Avengers: Age of Ultron


アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン  (2015年5月)

実は私はスーパーヒーローとしてのアベンジャーズをあまり買ってない。単体としては弱いスーパーヒーローを無理を承知で寄せ集め、一時的に共闘して敵と戦えるようにしただけという印象しか持てないからだ。同様に個々としては弱いが、元々その成長や葛藤を描くところにポイントがある「X-メン (X-Men)」とは基盤が違う。


無論そんなことは作り手も百も承知で、その上で力技で各々のスーパーヒーローに活躍の場を与えた前作「アベンジャーズ (The Avengers)」は、さすが筋金入りのオタク、ジョス・ウェドンと思わせ、それなりに感心もしたのだが、さて今回はどうしたものかと思っていた。次元と時間を超えて、怒ったらほとんど惑星を壊しかねない異次元のスーパーヒーローと、たかだか早弓が撃てるだけに過ぎない人間のスーパーヒーローたちが同じ土俵で戦うことの無理難題さは、一時的に感心はしたものの、正直言ってやはり牽強付会的な印象は如何ともし難い。


そしたら、さらにオリジナルのアベンジャーズの一員であり、マイナーのスーパーヒーローである、アリが変身した「アントマン (Antman)」まで製作され、予告編をやっていた。主人公を演じるのはポール・ラッドだ。この分だとハチのスーパーヒーロー、ワスプも製作されるのは時間の問題だと思え、アリやハチにまで頼らないと人類は悪と対峙できないのかよ、かなり情けなくないかと思ってしまう。


しかしバッタのスーパーヒーローである仮面ライダーにオレだってガキの頃は熱中したよな、アリだからって貶す理由にはならないか。しかしアントマンは本当にミクロの世界で戦っていたように見えたぞ、それにしても問題は目下の「エイジ・オブ・ウルトロン」だ、今回はもうロキはいないんだっけ? どうしよう、と、思いは千々に乱れながら、結局見てきた。


とにかく今回の最大のネックは、あまりに広げ過ぎた風呂敷をどう処理するかにある。冒頭、アベンジャーズの面々は、ロキが有していたインフィニティ・ストーンを使って人体実験を施し、様々な超新人類を生み出していたヒドラの施設を急襲、ストーンを奪回する。これははっきり言って「アベンジャーズ」前作というよりも、「キャプテン・アメリカ: ウィンター・ソルジャー (Captain America: Winter Soldier)」の続きだ。ヒドラなんて「ウィンター・ソルジャー」には出てきても、「アベンジャーズ」には出てきてないだろう。


一方、ABCのTVシリーズ「エージェント・オブ・シールド (Marvel's Agents of S.H.I.E.L.D.)」は現在第2シーズンの終盤に入り、S.H.I.E.L.D.のエージェントとヒドラの全面抗争が佳境に入っている。さらに「S.H.I.E.L.D.」においてすら話はかなり込み入っており、実はよく見てないと誰が味方で誰が敵かよくわからなかったりする。しかし、TVは知らないという者も多いだろうし、「ウィンター・ソルジャー」も見ている者がいったいどれだけいることやら。ヒドラと聞いてピンと来る者は、そう多くはあるまい。その場合、今回、冒頭でアベンジャーズの面々が何しているかよくわからないに違いない。


オープニングからしてそうで、その後もはっきり言って色んなものを詰め込み過ぎ、何が何やらよくわからない。とにかく消化不良という印象は如何ともし難い。特に今回は、前作からの流れというだけでなく、TV、オリジナル・コミック、さらには「マイティ・ソー (Thor)」「アイアン・マン (Iron Man)」、「キャプテン・アメリカ」等のスーパーヒーロー・シリーズにも目配せしてすべてを有機的に結合させようとしたというプロデューサーの談話をどこかで読んだ。しかし、ただでさえ現在どこまで広がっているか誰も知らないような世界をまとめようとするなんて、正直言って無理があり過ぎる。この話、製作者以外に話を理解している者がいるのだろうか。


だいたい、TVの「S.H.I.E.L.D.」の主人公、エージェント・コールソンは、確か映画「アベンジャーズ」では死ななかったっけ? だから今回出てきていないと思うのだが、それなのにTVと映画を関係させるのは無理じゃないか? もしかすると次の「アベンジャーズ3」ではコールソンが復活して出てくる可能性はなきにしもあらずという感じになってきた。コールソンはTVのシーズン・フィナーレで左腕を失ったが、映画ではそれをどのように処理するのか、そういう連携を確認する楽しみはなくもないとも言えはするが。


とまあ、既に話は波乱万丈というか、ほとんど支離滅裂に近いという印象を受けるのに、さらに新キャラを投入させる。ヴィジョンなんて彼一人でほとんど無敵という感じがするし、それはテレパシー能力のあるワンダにも言える。だいたい、人の心を読んだり操ったりすることのできるテレパシーがこの種の能力として最強というのは、「X-メン」のゼイヴィアが既に証明している。実際、アベンジャーズの面々だって翻弄されているではないか。やろうと思えば彼女一人いれば事足りる。


そのワンダの双子の弟ピエトロは、人の目ではほとんど捕捉不可能なスーパースピードで動くことができる。何が印象的かって、ワンダとピエトロを演じているのが、「ゴジラ (Godzilla)」のエリザベス・オルセンとアーロン・テイラー-ジョンソンということにある。世界最強の怪獣に立ち向かった二人が、今度はスーパーパワーを獲得して世界平和に尽力する。次の「アベンジャーズ」では、スーパーパワーを駆使してゴジラに立ち向かう二人の姿を見ることができるかもしれない。じゃなくて、次の「ゴジラ」でスーパーパワーを使ってゴジラと勝負する二人を見ることになるのか?? などと考えながら見ていたのだが、ピエトロは果たして今回限りなのか? いずれにしても、やはりアベンジャーズはかなり無理がある。しかし興行収入は非常にいいみたいだし、こういうガラものはやっぱり需要があるということなのか。











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アベンジャーズは東欧の国ソコヴィアのヒドラ施設を急襲し、万物のエネルギーの源であるストーンの埋め込まれたロキの杖を奪回する。トニー (ロバート・ダウニーJr.) は杖を使って人類を危険から守る平和維持システムを完成させようとするが、その力はトニーが開発したJARVISの力を超えており、逆にJARVISを利用して肉体を得たウルトロンとして創生する。ウルトロンは超スピードで移動できるピエトロ (アーロン・テイラー-ジョンソン) とテレパシーを持つワンダ (エリザベス・オルセン) を懐柔して味方につける。特に各々の心に幻覚を生じさせるワンダの力は強力で、アベンジャーズの面々は劣勢を余儀なくされる。ウルトロンはソコヴィアを国ごと空中高く持ち上げ、地球に激突させることで壊滅的打撃を図っていた。それまでウルトロンに騙されていたことを知ったワンダは止めようとするが既に時遅く、ソコヴィアは地上高く舞い上がっていく‥‥


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