Captain America: The Winter Soldier


キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー  (2014年4月)

かつて人体改造を施された第2次大戦時のスーパーヒーロー、キャプテン・アメリカ。そのキャプテン・アメリカが冷凍睡眠を経て、半世紀後の現代に甦る。


なんかこの設定を聞いただけで、私は噴飯ものに感じて興味を持てなかったのだが、世間はそうでもなく、オリジナル第1作はかなりのヒットを記録した。続いて製作された第2作「ザ・ウィンター・ソルジャー」も、なかなか好評のようだ。


「ウィンター・ソルジャー」は当然ハリウッドで3月中旬に世界に先駆けてプレミア上映されたのだが、アメリカでの本格的な拡大公開は、4月に入ってからだった。そうしているうちにもヨーロッパやアジアで公開され始め、そちらでの成績の情報の方が先に入ってくる。それによると、世界各地で好評な上、ほぼアメリカと同時公開となった中国で記録的な興行成績を収めたらしい。


むろん毎週日曜夜にはニューズでその週末の興行成績を報告するが、通常、それはアメリカ国内成績のみだ。わざわざ海外、それもどちらかというと関係が冷えている中国で、「キャプテン・アメリカ」という、いかにもアメリカ万歳的なタイトルを持つ作品が非常に人気があったということで、アメリカですら驚いて、ニューズ報道された。もしかしたら今回のサブ・プロットに中国が絡むか、中国人人気俳優が出ているかなどで、あちらで既に評判になっていたのかもしれない。いずれにしても、基本的にマーヴェルのスーパーヒーローもので見てないのは「キャプテン・アメリカ」だけだったのだが、これだけ話題になるならわりと面白いのだろうと、もこもこと興味の頭ががもたげてきたのだった。


話は冷凍睡眠から覚めてスーパーヒーローとして復活してからも、自分が場違いなところにいるような気がしてまだ現代生活に馴染めないキャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャースを描く。今の世界に生まれた現代のスーパーヒーローですら、ほとんどは自分の存在意義になんらかの疑問を持たずにはいられず、それを解決しないことには先に進めない。それが違う世代の者ならなおさらだろう。まずはスマートフォンの使い方をマスターしないと、日々の生活すらままなるまい。


さらにSHIELD内に獅子身中の虫がいて、謀反を起こし、ニック・フューリーおよびキャプテン・アメリカを亡き者にしようと企んでいる者がいる。自分自身ですら世界に馴染めず存在している理由をつかめず悶々としているというのに、その上仲間までが自分を裏切り者と見なして追ってくる。四面楚歌の状態で、いったいキャプテン・アメリカはどうすればいいのか。


実はキャプテン・アメリカが抱える苦悩は、その他のスーパーヒーローが抱えている苦悩より、さらに大きい。なんとなれば彼は、本来ならいるはずのない場所で、特に誰からも信頼も同情も勝ち得ないまま、それでもアメリカという名を背負い、人々のために尽力しなければならないからだ。もちろんスミソニアン博物館に行けば自分のことを称える展示品もあるが、博物館に自分の展示があるということ自体が過去の人間であることを証明しているに他ならず、ますます自分の疎外感を強めるだけだ。


一方、世界に馴染めずこちらも苛々を募らせているもう一人の男がいた。それが今回のスーパー悪役のウィンター・ソルジャーだ。どうやら彼もキャプテン・アメリカ同様、人体実験を施されて現代に連れて来られたらしい。その力はほとんどキャプテン・アメリカをも凌ぐ。実はウィンター・ソルジャーは、キャプテン・アメリカよりもっと可哀想な境遇だったというのが後で判明するのだが、そういう色んなサブ・プロットを詰め込みながら、ちゃんと話をまとめている。


今回の悪役はタイトル・ロールでもあるウィンター・ソルジャーなのだが、生身の人間としてロバート・レッドフォード演じるアレクサンダー・ピアースが登場する。レッドフォードはいつの頃からか歳をとるのを止めたような印象がある。昔から万年青年と言われてきたが、今でもそれが変わらず通用するというのもすごい。


一方キャプテン・アメリカの味方であるブラック・ウィドウを演じるスカーレット・ヨハンソンは、私の目にかなりの運動音痴に映るのだが、それでも最近ではスーパーヒーローが様になってきた。同様に、あんたスポーツ苦手でしょうと思えるケイト・ベッキンセイルがやはりSFアクションで活躍しているように、この手の作品では実際に運動できるかよりも、動きがいかに絵として格好よく見えるかが肝だ。ヨハンソンは、「ウィンター・ソルジャー」上映前に、ほとんど「ニキータ (Nikita)」的な活躍をする「ルーシー (Lucy)」の予告編もかかっていたし、「アベンジャー (The Avengers)」続編も控えている。その後はやっと「アベンジャー」の縁の下の力持ち的な存在から脱却して、「ブラック・ウィドウ (Black Widow)」が一人立ちして映画化されるそうだ。


今回思ったのだが、ブラック・ウィドウはキャラクターとしては悪くない。これまでは緑色の怪物だの空を飛ぶ見栄っ張り男だの他の星雲から来た異次元の大男の神様だのに囲まれ、活躍する契機を逸していた。しかし今回、自分と同じ背丈の普通の人間 (とも言えないが) のキャプテン・アメリカが相棒になると、むしろ余裕で相手を振り回すくらい縦横無尽我が儘勝手に暴れる。なるほど、こういうキャラだったのか。


近年のマーヴェルものって、「マイティ・ソー (Thor)」だろうが「アイアン・マン (Iron Man)」だろうが「ウルヴァリン (The Wolverine)」だろうが、ちゃんと落とし所をわきまえているという印象を受ける。さらに別格の「X-メン (X-Men)」「スパイダー-マン (The Amazing Spider-Man)」も次々に公開で、なんか、近年はライヴァルのDCコミックスが霞む。DCコミックス・スーパーヒーローだって、「バットマン (Batman)」「スーパーマン (Superman)」という2大ヒーローがおり、映画が公開されればヒットするが、近年のマーヴェル・スーパーヒーローの乱れ撃ちと比較すると、どうも手薄という感じは否めない。DCはクラシック・ヒーローに代わる新ヒーローの創造が求められている。ところで、中国でも人気のあったという「ウィンター・ソルジャー」、ではなにか中国が話に関係があったかというと、まるでそんなことはなかった。たまたま公開されたタイミングがよかっただけか。











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キャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャース (クリス・エヴァンス) は、SHIELDの一員として活動していたが、時代も物の考え方も異なる現代の生活に違和感を抱えていた。一方SHIELDを率いるニック・フューリー (サミュエル・L・ジャクソン) が、スティーヴ同様のスーパーヒューマンのウィンター・ソルジャーに命を付け狙われる。何者かがSHIELDの内部から手引きしているに違いないと確信したフューリーは、怪我を押してスティーヴのアパートに現れて警告するが、結局命を落とす。フューリーの警告に従って何者をも信用せず口を閉ざすスティーヴは、逆に裏切り者扱いをされる。一方、世界平和という観点に置いてフューリーと共闘の立場をとっていたアレクサンダー・ピアース (ロバート・レッドフォード) は、フューリー亡き後、先鋭的なセキュリティ・システムの構築を加速させる。フューリーを殺した本当の裏切者は誰か、スティーヴはブラック・ウィドウ/ナターシャ・ロマノフ (スカーレット・ヨハンソン)、ファルコン/サム・ウィルソン (アンソニー・マッキー) の助けを借り、調査を進める。しかしナターシャもまた、スティーヴに何かを隠していた‥‥


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