イエローストーン (Yellowstone) 

放送局: パラマウント・ネットワーク 

プレミア放送日: 6/20/2018 (Wed) 21:00-23:00 

製作: リンソン・エンタテインメント、ボスク・ランチ・プロダクションズ 

製作総指揮: ジョン・リンソン、ケヴィン・コスナー 

脚本・監督: テイラー・シェリダン 

出演: ケヴィン・コスナー (ジョン・ダットン)、ルーク・グライムズ (ケイシー・ダットン)、ケリー・ライリー (ベス・ダットン)、ウェス・ベントリー (ジェイミー・ダットン)、コール・ハウザー (リップ・ホイーラー)、ケルシー・アスビル (モニカ・ダットン)、ダニー・ヒューストン (ダン・ジェンキンス)、ギル・バーミンガム (トマス・レインウォーター) 

 

物語: モンタナ州で全米で最大の私有牧場を持つジョン・ダットンを主とするダットン家は、この地方を牛耳る有力者だった。しかし隣接するネイティヴ・アメリカンの代表はこの地の一部を摂取してカジノ経営を計画し、デヴェロッパーもこの地に目をつけていた。時代が変わる中、ダットン家は好むと好まざるとにかかわらず、権力争いの中に飲み込まれていく‥‥ 


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Yellowstone


イエローストーン  ★★★1/2

「イエローストーン」を放送するパラマウント・ネットワークの前身は、スパイクTVだ。男性視聴者がターゲット層のエンタテインメント・チャンネルだ。最大の人気番組は「リップ・シンク・バトル (Lip Sync Battle)」だ。そのスパイクTVが、今年1月からパラマウント・ネットワークになった。 

 

そのパラマウントが編成する「イエローストーン」は、中西部の広大な牧場が舞台のプライムタイム・ソープらしく、私は最初、あまり興味を持ってなかった。ほとんど自前ではドラマを製作しないスパイクの近年では珍しいドラマか。いかにも男性向けという感じで、現在CWがリメイク放送中のクラシックのプライムタイム・ソープ「ダラス (Dallas)」のカウボーイ版といったところかと、漠然と思っただけだ。 

 

それが俄然興味が湧いてきたのは、製作脚本演出がテイラー・シェリダンということを聞いたからだ。近年「ボーダーライン (Sicario)」シリーズ、「最後の追跡 (Hell or High Water)」の脚本、「ウインド・リバー (Wind River)」の脚本監督と、はずれなしの骨太中西部作品で俄然頭角を現したシェリダンは、近年最大の収穫の一人だ。 

 

そのシェリダンが、「イエローストーン」の製作脚本演出すべてを手がける。しかも1シーズン9エピソードのすべてをシェリダンが脚本を書いて演出している。これは気になる。因みにシーズンが9エピソードと半端なのは、プレミア・エピソードが2時間の話を一話としてカウントしているためで、基本1時間の話を全10話とするのが最初のアイディアだったろうと思う。 

 

番組は冒頭、ケヴィン・コスナー扮する主人公のジョン・ダットンが、運んでいるウマもろとも事故に遭い、怪我をしたウマを撃ち殺すというシーンから始まる。競走馬として飼育されているウマが怪我をして、しかも種馬として考えられない場合、そのウマに将来はない。怪我をして走れないウマ自身も楽しくないだろうが、そういうウマを飼っている余裕は人間の側にもない。ペットじゃないのだ。それでウマをそれ以上苦しめないために、その場でウマを撃ち殺す。 

 

それで思い出すのは、今夏の「ザ・ライダー (The Rider)」だ。この作品でも、足に怪我をした競走馬を撃ち殺す。違うのは「ライダー」ではその瞬間を見せないが、「イエローストーン」ではしっかり見せるという点だ。「ライダー」の女性監督クロイ・ザオと、「イエローストーン」のシェリダンの資質の差と言える。いずれにしても、見せるシェリダンが骨太という印象は強い。 

 

当然ジョンは拳銃を持ち歩いている。この辺ではそれが普通のようだ。事故で駆けつけたシェリフは、まだ拳銃をホルスターに収めていないジョンを見て、ダットン家の当主と気づく。これが都市部で、もし抜き身の拳銃を持っているのが黒人やラテン系だったとしたら、警官に撃ち殺される可能性大だ。場所が違えば対応も変わる。 

 

とまあ最初の3分間で色々と問題を提起すると共に興味を喚起する。見事なつかみと言える。最初、面白いかな、まずはさわりだけでも、と思いながら見始めたのだが、結局第1話の2時間、最後まで一気見だった。 

 

ジョンには息子のジェイミー (ウェス・ベントリー) とケイシー (ルーク・グライムズ) がいる。ケイシーはネイティヴ・アメリカンのケルシーと結婚してまだ幼い息子テイトがいる。テイトはジョンの唯一人の孫なのだが、一方ネイティヴ・アメリカンと領地争いを繰り広げているジョンは、大っぴらにテイトに会いに行くわけにもいかない。同じことはケイシーにも言え、ケルシーの兄弟からまだ義兄弟と認めてもらっているわけではない。 

 

ネイティヴ・アメリカンを束ねているトマス・レインウォーター (ギル・バーミンガム) は、土地にカジノを建設しようと目論んでおり、一方、デヴェロッパーのダン・ジェンキンス (ダニー・ヒューストン) も、広大な土地の開発を計画している。そもそもこの地域では土地の境界の概念は曖昧で、川が慣習的に境界を決めているとすると、ではその川をなくしてしまえばいいと、ダイナマイトで土手を破壊して川を埋めてしまう。 

 

ウシはそこにいる土地を持つ者が所有者だから、夜中に囲いを破ってこちら側にウシを誘導しておくと、そのウシはオレのものだとわかってても、どうもできない。とにもかくにも荒っぽい。いまだに西部では物理的な力が最終的に物事を決める。そんなこんなで、土地を巡る争いは日に日に激化の一途をたどり、ついに一瞬即発の状態を迎える‥‥ 

 

コスナーはさすがに貫禄だが、彼以外も皆いい。副主人公格のグライムズも悪くないが、シェリダン絡みでは、「最後の追跡」と「ウインド・リバー 」に出ていたバーミンガムが気になる。「最後の追跡」でも「ウインド・リバー」でも貧乏くじを引いていた真面目な印象の人間が、ここではわりと腹黒そうな役で、しかも結構似合っている。他にも上昇志向のジェイミーに扮するウェス・ベントリー、デヴェロッパーのダンに扮するダニー・ヒューストン、紅一点的なジョンの娘ベスに扮するケリー・ライリー、ジョンの忠実な二の腕として働くリップに扮するコール・ハウザー等、皆、目が離せない。いや、TVでこれだけやってもらえれば文句ない。  











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