Guardians of the Galaxy


ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー  (2014年8月)

まだまだ在庫の尽きないマーヴェル・コミックス原作の映像化、今回に関しては本当の本当にこれまで見たことも聞いたこともなかった。まだ「ソー (Thor)」の場合は、ほとんど知らなかったとはいえ、やたら図体がでかくハンマーを持っているソーのイメージを見たことがないわけではなかった。


しかし今回に限っては、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」‥‥何、それ、ってなもんで、特にアメコミのファンというわけでもない私にとって正真正銘初耳も初耳、この作品、これまで一度も見たこともなければ聞いたこともない。いったいマーヴェルの懐はどれだけ深いのか。あとまだいったいどれだけの未知のスーパーヒーローが埋もれているのか。と私が考えていたのも束の間、この映画、あれよあれよという間に今夏最大のヒット作として確立してしまった。アメリカ人なら最初から皆知っているのだろうか。


個人的にはこの映画がヒットしている最大の理由が、知名度というよりも主人公スター・ロードことピーター・クイルを演じたクリス・プラットの普通さ加減にあるのは、ほぼ間違いないような気がする。結構ガタイがいいのは確かであり、見ようによってはハンサムに見えないこともない面相だが、しかし、正直言ってこの手の男は、アメリカには掃いて捨てるほどいる。どこにでもいる。ちょっと郊外に足を伸ばすと、同じような印象の男ばかりだ。つまり、誰でも身近に似たような人を知っているアメリカ人にとって、非常に感情移入しやすい。


現実世界だけではなく、メディアの上でもそれは変わらない。実際、私はプラットはNBCの「パークス・アンド・レクリエーション (Parks and Recreation)」で何度も目にしているのにもかかわらず、顔を覚えきれなかった、というか、このほどCBSの深夜トーク「レイト・レイト・ショウ (Late Late show)」の次期ホストとして発表があったジェイムズ・コーデンと、はっきり言って区別がつかなかった。


一方、実はロバート・デニーロ並みに役柄によって体重を増減させるプラットは、顔の印象が一定しないカメレオン・アクターだ。しかも元々の顔自体が地味、というか滅茶苦茶普通でもある。顔があまり印象に残らない俳優が、体重を増減させて別の作品に出ると、こちらの印象としては別の俳優として曖昧にしか記憶に残らない。長い時間をかけて、今回初めてクリス・プラットをクリス・プラットとして認識した次第だ。


ガモーラを演じるのがゾーイ・サルダナで、「ファーナス/訣別の朝 (Out of the Furnace)」のようなドラマ作品もないことはないが、やはり人々の記憶に残っているのは、「アバター (Avatar)」「スタートレック (Star Trek)」等のSFアドヴェンチャーものだろう。本人も今回、役のオファーが来た時、またかと思ったそうだ。美的感覚は違うはずのエイリアンの視点から見ても、たぶん美人の範疇に入るに違いないとなぜだか納得できる稀有な女優だ。


遺伝子操作で人間的な力を身につけたラクーンのロケットと、植物的でありながら尋常じゃない力を駆使するグルートに扮する (吹き替える) のは、ブラッドリー・クーパーとヴィン・ディーゼル。他にヨンドゥにマイケル・ルーカー、ロナンにリー・ペイス、コラスにジャイモン・フンスーといった面々が配されている。


それにしても驚くべきは、後から後からスーパーヒーローをつるべ打ちして在庫がなくなることのないマーヴェルの引き出しの多さで、いったいあとどれだけの在庫を持っているのか。「アベンジャーズ (The Avengers)」ですら既に個々のキャラクターを持て余している気があるのに、これ以上増えても、今度はこちらが覚え切れそうもない。そろそろ新規スーパーヒーローは打ち止めにしてもらえないものだろうか。


ところでピーターは、いまだに母の形見のSONYのカセットテープ版のウォークマンを愛用していて、事ある毎に70年代ミュージックを愛聴している。実はこの間、久し振りに郷里に帰って実家の掃除の手伝いなんかしていたのだが、70、80年代どころか90年代のヴィデオテープが埃を被っていて、よく見るとテープが黴びていた。


あるいは、ピーターのようにテープが擦り切れるほど何度も聴いていたら、実際の話とうにテープは擦り切れて使いものにならなくなっているのが本当のところだと思う。いずれにしても、20年以上も前のカセットテープは、現実的には利用不可能だろう。ウォークマンが母の形見であるという感傷的な理由を抜きにしても、いや、だったらなおさら、ピーターはテープをデジタル・フォーマットに落としておくべきじゃないだろうか。などと、黴びて捨てざるを得なくなったU2の「魂の叫び (Rattle & Hum)」を前にして思うのだった。










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1988年、母を看取ったその日、幼いピーター少年はヨンドゥ (マイケル・ルーカー) とその手先によって攫われ、宇宙を股に掛ける海賊の一味として育てられる。26年後、謎の力を持つオーブを手に入れようとしたスター・ロードことピーターは、同様にオーブを手に入れようとしているロナン (リー・ペイス) の手先コラス (ジャイモン・フンスー) に邪魔され、なんとか窮地を脱するものの、オーブを個人的に売りさばこうと考え、ヨンドゥからも追われる立場になる。ロナンは刺客としてガモーラ (ゾーイ・サルダナ) を差し向ける。一方、懸賞金のかかったピーターをとらえて一儲けしようと、遺伝子操作で力を身につけたアライグマのロケット (ブラッドリー・クーパー) と木から発展したグルート (ヴィン・ディーゼル) までもがピーターを付け狙う。結局ノヴァで全員逮捕されるが、牢獄で既に囚われの身になっていたドラックス (デイヴ・バウティスタ) がロナンの身内であるガモーラの命を狙ったことから、逆に彼らは一時的に団結してロナンを倒すことで意見の一致を見るが‥‥


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