放送局: ブラヴォー/CNBC /NBC/サンダンス/テレムンド

プレミア放送日: 7/6/07 (Fri)-7/7/07 (Sat)


内容: 地球温暖化/環境問題アウェアネスのために世界各地で行われたコンサート中継。


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ライヴ・エイド以降、世界的に何か大きな問題や災害等が起こると、世界中のアーティストが結束してコンサートを開き、基金運動やアウェアネス活動を繰り広げるというのが恒例になりつつある。一部でアーティストのおためごかしの慈善運動や人気とりとかいう批判もないではないが、何もやらないよりはましだし、一音楽ファンの立場からいうと、とにかくこういう時は普段見るチャンスのないアーティストの生演奏が見られる好機でもあるので、基本的に歓迎だ。


近年のこの種の催しというと、9/11以降の追悼公演「トリビュート・トゥ・ヒーローズ」やハリケーン・カトリーナが直撃したニュー・オーリンズ救援のための各種コンサート、スマトラ沖地震津波被災者救援のためのコンサート等がすぐに思い浮かぶが、世界各国でアーティストを集め、同時に一斉に公演するという点で、規模として最も大きかったのは、やはり一昨年の、アフリカの窮状を救うためのライヴ8 (エイト) だろう。


ライヴ8はその時ロンドンで開催された先進国サミットを横目で睨み、日程もそれに乗っかる形で設定されたと思われるところ、ロンドンのテロ騒ぎに耳目が集まったために、それなりの成功を収めはしたが、大きな話題にはなり損ねたという印象があった。また、アメリカの場合、ライヴ8中継はCBS系列のMTVとVH1が基本的に生中継、ダイジェスト版をABCが放送したのだが、MTV/VH1はここぞとばかりにコマーシャルを大量に注入してスポンサー獲得や自社番組宣伝に努めるなど、正直言ってライヴ8の趣旨からはまったく外れているようにしか見えないことを平気でやって顰蹙を買った。


その時アメリカで主会場となったのは、「ロッキー」でシルヴェスタ・スタローンが朝ぼらけの中を駆け上った、あの有名なフィラデルフィア美術館前の広場で、60万人とも80万人とも言われる人々が集まった。それが今回はニュージャージーのジャイアンツ・スタジアムだ。広場ではない閉鎖型のスタジアムなので、中央のフィールド部分を観客席に充てたとしても、どう考えても10万人以上を収容するのは無理だろう。今回またフィラデルフィアで開催されなかったのは、自治体側の要請かそれとも主催側の判断か。いずれにしてもせっかくニューヨークに近いところでやるんだったら、それこそセントラル・パークでやれば何十万人も集めることができるだろうに。セキュリティの問題だろうか。しかし毎年恒例のニューヨーク・フィルの屋外公演なんて今年もちゃんとセントラル・パークで開かれ、ちゃんと何万人も人を集めている。


などと思っていたら、実はこのコンサート、アメリカでは前回と異なり、今回は有料なのだそうだ。ロンドンとかは毎回閉鎖型会場を利用するのでたぶん有料だろうなとは思っていたが、ついにアメリカもそうなったか。もうこの手の催しが屋外で無料で開催されるというのはないのかもしれない。一昨年フィラデルフィアに行っておけばよかったかも。因みに値段の方は、高い席から$350、$175、$85、$55となっており、うーん、まあこのうちの何割かはウェアネスの活動基金に回るものとして、寄付だと考えれば特に高いというものでもないか。


しかし、気持ちとしてはやはり、無料コンサートに出向いて、募金箱に20ドルくらい入れるというのが理想だ。やっぱりこの種の催しは、風通しのいい空間、気持ちでやってもらいたい。とはいえ、こういうところでちゃっかり関係者を装って募金運動に回り、金を着服する人間がいるという話も伝わっている。何十万人も人がいたら誰が誰だかわからないだろうし、充分あり得る話だ。たぶん閉鎖型コンサートにして入場料をとるというのは、そういうことを防ぐ意味合いもあるのだろう。


これがセントラル・パークなら、腰の重い私もさすがにちょっとは雰囲気に浸りに足を運んだと思うが、私の住むクイーンズからだと、ニュー・ジャージーに行くためにはイースト・リヴァーとハドソン・リヴァーと川を2度も渡らなければならず、結構難儀だ。距離もそうなら特にマンハッタンを横断しなければならないため、その時の交通事情によってどのくらいの時間がかかるかまったく読めない。スムーズに行けば1時間半くらい、混雑した場合はそれこそ何時間かかるかわからない。かといってサブウェイ-バスという公共交通機関も、その乗り換えの煩雑さを思うと億劫だ。というわけで、やはり今回もTV視聴に徹することにする。たぶんこれが生でポリスを見れた最後の機会だったかもしれない。


さて、ライヴ・アースの放送権はNBC系列が獲得したことは早くから発表になっていた。前回、MTV/VH1が商売根性丸出しで中継して顰蹙を買ったのはNBCだって充分承知しているだろうから、あそこまであこぎな真似はするまいとは思っていたが、今回のNBCは、系列局を存分に使って時間差、およびライヴの混成で編成してきた。前回同様、コンサートが世界で最も早く始まるのはトーキョー、およびオーストラリアのシドニーであるが、NBCはまず本当ならインディ映画専門チャンネルのサンダンスでまず、未明の4時から中継を開始、既にコンサートが始まっているシドニーの模様を中継する。


ロバート・レッドフォード主宰のサンダンス・チャンネルは、インディ寄りという特性もあってか環境問題にも敏感で、その種のオリジナル番組も編成している。そういう同系色という点に着目したんだろう。それはともかく、そのステージにトニ・コレットとザ・フィニッシュというバンドが出ているのを見た時は驚いた。確かにあのコレットだ。コレットは今年、スマトラ沖地震を描いたHBOのTV映画「ツナミ」に出ていてエミー賞にもノミネートされている。環境問題というかその手の活動にも力を入れているようだ。それにしてもバンドもやっていたのか。歌も結構うまい。


あとはよく知らないオーストラリアのアーティストを何人かやった後、もしかしたらと期待していたトーキョーが映る。その後は合間に南極大陸の氷上からの演奏が挟まったりしながら、シドニーとトーキョーのシーンが交互に展開する。時間的に言っても他の国はまだ始まってないだろうから、これしかやりようはあるまい。うーん、しかし、RIZEってよく知らんなあ。XZIBITってのはアメリカのラップ・アーティストだろう。日本に行ってたのか。なんとかBoys Schoolってのはいわゆるヴィジュアル系のようだが、正直言ってあのタータン・チェックのスカートは気持ち悪い。音楽の方向性もまったく趣味じゃなく、録画で見ていたので当然飛ばす。


トーキョーではその後リンキン・パークが登場、それまではどのアーティストもだいたい1曲2曲歌って次のアーティストに行っていたところ、リンキン・パークだけはいきなり5、6曲歌っていたのを見ても、人気のほどが知れる。ステージ上からマイクを向けられたトーキョーの観客が、演奏に合わせて結構英語で歌っていたのにも驚いた。もちろん私も「ナム」のサビの部分だけは一緒に歌っていたのであった。ヴォーカルの彼が、書いたものをヘタクソな日本語で読み上げたのやその他のMCの部分もちゃんと中継しており、歌ってないところでもこれだけ映していたのはリンキン・パークだけだった。


シドニーで同様に近い扱いで何曲も歌っていたのがミッシー・ヒギンスという女性シンガーで、ピアノを弾いたりギターを持ったりして、ちょっと違うがオーストラリアのノラ・ジョーンズかという感じで、非常に人気があるようだった。実際結構面白かった。ウルフマザーという昔のアート・ガーファンクルを思い起こさせる髪型のロッカーもかなり人気があるようだった。トリはクラウデッド・ハウスで、これくらいなら知っている、なんて思いながら見ていた。この辺のアーティストはアメリカではほとんど聞かないからな。こういう機会でもないとたぶん一生知らないままのアーティストの方が多いだろう。


そしてトーキョーではたぶんトリ的な扱いと思われるリアーナが登場、立て続けにヒット曲を歌う。さすがにこれくらい売れているアーティストだと、歌う曲歌う曲全部知っている。出す曲全部ビルボードにチャート・インしているだろうからそれも当然か。特に最新ヒットの「アンブレラ」なんて、今夏、ラジオを聴くと1時間のうちに最低3回はかかったというくらいヒットしていた。これくらい流行るとサビの部分なんて私も女房も完全に覚えてしまっており、二人でエラ、エラ、エ、エ、エ、と歌う。途中、早送りを利用しながらここまで5時間分を早足鑑賞する。


朝8時の段階で一応トーキョーとシドニーは終わり、ヨーロッパが中継に入ってくる。ハンブルグから最初に登場したのはシャキーラだった。実はここまではすべてサンダンスが中継していたのだが、8時からは姉妹チャンネルのブラヴォーが中継に加わる。ミニ・ペイ・サーヴィスでしかもインディ映画専門のサンダンスは基本的に契約視聴者は少なく、ベイシック・ケーブル大手のブラヴォーが加わるこれからが中継としては本番だろう。


ブラヴォーはそれまでサンダンスが中継したところからリンキン・パークやリアーナ等のおいしい部分だけをピックアップして再放送すると共に、昼過ぎから公演のニュー・ジャージーの煽りみたいな感じで番組進行役が登場し、スタジアムの準備進行の模様等を伝える。基幹チャンネルのNBCはこの時、ウィンブルドンの女子シングルス決勝の生中継中で、今年は復活したヴィーナス・ウィリアムスには悪いがパスさせてもらう。NBCはこの日はプライムタイムに世界のダイジェストを3時間枠で放送するだけだ。


しかしそれまでは基本的にコマーシャルのないサンダンスをずっと見てきたので、前回のMTV/VH1ほどではないとはいえ、ブラヴォーを見出したとたん、コマーシャルがうざったくてしょうがない。サンダンスでは中継の間、コマーシャル代わりに環境問題に関する短編を放送し、あとは短い自社宣伝が入るだけだった。結局ブラヴォーは深夜過ぎまでこの日はライヴ・アース中継一色で、特にニュー・ジャージーで開演した2時過ぎからは、ずっとこのコンサートを中継していた。まずケヴィン・ベーコンが登場し、挨拶を述べる。その後レオナルド・ディカプリオも来てアル・ゴアを紹介したのだが、実はその数時間前にはゴアはそこから300kmくらい離れたワシントンD.C.で、そこでも小規模に行われていたコンサートのオープニングに登場し、挨拶を述べてトリシャ・イヤーウッドとガース・ブルックスを紹介していた。車か専用機でとっとと移動したものと思われる。


ニュー・ジャージーのアーティストでは最初がKTタンストール、その後キース・アーバン、ジョン・メイヤー、ケリー・クラークソン、アリシア・キーズ、スマッシング・パンプキンズ、カニエ・ウエスト、デイヴ・マシューズ・バンド、日が暮れ始めてからはボン・ジョヴィ、ジョン・ウォーターズ、トリはポリスだった。ボン・ジョヴィは地元ニュー・ジャージー出身であり、アウェイじゃなくホームだからね、不公平と言っていいくらいうちに有利と、いかにもフットボール・スタジアムで開催しているらしいコメントを述べていた。


結局、最終的にはこのニュー・ジャージー・コンサートの一元中継を続けたブラヴォーを見ている時間が一番長かった。昼過ぎからはさらに姉妹ニューズ・チャンネルのCNBC、MSNBCも中継に加わるが、ブラヴォーと同じものだったりサンダンスの再放送だったりした。それでも上海やヨハネスブルグ、ロンドン、そしてアメリカとほとんど時差のないリオ・デ・ジャネイロ等もそこここで挟まるので、見たシーンだったりコマーシャルになったり喋りが挟まったりするとチャンネルを頻繁に替えながらいちいち全部に目を通す。忙しくてあんまり楽しいという感じでもなくなってきた。プライムタイムはNBCによる総集編と共にやはりNBC系列のスペイン語チャンネル、テレムンドまで中継に加わったのだが、ハンブルグに参加していたスペイン語圏出身のスター、エンリケ・イグレシアスやシャキーラばかりを映していた。


地元のニュー・ジャージー以外では、やはり最も時間が割かれていると共に面白かったのはロンドンだ。ジェネシスが登場すると最初の大物という感じが濃厚にし、実際にサンダンスでは彼らの出番を1時間近く中継していた。さらにスノウ・パトロール、ブラック・アイド・ピーズ、ジョン・レジェンド、デュラン・デュラン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、コリンヌ・ベイリー・レイ、キーン、メタリカと続き、初めて見たパオロ・ヌティーニの「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」は微妙にあぶなかしくてよかった。これだけ世界中で様々なアーティストが一斉にプレイすると、どうしても既に知っているアーティストに耳を傾けがちになって、これまで知らなかったアーティストの発見という点では後手に回りがちになるし、実際中継もメイジャーなアーティストを中心に映しがちなのだが、ヌティーニは今回シドニーのミッシー・ヒギンズと共に新しく発見したアーティストの一人。


NBCの3時間枠の特別版 (ホストは「トゥデイ」のアン・カリー) が終わると、あとは基本的にサンダンスもブラヴォーも、まだやってはいるが全部これまで見たものの再放送になる。ニュー・ジャージーが世界で最後の公演だから、それが終わったら再放送ばかりになるのは当然だ。結局ブラヴォーはそれで夜半過ぎまでやっていた。しかし、私もライヴで見始めたのは土曜の朝になってからで、途中録画にしといてメシ食ったりちょっとした用事を片しながら見ていたとはいえ、結構体力を消耗したぞ。それでもまあ、こういうイヴェントは気合入るし、やはり隔年ぐらいで開催されたりすると結構マジに見てしまうのだった。


もちろんこれだけやっても漏れているアーティストはいっぱいおり、上海なんてサラ・ブライトマンと女子十二楽坊以外ほとんど映されていなかった。トーキョーでも日本人アーティストは他にもいっぱい出ていたようで、後日、今回は前回に較べてかなり充実していたライヴ・アースの公式サイトにアクセスすると、TVではNBCがほんの一瞬しか映してくれなかったキョートのYMOやBonnie Pink、UAなんてのが見れた。YMOの「ライディーン」なんて涙もんの懐かしさだったし、Bonnie Pinkも初めて歌を聴いた。


トーキョーだけでなくキョートにもちゃんとしたTVカメラを入れて、そちらも中継してくれたらもっと嬉しかったのにと思ったのだが、考えたらNBCの中継では一瞬にせよちゃんとYMOも映していた。ということはやろうと思えばキョートも中継できたのだが、リンキン・パークやリアーナ等アメリカ人アーティストのいるトーキョーを優先してキョートは後回しにされたんだろう。うーん、YMOを小さな画像の荒いコマ落ち画面じゃなく、何曲かちゃんとTV画面でも見たかった。 






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