー・スターク/アイアンマン (ロバート・ダウニーJr.) はソコヴィアでの一件もあってそれも致し方なしと思っていたが、スティーヴ・ロジャース/キャプテン・アメリカ (クリス・エヴァンス) はその意見に与しなかった。アベンジャーズの面々はトニーを筆頭とする自粛派と、スティーヴを中心とする自立派に二部してしまう。一方ウィーンの議会に爆弾が仕掛けられ、セキュリティ・カメラの映像から、犯人はバッキー (セバスチャン・スタン) であることが知れる。スティーヴはバッキーを助けに行って逆にバッキー共々囚われてしまう‥‥


___________________________________________________________

 
inserted by FC2 system