X-Men: Days of Future Past


X-Men: フューチャー&パスト  (2014年6月)

人気のある「X-メン」シリーズ最新作、人気があって混んでいるのは知っているので最初から公開初週はパスし、翌週に見に行くことにする。そしたら、その間に久々に「X-メン」に復活した監督のブライアン・シンガーが、まだ年端もいかない子供に悪戯したとして、訴えられるというスキャンダルが起こる。ああシンガー、お前もか。本人は否定しているそうだが、実際にそういう趣味があるのか。


などという周辺環境とは関係なく、映画はやはり大ヒット、「X-メン」の底力を見せつけた。これだけオリジナルの知名度が浸透していると、誰が演出しようとヒットは確実だし、誰も気にしていないということか。


今回の「フューチャー&パスト」は、読んで字の如く、過去と未来が交錯するタイム・トラヴェルものだ。前回の「ファースト・クラス (First Generation)」は、作品としてよくできており、色々な事実に様々な解釈や整合性を与え、こんなのよく考えるよなと、かなり感心した。ただし、あまりにまとまって収まるべきところに収まってしまったため、今3部作はX-メンの草創期を描くものだとばかり思っていたが、さにあらず過去を描く話はこれで終わりかという印象を与えた。ジェイムズ・マカヴォイもマイケル・ファスベンダーもかなりよく、もうちょっと彼らの活躍を見てみたいと思ったが、「ファースト・クラス」はあれで完結してしまっており、あそこからさらにまた話を展開するってのは難しそうだ。


と思っていたら、今回はいきなり話は未来に飛び、一転、今度は過去に遡る。パトリック・スチュワートとマカヴォイのゼイヴィア、イアン・マッケランとファスベンダーのマグニトが一作で両方見られるというお徳用ヴァージョンになっていた。その過去と未来の二つの世界を結ぶ触媒となるのがウルヴァリンで、不死で歳をとらないというウルヴァリンの特質が生きる。過去と未来では約半世紀の時間が経っているので、当然同じ役でも演じる役者は違う。しかしウルヴァリンだけは、同じヒュー・ジャックマンが演じている。歳をとらないから構わないのだ。ウルヴァリンは、前シリーズでは必ずしも主役とは言えなかったと思うが、いつの間にか自分が主役の「ウルヴァリン (Wolverine)」シリーズが確立、「X-メン」でも主役級だ。


今現在の切羽詰まった状況を打開するため、過去に向かって刺客やガイドを送り込むという設定で思い出す筆頭は、やはり「ターミネーター (Terminator)」だろう。「ターミネーター」では過去に送り込まれるのは人間のレジスタンスに手を焼くコンピュータ/ロボットで、「X-メン」ではロボットの攻勢に劣勢に立たされるミュータントだ。やはり生身の人間を意図的に過去に送り込むのは難しいか。


いずれにしても、ウルヴァリンにとっては時間は最初から悠久の退屈なものであるわけで、その上、過去と未来を繋ぐループに巻き込まれたら、それこそ永遠に終わらない煉獄に閉じ込められたに等しい。そんな世界で主役張っても意味があるか。よく自ら過去に遡る決心をした。そして一応事件は解決を見て、さらにウルヴァリンがなぜウルヴァリンとなったかという、ウルヴァリン起源も明らかになる。前回に続き、幕引きがうまいというか、よくまたこんな展開考える。


ジャックマンは先頃トニー賞でも何度目かのホストを務めた。歌って踊れるジャックマンのこととて今回も結構うまくまとめており、トニー賞はしばらくジャックマンとニール・パトリック・ハリスが交互にホストして十年くらいは楽勝で行けるんじゃないか。その中でジャックマンが「X-メン」での自分のヌードの後ろ姿に言及、さり気なく宣伝になっていた。ジャックマン以外に印象に残ったのが、現在HBOの「ゲーム・オブ・スローンズ (Game of Thrones)」で希代の悪漢を演じてエミー賞も獲得しているピーター・ディンクレイジ。ここでもやはり狂信的な科学者役だ。


再来年公開予定の今「X-メン」3部作のトリを飾る「アポカリプス (Apocalypse)」は、IMDBのクレジットを見ると、出演にはマカヴォイとファスベンダーの名はあるが、スチュワートとマッケランの名はない。してみるとやはり、今シリーズはX-メンの黎明期を描くものであるという理解には間違いなさそうだ。その演出には再度シンガーがクレジットされている。今回はシンガーはまたもやヒット作を手中にしたわけだが、しかしアメリカでは幼児ポルノや虐待が忌み嫌われる。これは逆に幼児ポルノや虐待が蔓延していることの裏返しの証明だと思うが、そのことは置いといて、そのため、ここに来ていきなりシンガーが次作もまた演出を任せられるかは微妙になっているらしい。今回は既に映画自体はでき上がっており、公開を心待ちにしていた者も多かったため、上映禁止運動などは起こらなかったが、これから作る作品に小児愛好家を起用するとなると、さすがに世間はほっとかないだろうというハリウッドの危惧はよくわかる。スキャンダルが示談で済めばいいが、裁判になるようだとかなりやばい。さて、どうなるか。













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近未来、ミュータントたちはかつて旧人類がミュータントを怖れ、彼らを滅ぼすために開発したロボットのセンチネルに多くが倒され、今や絶滅の危機に瀕していた。一縷の望みをかけ、ゼイヴィア (パトリック・スチュワート)、マグニト (イアン・マッケラン)、その他の生き残ったX-メンたちは、トラスク博士 (ピーター・ディンクレイジ) がセンチネルを開発した1973年にウルヴァリン (ヒュー・ジャックマン) を送り込み、ff開発を阻止しようとする。しかしその時、そこにはマグニト (マイケル・ファスベンダー) と袂を分かち、単独でトラスクを亡き者にしようと行動するミスティーク (ジェニファー・ロウレンス) の姿があった。ウルヴァリンはゼイヴィア (ジェイムズ・マカヴォイ) の元を訪れるが、学校は寂れ、当時目標を見失っていたゼイヴィアは荒れ、薬を使って歩くことはできても、そのため彼本来の力は使えなくなっていた‥‥


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