グッド・モーニング・アメリカ

放送局: ABC

放送日: 9/5/2006 (Tue) 7:00-9:00

ホスト: ダイアン・ソウヤー、ロビン・ロバーツ、クリス・クオモ

ウェザー: サム・チャンピオン


ザ・ヴュウ

放送局: ABC

放送日: 9/5/2006 (Tue) 11:00-12:00

ホスト: バーバラ・ウォルターズ、ジョーイ・ベアー、エリザベス・ハッセルベック、ロージー・オドネル


内容: 新キャスターに衣替えしての朝のトーク/ヴァラエティ・ショウ2種。


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本当はどの番組を一とまとめにしてコメントを書くか、かなり迷ったのだ。周知のように、この一年ほどでアメリカの報道界はかなりメンツの入れ替えがあった。主としてそれはワールド・ニューズ関係の番組だったのだが、今年に入って、そういうごたごたが朝のトーク/ヴァラエティ・ショウにも飛び火した。


そのため新キャスターを迎えて再出発する番組が後を絶たず、今秋、この種の報道・トーク番組が同時期に4本並んだ。「グッド・モーニング・アメリカ (GMA)」「ザ・ヴュウ」「トゥデイ」「イヴニング・ニューズ」の4本であり、その中でも「GMA」、「ヴュウ」、「イヴニング・ニューズ」は、衣替えをして再出発した日までもが同じだった。


そこで最初、この3本をまとめて書こうかなと思ったが、そうすると、残る「トゥデイ」が1本だけでは、いかにもバランスが悪い。とはいえ、4本まとめると収拾がつかなくなりそうだ。1本ずつ書いていると時間がいくらあっても足りない。そこで2本2本でまとめようと思ったのだが、本来なら、やはりライヴァル番組である「GMA」と「トゥデイ」を一緒にまとめるべきなのだろうが、そうすると、「トゥデイ」-「イヴニング・ニューズ」という当然言及しておかなければならないケイティ・コーリックを絡めた経路が疎かになってしまう。


しかしそうすると、今度は「ヴュウ」と「トゥデイ」というメレディス・ヴィエイラ絡みが分断されてしまう。結局、どうしてもどこかは省略せざるを得ず、ええい、ままよ、こうなったら放送された最初の半分と次の半分ということで、まず、「GMA」と「ヴュウ」から書くことにした。前回もこの2本を一緒に書いているし、どちらもABC番組で、新ホストで放送が始まった日程も僅か4時間違いだ。それなりにきりはいい。


この辺のアメリカ報道界事情はアメリカのマスコミも当然注目しており、あらゆる媒体がどこかで何か書いている。因みにニューヨーク・タイムズでは「イヴニング・ニューズ」、「トゥデイ」、「ヴュウ」の3本を女性がホストの番組として一本の記事にまとめていたが、ああ、そういうやり方もあったかと思った。


さて、この中では真っ先に新体制で秋の新番組シーズンに臨んだ「GMA」であるが、他の3番組がお互いにホストの移動という点で関係があるのに対して、「GMA」だけはそれとは無縁だ。つまり、「イヴニング・ニューズ」アンカー就任のため「トゥデイ」を抜けたコーリックの代わりに「ヴュウ」のヴィエイラが起用され、そのヴィエイラが抜けた「ヴュウ」の穴を埋めるために、ロージー・オドネルが抜擢された。一方、「GMA」ホストのチャールズ・ギブソンが「ワールド・ニューズ」に移動したのは、あくまでもABC内部で、アンカーの怪我や妊娠で「ワールド・ニューズ」が手駒薄になったためである。


そのためABCは、長らく「GMA」の顔となっていた、ABC報道陣の最後の砦であるチャールズ・ギブソンを「ワールド・ニューズ」に起用せざるを得なくなった。ギブソンがいなくなった後の「GMA」では、その後釜を誰にするかという声はほとんど聞こえてこず、誰か男性アンカーを探しているのは間違いないとはいえ、ABCは焦らず次期アンカーを探したようだ。なんせ共同アンカーがダイアン・ソウヤーという米TV界きってのつわものの一人である。怒らせたら間違いなく相手はキャリアの息の根を止められるだろう。実際その発言力は、ABC内では双璧のライヴァル、バーバラ・ウォルターズとタメを張る。ABCもいきおい慎重にならざるを得ない。


そして8月末に発表のあった「GMA」のギブソンの後釜が、現在ニューズ・マガジンの「プライムタイム (Primetime)」でアンカーを務めている一人の、クリス・クオモだった。それからしばらくして、新しいウェザー・リポーターのサム・チャンピオンも発表になった。クオモは、「プライムタイム」のアンカーとしてよりも、ニューヨーカーにとっては、3期を務めた元州知事のマリオ・クオモの息子としての知名度の方が高い。今でこそ知事というと同様に3期目を務めているジョージ・パタキをすぐに思い浮かべるが、ニューヨーカーが市長というと現市長のマイケル・ブルーンバーグでなく、前市長のルドルフ・ジュリアーニを思い浮かべる者がいまだに多いのと同様、クオモの人気は高かった。


クオモが「GMA」ホストに選ばれた理由は、特に何かこれといった推せるセールス・ポイントがあったからというよりも、自分からはでしゃばらない、ギブソンに似たニューズキャスティングのスタイルにあったと思われる。ギブソンが米TV界の傑物の一人であるソウヤーを相手に回してこれだけ長くやってこれたのも、決して自分からは表に出ない控えめなキャラクターにあった。


実は私はギブソンの後釜として、現在、深夜のニューズ番組である「ワールド・ニューズ・ナウ」でアンカーを担当している、ロン・コーニングが抜擢される可能性が最も高いと考えていた。そろそろ深夜から早朝にシフトしてきて「GMA」で研鑽を積み、10年後にはギブソンの跡を継いで「ワールド・ニューズ」のアンカーという晴れ舞台に移る。完璧なキャリアだ。たぶん、コーニング自身がその設計図を心に思い描いていたのも、ほぼ間違いないと思う。


そしたら、ある日、朝、出勤前にFOXの朝のローカルのニューズ/ヴァラエティ・ショウ「グッド・デイ・ニューヨーク (Good Day New York)」を見ていて、愕然としてしまった。コーニングがジョニ・アップルゲイトと共に共同ホストを務めている。FOXの番組で。最近ではアメリカのこういった引き抜きや移動には簡単には驚かなくなっていた私も、これには驚いた。コーニングって、ABCの秘蔵っ子じゃなかったのか。


コーニングが以前から自分から移籍を考えていたのか、それともたまたまヘッド・ハンティングがあったのか、あるいは「GMA」から声がかからなかったからFOXに移ったのか、その辺はよくはわからない。タイミングは微妙であり、そのどれともとれる。その辺の経緯が記事になるほどコーニングはまだ大物というわけでもないため、真相は藪の中だ。因みに共同ホストのアップルゲイトは、こちらはNBCの「トゥデイ」で臨時ホストを担当していた経歴を持つ。


アメリカのニューズキャスターは、こうやってネットワークや各種の番組を転々としながらキャリアを磨いていくというのは常道であるが、しかしもちろん、生え抜きのエリートや将来を嘱望されている者は、そう簡単にネットワークも手放さない。私はコーニングはABCが大事に育てているもんだとばかり思っていた。道理で最近、「ナウ」でコーニングの姿を見かけないなと思ったよ。


一方、アップルゲイトの場合、普段はホストの服装にはほとんど目が行かない私でも気づくほど、微妙にずれたセンスをしている。端的に言って、異様に若作りする。別に本人が特に老けているというわけでもないのだ。こないだなんか、わざわざ頬っぺたを赤くして、アルプスの少女ハイジみたいな袖ぴらぴらのブラウスにジャンパー・スカートみたいなのを合わせていて、さすがに私も唖然となった。別になんかのイヴェントや他の番組への目配せという意味があったとも思えない (番組を最後まで見たわけじゃないので正確なことはわからない。) 彼女が「トゥデイ」を辞めて、一応ニューヨークとはいえどもローカルの局に移ったのは正解だったなあと思ってしまう。いくらなんでも全国区の番組でジョークじゃなくあんな格好でホストをやられたら、ちょっと出世は望めまい。


さて、新装「GMA」の第1回であるが、アメリカの学校の学年変わりの新学期というのは、9月第一週のレイバー・デイの休みが明けてから始まる。要するに「GMA」も「ヴュウ」も「イヴニング・ニューズ」も、そのキリに合わせているわけだ。そして「GMA」もリニューアルで新メンツを紹介しなければということで、番組の中で15分くらいかけて新ホストのクオモの経歴やパーソナリティを紹介した。天気予報のチャンピオンの紹介はほとんどなかった。ソウヤーやロビン・ロバーツの昔の写真まで紹介していたのは、ちと悪乗りしすぎという感もなきにしもあらずだったが、それにしてもソウヤーって、幼い時から本当に我が強そうな顔をしている。ロバーツがソウヤーとうまくやっていけるのも、当然彼女がうまくソウヤーを立てているからだろう。


意外だったのは、今ではわりと落ち着いている印象のあるクオモであるが、ガキの頃は非常におしゃべりでいたずら好きの、要するに典型的なアメリカのクソガキであったらしい。それなりに可愛い顔をしていたところなんか、今の顔や、特に強持てで彫りの深い父のマリオを先に知っていたら想像もできない。その新男性ホストという名目だとばかり思っていたクオモであるが、番組中でソウヤーが、クオモを共同ホストとしてではなく、「ニューズ担当」と明言して紹介していたところを見ると、あくまでもソウヤーとロバーツの二人が共同ホストという位置づけのようだ。クオモは、当分はそのポジションで辛抱せざるを得ないだろう。辛抱だよ、クオモ、当分は頭を低くして、決してソウヤーの感情を害する発言をしたりせず、派手なアクションは慎むこと。そうすれば自ずから道は開かれる。もしかしてずっとそのままという可能性もなきにしもあらずだが。


一方、「GMA」が終わった2時間後、オドネルを新ホストに迎えた新生「ヴュウ」もスタートした。第10シーズンという節目の上に大きくホストのメンツも変わったため、スタジオのセットも新しくなった。スタジオ内には、オドネルの友人であるトム・クルーズから贈られた花束もあった。オドネルには元メレディス・ヴィエイラがいた席があてがわれているため、オドネルは、まずは、こんにちは、メレディス・ヴィエイラですとジョークを飛ばす。


続いて、今日に向けてヘア・スタイルも新しくしました、大変ですが、でも、薬を飲んでいるから大丈夫ですと発言、即座に共同ホストの一人であるジョーイ・ベアーが、クルーズから何か言われなかった? と茶々を入れる。これは昨年、マタニティ・ブルーのために薬を飲んでいると何かのインタヴュウで答えていたブルック・シールズに対し、クルーズが薬を飲むなんてもってのほかと場違いな批判をしたため、逆にマスコミからいったいクルーズは何を考えているのかと散々叩かれたことを下敷きにした突っ込みである。


話題はその後も一つに留まることなく、どんどん話が飛ぶ。3人で姦しい女が4人も揃っているのだ、本当に一瞬も話が途切れない。いきなり子供のウンチやオシッコの話など下ネタに行ってしまうのも、いかにもオドネルがいるからこその話の流れ方という気がする。とにかく、一貫性のない単なるおしゃべり (としか私には聞こえない) が延々と続くのだ。彼女らの頭の回転の速いことは認めるが、これは男性にとってはきつい。一般的な男性はこの番組には耐えられないと思う。


その中でも私個人で最も印象深かったトピックは、前週末のUSオープン・テニスで負けて引退したアンドレ・アガシ関係で、私はその試合を実際に現地のスタジアムで見ていたため、感慨もひとしおだった。次に大きくとり上げていたのが、スティングレイに刺されるというこの人らしい事故で亡くなったオーストラリアのクロコダイル・ハンターことスティーヴ・アーウィン関係の話題で、この話は「GMA」でもソウヤーが針の模型まで持ち出して解説していた。なんでもアーウィンは現地ではスーパーセレブリティなのだそうで、アメリカでもここまで人気があったとは知らなかった。


この日の音楽ゲストはジェシカ・シンプソンで、ニック・ラシェイと別れ、現在ジョン・メイヤーとつき合っているという噂のあるシンプソンに、オドネルがいきなりその真偽を確かめる質問を発し、シンプソンは彼はただのお友だちと答えていた。オドネル同様髪形を変え、ちょっと以前と感じが違う。シンプソンは咽喉を痛めていたらしく、歌い始めたものの、かなり声量が乏しく、声がかすれる。まったくシンプソンらしくない。もうちょっと休んでいた方がよかったのではないか。


オドネルは、トーク・ショウ「ジ・エレン・デジェネレス・ショウ」のホストとして知られているエレン・デジェネレス同様、レズビアンとしても知られている。これまたデジェネレス同様、最初は黙っていたが、いつの間にやら彼女がゲイということは全米の知るところとなり、これ以上否定することにはほとんど意味がなくなってしまったので、ある時カミング・アウトした。オドネルはその時、彼女一人がホストの朝のトーク・ショウ「ザ・ロージー・オドネル・ショウ」を持っていたのだが、カミング・アウト以降、人気が落ちて番組はキャンセルされた。しかし、こうやって再抜擢されたところを見ると、いまだに彼女のファンは多いのだろう。スタジオ内には、彼女の「ワイフ」のケリー (結構美人) が姿を見せており、ゲイのオドネルというパーソナリティは人々に受け入れられたのだなと知れる。スタジオにケリーが来ているよと言われて、すぐさま、「彼女に手を振らないように。調子に乗って毎日来るから」と、うまく笑いをとれるよう反応できるところはさすがという感じだった。


とはいえ、オドネル前任のヴィエイラは、オドネルのように話し倒すタイプではなく、もっぱらおしゃべりの止まらないその他のホストのまとめ役という感じの方が強かった。それが今回、まったく逆のパーソナリティのオドネルを起用しているため、どちらかというとそれまではヴィエイラがやっていたようなまとめ役をウォルターズが担っているという印象を受けた。この回で最もしゃべっていたのはオドネルであり、最初の回というので他の皆がオドネルにしゃべらせようとしたというよりも、オドネルのキャラクターや押しの強さで自然にそうなったという印象の方が強い。今後番組は、4人のホスト間の微妙な力配分を按配しながら、最適なホスティング・スタイル構築に全力を傾けることになるだろう。 






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Good Morning America
グッド・モーニング・アメリカ   ★★1/2
The View
ザ・ヴュウ   ★★

 
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