The Unusuals  ジ・アンユージュアルス

放送局: ABC

プレミア放送日: 4/8/2009 (Wed) 22:00-23:00

製作: 26キーズ、ソニー・ピクチャーズTV

製作総指揮: ノア・ホーリー、ロバート・デローレンティス、ピーター・オファロン、デニス・リアリー、ジム・セルピコ、ピーター・トラン

共同製作総指揮: メリル・カープ

製作: ケイト・ガーウッド

クリエイター/脚本: ノア・ホーリー

監督: スティーヴン・ホプキンス

撮影: ロイ・ワグナー

美術: アレクサンダー・パション

出演: アンバー・タンブリン (ケイシー・シュレイガー)、ジェレミー・レナー (ジェイソン・ウォルシュ)、ハロルド・ペリノー (リオ・バンクス)、アダム・ゴールドバーグ (エリック・デラホイ)、ジョシュ・クローズ (ヘンリー・コール)、モニーク・ガブリエラ・カーネン (アリソン・ボーモント)、カイ・レノックス (エディ・アルバレス)、テリー・キニー (ハーヴィ・ブラウン)


物語: 街娼を装って囮捜査に携わっていたシュレイガーに一台の車が近づき、即刻NYPDの殺人課に移動が命じられる。折りしも殺人課のコワルスキ刑事が殺されたばかりで、内部に手引きした者がいる可能性があるため、新しい血を入れる必要があったのだ。シュレイガーは殺された刑事のパートナーだったウォルシュとパートナーを組まされる。ウォルシュは暇な時間があると、ダウンタウンでカウンターのみという自分がオーナーのレストランの上手でもないシェフをしていた。事件の捜査が進むに連れて、コワルスキのロッカーから大金が出てきたり、愛人を囲っているという事実が明らかになる。さらにコワルスキの貸し倉庫には、彼が殺人課の面々を内緒で調査していた痕跡が認められた。いったいコワルスキは何を企んでいたのか‥‥


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実は先頃発表された今秋のABCの新編成スケジュールによると、「ジ・アンユージュアルス」はその中に含まれておらず、まだ放送が予定されている第7話以降の放送を待たずして、既にキャンセルが決定している。毎年こういう、私が面白いと思っても視聴者を獲得できずにキャンセルされる番組が後を絶たない。3年前も、これはなかなかと思ってこのサイトにも書いたCBSの「スミス (Smith)」が3話放送されただけでキャンセルされていたりするので、こういう事態には慣れっこになっているのだが、それでも、いったんはネットワークのプライムタイムに編成されるという陽の目を見た番組が話題にならず消えたままというのも寂しいので、たとえ続きが見れない番組でも面白いと思ったらできるだけ書こうと思っている。


「アンユージュアルス」の場合、事前に興味を惹く要素はいくつかあった。番組クリエイターがFOXの「ボーンズ (Bones)」のノア・ホーリーで、製作総指揮に名を連ねているのが、FXの「レスキュー・ミー (Rescue Me)」のデニス・リアリーとピーター・トランだ。特に「レスキュー・ミー」で9/11後のニューヨークを活写しているリアリーとトランのコンビが、またニューヨークを舞台に、今度は消防隊ではなく刑事をどのように描いているのか、興味あった。


実は近年、ABCの「NYPDブルー (NYPDブルー)」が最終回を迎えて以来、ニューヨークを舞台にした刑事ものは当たらない。むろんNBCの「ロウ&オーダー」シリーズのようにニューヨークを舞台にしている刑事ものと言える人気番組はあることはあり、刑事もの以外の近年の新番組としては、ABCの「アグリー・ベティ(Ugly Betty)」やCWの「ゴシップ・ガール (Gossip Girl)」のようなそこそこのヒット番組もあるが、しかし、毎年のように投入される新刑事ドラマはここ数年、当たらない。


しかもここ数年の特色として、なぜだかニューヨークを舞台にする刑事ものは、超常カラーがつきまとう。むろん今春の同じくABCの「キャッスル (Castle)」のような、SF色の絡まないどちらかというとごく一般的な刑事ドラマもあるが、一方で昨春の、300年も生きている不死身の刑事を描いたFOXの「ニュー・アムステルダム (New Amsterdam)」、昨秋の、30年前にタイム・スリップした刑事を描くBBCの「時空刑事1973」のリメイク、「ライフ・オン・マーズ (Life on Mars)」(ABC) と、なぜだかニューヨークの刑事は不死かタイム・トラヴェルできる能力があったりする。これはリアルな刑事ドラマだった「NYPDブルー」が終わったことの反動か、それともABCの「ロスト (Lost)」を筆頭とする近年流行りの超常ドラマの影響か。


そして「アンユージュアルス」の主人公ケイシー・シュレイガーに扮するのがアンバー・タンブリンであるという事実が、またそのことに色を添える。タンブリンは映画の「ザ・リング (The Ring)」とか「旅するジーンズ」シリーズの出演作があるが、最も知られているのは、CBSで神様の声を聞くことのできる女性を演じた「ジョーン・オブ・アーケイディア (Joan of Arcadia)」だ。そのタンブリンがまたTVに主演、今度はニューヨークで一癖も二癖もある殺人課の同僚に囲まれて活躍、というか右往左往する刑事を演じるという。


果たしてかつての霊感少女がたぶん今度は神様と袂をわかってニューヨークを舞台にした刑事ドラマに主演して、近年のNY超常刑事ドラマに活を入れることができるのか。それともやはり殺人課で霊感を得て犯罪解決に尽力するのか、しかし番組を作っているのはリアルな「レスキュー・ミー」のリアリーだ。これはいったいどうなるのか、なかなか食指をそそるものがあった。


しかも「アンユージュアルス」、基本的にその内容は1時間もののコメディとされている。「レスキュー・ミー」がリアルな描写を売りにしていながらコメディでもあることと同じだ。もしかしたら霊感ドラマにさらにコメディ色まで加わるのか。私が今ミッド・シーズンの新番組で「アンユージュアルス」に最も期待していたというのもわかってもらえるかと思う。


結論から言うと、「アンユージュアルス」は超常色に (あまり) とらわれない刑事ドラメディだ。といって「レスキュー・ミー」みたいに、シリアスになり過ぎるあまりコメディ色が出てくる感じかというと、そうでもない。「アンユージュアルス」は単純にアンサンブル・コメディというジャンル分けがしっくり来る。かつての「ピケット・フェンス (Picket Fences)」、あるいは「たどりつけばアラスカ (Northern Exposure)」辺りが、最も印象の似ている番組と言えるかもしれない。


番組はそれぞれに何か悩みや隠し事がある殺人課の刑事たちを描くわけだが、その刑事たちが皆、一癖も二癖もあるやつらばかりだ。まずそもそもの話の発端となる、殺された刑事コワルスキが、いわゆる裏で色々と悪いことをしている悪徳刑事だ。結構色んなところから小金をくすねて、女を囲っているが、妻はもちろんそのことを知らない。一方で身体の不自由な黒人青年の面倒を見ているという別の面もある。しかしそれにしてもコワルスキだ。コワルスキというと、昨年、クリント・イーストウッドの傑作「グラン・トリノ」でイーストウッドが演じた偏屈の老年親父の主人公の名が、コワルスキだった。なんか、コワルスキというと曲者という印象が固まりそうだ。


そのコワルスキの元パートナーだったウォルシュも、またそれに輪をかけて癖がある。彼はダウンタウンに住んでいるが、そのアパートはうなぎの寝床みたいなカウンター・レストランつきで、気が向くとそこを開けてシェフとして営業するのだが、彼の作るメシは到底食えたもんじゃない。コワルスキの死を捜査する段階で出てきた証拠品を、平気で握りつぶしたりくすねたりする。


刑事部屋のバンクスは、室内にいる時もほとんど常に防弾ヴェストを着ている。その方が安心できるからだ。彼は一族郎党のほとんどがだいたい40歳前後で死んでいるために、どんな不測の事態にも対処しておきたいのだった。そのパートナーのデラホイは、実はこちらの方が脳腫瘍のため余命数か月を宣告されていた。そのため時に自殺行為にしか見えないことをしたり、一人ヘンな反応をしたりして気持ち悪がられたりしている。他にも刑事部屋には、上昇志向の強いアルヴァレス、過去大いに不良だったコール、たぶんレズビアンのボーモン等、やはり癖のあるやつらばかりだ。


主人公のシュレイガーだって実は、本当は親はニューヨークの一等地、マディソン・アヴェニュウに居を構える大金持ちの娘だ。しかしそのことを言うと当然一介の平民に過ぎない殺人課の刑事たちの仲間に入れてもらえないことがわかりきっているから、黙っている。一方でそのため、シュレイガーなら買収されることもなかろうということで白羽の矢が立ち、風紀課から殺人課内部に送り込まれたのだ。


シュレイガーを演じるタンブリンをはじめ、ウォルシュを演じるジェレミー・レナー、デラホイを演じるアダム・ゴールドバーグ等、印象的な俳優は事欠かないが、あっと思ったのが、バンクスを演じているペリノーだ。ペリノーは昨シーズンだか、ABCの「ロスト (Lost)」で船の爆発と共に海の藻屑と消えたが、もちろん「ロスト」ではそうは問屋が卸さない。現在の「ロスト」では登場人物は現在と過去を行き来しているからだ。死んだ人物が次のエピソードでまた出てきたりしているので、ペリノー演じるマイケルが、また現れてあっと言わせないとも限らない。今シーズン、ちらとながらマイケルの息子ウォルトが登場したのも、その伏線かと思ったりする。


しかしそのペリノーが「アンユージュアルス」にレギュラー出演しているのを見て、本当に「ロスト」のマイケルは死んだのだなと思った。ペリノーが「アンユージュアルス」に出ている限り、さすがに「ロスト」との掛け持ち出演は無理だからだ。しかしその「アンユージュアルス」も終わってしまう。こうなるとペリノーが次の番組を見つけない限り、マイケルが「ロスト」に復活する道がまた開かれたと言える。それもまたありかもと思ってしまうのだが。








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ジ・アンユージュアルス   ★★1/2

 
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