Better Off Ted  ベター・オフ・テッド

放送局: ABC

プレミア放送日: 3/18/2009 (Wed) 20:30-21:00

製作: ガーフィールド・グローヴ、20世紀FOX TV

製作総指揮/クリエイター/脚本: ヴィクター・フレスコ

製作: スキップ・ボーダイン

監督: マイケル・フレスコ

撮影: シャロン・メア

美術: マイケル・ハインズ

編集: ピーター・ベイト

音楽: スコット・クローセン、クリス・リー

出演: ジェイ・ハリントン (テッド)、ポーシャ・デ・ロッシ (ヴェロニカ)、アンドレア・アンダース (リンダ)、ジョナサン・スレイヴァン (フィル)、マルコム・バレット (レム)


物語: 作ってないものは何にもないという巨大企業ヴァーディアン・ダイナミクスのR&D部門責任者として働くテッドは、上司ヴェロニカのどんな要請や難問にも答えを出してきた。しかし今回ヴェロニカがテッドに申し渡したのは、研究員の一人フィルを凍結冬眠させるというものだった。テッドはあの手この手でフィルに冷凍睡眠させることを承諾させるが‥‥


Parks and Recreation  パークス・アンド・レクリエーション

放送局: NBC

プレミア放送日: 4/9/2009 (Thu) 20:30-21:00

製作: ディードル-ディ・プロダクションズ、ユニヴァーサル・メディア・ステュディオス

製作総指揮: グレッグ・ダニエルズ、マイケル・シュール、ハワード・クライン

監督: グレッグ・ダニエルズ

クリエイター/脚本: グレッグ・ダニエルズ、マイケル・シュール

撮影: ピーター・スモークラー

美術: ダン・ビショップ

編集: ディーン・ホランド、ジョン・コーン

出演: エイミー・ポーラー (レスリー・ノウプ)、ラシダ・ジョーンズ (アン・パーキンス)、ポール・シュナイダー (マーク・ブレンダナウィッツ)、アジズ・アンサリ (トム・ハヴァーフォード)、ニック・オファーマン (ロン・スワンソン)、オーブリー・プラザ (エイプリル・ラドゲイト)


物語: インディアナ州ポウニー市の公園/レクリエーション課に勤務するレスリーは、悪人ではないのだが、自分の仕事が人のためになることをまったく疑わずに仕事を遂行するあまり、結果的に人からけむたがれる存在だった。ある時アンが自分のアパートのそばで途中で工事が財政難で止まったままになっている建設用地をなんとかしてくれと苦情を申し立ててくる。レスリーは千載一遇のチャンスとばかりに、そこを公園化するキャンペーンを画策する‥‥


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現在のようにアメリカTV界のコメディがスタジオで観客と共に収録するシットコムではなく、脚本に則ったワン・カメラ撮影のスタイルの番組の方が優勢になったのは、NBCの「フレンズ (Friends)」、「フレイジャー (Frasier)」、「ウィル&グレイス (Will & Grace)」、そしてCBSの「Hey! レイモンド (Everybody Loves Raymond)」等の人気シットコムが次々と最終回を迎えた2004年から2006年にかけてが、一つの時代の節目だったと言える。


その後、作るのが簡単なように見えて実は制約の多いシットコムは、視聴者よりも、番組製作者の方から敬遠され、気がつくとアメリカTV界においてネットワークのシットコムは、CBSの月曜夜のコメディ群と、FOXとCWが編成する一部の番組だけになってしまった。そのCWも今秋からは30分コメディから撤退すると発表している。コメディそのものが衰退しているということもあるが、それでもラフ・トラックなしコメディは逐次編成されているのに較べ、シットコムの衰退は本当に著しい。


シットコムは、時に自信を持って面白くないと断言できるシーンで、強引にラフ・トラックを入れて面白さを捏造してごまかすことができる。一方で、本当に笑えるシーンでスタジオの観客の爆笑が挟まると、相乗効果でさらに笑えたりもする。要するに一長一短だ。私としては、シットコムとシングル・カメラ撮影のコメディの割合が半々程度がちょうどいいと思っている。昔は結構ラフ・トラックってうざいと思っていたのだが、最近はなければないで寂しいような気もすると思うようになった。


いずれにしても世の風潮はラフ・トラックなしのコメディの方に傾いている。それでネコも杓子も新コメディはシングル・カメラで撮影しているのだが、こないだABCの新コメディ「イン・ザ・マザーフッド (In the Motherhood)」を見た時には、これは違う、これは明らかに観客と一緒のシットコム向きの題材だと思った。ほとんど舞台がリヴィング・ルームから動かない番組を、わざわざドラマのように撮る意味はほとんどない。スタジオでマルチ・カメラで撮影すればその何倍も笑えるものをと思ったわけだが、私がシットコムを擁護するようになるとは、自分でもびっくりだ。


さて、「ベター・オフ・テッド」と「パークス・アンド・レクリエーション」は、察しの通り、2本ともシングル・カメラ撮影のコメディだ。共にオフィスを主要舞台にしたオフィス・コメディというところも共通している。実際の話、家族やルームメイトが主人公の話だと自宅が舞台になりやすく、スタジオ撮影向きだが、その逆がオフィス・コメディで、わりと舞台が何箇所にもまたがるため、シングル・カメラ撮影向きと言える。シットコムで人気のあった「フレンズ」や「Hey! レイモンド」、「ウィル&グレイス」がホーム・コメディなのは、ゆえない話ではない。一方でオフィス・シットコムのような「フレイジャー」という例外の番組ももちろんある。最近成功しているシングル・カメラ・コメディでは、「ジ・オフィス (The Office)」「30ロック (30 Rock)」は、当然オフィス・コメディだ。


「ベター・オフ・テッド」は、企業で働くR&D担当の男の日常を描く。冒頭の企業CMでも宣伝している通り、ヴァーディアン・ダイナミクス社は、作っていないものはほとんどないというほどありとあらゆるものを製造している巨大企業だ。これが日本なら、輸出入していないものはなにもないという一大商社、みたいな感じになるかと思う。お国柄の違いだ。


主人公テッドに扮しているのは「デスパレートな妻たち」のジェイ・ハリントンで、彼にいつも難題を振りかける上司にポーシャ・デ・ロッシ (「ブルース一家は大暴走 (Arrested Development)」 ) が扮している。番組クリエイターは、「マルコム・イン・ザ・ミドル (Malcolm in the Middle)」のヴィクター・フレスコ。会社でのテッドの立場は、いわゆる中間管理職だ。上からは無理難題を振りかけられ、下からは苦情を聞かされる立場にある。毎回難問が持ち上がるのだが、それを自らの才覚で乗り切っていかなければならない。しかしやり甲斐はあり、テッドはこの職を天職だと思っている。


この番組、体裁だけを見ると「オフィス」の逆ヴァージョンだ。「オフィス」では本来ならテッド同様、立場的には厳しいはずの中間管理職の主人公マイケル (スティーヴ・キャレル) が逆にわがままし放題で、下の者がそれに振り回されるという逆転の発想がポイントだった。「テッド」ではテッドはちゃんと中間管理職らしく様々な問題に悩まされる。それに解決の糸口を与えるのは、まだ年端も行かぬ娘のアドヴァイスだったりする。それにしてもこういう番組では、大人よりも子供の方がおつむのできがよかったりすることが多い。


一方の「パークス・アンド・レクリエーション」は、独りよがりで周囲の空気が読めない、自治体の公園/レクリエーション課に勤務するレスリーと、彼女に振り回される同僚や上司たちを描くコメディだ。一見しての手触り、印象はもろ「オフィス」で、カメラのこちら側にいる、視聴者には見えないドキュメンタリーの撮影クルーがレスリーたちを撮影しているという設定がまったく同じだ。そのため、登場人物はカメラに向かって話しかけたり、時々インタヴュウを受けているという展開になる。カメラのこちら側にはいかにも撮影者がいるとでもいうようなわざと誇張したカメラのぶれや急激なズーム・イン、ズーム・アウトといった手法も同様だ。


番組のクリエイターは「オフィス」のグレッグ・ダニエルズで、「オフィス」に似ているのもだから当然と言える。しかし実は「パークス」は「オフィス」ではなく、同じくNBCが放送しているコメディの「30ロック」にも相似点が多い。「30ロック」も基本的にオフィス・コメディということもあるが、しかしそれよりも何よりも、「30ロック」の主人公を演じるティナ・フェイと「パークス」で主人公レスリーを演じているエイミー・ポーラーは、NBCの長寿深夜スケッチ・コメディの「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live)」で、長らく「ウイークエンド・アップデイト」のコーナーで共同キャスターを担当していた。


そのため、どうしてもフェイとポーラーはセットになって思い出しやすい。実際お互いの番組にこそ出演していないものの、二人はスリーパー・ヒットとなった映画の「ベイビー・ママ (Baby Mama)」でも共演している。それにしても最近の「レイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロン (Late Night with Jimmy Fallon)」といい、「SNL」の「ウイークエンド・アップデイト」出身者のアメリカTV界での活躍を目にする機会が多い。現在このコーナーを担当しているセス・マイヤーズがブレイクするのもそう遠い話のことではないだろう。


さて、レスリーは場の空気が読めない唯我独尊型の公務員で、自分のやることはすべて人のためになるということを信じて疑わない。その点、仕切りたがりの「オフィス」のマイケルよりは憎めないキャラクターになっている。そのレスリーのいる公園課に、宅地を造成中、資金繰りが滞ってほったらかされたままになっている空き地をなんとかしてくれという苦情が持ち込まれる。これを見たレスリーは、これは自分の実力を発揮するチャンス到来とピンと来る。彼女は自分の持てるすべての力とごり押しで、空き地を公園にするキャンペーンを強力に推進するというのが番組第1回だ。


既に「オフィス」で番組の乗りがどういうものかある程度知っていたから、私は番組に特に期待して見始めたわけじゃないのだが、それでもツボは押さえているという感じがした。特に、工事が滞ってしまったため危険な空き地と化した場所を視察に行ったレスリーが、ちょっと盛り土の上に顔を出す。そこで私は、ここで後ろに派手に転落できたらなかなか見所があるんだが、と思っていたら、本当にレスリーは後ろにまっ逆さまに転げ落ちていった。かなり深い、数メートルの上下差がある穴なのだ。むろん演じたのはスタント・ウーマンだろうが、しかし危険なことには変わりない。なんというか、やらなければならないことは身体を張ってでもやるとでもいうような、ポイントはしっかりと押さえているという印象を受けた。


私は、アメリカでも見られるのにわざわざ英国版のリメイクをアメリカで製作した「オフィス」に対しては非常に点が辛いのだが、「パークス」の場合、「オフィス」をアメリカでリメイクすることがなければ生まれることのなかった番組であることは間違いない。そのことを考えると、「オフィス」がアメリカTV界になんらかの貢献をしたとは言える。あるいはそういう経路で実現した「パークス」、および主演のポーラーの強運に感心するべきか。








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Better Off Ted

ベター・オフ・テッド   ★★1/2

Parks and Recreation

パークス・アンド・レクリエーション   ★★1/2

 
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