Detroit 1-8-7   デトロイト 1-8-7

放送局: ABC

プレミア放送日: 9/21/2010 (Tue) 22:00-23:00

製作: マンダヴィル・プロダクションズ、ABCステュディオス

製作総指揮: デイヴィッド・ザベル、ジェイソン・リックマン、ケヴィン・フックス、デイヴィッド・ホバーマン、トッド・リーバーマン

共同製作総指揮: ポール・シャピロ

製作: パトリック・マッキー

出演: マイケル・インペリオリ (ルイス・フィッチ)、ジェイムズ・マクダニエル (ジェシ・ロングフォード)、アイシャ・ハインズ (モーリーン・メイソン)、D. J. コトローナ (ジョン・ストーン)、ジョン・マイケル・ヒル (デイモン・ワシントン)、ショーン・マジャンダー (ヴィルカム・マハジャン)、ナタリー・マルチネス (アリアナ・サンチェス)、エリン・カミングス (アビー・ウォード)


物語: デトロイト警察殺人課のフィッチは新人のワシントンとペアを組まされ、面白くない。彼らはドラッグ・ストアの二重殺人事件の現場に赴くが、ほとんど素人の域を出ないワシントンは気分が悪くなって使い物にならない。さらに臨月の妻がいるワシントンは、5分毎に妻が逐一電話で報告を入れてくるので、捜査にも支障が出る。上司のメイソンに苦情を言っても人手が足りない折り、まともに請け合ってはもらえない。マハジャンとロングフォードは、列車に乗って運ばれてきた射殺死体の調査に奔走する。たまたま近くの陸橋の上の監視カメラが、被害者が撃たれたシーンをとらえていた‥‥



Blue Bloods   ブルー・ブラッズ

放送局: CBS

プレミア放送日: 9/24/2010 (Fri) 22:00-23:00

製作: CBS TVステュディオス

製作総指揮: ミッチェル・バージェス、ロビン・グリーン

出演: トム・セレック (フランク・レーガン)、ドニー・ウォールバーグ (ダニー・レーガン)、ブリジット・モイナハン (エリン・レーガン-ボイル)、ウィル・エステス (ジェイミー・レーガン)、レン・カリオー (ヘンリー・レーガン)


物語: ニューヨークのレーガン家は、3代続く警察一家だ。既に引退したヘンリー、現警視総監という要職にいるフランク、長男で激情型のダニー、警察学校を卒業して仕事に就いたばかりのジェイミー、紅一点で検察のエリンは、皆警察に関係している仕事に就いている。いつもできるだけ揃って食卓を囲むことをならいとしている家族の結束は固かった。一方、フランクにはやはり警官になっていたもう一人の息子がいたが、とある事件に巻き込まれて殉職していた。ある時、ジェイミーに近づいてきたFBIは、実はその死は警察内に巣食う汚職と関係しており、その内偵をしていたために殺されたのだという‥‥


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今シーズンの新ドラマで最も話題になった番組がCBSの「ハワイ・ファイヴ・オー (Hawaii Five-O)」ということに異議を挟むつもりはまったくないし、実際アクション・ドラマとしてよくまとまっていると思う。しかし、刑事/警察ドラマとして今シーズン特に私の印象に残ったのは、同じくCBSの「ブルー・ブラッズ」と、ABCの「デトロイト 1-8-7」だ。


「ブルー・ブラッズ」の「ブルー」は、「NYPDブルー (NYPD Blue)」のブルー同様、ニューヨークの警官の制服の色を意味している。つまり、ニューヨークを舞台とする警察一家を描くドラマが、「ブルー・ブラッズ」だ。NY警察の最要職である警視総監という立場にいるフランク、引退した父、全員警察関係の職に就いている息子や娘たちを描く。


CBSは今、金曜夜の編成を、8時「ミディアム (Medium)」、9時「CSI: NY」、10時「ブルー・ブラッズ」としている。9時、10時台にはニューヨークを舞台とする刑事警察関係のドラマが続くわけだが、面白いことに、この2本、かなり印象が異なる。違う話だから印象が異なるのは当然だが、同じ場所が背景でも、まるっきり違う場所に見えるのだ。


これはたぶん、「CSI: NY」がニューヨークを舞台としているとはいえ、かなりの部分スタジオのセット撮影であること、屋外ロケの場合、マンハッタンの中心部が背景である場合が多いこと、そして実際にNYロケではない場合も多いに違いないこと等と関係しているだろう。つまり、「CSI: NY」で画面に映るNYは、かなり綺麗なのだ。なんか、見ていてNYはこんなに掃除は行き届いていないと苦情を言いたくなる。NYの週明けの月曜朝の通勤を経験している者なら、私の言うことに賛同してもらえるだろう。


それが「ブルー・ブラッズ」になると、背景も摩天楼ばかりではなくなり、いかにもNYらしいくすみというか、煤っぽい、埃っぽい感じが画面に現れる。むろん事件が起こる場所が、いかにもといった感じのブロンクスやロウアー・マンハッタン、もしくはその近郊というのとも関係がある。実際殺人やらなんやらの事件というのは、オフィス街ではなく、人の住んでいる場所で起こりやすい。したがってこれらが背景となりやすい「ブルー・ブラッズ」の方が、NY住民としてはより親近感を持ちやすい。「CSI: NY」のように、毎回奇想天外な事件を扱っているわけでもない。私の意見では、「CSI: NY」はいかにも舞台がNYであるかの必然性を話に持たせようとして、高層ビルやら高級アパートを話に絡め過ぎて、逆に嘘くさくなっている。これがラスヴェガスが舞台のオリジナルの「CSI」だと、効果的なほら話になり得るのだが。「CSI: NY」は、「CSI: マイアミ」と較べても地に足がついてないという印象を受ける。


話を元に戻して「ブルー・ブラッズ」だが、主人公フランクを演じるのがトム・セレックだ。セレックは近年、CBSが不定期に放送しているロバート・B・パーカー原作を映像化したTV映画シリーズのジェシ・ストーンものでお馴染みだ。TV映画というジャンルは近年ほとんど廃れていて、今ではネットワークはほとんど手を出さない。その中で、編成されれば必ず高視聴率をマークするストーンもので主役を張っているセレックは、なかなか珍しい存在と言える。


共演はフランクの引退した父ヘンリーに、「フレイジャー (Frasier)」のレン・カリオー。直情径行型の長男ダニーに扮するのが、ドニー・ウォールバーグ。ちょっと顔が地味なので弟のマークと違って映画やスター性のある役とは無縁だが、しかし彼が数年前にNBCでやはり刑事役で出ていた「ブームタウン (Boomtown)」もなかなかいい番組だった。こちらも作品としては地味で、わりあいすぐキャンセルされたのが惜しまれる。こないだTNTの「リゾーリ&アイルズ (Rizzoli & Isles)」を見ていたら、主演のアンジー・ハーモンにやたらと口を出すやはり刑事役としても出ていた。ただしあれは端役以上のものじゃなかったから、「ブルー・ブラッズ」の話が回ってきたのでこちらを優先したんだろう。


その他、ほぼ紅一点のエリンにブリジット・モイナハン、末弟ジェイミーにウィル・エステスという布陣。エステスは役柄といい顔といい、「クラッシュ (Crash)」でライアン・フィリップが演じた正義感を彷彿とさせる。その「クラッシュ」に出ていたジェニファー・エスポジトが、ダニーとペアを組む刑事を演じている。ニューヨークを舞台とする刑事ものといえば、「NYPDブルー」は近年で忘れてはならない番組の一つだが、それに出ていたニコラス・タトゥーロが、新米のジェイミーにあれこれ教える (茶化す) ヴェテランのパトロール警官として出ているのだが、こいつ、「ブルー」の時より降格してないか?



Detroit 1-8-7          

デトロイト 1-8-7   ★★1/2

Blue Bloods      

ブルー・ブラッズ   ★★★

「デトロイト 1-8-7」の場合は、印象としては「ブルー・ブラッズ」よりさらに荒涼としたものがある。場所がデトロイトであり、近年、車メイカーの度重なる人員整理で人が去り、廃屋が多く、街全域が破産しかねないような印象があるため、それも無理ない話だ。むろん番組製作者が狙っているのも、そういう雰囲気だろう。


群像刑事ドラマだが、主人公格のフィッチを演じているのは、マイケル・インペリオリ。HBOの「ザ・ソプラノズ (The Sopranos)」の後、ABCで、時間を超越する刑事を描いた奇想天外な英国製刑事ドラマのリメイク「ライフ・オン・マーズ (Life on Mars)」に出ていた。無慈悲なギャングの後は、NY、デトロイトと刑事役だ。


そのインペリオリがどこかのインタヴュウで答えていたのをちらと読んだのだが、彼は「デトロイト 1-8-7」をコメディとしてとらえていると言っていた。実際、彼のキャラクターはちょっとずれているところがある。過去にNYで刑事として働いていたらしいのだが (「ライフ・オン・マーズ」か)、そこで問題を起こして更迭のような形でデトロイトに飛ばされたらしい。ペアを組まされた新米刑事や同僚にアドヴァイスする時に、目の前に本人がいるのにもかかわらず携帯から電話をかけて話をする。すごくヘンだ。


いっこうに自白しない容疑者を前にフィッチがとる方法は、取り調べ室で容疑者の前に座り、一言も言わずにただ延々と何時間も座り続けることだけだ。そのうち空白の圧迫感に耐えきれなくなった容疑者は、自ら口を割ることになる。こういうキャラクターや状況設定が、インペリオリが番組をコメディと見なしているという所以だろう。


そのフィッチと組まされた新米刑事のワシントンには身重の妻がいて、5分毎に報告の電話を入れてくる。刑事の妻がそんなんじゃ、刑事本人も使えない奴というのがよくわかる。また、とっとと引退してマイアミに居を構える話ばかりする黒人刑事のロングフォードと、アラブ系の血を引いているマハジャンはペアを組んでいる。ついでに言うとロングフォードを演じているジェイムズ・マクダニエルも、「NYPDブルー」出身だ。


そういうキャラクターや舞台設定のおかげで、「デトロイト 1-8-7」は今季始まった新番組の中でも一際テイストの異なる番組となっている。私の心配は、このテイスト、昨シーズンやはりABCで編成され、短命に終わった「ジ・アンユージュアルス (The Unusuals)」を想起させるというもので、同様に視聴者をつかまえられずに、すぐキャンセルという憂き目に遭わなくていいだろうか。今のところまだ頑張っているようだが。








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